魔帝死霊龍(アジ・ダハーカ)
な、なんとか今日中に間に合った……。
……はぁ!?進化!?どういうことだ……。困惑しながらも、とりあえずは月夜叉に回復魔法をかける。死んでもおかしくない傷だったからね。
一瞬、体中が作り替えられたかのような感覚が走り、ひざを折りそうになったが、何とか耐える。ほら、立ち上がった月夜叉も不思議そうにしてるし……。
「ど、どうかしたのか、王よ」
月夜叉が心配そうにそう問いかけてくる。てか、なんだよ王って、こっぱずかしいからやめてくれんか。
「うん、大丈夫大丈夫、ちょっと進化しただけだから……」
「はぁ…、進化ですか…………って、進化ぁ!?」
「あ、やっぱりびっくりする?」
「驚くに決まっていましょうが!進化というのは、長きにわたってためた経験が実り、上位の存在へと昇華するもの。必要な経験は膨大、それが王のような龍ならば、さらに多くなるのだぞ!?それが、なぜ……」
「うーん、考えられるのは、ランク上では格上の月夜叉を圧倒したこと……とか?それに、月夜叉が仲間になったのも、進化の要因の一つみたい。それにしても、霊人、聖霊人、霊龍ときて、今度は魔帝死霊龍……。特異進化も四度目かぁ…。」
「特異進化を四度も行っているという時点でいろいろとおかしいのだが……。というか、今の王のランクは何なのだ?」
「ランク?えーと、八たす八で、十六かな?」
「じゅっ……はぁ、規格外とは王のためにある言葉のようだな。それでまだ魔王に至っていないというのは、末恐ろしい話だ。王がランク十になり魔王になったところなど、小生ではまるで想像することができん」
ははは……。この野郎、なんだそのあきれ顔は……。こいつ、もともとはこういう性格なのか?まぁいい、ちょっと調子に乗っているこの鬼野郎に制裁を加えてやろうではないか。
「ショックインパクト」
「はぶしっ!」
空中で何度か跳ね返りながらまたもんどりうって倒れる月夜叉。ざまぁみやがれ。
でも、なんか今、魔法の威力が上がってたよな……。って、進化したんだから当たり前かぁ…。
さて、では恒例のステータスチェックと行きましょうかね?あ、月夜叉に回復魔法をかけてっと。
「ステータスっ!」
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ネクロ
種族/魔帝死霊龍 ランク8
レベル1
生命力 95400 魔力 577320
筋力 25215 耐久 99999(カンスト) 敏捷 19500 知力 67680 精神 99999(カンスト) 運 3
種族スキル
[反逆許さぬ支配力][憑依][浮遊][透過][存在喰らい][生殺与奪は我が手中に][浄化][龍化][龍魔法][下級竜生成・邪][千魔の叡智][瘴化]
スキル
[魔力撃][聖光技][妖気法][龍脈操作][黒魔法][白魔法][付与魔法][死霊魔法][結界][暗黒魔法]
固有スキル
[中二病]
称号
[異世界より転生せしもの][精神の極み][殺戮者][無敵][耐久の極み][ユニークモンスター][邪神の眷属][邪神の伴侶(仮)][ネームドモンスター][死者の導き手][存在喰らい][妖刀の主][魔王の王][悪なるもの]
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こいつはひでぇ、ダークサイドな匂いがプンプンするぜぇ!
なんなんだろう、このTHE・悪役みたいなスキル構成。暗黒魔法とか下級竜生成・邪とかさ!
試しに、あのアンノウンな鑑定結果がでた山に、魔法を叩き込んでみる。だれも見ていないから、全力で。それに、新しいスキルもいろいろと試してみたい。さぁて、[中二病]の本領発揮と行こうか!
月夜叉にはちょっと離れたところにいてもらう。巻き込まれると冗談抜きで死にかねない。
僕はとりあえず杖は持たずに魔法を使ってみることに。強化された結果、ここらあたり一面が更地になりましたーとかは洒落にならない。
「それじゃあ……。
龍の血脈を汚すもの 魔帝死霊龍の名において命じる
龍脈を流れるあまたの力よ 意志よ 我が命に順守せよ 汝らの主こそ我なり
我が魔力を贄として 常世に滅命をもたらさん
龍の怒り 龍の怨嗟 龍の悲観 そして、龍の死
あまねくして集う負の精よ 惨劇の幕は今開かれん 見開かれる瞳は ただ殺意に濡れるばかり
我が吐息とともに その生の終焉を知れ
[絶滅之息]」
僕が広げた手のひらに、あまたの魔法陣が形成される。それは、今まで使ってきた魔法の魔法陣よりも、複雑で、きれいな魔法陣だった。
魔法陣はくるくると回転を始める。右に左に回る魔法陣を見ていると、目が回りそうになる。
そうして、魔法陣の模様が見えなくなり始めた時、それは起こった。
静かに、一閃の極光が山を貫いた。
それは音のない、そして、光さえも一瞬で消えてしまった。静かすぎる砲撃魔法。
だが、その砲撃が通り過ぎていったあとには、凄惨な光景が待っていた。
「こ、これは……。空間が、崩れている?」
月夜叉が後方で驚きの声を上げていた。砲撃の通り過ぎた後には、ボロボロと崩れ落ちる空間の破片。時空の壁に穴が開き、そこから何と言っていいのかわからないような景色が覗いている。貫かれた山も、空間と一緒に一部が崩れ始めていた。
空間ごと殺す、絶対死の砲撃。確かにすごい、すごいが……。
「これじゃあ、聖神には届かないな……」
この程度では、駄目だ。あの固すぎる防御結界を破ることはできないだろう。最低でも、僕の耐久を抜ける程度のダメージをたたき出さなければ、あいつには届かない。
僕がそう地味にがっくりとしていると、僕が歩いてきた方向――町のほうから、何かが高速で向かってくるのが感じられた。
なんだろうと思い、そちらに視線を向ける。そして、こちらに向かってきているそれを見て、思わず驚きの声を上げてしまった。
空をものすごい勢いでカッとんでくる二つの影、それは……。
「ぅわあああああああああああああ!!!!ネクロぉおおおおおおおおおおおお!!!たーすーけーて―!!!」
「おー、たのしー」
「リンネ!?ノルン!?」
別行動をとっているはずの、二人の仲間だった。
ネクロくんに勝てる存在って、実を言うと作中では神くらいになっています。あ、でもナルアは無条件で完全勝利できます。
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