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中二病幽霊が、異世界でおこす嵐、その物語です  作者: 原初
ダンジョン攻略と二人の少女
16/80

ナルアとお話しと、覚醒

まだバトルにはなりません。バトル回はもう少し後です。

 夜。『冥界回廊』の一角に立てられているコテージの前に、ネクロは座っていた。すでにリンネとノルンは寝ており、ネクロは二人が就寝している間の見張りをしているのだ。アンデットのネクロには、睡眠をとる必要がないため、一晩中でも見張りができるのである。


 先ほど大軍を殲滅したおかげか、魔物もほとんどでてこない。たまに単体で悪魔が出現することもあるが、聖霊人に進化したことで増えたスキル、[浄化]のおかげで、音すら立てずに葬ることができている。このスキルはアンデットや悪魔を、強制的に消滅させるだけでなく、呪われた物の呪いを解いたりすることもできる。


 悪魔を撃退してしまったことで、やることもなく適当に十字架を飛ばして遊んでいたネクロは、ふと、自分のスキルで、いまだに[中二病]で改造していないスキルが結構あることに気が付く。


「ちょうど時間もあるし、ここは気合を入れて頑張ってみますか」

 

 誰に言うのでもなくそうつぶやくと、ネクロはステータスを開き、頭をひねり始めた。


 そうして考えること一時間ほど、時刻は丑三つ時に差し掛かろうとしていた。迷宮の静寂の中に、ネクロのつぶやきだけが響く。


「ふむ………これの名前はやっぱり不可視インビジブルを入れるべきか………いや、絶対アブソリュートも捨てがたいが、もう使用してるからなぁ………」

「じゃあさ、偽装ディスガイズって言うのはどうかな?」

「お、それもかっこいいな。それも取り入れて……………………はい?」


 真面目な顔でどうしようもなく中二なことを考えるネクロ、その後ろから鈴を鳴らしたかのような声が響く。それに反応して、一瞬動きを止めるネクロ。すぐにばっと振り返って後方を確認した。


「えへへ、久しぶり、ネクロ」


 そこに立っていたのは、相変わらずゴシックロリータに身を包んだナルア。頬を桃色に染め、満面の笑みを浮かべていた。


「ど、どうしてナルアがここにいるの?あの空間から出られなかったんじゃ………」

「うん、そうだったよ。でも、ネクロが進化したことで、眷属としてのつながりが強化されて、こうしてネクロのそばに分体を出現させることができるようになったの。エネルギーの消費が激しいから、まだ、ひと月に一度くらいのペースでしかできないけどね」

「そうなんだ……。ナルアとこうして、また話ができるんだな。それに、今の話から推測するに、僕がさらに進化したら、インターバルは短くなるんでしょ?」

「その通りだよ。もし、このまま特異進化を重ねて、ランク十の魔王になれたら、分体の状態なら、ネクロのそばにずっといられるようになると思う」

「そっか……うん、さらにやる気が出てきた。もっともっと頑張るよ。ナルアと一緒にいたいからね」


 ネクロがそういうと、ナルアは顔を朱に染めて、うろたえ始めた。


「そ、そんな風にはっきり言うのは禁止!は、恥ずかしいよ……」


 そんなナルアの様子を見て、クスクスと面白そうに笑うネクロ。そこでナルアがからかわれていることに気付き、頬を膨らましてぽかぽかとネクロの肩をたたいた。


「はははっ、ごめんごめん。ナルアの反応が可愛かったからつい……。と言うか、ナルアが可愛いからかな、からかいたくなるのは」

「うぅ~、ネクロのいじわる。ふんっだ!」


 すねたように顔を背けるナルアだが、口元がニヤついているのを隠しきれていなかった。


 ネクロは顔を背けるナルアの頭を、優しくなでる。愛しむように、愛でるように。ナルアの艶やかな黒髪を、指先でもてあそぶ。


「怒った?」

「………………もっとなでてくれたら、許してあげる」


 うつむきながらそう告げたナルアに苦笑しつつ、ネクロは、ナルアの耳元に顔を近づけ、そっとつぶやいた。


「仰せのままに、お嬢様」


 

 ……………その後、さらに顔を真っ赤に染めたナルアに怒られたネクロに、ナルアを膝枕する罰が追加されたが、どちらにとってもご褒美なのには変わりはないことに、二人は気付いていなかった。



#######################################



 ナルアがエネルギーの限界で帰ったあと、ネクロはまた見張りを続けていた。時計型魔道具で時刻を確認すると、もう少しでリンネとノルンが起きてくる時間だった。


「さ、今日も迷宮攻略を頑張りますかね」


 そう誰にでもなくつぶやくと、ネクロは朝食の準備を始めた。調理用魔道具で卵を焼き、スクランブルエッグを作り、白パンを温める。レタスに似た野菜を千切り、水ですすぐ。それらをさらに盛り付けてテーブルに並べる。流れるような手つきで朝食を作り上げたネクロは満足そうにうなずくと、二人が寝ているログハウスに近づいた。


 ネクロがログハウスに近づくと同時に、ログハウスの扉が開く。中から姿を見せたのは、ところどころ髪がはねている、ノルンだった。


「あ、おはようノルン。珍しいね、ノルンが起こされずに起きてくるなんて」

「うん、ちょっと早く目が覚めた。朝ごはん、作る」

「もうできてるよ。先にやっといた。リンネは、まだ寝てるのかい?」

「うん、ぐっすり」

「そっか」


 ノルンはとてとてとネクロに近づくと、その顔をじいっと見つめた。


「ど、どうかした?なにか僕の顔についてるとか………」

「ううん、そうじゃない。……ねぇ、ネクロ」


 いつも以上に無表情な目に見つめられながら、ネクロは落ち着かない気持ちになる。気恥ずかしさから顔をそらすネクロに、ノルンはそっと口を開くと、



「あの女の子、誰?」




 そう、つぶやいた。



「…………え」


 慌ててノルンの方に向き直るネクロ。再度みたノルンの瞳からは。


「ねぇ、誰?」



 ハイライトが消えていた。


 

 

しました、覚醒。



ジト目少女→ヤンデレ

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