テンプレテンプレ、お疲れーっス(笑)
そう、冒険者ギルドと言ったらあれですよ、あれ。
ナルアとのデートを楽しんだ次の日。僕は冒険者ギルドに朝早くから向かっていた。ナルアは今日も一緒にいる。頻度としては、一週間に四日くらいかな?早く毎日一緒にいたいものである。
ナルアの恰好は、昨日と同じもの。気に入ったみたいである。かく言う僕も学生服にパーカーというスタイルだ。
冒険者ギルドにいく理由は、言わずもがな冒険者登録の試験を受けるためである。朝いちばんにしたのは、そのほうが混んでないだろうなと思ったからだ。
……って、思ったんだけど……。
「すごい人だねー」
「……だねー」
ナルアと手をつなぎ、冒険者ギルドの入口で立ちすくむ。冒険者ギルドの中は、冒険者たちであふれかえっていた。いつかの魔物の群れを思い出す光景である。
それにしても、なんでこんなに人が多いんだろう?冒険者ってこんなに朝早くから依頼を受けに来るものだったっけ?リンネに聞いたのとは違うなぁ……。
「あ、そうだ。ナルア。ここでは僕、ちょっといつもとは違う話し方をするから。聞いても笑わないでよ?」
「そうなの?いつもと違うネクロかぁ……。楽しみ♪」
そういって顔をほころばせるナルアにほっこりしつつ、冒険者たちの合間を縫って進む。人の波にのまれそうなこの状況。前世のコミケを思い出すな。
っと、抜けたか。ここに来るだけで少し疲れが……。ナルアも少し疲れた様子だ。
「あ、昨日の……ネクロさんでしたっけ?」
と、カウンターから一人の受付嬢が声をかけてきた。えっと、たしかアイラさんっていったような。
「ああ、そうだ。アイラ…で、あっていたか?」
「はいっ、覚えていてくださったんですね。あなたの試験の説明と案内をさせてもらうことになりましたので、よろしくお願いします。それでえっと……その子は……」
隣を見ると、ナルアがアイラさんのことをじぃーっとみていた。
「こら、ナルア。失礼だろ。すまんな、私の婚約者が」
「こ、婚約者ぁ!?そ、その年で婚約者って……もしかしてネクロさん、貴族だったりします?」
「いや、そんなことはない。かしこまる必要はないぞ。ナルアも、挨拶しなさい」
「……初めまして、ネクロの婚約者のナルアといいます。わたしの旦那様(予定)を、どうぞよろしくお願いします」
「こ、これはご丁寧に……。アイラ・グラードです。それで、ネクロさん。試験の前に、昨日お預かりしたものなんですけど……。これ、どこで手に入れたんですか?」
「?……おかしなことを聞くな。魔石なのだから、魔物を狩って手に入れたに決まっているだろうが」
「でもこれ、ランク9の魔石ですよ!?」
「そうだが?」
「………ネクロさんって、何者ですか?ランク9の魔物をこんなに狩れるだけの実力があったのに、冒険者ギルドに登録していなかったって……」
「むぅ……ネクロを疑ってるの?」
「あ、いえ、そういうわけじゃ……」
ナルアのじとーッとした目に、慌てたように両手を胸の前で振るうアイラさん。こらこらとナルアの頭をなでて落ち着かせ、僕はアイラさんの疑問に、前もって決めていた設定を話す。
「いや、今までは魔法の研究ばかりにかまけてきたんだが……。知人の紹介で、こうして外の世界に触れてみることにしてな。その第一歩として冒険者になろうと考えたわけだ。その魔石は、魔法の試し打ちで倒した魔物からとったものだ」
「な、なるほど……。そういうことだったんですかぁ…」
アイラさんはどうやら納得してくれたようだ。ま、僕の言葉に信憑性があろうがなかろうが、それを確かめる手段はないわけで……。
「へ、そんな見え見えの嘘ついてんじゃねーぞ、この詐欺師野郎」
と、いきなり背後から、そんな声が聞こえた。振り返ってみると、そこには鎧甲冑すがたの男が。年齢は二十歳くらいだろうか?大剣を背負っているところからして、前衛の剣士だと思う。
だけどこいつ……。弱くないか?いや、比べる対象がノルンなのがいけないのかもしれないけど、足運びとかぐちゃぐちゃだし…。こうして目の前に立って無防備にしていても、まるで恐怖を感じない。
「お前は?」
「ちょっと、イートさん!そうやって他の冒険者にからむのはやめてくださいと、何度も注意してるではありませんか!」
「うるせぇ!受付嬢は黙ってろよ。オレが用があるのは、そこの詐欺師野郎だけだ」
そういって、イートと呼ばれた男は僕のほうに近づいてくる。
「てめぇ、なにがランク9の魔物を狩っただぁ?今から冒険者になろうってやつに、そんなことできるわけないだろうが」
「話を聞いていなかったのか、お前は。それに、証拠だってある」
「はん!それだってどうせ金で買ったもんなんだろ?見栄張るためになぁ!」
「言いがかりはよしてくれ。それと、息が臭いから離れろ」
「な、……てめぇ!オレが『赤竜の咆哮』所属のDランク冒険者、イート・シャクだと知ってそんななめた口きいてんのか!」
「知らん」
ばっさり切り捨ててやったら、絶句しているこの男。たしかイートとか言ったか?僕はこいつを見て……。
すごく感動していた。
これぞまさしく冒険者ギルドで起こるテンプレの代表格。登録の時にからまれるあれである。少し期待していたとはいえ、まさか本当に起こるとは……。
いやはや、いいものを見ましたよ、イートくん。
「くそ!なめやがって……。殺すぞっ!」
「ひぅ……ネクロぉ…怖いよ……」
そういって抱き着いてきて顔を僕の胸にうずめるナルア。怖がっているように見えるけど、これじゃれついてるだけだね。
「……へ、なんだぁ、その女は。ずいぶんときれいじゃねえか。お前のこれか?」
そういって小指を立てるイート。古いぞ、それ。
「そうだ、お前のさっきまでのなめた態度。その女をオレに貸すってんなら許してやっても……」
「いい加減にしなさい、イートさん!それ以上は、冒険者ギルドが黙っていませんよ!」
「うるせぇ!引っ込んでろっていっただろ!」
…………ああ、イート。それを言っちゃうか。そうかそうか。
殺すよ?
「ショックインパクト」
「ほら、さっさとその女をこっちにぶぺぇらぁ!!」
奇声を上げて崩れ落ちるイート。その体は宙で何度か、何かに跳ね返るような動作をして、床に投げ捨てられた。
「ひっ、い、イートさん!?」
アイラさんが息をのむ音が聞こえた。
イートくんは噛ませ犬にすらなれない負け犬さんです。
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