きな臭い初依頼 3
厨二回。
ここかな?依頼書に書いてあったの場所は。
切り立った崖に囲まれた岩場。いくつもの洞窟がアリの巣のような感じで張り巡らされており、ちょっと少年心をくすぐられる感じである。
だが、そんな光景の中に、おかしなものがちらほらと。そう、武装しているオーガの群れだ。ジェネラルがいるから複数のオーガがいることはわかっていたけど、これは予想外。完全に組織立った行動をしているではありませんか。オーガってもっと脳筋なイメージがあったんだが。あいつら頭よさそう。
これ絶対キングとかエンペラーとか魔王とかいるって。確定確定。笑えないなぁ……。
とりあえず、向こうはこちらに気づいていないご様子。そりゃあ崖の上から見てますもの。この状況を利用して、偵察の真似事でもしますか。
……それから十分後。大体のことが分かった僕は、元いた崖の上に戻ってきた。
この集落には、武装したオーガが約五十体、上位オーガが約四十体。リーダーやジェネラルが十体前後。そして、洞窟にその二倍はいると思われるので……総数は三百程度かな?洞窟にいる連中の中にこの集落の主がいると思われる。
さて、この状況でどう攻略していくかが問題なのだが…。めんどくさいので、魔法で一掃することにしようか。あ、でも首持って帰るって言っちゃったしなぁ……。しょうがない、死体がきれいに残る感じで殺すことにしよう。素材を持ってこいと言われる依頼のために、そういう魔法も作ってあるのだ。
アイテムボックスからウロボロスと、もう一本、杖をだす。これを使うのは初めてだ。普段は使う必要がないんだけどね。今回はある事情から使わざるを得ない。
「【無限円環 ウロボロス】。ンでもって、【死界葬々 デスペラード】『起動セヨ』」
【死界葬々 デスペラード】は名前からして大体わかるだろうけど、死霊魔法を強化することにたけた杖だ。もちろんそれだけじゃないんだけど……、ま、それは追々。
なぜこの杖を使うのかというと、今から使う魔法が、黒魔法と死霊魔法の中間に位置する魔法だからだ。そして、この魔法の威力は、[颶風巻き起こる灼天の煌翠]より上だ。
え?ギルドマスターに、最高威力の魔法とか言ってなかったって?ははは、正直に話すわけないでしょ?
それに、対人使用ならあれが一番の威力だからねー。見た目も派手だから好きなんだよな、あれ。自分でつけた名前なのに、長すぎて呼びたくなくなるという事案発生。深夜のテンションで作り上げた魔法だからなぁ………。その代わり、[中二病]の威力補正はすごいことに。あれ、もともとは中位魔法なんだよ?
ま、それは置いといて、やりますかねぇ。
今から使う魔法は、上位黒魔法と上位死霊魔法の二つを[中二病]で混ぜ合わせ、創り出した魔法。
「それは滅びの始まり 怨嗟と怨念 光刺さぬ牢獄
暗き闇がすべてを支配する世界の中で 汝は永遠にとらわれる
その先にあるのは 深く深く どこまでも続く深淵
深淵へと落ちていけ 二度と戻らぬ旅路を逝け
始まるのは終わり 汝の終わり 汝の命 魂を
死神が導く道の先へと 疾く消えよ!
[衰退せし生命の慟哭]」
長い長い詠唱を一息で言い切ると、岩場の、オーガの集落があるあたりの上空に、魔法陣が出現する。大きな魔法陣に、複数の小型魔法陣が衛星のように張り付いている。
その魔法陣は、回転する。徐々にスピードを上げながら、描かれた紋章が空に幾何学模様を描く。
そして、それは現れた。
回転する魔法陣の中央から、黒い、影のようなものが表れる。その影はどんどん姿を変えていき、最終的に、一匹の龍の頭部を形どった。
オーガたちはいきなり現れた異形の龍に驚いている。蜘蛛の子を散らすように洞窟の中に逃げ込んでいく。
くくくっ、それはだめだ。悪手のなかでも、最悪の選択をしてしまっているよ。哀れだね、鬼さんたち?
影の龍は、大きく空気を吸い込むようなしぐさをする。実際には、実体のない本当に影のようなものなので、そんなことはできないけど。
そして、龍が
吼えた。
ただの咆哮ではない。これは、死の宣告。聞いたものに絶対的な死を与える、そういう魔法だ。
音は衝撃となり、空気を蹂躙し、岩肌を削る。洞窟の中に入っていったオーガたちは、まさか攻撃方法が音とは思っていないだろう。この咆哮をうけて、皆等しく死んでいるはずだ。その証拠に、レベルが上がった。
依頼を受けて、レベルも上げれてラッキーっといったところかな。最近は……というか、龍になってからはレベルが上がりにくくてしょうがない。これは種族によってレベルアップに必要な経験値が違うからだそうだ。人間が二十レベルを上げるのに必要な経験値で、龍は二~三くらいしかレベルが上がらない。あがりにくいとかいうレベルじゃない気がするが……。
まぁ、某国民的RPGでも、ドラゴン系はレベルが上がりにくいって設定だったし……。そういうもんなのかね?
ととっ、いつの間にか話がどうでもいいことに……。そろそろオーガジェネラルの首とオーガの素材を集めないと。
と、僕がそう思い、岩場に視線を向けたとき、それはそこにいた。
着流しのような恰好をし、二本の刀を腰に帯び、白銀の瞳にこちらへの怒りをにじませた、三本づのの鬼人。
そいつを一目見ただけで、理解した。
こいつ、魔王だ。鬼人族の、魔王。そして、この集落の長であっただろうやつだ。
そしてそいつは今、集落をぶち壊そうとしている外敵を、完全に殺そうとしている。そう、僕のことだ。
魔王か………相手にとって、不足は、ない。
あぁあああああ!話が進まないぃいいいいいいい!
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