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中二病幽霊が、異世界でおこす嵐、その物語です  作者: 原初
冒険者と第一ゲーム
44/80

おや?魔王が仲間になりたそうにこちらを見ている……(大嘘)

女の子がでないぃーーーーー!!!!!あぁああああああああ!!!

 僕の眼下には、ボロボロになってぴくぴくと痙攣する魔王の姿があった。[浮遊]を使った上空からの魔法乱舞が強過ぎる件について。広範囲に魔法をばらまいたりする殲滅戦でも役に立つ戦法だよね、これ。それに、これなら風属性の魔法と言い張れば問題ない。なんで今まで律儀に地上戦をしてたんだ……。


 まぁ、魔術師として戦うっていう縛りプレイからはちょっとそれちゃうけど、このくらいなら許容範囲じゃないかな?自分に甘い男ネクロ。駄目人間としか思えない……。


 ま、まあそれは置いておくとして。


 こいつ、どうしよっかなー。このまま経験値としてしまってもまるで問題ないんだけど……。ちょっと、かわいそうな感じもするし。こいつをボコる理由って、実を言うと特になかったりする。イラつきが多少あったことは否定しないが、その程度で『ぶっ殺してやる!』というほどキチじゃない。普通じゃないって言うのも自覚はしているよ。


 まぁ、僕はナルアが幸せになってくれればそれでいい。むしろそれ以外は特にどうでもいいっていうか……。もちろん、リンネやノルンだってこっちでできた仲間で友達だと思っている。でも、僕のなかでの最優先は、間違いなくナルアのことなのだ。はっきり言って、僕の命が失われることでナルアが幸せになるというのなら、僕は自分を殺す方法を全力で探し出そうとするだろう。その時は聖神に頼んでもいいな。あいつどうせのぞき見してるだろうし。


 まぁ、ナルアにそんなこと言われたら、自殺する前にショック死する可能性が大なので、そんなことにならないように気を付けるが。


 とと、話がずれたな。えーっと、なんだったっけ……。ああ、そうだ。このイモムシみたいにぴくぴくして横たわってる魔王さんのことだったな。


 正直に言って、今の僕じゃあ聖神に勝てるわけがないし、あいつが仕掛けてくるであろうゲームを完全に攻略できるかどうかは定かではない。なので戦力を増やすという意味でこいつを生かすのは不利益ではないのだ。


 問題は、こいつがおとなしく僕に従ってくれるのかということ。


 ぶっちゃけ、僕だったら自分の集落を全滅させ、そしてぼこぼこにされた相手に進んで従おうなんて露ほどにも思わない。そんなことをするのは頭のトチ狂っているやつか、極度のドMくらいであろう。まぁ、ナルアにならそれでもいいかなって思ってしまっている僕って結構手遅れだと思います。


 さて、どうやって下僕に………間違えた、仲間にするかな。


 うーんと考えていると、とあるアイデアが一つ、ポンッと浮かんできた。よし、舌先三寸なアイデアだけど、これでいってみるか。


「ねぇ、君。僕と来ないかい?」

「………なん、だと?」


 かろうじて、という様子で顔を上げた鬼は、僕を射殺さんばかりの視線を向けてくる。怖い怖い。そんな目で見ないでおくれ。


「まぁ、君に仲間を皆殺しにして、さらには君自身を今まさに殺そうとしているやつが、何を言ってるんだって感じだよね。わかるわかる」

「……それなら、小生の回答にもすでに予想がついているだろう。否だ。さっさと殺すがいい」

「まぁまぁ、そうやって死に急ぎなさんな。ところで話は変わるけど、君はなぜ集落を作っていたんだい?こんな人間の町に近いところに集落を作れんば、やがて人間からの攻撃が来ることは予測できていたはずだよ?それに、実際に襲撃はあったでしょ?」

「……ああ、だが、どの人間も弱かった。集落の皆でも簡単に屠れるようなやつらばかりだった」

「でも、その油断があったから、こんなことになった。自分が魔王だから、いざとなったら自分が何とかすればいいとでも考えていたのかな?その慢心が、君の守りたかったものを失わせたんだ」


 僕の言葉を聞いた鬼が、目を見開いた。そして、悔やむような、激怒したような、そんな歪んだ表所うを浮かべている。


 僕の推測は大体当たっていたみたいだ。この鬼の魔王は、集落を守りたかった。だから、オーガに戦闘訓錬を積ませ、上等な装備を与えていたのだろう。偵察の際に見たオーガのステータスから、そんな鬼の魔王の心情が見て取れた。


