冒険者の町
三章突入でございます!
カークルス王国の辺境にある町、オルドは、冒険者が集まる街として有名だ。
では、冒険者とは何か。
冒険者は、冒険者ギルドという決まった国に属さない独立組織に加入する者たちのことである。冒険者の主な仕事は、魔物の討伐や、商人の護衛。危険な地域に生えている薬草などの採取。つまりは、戦闘能力が問われる職業なのだ。
当然、冒険者ギルドに加盟するためには、ある程度の戦闘能力が必要で、ギルドに入るには、まず。試験を受けなければいけない。
戦闘能力を問う試験に見事合格できれば、晴れて冒険者になれるというわけだ。
戦闘能力が高いイコールレベルやステータスが高いことでもあるため。冒険者であるというだけで、一目置かれることもある。まぁ、冒険者と一言で言っても、ピンからキリまでいるのだが。
冒険者には、ランクというものが存在する。ランクは下がF。そこからE、D、C、B、Aと上がっていき、最高ランクがSである。その基準は……。
Fランク = 単独でランク1~2の魔物を倒せるもの。
Eランク = 単独でランク3~4の魔物を倒せるもの。
Dランク = 単独でランク5~6の魔物を倒せるもの。
Cランク = 単独でランク7の魔物を倒せるもの。
Bランク = 単独でランク8の魔物を倒せるもの。
Aランク = 単独でランク9の魔物を倒せるもの。
Sランク = 単独でランク10の魔物を倒せるもの。
これが全くそのまま当てはまるわけではないが、冒険者の基準は大体これで判断される。
また、冒険者が上のランクに行くにつれて、貴族などの上流階級からの依頼をこなすことも増えてくるので、上のランクほど、礼節や知識など、戦闘面以外の力も必要になってくる。また、低ランク冒険者にはあまり学のあるものが多くないため、商人などに騙されて奴隷になったりすることも少なくない。
それでも冒険者になりたがるものは多い。この仕事は死と隣り合わせなだけあり、Fランクの依頼一つの報酬でも、確実にその日を過ごせるだけの収入がある。また、討伐した魔物からとれる魔石は、いつでも一定の値段でやり取りされており、結構安定した収入を得ることができるのだ。
そして、魔物との戦闘を繰り返していれば、レベルも上がり、上のランクに行くこともできる。ランクの高い冒険者、特にBランクより上の冒険者は、下手な貴族より権力を持つようになる。
つまり、冒険者とはリスクは大きいが、リターンも大きい。ハイリスク・ハイリターンは職業なのである。
そんな冒険者たちが集まる町が、オルドなのである。カークルス王国の中で、オルドにある冒険者ギルドが一番規模が大きい。
なぜ、オルドには冒険者が集まるのか?
その答えは、ダンジョンである。ダンジョンからは特殊な魔道具が手に入ることがある。照明の魔道具だけでも金貨数枚の価値があり、魔剣やアイテムボックス度に至っては、白金貨で数十枚という価値が付くこともある。魔物が常に湧き出てくるので、魔石や魔物の素材も手に入りやすい。要するに、ダンジョンとは、冒険者にとっての稼ぎばなのだ。
そんなダンジョンが、オルドの近場にはいつつも存在する。
一つは、Eランクダンジョン『子鬼の巣穴』。ゴブリンや、その上位種が出現するダンジョンで、新米の冒険者が最初に挑戦するダンジョンといわれている。
二つ目はCランクダンジョン『狂獣の楽園』。獣型の魔物が出現するダンジョンであり、ここは半人前と一人前との境といわれている。ここを攻略できれば、晴れて一人前の仲間入りである。
三つめはBランクダンジョン『絡繰り仕掛けの塔』。天高く伸びる塔型のダンジョンで、機械系の魔物やゴーレムが大量に出現するのである。
