表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中二病幽霊が、異世界でおこす嵐、その物語です  作者: 原初
冒険者と第一ゲーム
36/80

冒険者登録試験、結果

冒険者登録試験、最終話です。

「あー、えっと、生きてるか?やった私が言うのもなんだが……」

「……お、おう。ぴ、ピンピンしてる……ぜ……」

「それは嘘だとすぐにわかる。とりあえず応急処置だ。ヒール」


 全身に焦げ跡を作り、地面にうつぶせで倒れぴくぴくと痙攣しているのに、右手を上げてサムズアップするギルドマスター。このおっさん元気すぎだろ。


 とりあえず全身にヒールをかけてっと。消費する魔力を増やせば魔法の効果を上昇させることができる。さらに、僕の場合は[中二病]があるから……。


「癒しの光よ、その身に巣くう害悪を払え[治療光ディア]」

「お、おお!?スゲェな。治りやがったぞ」


 こんな風に、ヒールで上位回復魔法の真似事ができる。ホント便利だよな、[中二病]。名前がもっとどうにかならなかったのかな?そこだけなんだよな、不満は。


「お前、その魔法はいったいどうなっていやがるんだ?見たことも聞いたこともないが……」

「まぁ、私の固有スキルだよ。魔法を改造することができる。これがあったから私は魔法の研究に没頭していたのだがな。しかし、まさか[颶風巻ヴォルテックスオブこる灼天メギド煌翠カタストロフィ]が破られるとは思わなかった。威力だけなら私の魔法のなかでも最高峰なのだがな」

「は、それは俺の固有スキルがすごいだけだ。[魔を断つ刃」と言って、斬撃で魔法を打ち消すことができるってものだ。ま、あんだけ物量で押し切られちまうと何もできなくなんだがな」

「ま、この杖に助けられたな。で、私の試験の結果はどうなんだ?」


 そう、それが気になっていた。戦闘中は頭に血が上っていたからあんまり気にしてなかったから、遠慮なくぶっ飛ばしてたけど。この人はギルドマスター。つまり、ここで一番権力のある方なのだ。


 それをぼこぼこにしたからという理由で、冒険者登録はできません、試験は失格!とかなる可能性が無きにしも非ずといいますか…。


 で、でも、向こうから遠慮せずに来いって言ったんだから、僕に非はないよね?そうであると願いたいが…。


「ああ、そうだったな。お前さんの試験の結果だが………さんざん俺をボコったんだから、不合格ってことに………」

「何をふざけたこと言ってるんですか、あなたは!」


 スパコンっ!と書類の束がギルドマスターの頭を一閃する。ギルドマスターに一撃くらわしたのは、二十歳くらいの年齢の女の人。ピシっとした格好をしており、いかにもできる女といった感じだ。


 てか、この人どこから入ってきたんだ?さっきまでいなかったよね……。


「ネクロ、お疲れさま。かっこよかったよ!」

「ありがとうナルア。怪我とかはしてないかい?」

「うん!」

「それはよかった。ところでナルア、あの女の人、いつからここにいたんだ?」

「えっと、ネクロがウロボロスの特殊効果を使い始めたあたりからかな?青い顔して入ってきたから、なんだろうって思ったけど……」


 首をかわいらしく傾げるナルアと一緒に、ギルドマスターと女の人を見る。


「ギルドマスター、まだ仕事が山ほど残っているのに、一体あなたは何をしているんですか?」

「い、いや、期待の新人が来たと受付嬢のアイラちゃんにおしえてもらってな?聞いたら、ランク9の魔物を狩れる魔術師だというじゃないか。それを聞いたら、血が騒いでいてもたってもいられなくなって……」

「それで、試験と称して勝負を仕掛けた挙句、ボロボロにやられ、その腹いせに試験は不合格だなんて戯言をはこうとした、と?」

「ま、まぁ……そういう見方もできなくもない…かな?」

「あ?」

「いえ、その通りでございます。すみませんでした」


 ギルドマスターが深々と女の人に土下座した。一目で力関係がわかる光景だ。そしてすでにギルドマスターの威厳とかそういうものは皆無になってしまっている。情けなさすぎるよ、ギルマス……。


