ナルアとデート1
この辺からナルアがヒロインっぽくなるはず……。
はぁ……なんかすっごく緊張したな…。なめられないようにって口調も変えてみたけど、おかしいって思われなかったかなぁ……。
僕は今、オルドという町にいる。そこらかしこに武装した人がいて、なんか物騒な感じだ。
僕がオルドに来たのは、冒険者になるため。下界で活動するのにはっきりとした身分があると便利だとリンネに言われたから……ってのもある。というか、それは建前である。
本当は、僕が冒険者になりたかっただけ。
やっぱり異世界トリップしたら冒険者でしょ!僕の場合、異世界に来てから行った場所が、ダンジョンと神域しかないというおかしい感じだったから、こうして異世界っぽいことをしてると、すごくうれしい。うん。
「あ、ネクロ!どうだった?」
おっと。僕は飛び込んできたナルアを受け止める。ナルアは僕が龍となったことで、結構頻繁に下界に分体を起こることができるようになっている。こうしてナルアと普通に過ごせる日が増えたのは、素直にうれしい。幸せだなぁ…。
「冒険者登録の試験は、明日になるって、とりあえず魔石だけおいてきたよ」
「ふーん、そうなんだ。でも、ネクロなら試験に受かるなんて簡単だよね」
「んー、どうだろう。今の僕は、『魔術師』ネクロだからね。魔法はまだまだ苦手だよ」
そう、今の僕は四種の力を使ったりするのはちょっとお休み。クルイシュラもジャッジメントもリンネに預けてある。魔術師として冒険者になるつもりだ。『冥界回廊』から出たあたりから、リンネから魔法を習っている。
魔法と一言にいっても、その種類は多岐にわたる。黒魔法、白魔法、付与魔法、死霊魔法、時空魔法エトセトラエトセトラ……。僕はその中から、黒魔法と付与魔法、そして死霊魔法を習っている。まあ、基本的にダメージを受けない僕に、白魔法は必要ないって言われたからね。一様、最下位の白魔法である『ヒール』は覚えてるけど。
「ネクロなら大丈夫だよ。頑張ってね?」
「そういわれると、頑張るしかなくなっちゃうなぁ。ま、試験でCランクになれるように頑張るよ」
なんでも、試験で実力を認められると、Cランクから始めることができるらしい。リンネとノルンがそうだったそうで。
聖神アイリスがどんなゲームを仕掛けてくるかわからないけど、それを打開するのはそれほど簡単なことじゃないのは目に見えている。なら、こちらも実力をつければいいのだ。あいつに負けないくらいの実力を。
ま、いきなり隕石を降らすとかそんなことはしないだろうけど。
『あら、それは面白そうですわね……。参考にさせてもらいますわ』
「ッ!!!」
「ど、どうしたの、ネクロ!?」
い、今の……。
「いや……大丈夫、なんでもないよ。気のせいだったみたい」
「ならいいんだけど……。体調が悪かったりしたら、ちゃんと言ってね?わたしが、しっかり看病してあげるから!」
そういって両手を胸の前でぎゅっと握るナルアにほっこりとしつつ、さっきのは幻聴か何かだと自分に言い聞かせる。
そりゃ、見えてるか、神だからなぁ……。でも、普通に話しかけるのはやめてくれませんかね?
『善処しますわ』
返答スンナっ!
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「わぁ、ねぇねぇ、これはなに?」
「おう、嬢ちゃん。それはブラックボアの串焼きだ!うまいぞぉ」
「へぇ、美味しそうだね。買う?」
「うん!」
「わかった。お兄さん、一本いくら?」
「お、あんちゃんわかってるねぇ、一本銅貨三枚だが、二本で銅貨五枚でいいぜ」
「ありがとう、お兄さん。はい」
「毎度ありっ!ひいきにしてくれよ?」
「ありがとね、おにいさん!」
町の屋台で串焼きの肉を買って、ナルアと一緒に食べてみる。これがなかなかおいしかった。これで銅貨三枚は安いなぁ。
ちなみに、この世界のお金は、十進法で増えていく。鉄貨十枚で銅貨一枚。銅貨十枚で銀貨一枚。銀貨十枚で金貨一枚。金貨十枚で白金貨一枚。白金貨十枚でミスリル貨一枚。ミスリル貨十枚でオリハルコン貨一枚。そしてオリハルコン貨十枚で神煌貨一枚らしい。なんか途中から無理矢理感があるような気が……。
日本円に直すと、鉄貨一枚で大体十円くらいだ。あの串焼きは一本三百円。それでこのボリュームに味は安い。肉の一つ一つは大きくてジューシー。たれはスパイスが食欲を刺激し、ガツンとした味をしていながらも、くどい印象はまるでない。ナルアも満足そうにかぶりついている。
「おいしい?」
「うん!」
幸せそうで何よりです。ナルアのかわいい姿に癒されているうちに、串焼きはあっという間になくなってしまった。美味しかったです。
「ナルア」
「なぁに、ネクロ?」
ちょっと、思いついたことがあって、ナルアを呼ぶ。とてとてと寄ってくるナルアが可愛いがそれはいったん置いといて。
「その、さ。冒険者登録の試験が明日ってことだから、よかったら、その……。で、デート、しない?」
「デート……デートッ!」
「うおっ」
ナルアがいきなり抱き着いてくる。おお、なにやらいい香りが……。
「するするっ!絶対する!」
「わかったわかった。そんなに喜んでもらえてうれしいよ。それじゃあ……」
僕は照れくささを感じながらも、ナルアの手をギュッと握る。俗にいう恋人つなぎってやつ。
「この町の探索もかねて、適当に、ぶらつてみよっか」
「うんっ!」
もうその笑顔だけで僕は生きていきそうです……。
都市伝説になりそうですね、アイリス。
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