閑話 ナルアの心情
このお話は、ご覧のナルアの提供でお送りします。
みんなこんにちわ!邪神でありネクロのお嫁さん(予定)のナルアだよ。
今わたしは、ネクロとパーティーを組んでいるどろぼうね……、リンネとノルンと一緒に、リンネが所有するログハウスの中にいる。
ここにいる目的は、二人の気持ちを聞くこと。わたしの旦那様(予定)はかっこよくて優しくて魅力的で……。少し子供っぽいところとかは可愛くって、とにかく最高です!
なので、モテます。すごくモテます。
ネクロのやさしさは、ネクロが味方だと思っている人には、無条件で注がれてしまうもの。ネクロの懐に入ったら最後。そのやさしさにからめとられるようにして、ネクロに夢中になっちゃう。わたしがそうなったんだもの、間違いはないはず。
ネクロを初めて見つけたのは、世界と世界の境界に、揺らぎが生じたのを見つけた時だった。たまに異世界から漂流物が流れてくることがあったから、今回もそれかな?って、思って下界をのぞいてみたら……。なんと、人間と魔物の中間のような性質を持った魂をもった人がいた。それが、ネクロ。
なんでそんな存在がいるんだろうって思ったら、わたしの妹である聖神アイリスの仕業だった。昔から完璧主義で、嫉妬家だった妹は、お父様が眠りについたあたりから、わたしへの悪意を隠さなくなっていき、ついにわたしを滅ぼそうとしてきた。
アイリスは確かに嫉妬家で、わたしのことを目の敵にしてたけど、すごく努力家でもあった。神の力を扱う訓練だって、兄妹の中で誰よりも頑張っていた。だから、そんなアイリスをゆがめてしまったのは、わたしだと思う。わたしがいたから、アイリスは、あんなことをするように……。世界をおもちゃのように扱って、自分勝手にするなんて、そんなことする娘じゃなかった。わたしは、アイリスに殺されかけたショックよりも、アイリスがそうなってしまったのが、自分のせいだというショックのほうが大きかった。
そんなアイリスによってこの世界に飛ばされたネクロは、アイリスの干渉を受けていたとはいえ、まるで動じることなくこの世界を受け入れていった。
わたしはそんなネクロのことを見て……、その心の強さに、惹かれていくのを感じた。アイリスに襲われたことを認めたくなくて、アイリスを変えてしまった自分を認められなくて、ずっとふさぎ込んでたわたしとは違う。ネクロはどこまでも前に進んでいた。
そんなネクロが進化するときに、わたしが介入できるすきがあったのを見つけて、ネクロを自分の領域に連れてきた。アイリスの干渉は進化したときに完全になくなっていたから、大丈夫だと判断して。
ネクロはわたしの領域に入って来ても、おびえた様子もなく、不思議そうな顔をするだけだった。わたしがいきなり姿を現したときは、驚いてたみたいだけど。
でも、わたしが呼び捨てをしてほしいといったときも、すぐにそうしてくれた。わたしにことをまっすぐに見ていてくれた。……下界では、わたしは最悪な存在という扱いだったから、ずっとそれを見てたから、そんなネクロの些細な行動一つが、とっても嬉しかった。
だから、浮かれてたのかな?ネクロに名前を付けたのは。そうしたら、邪神の眷属になっちゃうことを、つい、忘れてしまっていた。
すぐに後悔した。気持ち悪がられるんじゃないか、怒声を浴びせてくるんじゃないかって、すごく不安になった。
でも、ネクロがとった行動は、わたしが想像していた中の、どれでもなかった。
ポンッとわたしの頭に置かれる手、優しく優しく、まるでガラス細工を扱うかのような繊細な手つきで、なでなでしてくれた。柔らかな笑顔を浮かべながら、わたしの眷属になったことを、「光栄だ」って言ってくれた。
もう少しで、泣いちゃいそうになったのは、わたしだけの秘密。
そのあと、この人にならって思って、アイリスのことを頼んだ。わたしのせいで歪んでしまったアイリスを、わたしが止めたくても止められないから。絶対に信頼できるネクロに頼むことにした。
こ、この時かな?ネクロのことを見ていると、胸が高鳴り始めたのは。ずっとあこがれてた。でも、その憧れは、その奥にある感情を引き出すためのものでしかなかった。
わたしは、ネクロの顔を見ながら、顔が赤くなりそうだったのを、必死で隠していた。
――――この人のことが、好きなんだ。
自然とそのことを自覚できた時のことを、今でも覚えてる。
そのあとは、ネクロと他愛のない話をした。彼の前世の世界のお話。わたしが面白そうだな、興味があるなって思った時を目ざとく見つけて、ネクロはその話を時間をかけて話してくれた。
ネクロのそばにいて、話をして、一緒に笑いあう。そんなことに、すごく幸せを感じた。
…………だからかな?ネクロに「どんな事でもかなえてあげる」って言われた時に、ふと、゛ネクロのお嫁さんになりたい″って、思ったのは。
い、いきなりこんなことを言ったら、引かれちゃうかも!?と思いつつ、一度思い浮かべたそれは、簡単には消えてくれなかった。そして、告げてしまった。ネクロに。
すごく不安で、どうしようもなく怖くなったけど、わたしはネクロから目をそらさなかった。ネクロがどんな反応をしても、きちんと受け止めようって思って。ネクロは、困ったような笑いを浮かべて、それでも、ばっさり切り捨てるようなことはしない。そんな風に、ちょっとずるいことを考えてたら……。
ま、真っ赤になって、「こ、こちらこそ、よろしくお願いしまひゅ……」って、言ったの!噛んでた!すごく慌ててた!