 ギルドマスターに土下座の姿勢でいることを命じた女の人は、くるりとこちらを見ると、申し訳なさそうな声音で話しかけてきた。


「うちの馬鹿ギルマスが本当に失礼しました。私はこのギルドの副ギルドマスター兼馬鹿の秘書を務めているメリアと申します」

「いや、こちらも一緒になって暴れていたんだ。あまり気にしないでくれ。あっと、自己紹介がまだだったか、魔術師のネクロだ。こちらは婚約者のナルア。よろしく頼む」

「ナルアです。よろしくお願いします」

「…………」

「ん?どうかしたか?」


 婚約者という言葉を聞いた途端、ピシッと凍ったように停止してしまったメリアさん。なんか小声でぶつぶつ言ってるような……。


「こ、こんな若い子たちがすでに婚約!?最近の子は進んでるって聞くけど、まさか婚約なんて……!ああもうっ、じゃあなんで私にはカレシができないのよぉおおおおおお!!!どこかに都合よくフリーなイケメンはいないの!?」

「えっと……め、メリアさん?」

「はっ!……コホン、なんでしょうか、ネクロ様?」

「「(なかったことにした!!)」」


 なんか、かわいそうな人だな……。行き遅れなのに、あんな馬鹿ギルマスの世話をしないといけないなんて……。ナルアと二人で、つい憐みの視線を送ってしまう。


「えっと、私の試験の結果は、結局どうなったんだ?そこの馬鹿は不合格とか言っていたが……」

「あ、そこの馬鹿の言葉は無視してくださって結構です。九割九分九厘は戯言ですので」

「お前らひどくないか!?」

「おじさん、ちょっと黙って?ネクロに負けて悔しいのはわかるけど、みっともないよ?」

「グハァッ!」


 あ、ナルアの一言でかなりダメージ受けてる。純粋な一言って効くんだよね。メリアさんが「ざまぁみろ」という顔をしてギルドマスターを見ていた。同感である。


「ネクロ様は、このギルドで一番の実力者である、そこの馬鹿に勝利なさったわけですから、当然、冒険者登録試験は合格です。それだけでなく、通常、Fランクからスタートのところを、そこの馬鹿と私の権限で、Cランクからスタートにさせてもらいます。これは、有能な冒険者を低ランクでくすぶらせないための措置なのですが、最初からCランクは、かの『暴威の剣王』と『叡智の賢者』以来の快挙です」


 お、やった!Cランクからってことは、試験を最高成績で合格したのと同じことじゃないか!リンネとノルンに続いて三人目ってことかな?


「わぁ、おめでとうネクロ!今日はお祝いだね」

「ありがとうナルア。君が応援してくれたおかげだよ」

「ネクロ……」

「ナルア……」

「コホン」


 咳払いの音に、急いでナルアと体を離す。音のしたほうを見ると、顔から表情が抜け落ちているメリアさんの姿が。


「…………それでは、こちらの冒険者カードにネクロ様の髪の毛を一本おいてください。それで冒険者の登録は完了です」

「あ、ハイ」


 ものっすごい平坦な声でそう言って、懐から何も書かれていない金属製のカードを取り出すメリアさん。その恐ろし気な雰囲気を前に逆らうことなどできるはずもなく。迅速に言われた通りの行動をとる。


 髪を一本抜き、メリアさんの持つカードの上にのせる。すると、カードが発光し、髪の毛が中に吸い込まれていく。僕の髪の毛を吸い込んだカードには、何やら文字が浮かび上がり、そして、色が黒く染まった。


「その黒色は、Cランク冒険者の証です。冒険者カードは身分証も兼ねていますので、なくされると再発行に金貨1枚かかります。お気を付けください」

「わかりました」

「わぁ、ネクロ、見せて見せて!」

「ん?ああ、いいよ。ほら」

「わぁ……」


 目を輝かせて僕の冒険者カードを眺めるナルア。そして僕を見上げて「すごいね!」と満面の笑みを浮かべた。


 ちょっと照れ臭かったので、ナルアの頭をなでることで照れをごまかす。くそぉ、やっぱり僕の嫁は最高だぜ!


「……………………」


 ゾクリ、背筋に突然寒気が………。なんだろうと振り返ると、能面のような表情をしたメリアさんが、無機質なまなざしでジッとこちらを見ており……。


「「す、すみません!」」

「いえ、いえ……。フフフフフフフ、………………いいなぁ」


 メリアさんの不憫さがとても痛かった。この人の前でナルアといちゃつくのはよそう……。そう、心に決めたのだった。

メリアさんは二十五歳。この世界の平均的な結婚年齢は遅くとも二十歳なので……。あっ(察し)



感想や評価、ブックマークをくださるととてもありがたいのです!ですです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