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大・出・張!  作者: ひんべぇ
第六章:加護励起
91/204

約八十日

続きです、よろしくお願い致します。

「はい……それでは『天啓』ります。えっと、もも缶さん……水晶に手を当てて、心を落ち着けて下さい……」


 ――結局、今現在ギルドにいる人員だけでは、不安があるという事で、俺の加護に関してはヘームストラの研究者が到着する一週間後までお預けだ……。


 と言う事で、今はもも缶の『天啓』中だ。


 流石に『スキル大国』と言うだけあって、『天啓』用の道具も最新式で、ナキワオだと『天啓』『拝命』の後に、カード加工が必要になるのだが、ここでは一括処理してくれるらしい。


 ――そんな訳で、微妙に担当の人にやる気が感じられないのは……まあ、我慢しよう。


 何て事を考えている内に、『天啓』用の水晶が眩く輝きだした。


「はい、出ました~。もも缶さんの適性ジョブは一つだけ……ですね」


 その言葉と同時に、光りが一際強く輝き、もも缶の白桃の身体と同色のギルドカードが、もも缶の手に握られていた。


「――終わったか……もも缶、ジョブは何だった?」


 ギルドカードを、口の中に入れようとしているもも缶の腕を掴み、聞いてみる。


「ん? ここに書いてある奴か? 『じゅうけんし』ってある」


 成程、『重剣士』か……でっかいナイフとフォークは、確かに重量感あるしな……。


 もも缶に、この後ご飯を食べに行くから大人しくしている様に、言い聞かせ、俺はピトちゃんを呼ぶ。


「――ペッ!」


「ピトちゃん……せめて『お前』で……いや、良い」


 気のせいか、日を追うごとにピトちゃんの俺を見る目が、『思春期の娘が親父を見る目』になってる気がする。……禁煙、考えるか……? それとも、最近、枕から俺の父親の匂いが出始めているせいか……?


「はい、チャッチャと『天啓』りますよ? ピトちゃんさん、水晶に手を当てて、心を落ち着けて下さい……」


「ピュイ!」


 ――再び室内に静寂が訪れる……。


「――来い来い来い来い……」


 やる気のない職員が、呟き始めると水晶が輝き始めた。


「――来た来た来た来た!」


 光が収まり、ピトちゃんの手に毒々しいまだら模様のギルドカードが握られている。


「……」


 俺は無言で、愛里に合図を送る。すると、愛里が頷き、ピトちゃんに近寄る。


「ピトちゃん、ジョブは何だった?」


 愛里に聞かれて嬉しかったのだろう……ピトちゃんは、先程俺に唾を吐いて子と同一人物とは思えないほどの眩しい笑顔でギルドカードを愛里に差し出す。


「――えっと、『影不踏(カゲフマズ)』……?」


 よく分からん……。適性武具の調査もやらないと駄目だな、こりゃ。


「はい、昼休み近いんで、次お願いします」


「あ、すいません。えっと、じゃあペタリューダ!」


「あら? もう、あたくしですの?」


 そう言うと、ペタリューダはウキウキとしながら、水晶の前に座り込む。そして、水晶に手をかざし、目を閉じる……。


「良いですねぇ……そう言うサクッとしたの、良いですよぉ?」


 すると、水晶が輝き始める。


「ん……来た!」


 水晶が静けさを取り戻すと、ペタリューダの手に赤黒いギルドカードが――。


 ペタリューダは、手の中に現れたギルドカードを興味深そうに見ていたが、やがて納得した様に懐にしまうと、ドヤ顔で言い放った。


「あたくし……『女王様』となりましたわ!」


「ああ……やっぱり」


 後ろの方で、悠莉のささやき声が聞こえる……まあ、俺もそう思っちゃいたけどさ。


 そして、順番は最後のハオカまで回って来た。担当の人がチラチラ、昼休みを気にし始めてる……そろそろ怒って良いのか……?


「ほな、うちん番どすなぁ? 旦那さん、行ってきますぇ?」


 ハオカはそのまま、しずしずと水晶の前に座り、手をかざす――。


「はい、行きますよ!」


 さっさと、昼休みに入りたいのか、コイツ、急にやる気を出し始めやがった。


 ――室内に静けさが漂い始め……。


 水晶がバチバチとハオカの朱雷と同じ色に輝き始めた。


「ん? 来た」


 光はハオカの手に集まり、長方形の形を作り出し――やがて、収まると、ハオカの手に朱色のギルドカードが握られていた。


「はい、終わりですよ~」


 ハオカは担当にそう告げられると、真っ先に俺に駆け寄り、ギルドカードを見せてくる。


「旦那さん、旦那さん、うちんジョブ、何どす?」


 ハオカはまだ自分でも確認していない様だった。


「いや、まず、自分で――」


「初めては旦那さんがええんどす!」


「分かった、分かったから! えっと……『覇権社員』?」


 ――字が違う……。


「ほな、今までとあんまり変わりまへんなぁ?」


 まあ、ハオカに関しては『名刺』を作った程度の認識で良いのかな……?


