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大・出・張!  作者: ひんべぇ
第六章:加護励起
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私達は貝を食べたい

続きです、よろしくお願い致します。

「えっと……お待たせして申し訳ありません」


 ――『賭博士』のギルド職員がギルドに来ているかどうか、確認しに行ったギルド職員が戸惑いを浮かべて戻って来た。


「いえ、それでどうでしたか?」


「それが……まだ帰っていないみたいでして……」


 ギルド職員は「申し訳ありません」と頭を下げる。……確か、昨日の夜に依頼完了だったはず。


「ミッチー……どう思う?」


「――不味いかもしれないっスね……」


 やっぱりか……高報酬の依頼を受けたらしいからな。もしかしたら、何かミスって……最悪……。


「旦那さん……どないしはりますか?」


 ――これ以上、ここで足止め食う訳にもいかないしな……。


「良しっ! 取り敢えず、その人がどんな依頼を受けたのか確認してみるか」


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「――こちらがその依頼になります」


「どれどれ――」


 悠莉が依頼書を覗き込み、次の瞬間――顔を輝かす。


「おじさん! これ、救助に行った方が良いじゃないかな!」


 チラリと依頼書の内容を見る――。


「悠莉……お前、『真珠』目当てか……」


「うっ……」


 依頼書には『魔獣から採れる宝石の収集』と書かれてあった、詳細を見てみると、どうやら貝型の魔獣から採れる宝石とあったから、恐らく『真珠』の事だろう……。


「あ、あの……椎野さん、私も救助に一票、です」


「そうどすなぁ、こら……直ぐにでも助けに行かへんと!」


「おやっさん、貝をバターで一杯……良くないッスか?」


「貝……」


 うわ……愛里、ハオカはまだしも……ミッチーともも缶まで。しかし、ミッチーの意見は一考の価値があるかも知れん……。


「良し……行くか!」


「「「やった!」」」


 俺の答えに反応し、悠莉、愛里、ハオカがはしゃぎ、ミッチーが静かにガッツポーズをする――お前ら、せめてフリだけでも、ギルド職員の心配しろよ……人の事は言えないけどさ。


 ギルド職員に場所を説明して貰い、その辺の店で準備を整えて、衛府博士に羽衣ちゃんとタテを預ける。ピトちゃんはどうしようかと迷っていたが――。


「ピトちゃんですか? そうですね……私とペタちゃん含めた三人で連携を取れる様になりたいので、連れて行っても良いですか?」


 と言う、愛里の言葉により連れていくことになった。


「ところでミッチー……バターも良いけど、塩も良いぞ?」


「うっす! 了解ッス!」


 折角だから、俺の好みも入れておこう。


「じゃあ、行ってきます!」


「おじちゃん、おみやげね!」


 羽衣ちゃんに「任せろ!」と答え、俺達は『イルマニ』から街道沿いに西へ進んだ森の中にある洞窟に向けて出発した。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 森に入ると俺達は地図に従い、川を目指す。


「ピトちゃん、ペタちゃん、上から様子見て来てくれる?」


「ピュイッ」


「分かりましたわ! 愛里姉様!」


 愛里の指示でピトちゃんとペタリューダが上から様子を見て、俺達に進路を指示する。


 ――暫く二人の指示に従って森の中を進むと、川に突き当たった。


「えっと、この川の上流だな……」


「――あ、おじさん! あったよ!」


 ――悠莉がピョイピョイと川沿いを跳ね回る後を追い掛ける事一時間……やっと着いた。


 悠莉が指し示す先には崖があり、そこから流れる水が滝となっていた。


「ゆうり、ここ、ゴールか?」


「ん、ああ、もも、違うのよ。ほら、滝の裏側に穴が見えるでしょ? そこから、中に入って行くの」


「はあ、はあ、はあ……皆、ちょっと休憩しよう」


 ――洞窟突入前に少しでも体力回復しないと。


「ほな、お茶にしはりますか?」


「そうですね」


 ハオカと愛里が手際よく地面にシートを敷き食器の準備をする。そして、ミッチーが火の準備をする。


「エサ王、これ、食べよ?」


 どうやら、もも缶がピトちゃんとペタリューダを連れて、一狩りしてきたらしく、木の実を俺に差し出して来てくれた。


「ん、ありがとな」


「お茶請けが無かったから丁度良かったですね」


「もも、ありがとね?」


 愛里と悠莉に頭を撫でられ、もも缶は猫の様に目を細め、頭を左右に揺らされている。


 ――やっぱり、今までどっかで罪悪感みたいなモノがあったのか? 秘密を告白してからのもも缶は今までよりも皆に寄り添って、感情が分かり易くなった気がする……。


 その後、小一時間の休憩を終えると、俺達は濡れない様に『塗り壁』を傘代わりにしつつ、滝裏の洞窟に突入していった。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 洞窟内部はどこかから薄っすらと差し込む光のお蔭で、多少は明るかったが、それでも奥の方は見えない。