四つ目はAランクダンジョン『竜嶽』。最奥にはランク10以上の魔王が君臨していると伝えられているダンジョン。ここを攻略しようと、何人もの高ランク冒険者たちが挑戦してきたが、全員が帰らぬものとなっている。だが、比較的上層部にも、高価な魔道具が発見されることもあるので、Bランク冒険者たちの稼ぎの場になっている。
そして五つ目は、世界にも五つしかないXランクダンジョン『冥界回廊』である。Xランクダンジョン。それは、挑戦することイコール死であり、人間では攻略不可能といわれてきたダンジョンだった。『冥界回廊』以外には、『試練場』、『常闇に沈む深淵』、『無限なる魔』、『バベル』があり、そのどれもが攻略されることもなく、長い間、畏怖の対象として放置されてきた。
そんなダンジョンが近場にあるオルドには、必然的に冒険者が集まることとなる。この町の存在は、カークルス王国の防衛にも一役買っているため、国の支援も十二分に受けているのだ。
冒険者たちの間では、『楽園』と呼ばれることもあるこの町は今、ある一つのニュースにて、持ちきりだった。
――――最年少Sランク冒険者、『暴威の剣王』、ノルン・ブレイカーと、『叡智の賢者』、リンネ・コードが、『冥界回廊』を攻略した。
前々から、圧倒的な実力と、その目麗しさから注目を浴びていた稀代の天才二人組が、攻略不可能だといわれていたXランクダンジョンを攻略したというのだ。この情報を聞いて興奮しない冒険者はいないだろう。これでまた、もともとすさまじかった二人に人気がさらに上昇することになる。
そんな歴史的快挙ににぎわうオルドの町の冒険者ギルド。朝早い時間だというのに、たくさんの冒険者たちが依頼を手に取り、カウンターに詰め寄っている。皆、ノルンとリンネに触発され、やる気に満ち溢れているのだ。
「あ、はい。その依頼ですね……承りました。では、気を付けて!………ふぅ」
冒険者ギルドに努める受付嬢であるアイラ・グラードは、あまりの忙しさに目を回していた。アイラはここオルドの冒険者ギルドでは一番の新米であり、通常の勤務に加え、様々な雑用を先輩方に押し付けられたりしているのだ。
「うぅ~、連日連日こんなに忙しかったら、体がもちませんよぉ~」
「なに泣き言言ってるのよ。ほら、次の冒険者が来てるわよ……って、あら?」
アイラの先輩であるラノがカウンターに近づいてきたものに目を向けて、首をかしげる。ラノに続いてその人物を見たアイラも同様にである。
その人物は、全身を覆うローブを着ており、フードをかぶっているので顔が見えない。はっきり言って不審者だった。そして、アイラもラノも見たことがないもの……。つまり、このギルドに始めてきた人物ということである。
「あ、えっと……よ、ようこそ、冒険者ギルドオルド支部へ。依頼を発注される方ですか?」
「いや、違う。冒険者登録の試験を受けに来たんだが……と、話している相手に、これでは失礼だったな」
ローブの人物は、そういうと、かぶっていたフードを下ろした。中から出てきたのは、まだ幼さが残る、白髪の少年。その整った容姿に、一瞬目を奪われるアイラ。
「ネクロ、それが私の名だ。よろしく頼む」
「……あ、はい!わ、私はアイラと申します!……それでえっと……冒険者登録でしたっけ?」
「ああ、ここでよかったんだよな?」
「はい、ここで受付となりますが……。試験を受けられるのは、規則によって、明日以降となります。それでもよろしいですか?」
「構わない。ああ、そうだ。これを換金してはくれないか?金は明日でいい。では、明日また来るとしよう」
ネクロ、と名乗った人物は、布の袋をアイラに渡し、そういって冒険者ギルドを出ていった。
「うわぁ……なんか、すごい人だったなぁ……」
ネクロを見送ったアイラは、そういって目を輝かせていたという……。
誰だこいつと思った方。大丈夫、作者もそう思っていますから。次話からは普通のネクロに戻ります。




