四話 愚かな権力者の末路
最初に連れて来られたのはどこかの会議室だった。
新龍寺さんが先頭に立って中に入るとそこには理事長と行事の時に見た事がある役員の人達でした。
「だ、誰だ!!」
「初めまして理事長さん。獅子若愛花の実の父親、閑罪会新龍寺組組長新龍寺竜鬼です」
「か、閑罪会!? ヤクザ!!」
何時もの偉そうな顔とは思えない程、怯え一色だ。他の人もざわざわとしている。
「な、何故ここに……」
「決まっているでしょ。可愛い娘がいじめられて自殺に追い込まれた上、ソレを隠そうとしたのだから」
「なっ! 自殺!?」
「理事長どう言う事だ!! アンタさっき事故だっていったじゃあないか!!」
お偉いさんは皆一様に騒ぎ始めた。やっぱりもみ消そうとしたんだ。
すると、閉められていた筈のドアが開いた。
開いた先には教師達が――恐らくあの学校に所属している先生全員がいた。
保健室の先生も厳しい体育の先生もどこか嫌みたらしい英語の先生も。皆来ていた。
「新龍寺さんの言うとおりです!!」
「我が学校で一人の少女が酷いイジメを受け、自殺しました!!」
「私達は何度も止めさせようとし、指導をしました! それでも無理ならば謹慎、最悪退学をさせて事の重大さを分からせたかったのですがっ」
「それを理事長によって妨害されました……!」
保健室の先生がそこで泣き崩れた。
「っ獅子若さんの、飛び降りた獅子若さんの、手当てをしようと服を脱がしたら、あ、痣や傷跡、しかも煙草を押しつけられたような跡がっ!!………………酷過ぎる!!!!」
「ウソ……!!」
煙草を押しつけられたの!? どうして、どうして!!
学年主任の先生が真っ正面から理事長を睨みつけた。理事長はその形相に怯む。
「獅子若は私の目から見ても、人に慕われている真面目で優しい子でした。……理事長。獅子若は、あの子が一体アンタの甥っ子達に何をしたって言うんですか!!??」
先生の叫びは部屋いっぱいに響いた。それを答える人間は誰もいなかった。
「理事長。もうすぐアンタは逮捕されます」
「な、何を言っている!!」
新龍寺さんの突然の言葉に理事長は叫んだ。
「どう言う事かね? 何で彼は逮捕されるんだ?」
役員の一人が冷静に聞く。それを新龍寺さんは答えた。
「この人はね、見た目が良い奨学生を脅して性的関係を無理やり結んでいたんですよ。男も女も関係なしにね」
「なっ!?」
「どう言う事かね理事長!!」
「本当かね!?」
「で、出たらめです!! これはこの男の狂言で」
「出たらめではありませんよ理事長」
次に入ってきたのは教頭先生でした。
「校長が全て話してくれましたよ。理事長。アンタ校長を脅していた様ですね。『生徒を斡旋しなければ入院中の校長の娘の入院費を支払えない様にする』ってね。……どこまで腐っているんだアンタは」
最後の言葉は怒りを押し殺した声で告げる教頭。……そう言えば同じクラスの奨学生の子が、最近思いつめた表情をしていたと思っていたけど、まさか理事長が原因だなんて!!
体育の先生が思わず殴ろうとしたのを新龍寺さんが止めた。
「止めてください先生。こんな奴の為に先生が警察の厄介になる必要はない」
「そうですよ。そこの愚図野郎の言うとおりだ」
今度は制服を着た警官を引き連れてきた一人の恐い顔の刑事さんが来た。
「理事長はアンタだね? 校長が自首しました。詳しいお話をお聞きしたいのでご同行頂けますか」
丁寧に言っているが、理事長の左右の腕を掴み連れ去られる宇宙人みたいに連れて行かれる。
「ま、待ってくれ!! 何かの間違いだ!!」
そう叫ぶ無様な姿を最後に、私は理事長の姿を二度と見る事がなかった。
因みにこの刑事さんと竜鬼は知り合いです。
この刑事さんは不良刑事さんで、情報を売る代わり此方の欲しい情報を貰うギブアンドテイクな関係。勿論この人も愛花の事を知っている。
理事長の所業に一番ブチ切れているのはこの人。