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大・出・張!  作者: ひんべぇ
第六章:加護励起
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拳の宣誓(コンフェッション)

続きです、よろしくお願い致します。

 ――ダリーが妊娠した。


 それをサッチーから聞いた俺達の行動は素早かったと思う。お蔭で今、俺達はテイラからの報酬の話を後回しにして、ダリーの故郷へと向かっている。


「――と言う訳で、ちょっと進捗遅れで宜しく」


 当初の予定では、テイラからの報酬を貰い、そのまま依頼をこなしながら『賭博士』と『ウズウィンド』への渡航許可が得られるまで待つつもりだった。その予定が崩れるという事を後輩に連絡中だ。


『まあ……仕方ないですね。社長にはボクから伝えておきますから、安心して下さい』


「悪いな」


『いえ、気にしないで下さい。それと……そちらと地球の接近がまた始まりました……』


「それって……あれ? 前回より間隔が短くないか?」


 確か、前回は最初の接近から三、四か月くらいかかっていた気がする――。


『まあ、前回は気付くのが遅かっただけで、今回は常時監視していたから気づいたというのも、ありますけどね? ただ、今回は荷物のやり取りだけにしようと思っています」


 まあ、少なくとも栗井博士を捕まえるまでは、人の行き来は難しいだろうな……。


 ――そうして、俺は後輩との通話を終了させる。


 テイラ首都を出発し、既に半日……。ナーケさん達の協力のお蔭で、かなり順調に進んでいる。


「――おやっさん、見えてきたッス」


 御者台のミッチーから声がかかる、窓から外を見るとナキワオと同じ位の規模の街が見える。


「うう……あれが、ダリーちゃんの故郷か……」


 何だかんだで、初の親御さんへの挨拶……サッチーの表情から緊張の色が見える。


「気合入れろよ? この日の為にずっと訓練してただろ?」


 ルセクからずっと、サッチーには礼儀作法を叩き込んできた。『名刺交換』を覚えるまでには至らなかったが、問題は無いだろう。


「そうなんだけどよぉ……その、な?」


 ダリーの話によると、この世界で妊娠と結婚報告の順番を気にする人はあんまりいないとの事だが、それでもサッチーは後ろめたい様で、落ち着かずウロウロしている。


「ねえねえ、ダリねーちゃん、あかちゃんまだ?」


 ――ダリーの妊娠を知ってから羽衣ちゃんは、ダリーにくっついている。


 ダリーはその様子をサッチーの携帯で撮りつつ「まだですよ」と微笑んでいる……。


 そして、馬車はダリーの故郷『シッキィ』に到着した。


「さて、と……サッチー、まずはお前とダリーで行って来い……俺達は、そうだな……二時間ほど後で行く」


 流石に問題が問題なだけに、俺達が同伴する、というのもおかしな話だしな……。


「わ、分かった……い、行くぜ! ダリーちゃん!」


 ぎこちない動きで、サッチーが一歩を踏み出す。ダリーはその様子をクスクスと笑いながら、後に続く――。


「さて、と……まずは宿の確保かな?」


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 宿はすぐ見つかり、人数分の部屋が確保でき、俺達はそれぞれ時間潰しでもしようか、と言う事に。


 特に何も考えていなかった俺は、部屋で羽衣ちゃんとタテの相手をしていたのだが、そこにドアをノックする音が――。


「おじさん、いる?」


「悠莉か? どうぞ?」


 悠莉が「お邪魔します」と言って部屋に入って来る。


「おじさん、暇なら羽衣達も、外で散歩しない?」


 どうやら、皆落ち着かない様で外を歩こう、と言う事らしい。


 俺達も当然、同行する事にした。


 ――シッキィは大きさこそ、ナキワオと同等だったが、余り活気が無い町だった。俺達は人通りが少ない中央通りを歩いている。


「……ダリーさん、どうするのかな?」


 ポツリと悠莉が呟く。


「そうね……多分……」


 愛里が肩に止まるピトちゃんとペタリューダをいじりながら、言葉を選んでいる。皆、その続きを分かっているが、喋る事をためらっている――。


 ――多分、このまま旅を続けるのは無理だろう……。


「まあ、仕方ないさ……俺達に出来るのは……何だろうな?」


「おやっさん……そこは、ビシッと決めて欲しかったッス……」


 そんな中、羽衣ちゃんが俺の頭をペチペチと叩きながら、皆に語り掛ける。


「う? ダリねーちゃん、あかちゃん産むんでしょ? なら、プレゼントするの! パパが言ってたもん、うい、知ってるよ?」


 そう言えば……ドタバタとここまで来てたから忘れてた。


「良し……出来る事……あったな?」


 ――それからの二時間、俺達は必死で考え、ダリーと……サッチーへのプレゼントを創り出した。


 携帯で連絡を取った衛府博士やウピールさん、それとシッキィのギルドに協力して貰って作ったソレ等は……サッチーのギルドカードと同じ様にライトイエローに輝いていた。


 まだ微調整は必要だが……。


 そして、俺達はダリーの家を訪れる。


「はーい、どなた?」


 玄関から出て来たのは、ダリーによく似た女性――多分、ダリーのお母さんだろう。


「あ、ツチノっち!」


 どうやら、サッチー達も様子を見に来たらしく、俺の姿を見つけるなり駆け寄って来た。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ――結論から言うと……サッチーの気に入られっぷりが……。