ちょっと理性が危なくなるくらいには可愛かったなぁ…。その時のことを言うと、ネクロはすねたような顔をする。忘れてほしいみたいだけど、あんな幸せな瞬間を忘れるなんてとんでもない!わたしの頭の中に、きちんと保存してあります。
そうして、ネクロと婚約者となったわたしですが、ネクロといつも一緒にいられるわけじゃない。今でこそネクロの進化がかなりのところまで来たから三日に一日くらいは、ずっと一緒にいることができる。
ここはわたしが頑張らなくちゃいけないところ。ネクロが進化するたびに眷属としてのパスが強くなるのは事実だけど、それに甘えてちゃだめ!わたしはわたしで、低コストで運用できる分体を開発しなくちゃいけない。
その研究は、すでに八割がた終わっている。完成したら、ネクロとずっと一緒にいられるようになる。そう考えるだけで、やる気が湧き出てくるよ!
ととっ、そうじゃなくて、今は、リンネとノルンのことだった。
この二人は、『冥界回廊』でネクロが出会った冒険者たち。下界屈指の実力者であり、神の加護の優劣を抜かせば、勇者や魔王にも劣らない。
そして、二人とも美少女。ネクロのそばに可愛い娘が集まるのは、正直不安だった。ネクロがそんなことするわけないってわかってるのに、浮気を疑っちゃったり……。
でも、逆だった。ネクロは無自覚に無意識に、二人のことを落としていた。ノルンは結構早くに自覚してたみたいだけど、リンネはなかなか素直じゃないのか、自覚したのは最近みたいだけど。
ネクロが魅力的なのは、よくわかる。でもでも、ネクロはわたしの旦那様(予定)なんだよ?あんまりべたべたしないで!って、声を大にして言いたい。
でも、二人にきつく当たったりすることはできない。二人とわたしの違いは、ネクロと早くあったかどうか。ネクロが先に二人に出会っていたら、二人はネクロの心をつかんでいたと思う。二人とも、わたしからみても魅力的な女の子なんだし。
……って、せっかく二人と話す機会になったから、そう言ってみたんだ。そしたら……。
「……ナルア、喧嘩売ってる?」
「ネクロ、どう見てもあなたにベタ惚れじゃない。悔しいけど、ネクロの一番は、間違いなくあなたよ」
と、言われてしまった。
「そ、そうかな?……えへへ」
「そういう反応されるとすごくイラつくわね……。それに、ナルアがそのことに気づいていないって言うのが、私には信じられないわよ」
「で、でも、ネクロは自分が仲間だと思った人にはすごく優しいし、とっても頼りになる。それは、リンネもノルンもわかってるよね?なら……」
「確かにネクロは優しいし、ずっと一緒にいたいって思う。でも、ネクロはあなたにだけ、『愛』を向けてる。わたしたちが受けてるのは『親愛』」
「そうね……ネクロの好きは、家族とか友達とか……。それこそ、私がノルンに持ってる『愛』と同じものよ」
二人はそういうけど……。ネクロは、本当にわたしだけを好きなんだろうか?同情で、そういってくれてるだけじゃないかと、ふと、不安になった。
だってわたしは、リンネやノルンみたいに、魅力のある女の子じゃないから。
「そんな不安そうな顔しない。ナルア、それは、ネクロのことを馬鹿にしてる。ネクロはあなたを、同情や哀れみで好きになるような人じゃない」
「そうね。はぁ……私たち、とんでもない人を好きになったみたいね、ノルン」
「うん。こんな強敵がいるなんて、思わなかった」
二人は恨めしそうな顔でそんなことをいう。そういう目線を向けられると、怖いような嬉しいような、恥ずかしいような……。よくわからなくて、湯船に鼻まで浸かった。