「さて、じゃあ先の様子を探ろうか?」


 俺はギルドカードを二枚一組にして鏡を作り上げる。それを分裂させながら所々に配置していく。


「へぇ……おじさん、あの時、こうやってたんだ……」


 鏡に薄っすらと映り込む、洞窟内部の様子を覗き込みながら悠莉が呟く。『あの時』――ジーウの森で大蜘蛛に捕まった時か。


「見辛いけど、まあ、役には立つだろ? さて……ハオカ、紙と鉛筆出してくれ」


「はいな、旦那さん」


 ハオカから紙と鉛筆を受け取り、俺はその紙に洞窟内部のマッピングを行う。


「オッケー、所々枝分かれしているみたいだけど、人影が映った場所は此処だな……」


 書き上げた地図に印をつける。ついでに所々の魔獣がいるっぽい所にも印をつける。


「――昨日、おやっさんに付いて来て貰えば良かったッスね……」


「そうですね……」


 ミッチーと愛里が遠い目をして呟いている……そうか、昨日の依頼の事か、思ったより大変だったらしい。


 何にしても、道順と魔獣のたまり場が分かっている以上、奥まで進むことはそう難しくもなかった。


 ――但し……。


「おじさん……どうするの?」


「どうするかな……」


 目標地点の広間手前で隠れて様子を伺っていると、悠莉がウンザリといった表情を浮かべていた。


 ――何と言うか、広間の中央に岩があるのだが、救出対象はその岩の上に座り込んでいた。そして、その岩を囲む大量の貝型の魔獣……。


「――だぁれかぁ……助けてぇ!」


 良かった、死んではいないみたいだし元気もそこそこありそうだ……これなら、少し考える時間もありそうだ。


 俺は今いるメンバーを確認する。群れ相手だったら、やっぱりハオカとのフォーメーションが良いかな? しかし、こんな時はやっぱり、サッチーがいればと考えてしまって、少し寂しくなる……。


「旦那さん……?」


「おじさん?」


「椎野さん……」


 ――もしかしたら、顔に出ていたのかもしれない。ハオカ、悠莉、愛里が心配そうに俺の顔を覗き込んでいる。いかん、『ポーカーフェイス』発動っと……。


「悪い、ボーっとしてた。ハオカ、フォーメーション行くぞ? 他の皆は討ち漏らしの処理よろしく、『真珠』と『身』は消さない様に気を付けて」


 俺はそのまま、皆が配置に付くのを待つ……。


「――良し! ハオカ、行くぞ!」


「はいな!」


 俺は勢いよく広間に飛び出す。すると、貝達が俺に気付き、一斉に襲い掛かって来た。


「どうも、私、薬屋椎野と申します――」


 ――すっかりと慣れた動作で『名刺交換』を発動させる。


「「「「カッチカチ!」」」」


 貝達が動きを止めた所を見計らって、ハオカが俺の前に飛び出し、腰のバチを引き抜くとそのまま大気に叩き付ける――。


「『大太鼓』!」


 ハオカの朱雷があらかじめ展開していたギルドカードにぶつかり、反射し、貝達を包み込む。


「「「「カカッチ――」」」」


 食欲をそそる匂いが広間に充満する。


 ――グゥゥゥゥゥゥッ……。


 その場の全員のお腹が鳴る。ああ、これ酒持って来て正解だわ……。


「――っ! ミッチー!」


 俺とハオカの『雷檻』から逃れた貝達を悠莉やミッチー達が蹴散らしている最中だが、俺はもう我慢が出来ずミッチーに合図を送る。


「うっす!」


 みっちーは、背中のリュックから酒瓶とバターを包んだ袋、そして金網を取り出し、準備を始める。そして、俺は岩の上に向かって声を掛ける。


「大丈夫ですか?」


「あ、す、すいません、助かりました」


 恐らく岩の上に避難してから何も食べてなかったのだろう……。


 お腹をギュウギュウと鳴らしながら、その人影――恐らく、救助目標のギルド職員は俺に向かって何度も何度も頭を下げていた。


「っと言うか……」


 ――どこかで見た気がすると思ったら……コイツ、『ヤラーレ』のギルドにいた『天啓』係のやる気なし職員じゃないか?


「――っ」


 どうやら向こうも気付いたみたいだ……俺の顔を見ると、気まずそうに顔を逸らしている。


「――取り敢えず……食べながらで良いんで話しましょうか?」


 焼けた貝の魔獣をミッチーに持って来て貰い、差し出す。


「す、すいません……」


 こうして、俺達は迷子のギルド職員――パパディさんと言うらしい――を無事保護する事に成功したのだった。

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