 この魔王の本質は、僕と案外似ているのかもしれない。僕の場合はナルアを、この鬼の場合は自分の集落を。つまり『大事なもの守りたい』という思いだ。


「……小生は、二度も、守れなかった…。一度目の時、あれほど後悔したというのに……。また、失ってしまった……。すまぬ……すまぬ、皆ッ!!」


 鬼は涙を流していた。その様子からは、僕に挑みかかってきたときの勇ましく荒々しい雰囲気はまるで感じられない。弱っている、ただの子供のようだ。


「それで、月夜叉だったっけか。君、あきらめるの?」

「……そうするほか、ないだろう。小生はもう、すべてを失ったのだぞ?……速く、皆のもとへ送ってくれ」

「ふぅん、それでいいんだ。君は逃げるんだね」

「……に…げ………る……?」


 鬼はその言葉を呆然とした様子で反芻する。ここまでは 計 画 通 り 。


 内心にやりとしつつ、鬼にさらなる言葉を畳かける。


「そうだよ、月夜叉。君は死という一番安易な逃げ道を選ぶんだ。まだ、君には可能性が残されているのに」

「可能性……だと?」

「そう、可能性だよ!確かに君は僕に負けた。でも、そのままでいていいのか?僕がこの世で最強なわけじゃない。そして、君に勝てるやつは、残念ながら存在する。そんな状態で、君は死というあきらめの選択をしてしまって、本当にいいのか!?」


 さぁ、ここからは盛り上げていきましょう!レッツOHANASHIタイム!


「悔しいだろ!僕がにくいだろ!自分が許せないんだろ!?なら、その感情をあきらめるな!君はまだ命がある。死を選んだって、その先があるなんて考えるな!生きている間にやらやきゃ、意味がないだろう!」

「そ、それは……」

「魔王になった。それで満足なのか?まだ君の望みは果たされていないだろう!?大切なものを守りたいっていう願いは!」

「ッ!!!」


 月夜叉の瞳に動揺が走る。心が揺さぶられている証拠だ。


 僕はここで声音を柔らかいものに変える。さあ、仕上げと行こうじゃないか。


「僕にも、守りたいものがある。でも、そのためにはもっともっと力が必要なんだ。そして、君なら僕は信用できる。勝てないとわかっていながらも、僕に挑みかかってきたその精神。大切なものを守り、それのためなら命をかけれるような君の精神を、僕は信じてみようと思う」

「…………」

「もう一度聞くよ。もしそれでも君が死を選ぶというなら、その時はちゃんと殺してあげる」




「僕と、一緒に来ないかい?」




 

 さて、どうだろうか。僕は倒れてうつむいている鬼に手を差し伸べながら、内心でドキドキしていた。よくもまぁこんな心にもないことをシャアシャアはける口ですこと。自分でも呆れるよ。


 そのあと、月夜叉の反応を待つこと数分。やっぱりそう簡単にはいかないか、と嘆息し、手を引っ込めようとした瞬間。



 ガシッ。



 素早く伸びた月夜叉の手が、引っ込めようとしていた僕の手をつかんだ。


「…………貴様……いや、貴殿の言うことは正しい。この場で死を選んだとしても、小生はそれを冥府で後悔し続けるだろう。それなら、小生が成し遂げれなかったことを、貴殿のそばで成し遂げたい」


 月夜叉は傷だらけの体を無理やり起こし、僕の目の前で膝をついた。


「改めて名乗ろう。小生は鬼人の魔王、月夜叉。小生は貴殿、ネクロに忠誠を誓う」


 そして顔を上げ、力強いまなざしで、僕の目をしっかりと見返してきた。そこには、殺気も絶望もこもっていない。


「よろしく頼む、我が王よ」

「ああ、君の忠誠、しかと受け取るよ。月夜叉」



 きじんのまおうが なかまになった!



<ネクロのレベルが上がりました>

<ネクロのレベルが規定値まで達しました。進化を開始します>

<ネクロが特殊行動、『人族擬態』『魔法融合』『魔王使役』を達成しています>

<ネクロはランク7、霊龍から、ランク8、魔帝死霊龍アジ・ダハーカに特異進化します>



全開のあとがきでおにゃのこをだすとか言っておきながらのこの体たらく。さらには更新が三十分遅れたことを土下座でお詫びしますm(_ _)m



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