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中二病幽霊が、異世界でおこす嵐、その物語です  作者: 原初
冒険者と第一ゲーム
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きな臭い初依頼 4

うーん、なんだかなぁ…。ちょっとスランプだにゃぁ。

「お前か、さっきの面妖な魔法を使ったのは」


 そいつの声は、遠くにいるはずなのに、まるで耳元でささやかれたかのように聞こえた。声を魔力にのせて飛ばしたってことかな?


 それにしても、これは予想外だったなぁ……。魔王がいるってのは冗談のつもりだったんだけど。フラグ回収お疲れ様でーす。


 さて、まずは鑑定と分析を使ってっと……。うん、魔王に間違いはないか。称号に[月鬼の魔王]って書いてあるし。ステータスはバランス型。全体的に数値にばらつきがない。平均ステは二万ってとこか………。


「なぜ答えぬ?人間の真似事をしている龍よ。お前が正体を隠しているのはすでにわかっているぞ」

「ああ、ごめんごめん。ちょっと考え事をね?放っておいて悪かったよ、鬼人の魔王」

「……小生が魔王だと知ってここに攻めてきたのか?」

「いやー?残念ながらはずれ。ギルドで依頼を受けてきただけだよー。君の言う通り、僕は人間の真似事をしてるからね」


 う、この声を魔力にのせるのって結構難しいな……。ま、でも聞こえてるみたいだからいいか。口調を冒険者モードにするの忘れてたけど、それもやむなし。


「なぜ、龍たるものが人間などの真似事を?お前から感じ取れる力……。魔力や聖光、それに妖気もか?お前ほどの力があるのなら、人間の組織にとらわれることなどなく生きることができるだろうに」


 あーん?

 まるで、僕のしていることが無駄だといわれてるみたいで、ちょっとカチンと来てしまう。ふざけたことをおっしゃいますね、あなた。


 でも、ここはクールにいこう。あいては魔王とはいえ、脳筋のオーガから進化した存在。それに、その進化だって、あれがなかったらできなかっただろうし。


 僕はその「あれ」に視線を向ける。鬼人の魔王の持つ、二振りの刀。そのうちの片方から、かなりの力を感じる。間違いない、あの刀、神遺物アーティファクトだ。なるほど、あれを手に入れたことで、魔王として進化するまでに至ったってわけか……。ふーん。


「僕には僕の目的があるんだよね。それを君ごときに無駄扱いされるのはちょっと怒れるよ?おこだよ?そんな神遺物アーティファクトに頼らなきゃならないような未熟者が。わかったような口をきくな」

「……小生が、未熟者だと?魔の王たる頂まで到達した小生に対して……無礼だぞ、貴様!」

「はっ、魔の王たる頂ぃ?君、その程度で魔の王を名乗ろうとしてるのぉ?はははははっ、ほんとに滑稽だね」


 うんうん、ちょっと進化を重ねて天狗になっちゃってるんだね。魔王とかになって、集落の長になって、いい気になっているんだよね?大丈夫大丈夫、そういう悪い子は……。



 ちょっと、お仕置きしなきゃだね。



「雷神招来 疾く走れ 黄金の雷槍よ [雷伝魔槍ライトニングジャベリン]!」


 先手必勝!発動速度、弾速ともに優秀な雷属性の魔法を叩き付ける。鬼人の魔王は、それを瞬時に抜き去った二本の刀で切り裂いた。リアル雷切だ。


「貴様…っ!不意打ちとは、卑怯な!」

「僕は君の討伐に来てるんだよ!仲間を殺されたことによる怒りの激情を隠したいのはわかるけど、ちょっと油断しすぎじゃないかな?」

「だ、黙れ!貴様、よくも、よくもぉ!!」


 はははっ、しょせんは脳筋だな、ちょっと煽っただけでこれだよ。


「無様だったねぇ、君の集落の連中はさ。虫けらのように逃げ惑って、そして、何もできずに死んでいった。……こういうのを無駄って言うんじゃないかな?」

「ッ!!………殺す!」


 鬼人の魔王は、瞬間移動見たいな速度でこちらに迫ってきた。速いなぁ。


 でも、速いだけじゃどうしようもないんだぜ?


 ガキンッ!


「なっ!け、結界で小生の一撃を防ぐだと…」


 鬼人の魔王が放った一撃は、僕の体を覆うように展開された魔力の幕に遮られている。これは、結界という魔法職の基本技術みたいなものだ。僕の場合は[中二病]によって強化されていることもあり、自分の耐久値の半分くらいの強度がある……ちょっと自分で言ってておかしく思えてきた。僕に一番いらない技能だよね、これ。


「軽い攻撃だねぇ、そんなのじゃ、僕にはどれだけかかっても傷一つ与えられないよ!」


 さぁさぁ、どんどん見せてくれ、君の積み上げてきたものを!それを全部つぶしたうえで、ボッコボコにしてやんよ!


「そういえば、まだ名乗ってなかったね。僕は魔術師ネクロ!君を殺すものの名だよ!」

「小生は、月夜叉。その言葉、そのままそっくり貴様に返そう!」


 鬼人の魔王、月夜叉が僕に向かってかけて来る。足運び、体幹の動かし方、それらを見たところ、相当に訓練が積まれていることがわかる。


 それでも、僕の師匠ほどじゃない。ノルンを知っていれば、他の前衛職なんてみんな子供みたいなものだからね!


 右から左から、二刀が振るわれるたびに、結界が火花を散らす。よく見ると、傷がついているところがある。


 結界を張り続けていても、いずれは破られるか。なら、防御より回避を優先しようか!


「疾風伝来 来たれ狂風 我に加速の加護を [風伝烈脚アクセルグリーブ]!」


 速度強化!結界を解除して、月夜叉の斬撃をよける。そして、手に持ったウロボロスを振り上げる。


「火炎昇華 来たれ業炎 我に剛力の加護を [炎伝炸甲ブーストフィスト]!」


 そして筋力強化、振り上げた杖を振るい、月夜叉に叩き付けようと試みるが、近接戦闘では相手に分がある。簡単によけられてしまった。


 そして、お返しとばかりに振るわれる、怒涛の連撃。刀の結界とでも言えばいいのかな?それを僕は大きく飛び退ることで回避……って、うわぁあああ!!


「やはり、地の利は小生にあるようだな」


 月夜叉がにやりと笑ってそういう。そう、今のまま飛んでいたら、岩場が裂けてできた穴に落ちるところだった。危ない危ない。[浮遊]が使えればこんなことにはならないんだけど……ん?


 なんで僕、[浮遊]使ってないんだっけ?


 ………………………………。



「な、貴様、それは、くそっ……ぐあっ、ちょ、やめ……ぐっ、あぁあ!ぎゃぁああああああああああああああああ!!!」

たぶん、女の子が出てないからだと思うんだけど……。



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