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中二病幽霊が、異世界でおこす嵐、その物語です  作者: 原初
ダンジョン攻略と二人の少女
18/80

三日後の変化とやっぱりこうなるリンネ

久しぶりにバトル入ります。

 ノルンとネクロが秘密を共有し、リンネが睡眠薬で爆睡していた日から、三日が立った。


 相変わらず変わらない『冥界回廊』の景色と、大群で襲い掛かってくる英霊をなぎ倒しながら、三人はダンジョンを進んでいた。


 だが、この三日で、いろいろと変化あった。


「そらっ!そらっ!うりゃぁああああ!」


 ネクロは、周りにいる英霊たちに向かって、刀を振るっていた。赤黒い、血を乾かし固めたような刀身を怪しく光らせる刀は、野太刀と呼ばれる刀身が五尺、つまり百五十センチ以上もある長刀だ。


 ネクロの刀術は、ノルンから習ったものである。休憩時間や、こうした戦闘の中でも刀術の修行として当てているのだ。まだまだ粗削りだが、ノルンの教え方が優秀なのと、眠らなくていいネクロが夜どおし訓練をし、ノルンの教えを愚直に吸収し続けたことで、ネクロのステータスには、めでたく[刀術]のスキルが生えていた。


 では、なぜネクロが突然刀を振り回し始めたのか。それは、三日前のある出来事だった。


 その日、いつもより三時間も寝坊したリンネをゆったり待った後、ダンジョンの攻略を再開した三人。寝坊したことを恥じ、顔を赤くしながら腹いせのように魔物に魔法をぶつけるリンネをフォローしつつ、ネクロとノルンも英霊を倒していた。


 と、その英霊のなかに、ノルンの剛剣と、数合とはいえ切り結んだ英霊がいたのだ。その英霊は、着物ににた服装をした英霊で、その英霊が使っていた刀が、彼を倒したあと、ドロップアイテムとして残ったのだ。


 その刀をリンネが鑑定したところ、かなり危険な妖刀型の神遺物アーティファクトだったのだ。妖刀型は、使い手を刀が操り、無差別、無秩序に命を刈り続け、しまいには使い手の命さえ奪うなど、たちが悪いものばかりなのだ。なので、即刻魔法で破壊もしくは封印しようとしたとき……ネクロから、待ったがかかった。ものっすごく目をキラキラさせて妖刀型神遺物アーティファクトを見るネクロに、破壊も封印も言えなくなってしまい、結局、妖刀はネクロが持つことになった。


 最初は、妖刀の悪影響が出るのでは?と警戒していたリンネだが、妖気をまき散らす妖刀を持っても、顔色一つ変えずに、それで素振りを始めたネクロを見て、ネクロのステータスはふつうじゃないのを思い出していた。


 ネクロのカンストした精神値と、進化したことにより新たに手に入れたスキル[浄化]によって、ネクロに妖刀の悪影響は出なかったのだ。


 しかも、妖刀はネクロのことが気に入ったのか、ネクロが妖刀を持っているときには、妖気を抑えるようになったのだ。それは、どうやらネクロが[中二病]で妖刀に名前を付けたことでそうなったらしい。ネクロのことを主と認めたのではないのか、とリンネは推測した。


 そして、刀剣類には無類の才能を持つノルンは、当たり前のように野太刀の使い方を習得していた。それをネクロは習い始めたということだ。


「えっと、刀は叩き付けてはいけない。刃を当ててて、引く。これが基本。相手の攻撃はよけるか、そらすことで防御する。何度も切り付けるような真似はせずに、一撃で急所を切り裂くのが重要、か」


 教わったことを反芻させながら、英霊を倒していく。ネクロの低い筋力では、英霊に傷をつけることはできないはずなのだが、妖刀の性能の高さと[念力]による疑似的な身体強化によって、英霊を屠れている。