「はい、終わり終わり! それじゃ、皆さんお疲れ様でした!」


 ――丁度、昼休みの時間になったみたいで、担当の姉ちゃんが物凄い勢いで出ていってしまった……何だ、アイツ?


 その後、駆けつけたチェック係の人にひたすら謝られたが、気にして無い事を告げると、お詫びのサービスと言う事で適性武具のチェックを大急ぎで行ってくれた。


 そして、ギルドでの用事を全て済ませた俺達は、そのまま昼食を取る事にした。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「――皆いいなあ? ういもはやく、ジョブ持ってる人になりたいなあ……」


「姫……仕方ないですよ。僕らはまだ、歳も力も足りませんし……」


 昼飯の注文を待っている間、羽衣ちゃんが俺の髪を引き千切りながら唸って、タテに宥められている――。


 以前、俺が言い聞かせた事を覚えているらしく我慢はしている様だが、流石に歳が一番近いもも缶のギルドカード発行が羨ましいらしく、ちょっとだけ拗ねている。


「……うい、いるか?」


 もも缶が妙な気を利かせて、羽衣ちゃんの口にギルドカードを差し込もうとしている。


「駄目だっつうの! 食べ物じゃないんだから、羽衣ちゃんも、ほら、口を開けない!」


「はーい……」


 しかし、このやり取りが楽しかったらしく、羽衣ちゃんはあっさり機嫌を直してくれた……ツボがよく分からん。


「ふふ……それで、皆さん適性武具は何だったんですか?」


 思い出した様に、愛里が呟いた。すると、ピトちゃんが真っ先に反応し、愛里にギルドカードを見せながら喋り始めた。


「ねえちゃ! わたし『包帯』と『羽根』だったよ! 見てて! 『毒翼』!」


 ――っ! 『塗り壁』!


 咄嗟に飛んできた羽根をいなす……。


「……チッ!」


「――コラッ! ピトちゃん!」


 ……危なかった、今、絶対俺の事狙ってただろ?


「すいません、椎野さん……お怪我は?」


 愛里が「念の為」と言って、俺にスキル治療を施してくれる。ああ、落ち着く……。


「ん、ありがとう、もう大丈夫」


 ピトちゃんは渋々ながらも「やりすぎた」と言って謝ってくれた……今度から、常時何枚か『塗り壁』を張っておこう。


「さて、次はあたくしで宜しいかしら? とは言っても、あたくし、その『適性武具』と言うものを持っていないのです」


 ペタリューダが困った、という感じで首を傾げている。


「それじゃあ、この後見に行く? おじさん、良いわよね?」


「ん? 良いよ? 何だったの?」


 すると、ペタリューダがギルドカードを確認し、大声で叫ぶ。


「えっと、『鞭』と『鱗粉』ですわ!」


 ――まあ、これも予想していた……でも『鱗粉』か。


「やっぱり、人間に無い物を持ってると『適性武具』も増えるのかな?」


 ピトちゃんも、ペタリューダも『自前の武器』と『装備する武器』とで二つ持っている。何か関係があるんだろうか?


「どうなんでしょうねぇ……?」


「考えても仕方ないわよ……ももはどうだったのよ?」


「ん? もも缶、スキル名が付いた。エサ王、見るか?」


「……いや、取り敢えず、街中だし止めておこう」


 どうやら、あのどこかから出てくるナイフとフォークが『適性武具』にして、『スキル』と認定された様だ。


 ――ふふ、こうして『スキルを叫ぶ』派が増えていく……。


「そう言えば、ハオカはやっぱり、そのバチなのか?」


 俺はハオカの腰に差さっているバチを指差し、聞いてみる。


「そうどすなぁ、ほんまに今までと変われへんでちょい、しょーもないどすなぁ……」


「いえ、ハオカさん……慣れた武器で戦えるなら、その方が良いんじゃないですか?」


「そうどすなぁ……」


 その後、俺達は王宮に戻る――。


「あ、つ、ツチノっち!」


 王宮に戻ると、サッチーが真っ赤な顔で俺に飛びついて来た。


「ど、どうした、サッチー……」


「あ、え、そ、え、っとな……?」


 俺達は何か問題が起きたのかと、サッチーが落ち着くのを待つ……。


「――ふう……悪い、ちょっと動揺しちまってよ」


「いや、気にするな、それより……」


「ああ、実は……ダリーちゃんが、な?」


「――っ。もしかして、何かあったのか?」


 具合が悪そうだったから……何かの病気とか?


 ――すると、サッチーが唇の端をプルプル緩ませながら呟いた。


「……おめでた……だってさ」

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