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中二病幽霊が、異世界でおこす嵐、その物語です  作者: 原初
冒険者と第一ゲーム
37/80

お祝い

はいはーい、ロリといちゃつく回だお。

 ギルドカードを受け取った後、冒険者ギルドの説明を受けた。リンネから一応聞いていたけど、もう一度聞いてしっかりと確認することにした。


 まず、冒険者ギルドで依頼を受ける時は、ギルド内にある掲示板に貼ってある依頼書を冒険者ギルドの受付にて受付嬢に渡す。その時、受注できる依頼は、自分のランクの一つ上か一つ下まで。自分の身の丈に合わない依頼を受けたり、低ランク冒険者たちの仕事を奪わないようにする措置らしい。


 依頼には大まかに、討伐系、採集系、護衛系、雑用系とあり、討伐系は、魔物の討伐が主な目的。採集系は、魔物の素材や、ダンジョン内の魔道具など、霊草や魔鋼物も対象となる。そして護衛系はその名の通り、街と町を行き来する商人や、貴族の相手をすることもあるらしい。その三つのうちのどれにも当てはまらないものを雑用系という。


 依頼には、依頼主が冒険者ギルドのものと、依頼主が別にいる場合があり、依頼主が別にいる場合は、依頼主のもとに直接赴く必要がある。


 依頼が完了したら、依頼主が別にいる場合は、依頼主から直接依頼完了を承認するサインを依頼書にもらわなければならない。この時、依頼主と冒険者の間でトラブルが起きることも珍しくないらしく、そういった場合は、冒険者ギルドが仲介をしてくれるらしい。


 そして、依頼を失敗してしまった場合、この場合は違約金が発生し、報酬の半額を冒険者ギルドに払う必要がある。依頼が難しくなるにつれて、報酬の金額も大きくなる。そうすると、失敗したときのリスクが大きくなってしまう。自分に合った依頼を選べるかどうかも、高ランク冒険者に求められる素質の一つというわけだ。


 その他としては、冒険者同士の争いに、ギルドが介入することはない。争いになったら、基本的に決闘で解決するのが冒険者の流儀らしい。しかし、汚い冒険者は決闘をせずに、相手を闇討ちすることもあるため、そこは注意が必要らしい。僕としては、闇討ち大歓迎だけどね。決闘なんてめんどくさそうなことをせずに済む。ほら、あのイーなんたら君とか来てくれないかな?全然来てくれてもいいんだよ?


 説明は大体それで終わりだった。カウンターでアイラさんから魔石の代金を頂戴するときにCランクの冒険者カードを見せたら、あんぐりと口を開けたまま停止してしまうという事件が起きたが、それ以外はおおむね平和だった。魔石はなんと白金貨三十枚にもなった。じゃあ、アイテムボックスのなかで大量に眠っているランク10の魔石を放出したら、一体いくらになるんだろうか。


 そう、平和だったんだけど……。


「おい新入りぃ!さっきギルドで受け取ってた金、おいてけや!」

「冒険者になったんなら、先輩にはちゃんと筋通しておかないとなぁ?」

「ぎゃははは!怖くて声も出せねえのかぁ?」


 ハイハイテンプレテンプレ、お疲れーッス(ため息)。


 僕とナルアの前には、モヒカンの大男、太めの男、やせ細っている男と世紀末っぽいやつらが道をふさいでいる。


 これからナルアと二人で食事にでも行こうかと思ってたのに……。空気読めん奴らだな。ぶっコロしちゃうゾ?


「ナルア、この後、どうしよっか?昨日見つけたレストランでも行ってみる?」

「それもいいけど……。今日は、ちょっとやりたいことがあるから、宿屋に戻ろ」

「いいよ。じゃ、いこっか」

「うん!」


「「「無視してんじゃねーよ!!」」」


 僕たちの行く手をふさぐ三人組をスルーしようとしたけど、そうは問屋が卸さないみたいだ。めんどいなー。


「なんだ、お前らは。邪魔なんだが」

「あ?てめぇ、Dランク冒険者であるオレ様に、そんな口きいていいと思ってんのか?新入りの分際でよぉ」

「そうだそうだ!兄貴にかかれば、お前なんていちころだぞ!」

「ぎゃはははは!アニキィ、もうやっちまいましょうぜ」


 え、こいつらこんなに威張ってんのにDランクだったの?なら……。


「お前ら、これが目に入らないのか?」

「はぁ?……な、なにぃ……黒色の冒険者カード……。お前、まさか……Cランク!?」

「はへ?なんでギルドに加入したばっかで、Cランクなんだ?」

「ぎゃはははは……まじかよ、おい」


 僕が冒険者カードを取り出した途端、青ざめていくテンプレ三人組。面白いやつらだなー。


「……で?私に何か用か?」

「い、いえいえいえいえ、とんでもない。ちょっと挨拶をしようと思っただけですよぉ、なぁ?」

「そそそそそうっすね。いやーすごいっすね、冒険者なりたてでCランクとか……あははははは」

「ぎゃははははは…………いやホント調子乗ってましたすいませんっした」


 そういって足早にかけていくテンプレ三人組。変わり身の早さに驚きを隠せない。まぁ、ある意味賢い連中かもしれないな。長いものには巻かれろっていうし。


「さー、宿にかえろ、ネクロ!」

「おー!」



===================================



 僕とナルアの二人が泊まっている宿屋は、「渡り鳥の止まり木」という名前の宿屋で、食事が美味しいと評判の宿屋だ。それだけではなく、なんと風呂までついているという親切設計なのである。