 そして、妖刀に名をつけたことにより、ネクロには新たな力が芽生えていた。


「あ、もう二人のほうは殲滅終了っぽいなぁ……。こっちもさっさと終わらせないと」


 ネクロはそういうと、[念力]による身体強化を一時的に増幅させ、周りにいた英霊たちを横薙ぎの一閃で弾き飛ばした。


 そして、英霊の刀身に、魔力と聖光、そして、妖気を注ぎ込む。


「さあ、目覚めろ。【兇鬼繚乱 クルイシュラ】」


 それが、妖刀につけられた名前。名づけによって、ネクロは、[妖気法]というスキルを手に入れている。今のネクロには、魔力、聖光、妖気という三種類の力が渦巻いている。三種の力が絡まりあい、互いを食らいながら高まっていく。魔力の青、聖光の白、妖気の紅。それらが混ざり合ってできた薄紫のオーラがネクロを覆う。そして、三種の力を注がれた妖刀は、ドクンと生きているかのように脈を打ち、これから起こる殺戮劇への歓喜をあらわにした。


「三力一体、[紫鎧]。これで終わらせる」


 瞬間、ネクロの姿が掻き消える。英霊たちは、戦っていた相手が視界から消えてしまったことで、うろたえてしまう。


 そして、そのまま存在を抹消された。ネクロが消えてから幾瞬か後に、いきなり英霊たちの体に無数の切れ込みが生じ、一斉にばらばらになった。英霊たちが崩れ落ちる中、ネクロは、いつの間にか消える前と同じ位置にいた。[紫鎧]は、身体能力を激化し、体にかかる物理的、超上的な法則を無視するという効果を持つ。高性能パワードスーツのようなものなのだ。その代わり、使用後はとてつもない疲労を伴う。


「ふう……」

「ふう、じゃないわよ!」


 リンネが風の砲弾を、ネクロを後ろから襲撃しようとした英霊に放つ。風の砲弾は英霊を吹き飛ばし、その着地点に素早く移動したノルンによって切り捨てられる。


「ネクロ、大丈夫?」

「大丈夫。ありがとうね、ノルン」

「うん、無事でよかった」


 ネクロに近づき、その体をぺたぺたとさわり、怪我がないか確認するノルン。そんなノルンに大丈夫と微笑みかけるネクロ。ノルンもまた、そんなネクロを見て口元に小さく笑みを浮かべた。


 リンネは、そんな二人をじーっといぶかしげに見つめている。


 なにかを決心するかのようにこぶしをぐっと握りしめてノルンとネクロに近づく。そして、何かを確かめるように、疑いをはらんだ声で、ふたりに問いかけた。


「ねぇ、二人とも、ちょといいかしら」

「あ、リンネ。リンネもありがとう、助けてくれて。本当に助かった」


 そういって、リンネに笑みを向けるネクロ。その純粋な笑みにひるみそうになったリンネだが、負けてたまるかとばかりに、気合を入れなおす。


「えっと、あのね?最近、二人がやたらと仲がいいから、どうしてかなって思ったんだけど………具体的には、三日くらい前から」

「ん?どういうこと?」

「わたしとネクロは、それよりも前から仲良し」


 すっとぼけたことをいうネクロとノルン。きょとんとした顔の二人に多少イラっとしつつ、リンネは質問を続ける。


「ま、まあ、そうなんだけどね?なんか、三日前くらいから、私がほったらかされるというか、置いてきぼりにされることが多いなーって思ったのよ」

「そうかな?そんなことないと思うけど……。ノルン、リンネのことほったらかしにしてる?」

「ううん。リンネはわたしの大事な人。置いてけぼりなんかにしない」

「だよね。僕も、初めてできた仲間ってのもあるけど、大切だと思ってるよ。もちろん、ノルンもね」

「う……」


 ドストレートな二人の言葉に、顔をあかくしてうつむいてしまうリンネ。ネクロとノルンは、そんなリンネの様子を、ほほえまし気に見ている。


 そのまま話が流れてしまい、うやむやにされたことにリンネが気づいたのは、その日の夜中だった。

リンネはいじられキャラ。最初はツンデレにしよっかなぁって考えてたはずなんだけどなぁ………………。

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