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大・出・張!  作者: ひんべぇ
第六章:加護励起
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更新

続きです、よろしくお願い致します。

 ――?????――


「――クリス君、今の話は本当ですか?」


 足元に広がる森を見つめながら、栗井博士がクリスへと問い掛ける。


「ああ、嘘言ってどうすんだよ……。 サブラに新しく埋め込んだ『創伯獣の欠片』の反応が消えやがった」


 クリスの報告を改めて聞き、栗井博士は目を瞑り、思考を巡らせる……。


「私達の制御を離れた……と言う訳じゃありませんよね?」


 栗井博士は疑いの目をクリスに向け、尋ねる。


「そ、それは、有り得ないと思います。わ、私とクリス殿とで念入りに調整しましたから……」


「では……?」


「やられたんだろうよ」


 ビオに続きを促す様に目線を合わせると、クリスがその続きを語る。


「ったく、部隊を分散なんかするからこうなるんだ……今からでも一か所に纏めたらどうだ?」


「い、いえ、それだと……不都合が有りますし」


 ビオが慌ててクリスに答える。クリスはその様子を見て「チッ」っと舌打ちをすると、その場から立ち去り、自室へと戻っていった。


「……失言ですよ? ビオさん?」


 栗井博士がビオをジロリと睨む。


「い、いえ……その、すいません」


「まあ、良いですよ……時間稼ぎは順調ですし。……サブラがやられたのは、少々予想外でしたが」


 そして、栗井博士は懐から箱を取り出し、中に入っているチョウチンを見つめ、ウットリとした顔で呟く。


「……後、もう少しです」


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ――バーレ王への戦勝報告終了後……。


「さて……皆は今からどうする?」


 戦勝祝いやら、何やらの準備で俺達は三日後までやる事が無い。


 いつの間にかたまり場と化してしまった、俺の部屋に集まっている皆に、予定を聞いてみる。


「ん……オレは、ダリーちゃんに付き添って、今から医者んとこ言って来るわ」


 当たり前だが、ダリーの体調が気になる様でサッチーはそのまま、ダリーの元に飛んで行った。


「あ、自分……軍兵さん達と訓練するんすけど……皆、一緒にどうッスか?」


 訓練か……それも良いかな。


「そうだな……じゃ「あきまへん!」……ハオカ?」


 俺がミッチーに付いて行こうとすると、ハオカがため息を吐いて、俺の事を見ている。


 そして――グニッ!


「旦那さん、一応、ご自分が怪我人ちゅう事を忘れてまへんか?」


 ――グニグニッ!


「いや、そう言えばそうだけど、そう言うなら踏むのを……」


「こら、労いどすからええんどす!」


 クソッ……否定できない……。


「おやっさん、そう言う事なら自分、一人で行ってくるッス! おやっさんはゆっくり休んで肉でも食ってて下さい!」


 そう言うと、ミッチーはそそくさと逃げる様に部屋から出ていってしまった。


「訓練も駄目か……となると、部屋にこもるか?」


「はい! おじちゃん! はい!」


 頭を悩ませていると、羽衣ちゃんが目を輝かせて手を上げている。


「はい、羽衣ちゃん!」


「うい、お外行きたい!」


 どうやら、俺達がサブラ討伐に出ている間、ずっと王宮内で大人しく留守番していたらしい。王宮内のメイドさん達に遊んで貰ってはいたらしいが、やはり飽きてしまったんだろう。


「あ、それなら……あたしもちょっと、ギルドに寄って行きたい」


 悠莉は、ここ最近戦闘が多かったせいか、何かスキルが来てる気がする……との事。


「そうですね……それなら、椎野さんも調べて貰ったらどうですか?」


「……? 俺もか?」


 愛里が言うには、俺のスキル関係を一度詳しく見て貰った方が良いんではないか? と言う事なんだが……。


「でもなあ……意味あるのか?」


「おじさん、少なくとも普通はギルドでスキルチェックして貰わないと、新しいスキルの習得とか分かんないんだからね?」


 どうやら、サブラの時の事を言っているらしい。


「それに、テイラはスキル大国って言う位ですから……もしかしたら、色々と分かるかも知れませんよ?」


 ――と言う事でギルド行き決定となった。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 テイラギルドは、流石にスキル大国と言うだけあり、人が一杯だった。


「うわ、多いな……羽衣ちゃん、タテ、おいで!」


「「はーい!」」


 人混みを掻き分け、俺は頭の上(指定席)に乗って来た羽衣ちゃんと、背中に飛び付いたタテを落とさない様にしっかりと押さえる。


「おじさん……前、見えない!」


「こら……たまりまへんなぁ」


 悠莉とハオカが苦笑いを浮かべ、俺の後を付いてくる。


 ――あれ? 愛里達がいない?


「悠莉、ハオカ、愛里たちは?」


「おじちゃん、あいねーちゃんとピトちゃんとペタちゃん、あっちにいるよ?」


 羽衣ちゃんが指差す方向は――あれ? スキルチェックの受付?


