一話 壊れた切っ掛け
私はどうしようもない卑怯者です。
獅子若先輩は綺麗な人でした。
色素の薄い金色の長い髪をお団子に一つ結び、光の角度で紫に見える瞳。優しそうな顔立ちは獅子若先輩の人柄を良く表していたと思います。ただ一つ、目付きが少しきつめなのが気になるのですか、特に問題はありませんでした。
獅子若先輩は同じ図書委員会だったので親しくなりました。そこから獅子若先輩のお家の事情を少し話して貰いました。
獅子若先輩は幼い頃お母さんを亡くし、お父さんのお仕事の事情でお母さんの姉、叔母夫婦に養子縁組になった事。お父さんとは直接会うことあまりないが、手紙などで交流が度々あった事。そして獅子若先輩が父親の事を大好きな事を。
「つい最近までお父さんと結婚したいと思っていたんだよねー。友達にファザコン過ぎて呆れられているわ」
「今時珍しいですね。この年までお父様を尊敬をしているなんて」
「うーん。一緒に暮らしていないからかな? お父さんの仕事で中々会えないから」
「お父様のご職業は海外出張が多いのです?」
「う~ん……」
その時、獅子若先輩は苦笑いをしてはぐらかされました。この時は少し気になりましたが、それは直ぐに忘れました。
獅子若先輩には婚約者がいました。
その方は私か通っていた学校の生徒会長でした。カリスマがあって見目もよろしい方でしたが、言動の一つ一つにどこか傲慢さが見え隠れしていて私は好きではありませんでした。あんな傍若無人な人が将来のお婿さんなんて獅子若先輩が可哀想だと思った。
でも、会長も獅子若先輩のサポートのお陰で少しずつ落ち着いて来たと思います。他の性格に難があった生徒会役員達も性格が矯正しつつあったと私の目にはそう映りました。
それが全部だめになったのはあの女達のせいです。
私がその事を知ったのは放課後の校舎裏であの女達が話しているのを偶然聞いたのです。
「私は絶対にゲンサクのアクヤクレイジョウみたいな展開になりたくないわ!!」
「私もザマァヒロインみたいになりたくない!」
と、何だか妙な話をしていたが、その話を最後まで聞きませんでした。入学当初から二人の変な行動は有名でしたから。
その日から生徒会の皆さんが可笑しくなりました。