 その宿屋の借りている部屋で、僕はナルアを待っていた。ナルアに待っていてくれと言われてから、二十分くらいだろうか?こう、なんだかそわそわしてしまう。


 僕が訳もなくベッドの上でゴロゴロとしていると、こんこんとノックの音が響いた直後に、ナルアの声がした。


「ネクロ、ちょっと開けてくれないかな?」

「いいよ、ちょっと待って……はい」


 部屋のドアを開き、ナルアを招き入れる。入ってきたナルアは、両手に、あるものを持っていた。


「ナルア、それって……」

「お祝いのケーキだよ。昨日のうちに、宿の人に頼んで厨房を貸してもらって作ったんだ」


 ナルアが持っていたのは、小さめのホールケーキ。純白の生クリームと、イチゴの赤がまるで芸術品のようで。店に並んでててもおかしくないようなものだった。


「ナルア、ケーキなんて作れたんだ……」

「えへへ、一人でいるときは、こういうことして暇をつぶしてたからね。料理は得意です。ネクロも料理得意だったよね?また今度、一緒になにか作ろう?」

「……うん、そうだね。一緒にやろうか」


 ナルアがそう言ったときに浮かべていた笑顔に、悲しみの色はなかった。痛いほどまっすぐに、僕に向けられた笑顔。それを見ているだけで、胸がいっぱいになるというか……。とても、幸せな気持ちだ。僕という存在が、ナルアを孤独から救えている証拠でもあるわけだし。


 ナルアには、これからもっと、誰かと触れ合うことの楽しさを知ってもらいたい。もうあの暗い空間に一人だなんて、絶対にさせてやるものか。


「じゃあ、ネクロ、あーん」


 ケーキを切り分けたナルアが、フォークをこちらに差し出してくる。それを素直に「あーん」と受け取って、口に含む。


「ん、……美味しい。ナルア、これすっごく美味しいよ」

「よかったぁ…。ネクロにそう言ってもらえると、すごく安心するね」


 クリームの甘さとイチゴの酸味が絶妙で、いくらでも食べれそうなケーキだった。そこにナルアの「あーん」が追加されれば、それはもう天国といってもいいんじゃないだろうか?


 そんな幸福な時間は、あっという間に過ぎていってしまう。ケーキの最後の一切れをナルアに食べさせてもらって、それで終了。


「あー、美味しかった。ナルア、本当にありがとう。すごくうれしいよ」

「えへへ、ネクロが喜んでくれてよかった」

「こんな素敵なお祝いをしてもらったんなら、なにかお返しをしなくちゃいけないな。なにがいい?」

「もー、お祝いなんだから、お返しとか別にいいのに……」

「いーのいーの。僕がしたいだけだから。さ、なんでも言ってごらん?」


 ナルアの頭をなでながら、そう言ってみる。初めて会ったときの、あの婚約宣言の時と同じくらい悩みだすナルア。しばらくナルアを眺めていたら、あの時と同じように、いきなり顔を真っ赤に上気させた。


「な、ナルア?大丈夫?」

「う、うん……それでね?お返し、なんだけど……」


 ナルアは恥ずかしいのか、僕の耳元でささやくように、お返しの「お願い」を言った。今度は、それを聞いた僕が赤くなる番だった。


「えっと、僕は構わない、というか、ご褒美以外の何物でもないんだけど……いいの?」

「…………うん」


 ナルアは真っ赤な顔のまま、そっと、顎を上げた。そして、ゆっくりと瞳を閉じる。


 ナルアの睫毛は震えていて、彼女の緊張が、僕にも伝わってきてしまう。心臓が馬鹿みたいにビートを高ぶらせる。


 ゴクリ、唾を飲み込み。意を決してナルアの頬に手を添える。一瞬、ピクリと震えるナルアだが、そのままされるがままの状態になる。ナルアは耳どころか、襟から覗く肌まで真っ赤だ。たぶん、僕も同じだと思う。


 少しづつ、少しづつナルアとの距離を詰めていく。あと、十センチ…………五センチ…………三センチ…………一センチ………………ゼロ。


 くちびるとくちびるが重なる。口の中に入ってくるナルアの吐息は、さっき食べたケーキよりも、甘い。


 そっと触れるだけの、たどたどしいキス。それでも、ナルアとつながっているという感覚は、僕を否応なしに興奮させる。


 今にも千切れそうな理性を必死に押しとどめて、ナルアののくちびるから、自分のくちびるを離す。離れるときにナルアの口から、「あ……」という名残惜しそうな吐息の音が聞こえたが、ボロボロになった理性を総動員して、なんとか我慢。


 ナルアは薄く目を開き、夢を見ているかのような惚けた表情をしていた。それは、いつものかわいさや綺麗さではなくて、確かに色香を感じさせるものだった。


「これでご満足ですか、お嬢様?」


 空気に耐えられなくて、ついそんな軽口をたたいてしまう。僕の軽口でナルアも我に返ったのか、クスリと笑みを浮かべた。



「うん………すっごくよかった」


 そう言って微笑んだナルアを見て、僕は二度目のキスを踏みとどまるのに、かなりの精神力を費やすのであった。



世の中のロリコン様に向けて、この話を送りたい!



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