迷宮を攻略しよう!(二回目)
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「うっわ、なんかいかにもお化けとか出てきそうなところだな………」
僕は今、とあるダンジョンの第一層にいた。薄暗い神殿のような雰囲気の場所。左右の壁には、悪魔やら魔物やらの彫刻が彫られており、道を進むものに威圧感を与えている。神殿といっても、悪神の類が祭られていそうな雰囲気である。
ここは、数あるダンジョンの中でも、最高難易度のXランクに相当するダンジョン、『冥界回廊』である。
『冥界回廊』は、かなり特殊なダンジョンだ。
まず、階層が一つしかない。要するに、第一層が始まりであり、終わりなのだ。
そして、ダンジョンの典型の一つの迷路やらトラップ、そういったものもない。あるのは、途方もなく長く、そして広い、一本の通路だけ。
ここまで聞くと、ものすごく簡単なダンジョンのようにも聞こえる。現に、そう話を聞いた者が、何人もこのダンジョンに挑んだらしい。
しかし、誰一人として帰ってきたものはいなかった。
このダンジョンの異常性は、二つ。
一つ目は、このダンジョンでは、引き返すという行為ができないこと。一度ここに足を踏み入れれば、後戻りはできない。しかし、この特性は上位のダンジョンではまれにみられるものである。しかし、そこに『冥界回廊』の広大さが合わされば、それだけで脅威度は爆発的に上がる。
食料、薬品、武器など。そういった消耗品の補給のないまま、無限に等しい通路を行かなければいけない。そして、罠などはないが、魔物は普通に出てくる。そんなものを倒しながら、何日も何日もダンジョンを進むのは、実質不可能である。時空魔法を付与したアイテムバッグなどがあれば、この問題は解決するかもしれないが、現代の技術でそんなものをつくるのは、無理なんだそうだ。このダンジョンでの死亡原因のうち、魔物との交戦での戦死と同じくらい多いのが、餓死や食料を巡って起こる仲間割れらしい。
二つ目は、出てくる魔物。
『冥府回廊』、その名の通り、このダンジョンに出てくるのは、悪魔系やアンデッド系の魔物ばかりだ。序盤の通路で出てくるのは、悪魔系の魔物、下級悪魔兵や中級悪魔騎士など。悪魔系の魔物は一番弱くてもランク5とかなり強力だ。そんな相手が隊列を組みながら襲い掛かってくるのだ。よほどの実力者でもつらいだろう。
しかし、そんな悪魔系魔物も、このダンジョンでは前哨戦の役者でしかないのだ。本来の役者は、アンデッド系の魔物、ランク7以上の、英霊たちだ。
英霊は、過去に死んだ英雄や魔王が、アンデッドになったものである。中盤以降は、この英霊がわんさか出てくるのである。しかも英霊は生前の能力をそのまま受け継いでいるので、英霊一体一体、違う特性をもっているという対処がとてもめんどくさい魔物なのである。
後半になると、ランク10の英霊なども出てくるので、難易度はさらに跳ね上がる。
ゆえに、いまだこのダンジョンを攻略したものはいないのである。
「と、いっても僕には関係ないことばかりなんだよねぇ」
そう、このダンジョン、異様に僕と相性がいいのだ。
まず、初めの広大さと物資の問題。そもそも僕は霊人というアンデット系の魔物の一種であり、ものを食べるという行為をしなくてもいいのだ。種族スキルである[狭間の存在]のおかげで、生きていながら死んでいるというよくわからない状態になっているため、生命維持活動をしなくてもいい。
そして、魔物たち。これは悪魔系とアンデット系。実は、僕が使っていた十字架。あれがこういった負の存在というべき存在に対して、ものすごい効果を発揮するものだったのだ。
十字架の名前は、【神聖断罪 バニッシュメント】。いや、特に名前とかなかったんだけど、つけてみたら[中二病]が発動して強化されたので、そのままにしている。
この【神聖断罪 バニッシュメント】は、魔力を流し込むことで、邪なるものを滅ぼす聖光をまとうことができる。そして、強化されたことにより、僕自身も聖光を扱うことができるようになった。スキル[聖光技]という項目がステイタスに生えていた。
つまるところ、僕は時間さえかければ、このダンジョンの攻略が可能なのである。
……と、いうのが、ここに来る前にナルアと話していたことだ。ここには、ナルアに転移させてもらった。ずっとあの空間で過ごしていたナルアの唯一の趣味が、下界で起こることののぞき見だったらしい。だから、ナルアは下界の情報に、かなり詳しかった。そこから、僕の特異進化に最も適しているダンジョンを教えてもらって、そこに飛ばしてもらったというわけだ。
……本当は、あんまりナルアを一人にしたくないけど、下界にいてもナルアと会う方法が確立できたので、そこは我慢することにしよう。
さて、ナルアのことを張り巡らせていた頭を、名残惜しいが切り替える。
僕の前に立ちふさがるは、無数の悪魔の軍団。邪悪さがあふれんばかりに場を支配していく。
このダンジョンにきてから、初のエンカウント。僕は魔力をたぎらせ、戦闘姿勢に入る。
さあ、ゲームを始めようか。
ゲーム名は、――――――ダンジョンアタックだ。
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