「――いや、マジパないッスよ!」


「はっはっは! そうかそうか、さあ、飲め!」


 特に親父さんからの気に入られっぷりが可笑しかった。どういう事なのか、ダリーに聞くと――。


「いや、実は……パパと私の好みの人間が一緒なんだ」


 ……ダリーの発言はこの際、無視しよう。


 そして、ダリ母はと言うと……。


「まあまあ、羽衣ちゃん、あーんって! ほら、ももちゃんも!」


 羽衣ちゃん、タテ、もも缶を侍らせ、ケーキを口に放り込んでいる……。


「いや、実は……私の子供好きはママ譲りなんだ」


 結論――チェリン家、心配になるんだが……ブロッドスキーさんから何となく聞いてはいたが……やばい。


「それで……ダリーはどうするの?」


 愛里がダリーに尋ねる――。


「……悪いが、このまま出産まで、ここに滞在……かな」


 僅かに悲しそうな顔を浮かべ、ダリーが羽衣ちゃんを見つめる……。


「まあ、仕方ないな」


 その後は……何となく会話が止まり、俺達はチェリン家を後にする。


 ――その夜。


「おじさん、ちょっといい?」


 羽衣ちゃんとタテが寝静まった頃、悠莉が訪ねて来た。


「外……行かない?」


 宿屋に少し散歩してくる事を伝え、俺達は外に出る。


「で、どうした?」


 俺が聞くと、悠莉は少し、言葉を選ぶ様に首を傾げてポツポツと喋り始めた。


「うん……ダリーさんと、サッチー見てたら、何となく……」


「そうか……」


「ねえ……おじさんは、その、向こう(地球)に彼女とか……いたの?」


 俺の少し前を歩く悠莉が、そんな事を聞いて来た。


 ――彼女か……仕事、仕事でそんな暇無かったからな……それに……。


「残念ながら、ここ数年いないな……仕事で忙しかったし……それにな……」


「……? それに?」


「妹が……邪魔しやがんだよ……「お兄ちゃんのくせに生意気です」っつってな……」


 よくよく考えたら、酷い……。


「へえ……おじさん、そんな妹さんとかいたんだ……」


 ――ん? 何言ってんだ、コイツ……。


「まあ、そんな訳で独り身ですよ」


「えっと、じゃあさ……あ、あたしとか……どう?」


 振り向いて、俺の顔を見る悠莉の顔をジッと見つめる……冗談、て訳じゃないみたいだな……。


 悠莉は夜道でも分かる程に顔を真っ赤にして、俺の答えを待っている。


「……悠莉」


「え、えっとね……その……ほ、本気、だよ?」


「大丈夫だよ、それ位分かる。ただ、今は……待ってくれ」


 情けない事に、こんな歳になってもまだ、緊張とかするんだな……。心臓がバクバクいってる。


「それは、何で?」


 悠莉は目に涙をためて、声を絞り出している。


「ああ、誤解しない様に言っておくと、悠莉が嫌いとかじゃない、むしろ惚れてる」


「じゃあ、なんで? あたしが、子供だから?」


 いつかのハオカの様に、悠莉は俺の目をジッと見つめている。


「えっとな、これは、俺の個人的な……願掛けなんだけどな? 少なくとも、皆を……少なくとも、ミッチー、サッチー以外を無事に地球に帰すまでは、そう言う事は考えない様にしてるんだ」


 悠莉の視線から目を逸らさず告げる。


「じゃあ、一旦、地球に帰ったら良いの?」


「もっと言うなら、地球に帰って、学校を卒業して……だな」


 欲を言えば、進学でも就職でもして経験積んで、本当にこんなおっさんが好きなのか考えて欲しい所だが……。


「……もしかしたら、その間に、あたし……彼氏とか作るかもよ?」


「そん時は、仕方ないさ……俺より魅力のある奴がいたって事だ」


 本音を言えば、嫌だが……。今の状況って、悠莉にしろ、愛里にしろ、吊橋効果なんじゃないかって思うんだよな……何となく、その状況下で手を出すのは、卑怯な気がする。


「……分かった、待つ……いや、待ってて! 絶対、地球に帰って、学校、卒業する、そんで、良い女になって、今度はおじさんの方から「好き」って言わせてやる!」


 おお、何か勢い付いて来た……これでこそ悠莉だ。


「じゃあ、俺も悠莉に愛想つかされない様に、良い男を目指してみるかな?」


「それは駄目! 卑怯よ!」


 先程までの泣き顔はすっかり失せ、悠莉はいつもの様にニパッと笑ってそう答える


 ――そして、宿屋に戻ると……。


「――勝負よ! おじさん!」


 そう言って、俺の口に自分の口を合わせて来た――。


「歯が痛い……」


「そりゃ、勢い付け過ぎだ……」


 何とも締まらないが、悠莉は歯を押さえながら、自分の部屋に戻っていった。


 俺はそれを見届け――。


「さて……ジョギングでもしてくるか」


 再び、夜道に戻っていった……。

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