私たちがいるのは、ログハウスの中にあるお風呂。このログハウスは内部が空間魔法で拡張されていて、見た目からは想像できないくらいに中は広い。それこそ、三人で足を延ばしてもまだまだ余裕があるくらいに。
ネクロも一緒に入ったらよかったのに……と考えてからすごく恥ずかしくなって、顔が熱くなる。
「……ナルア、今いやらしいこと考えた」
「な、か、考えてないよ!」
「うそ、顔真っ赤」
「~~~~っ!」
……ノルンにからかわれちゃった。むぅ。
ちょっと悔しくなって、ノルンのことをじっと見る。
やっぱり、ノルンは可愛い。小動物を思わせる雰囲気。眠たげなサファイヤの瞳。深蒼のショートカット。体つきは細いけど、貧相な感じはしない。スレンダーってやつだ。
ついでにリンネも見る。……見て、後悔した。
リンネは可愛いというよりも、きれいといったほうがしっくりくる。いつもはツインテールにしている黄金の髪を、今は結い上げており、のぞくうなじが色っぽい。それにリンネはスタイルも抜群。胸は大きいし、ウエストは細いし、腰のあたりのラインは芸術品みたいだし……。
ううーー!二人とも魅力的すぎるよ!同性のわたしからみても反則的!
ネクロも、胸の大きい女の子のほうが好きなのかなぁ……。
「な、なに?私の体をそんなにじっと見て……」
「……ずるい。リンネずるい」
「同感。その胸は反則。ちょっとわけろ」
この時ばかりは、ノルンと心が一つになった。わたしが下を向いても、そこにあるのは丘。決して山ではない。
「ふ、二人とも、目が怖いんだけど……」
「「覚悟ーーーっ!」」
「きゃぁあああああああ!!!」
そのあとは、我をわすれて、ノルンと一緒にリンネの体をいじくりまわった。途中からはリンネも反撃してきて、三人で三つ巴の争いになった。リンネの体をまさぐり、胸を揉んで、その大きさに絶望し。逆にノルンとリンネの二人に体中を触られた。
その後、のぼせ切ったわたしたちは、脱衣所でぐったりとしていた。特に体を触られていたリンネは、隅っこの方で、ちっちゃくなってる。
「ううぅ……もうおよめにいけない……」
「大丈夫、ネクロがもらってくれる」
「駄目だよ!ネクロは私の旦那様(予定)なんだから!」
「それはどうかな?わたしはあきらめない。絶対にネクロを振り向かせて見せる」
「……私も、ナルアがいるからって遠慮したりしないわよ?うかうかしてると、私とノルンでとっちゃうんだから!」
「……ふふふっ、そういってられるのも、今のうちだけだよ!わたしとネクロのラブラブっぷりを見せつけて、あきらめさせてやるんだから!」
……こうしてふたりと触れ合って、わかったこともある。二人は、本当にネクロのことが好きなんだ。わたしのネクロへの想いが負けているなんてさらさら思わないけど、リンネの言う通り、うかうかしてられない。それでも……。
「えへへ……これからよろしくね、ふたりとも♪」
「なによ改まって……でも、そうね。これからよろしく、ナルア」
「ふっ、わたしたちにメロメロになったネクロを見て、歯噛みするがいい」
「ノルン、そんなありえない妄想ばっかりしてると、ネクロに引かれちゃうよ?」
そんな軽口をたたきあいながら、三人で顔を見合わせる。
この二人となら、ネクロを巡って争う『ライバル』にも、一緒にいて楽しくなるような『友達』になれるかもしれない。どこか、そんな予感がした。
だって、ほら……。
わたしもリンネもノルンも、こんなにも楽し気に、笑いあえているのだから……。
女の子の気持ちとかわからん……。こんなんかなぁ(困惑)。
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