「いつの間に……?」


「う? ピトちゃんと、ペタちゃんがパタパタってやってた!」


 どうやら、空を飛んだらしい……本当にいつの間に……。


「で……もも缶は?」


「? エサ王、呼んだか?」


 ――足元を見たら、もも缶が俺の足にしがみついていた。


「……道理で歩きにくいと……」


 ――三十分後。


「――やっと……着いた」


「お疲れ様です、椎野さん」


 クスクスと笑いながら、左右に人型になったピトとペタを侍らせた愛里がタオルを差し出してくれた。


「ありがとう、で……受付は?」


「済ませてますよ? どうやら、王宮からも通達があったみたいで、別室で念入りに調べてくれるみたいです」


 正直、助かる……。どっかで、ゆっくり座りたい。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 別室に案内され、俺達は順番にスキルチェックを行う事になった。


「えっと、まずは愛里からか?」


 受付やってくれたしな。


「いえ、すいません、私……皆さんを待っている間に済ませてしまったんですよ……だから、私は良いですよ?」


 申し訳なさそうに、愛里が頭を下げる。まあ、仕方ないか。


「ん? そうなんだ? じゃあ、悠莉、どうぞ?」


 チェック係の顔が一瞬、引きつっていたが、流石にこの人数は大変なんだろうか?


「いやあ、すいません……こんな大人数で押しかけちゃって」


 取り敢えず、謝っておく。


「あ、い、いえ……気になさらないで下さい。では、どうぞ?」


 そして、悠莉がチェック係の前に座る。


「ん? どうやら、スキルは無いですけど……称号が与えられてますね……はい、どうぞ、確認して下さい」


 ギルドカードの更新が終わり、悠莉がそれを受け取る。


「悠莉、称号ってどんなん?」


 俺以外に称号が付いた人は何気に初めてじゃないか?


 俺は興味津々で悠莉に聞いてみる。


「――駄目っ! 羽衣、おじさんの目を隠して!」


「う? 分かった!」


 見事な連携で俺の目は塞がれた!


「おぉ、ちょっと……見ない! 見ないから! 羽衣ちゃん、手、離して? バランスッ! 危ないから!」


 急に視界を奪われたせいで、左右にフラフラと揺れ、上の羽衣ちゃんと後ろのタテが「きゃあきゃあ」と喜んでいた――。


「――ああ、ビックリした……」


「おじさんの自業自得よ! 乙女の秘密は勝手に見ちゃダメなんだから!」


 ――いつか、コッソリ見よう……。


「あ?」


「……いえ、何でもないです」


 気を取り直して、もも缶の番なんだが……。


「エサ王……ギルドカードって、美味いのか?」


 もも缶の口から衝撃の事実が……スキルとか普通に使ってるから、てっきりこう見えて十五歳以上と思ってたんだが。


「えっと、俺がいつも使ってるコレだけど……お前、持ってないのか?」


 もも缶は興味を無くした様に、ガックリとしながら頷く。


「って……そうか、お前、自分の名前も知らなかったっけ?」


「ん? もも缶、名前はもも缶!」


「ああ、そう言う事じゃなくて……」


 どう説明したものか……。


 頭を悩ませていると、チェック係の人が「あの」と手を上げていた。


「えっと、事情を察するに、そちらの子……記憶喪失か何かですよね? そう言った場合の特例で、十五歳未満でもギルドカード発行してますけど……」


 どうやら、王宮の紹介は伊達じゃないみたいだな……。


「じゃあ、お願いします……あ、ついでに、こっちの三人も良いですか?」


 この際だから、ハオカ、ピト、ペタもお願いしておこう……。


「それじゃあ、後で担当の者を呼びますね? 先にクスリヤさんのスキルチェックを済ませてしまいましょう……」


 そして、俺のスキルチェックが始まる――。


「ん? あら、加護持ちなんですね……って、何、これ?」


 暫くすると、チェック係の人が怪訝な顔になる。


「えっと、何かおかしな事でも……?」


「おかしな事と言いますか……」


 俺とチェック係の人の間に緊張が走る――。


「まず……スキルですが、一つ増えて、その一つが……失われています」


 ――何か、聞きたく無い事を言われた気がする……。


 取り敢えず、深呼吸して続きを促す。


「私も初めて見るんですけど、こちらのギルドカードをご覧下さい。元は『花見』……と言うスキルなんでしょうが……これが、『花見ロスト』と言う記述になってます」


 俺は黙って頷く……。


「何らかの理由でこのスキルが使用不能になった、と言う状態なんですけど……覚えは?」


「……無いです」


 ――そもそも、一回しか使った事ないし……って、あれ?


「もしかして、ですけど……」


 俺はチェック係の人に、以前一回だけそのスキルを使った事、その時手帳にスキル名が表示されたことなどを説明する。


「――祝福のメロディ……加護……」


 チェック係の人は俯いてブツブツと何かを呟いていたが、やがて自分の中で結論が出たのか、勢いよく顔を上げ、俺に告げる。


「クスリヤさん……ちょっと準備に時間がかかりますが、貴方の加護を調べましょう。多分ですが、貴方の……適性武具を調べた際に光が宿ったという持ち物に、何らかの効果もしくはスキルが付いていると思われます」


 ――こうして、後日改めて、ヘームストラやテイラの研究者に協力を要請し、俺の加護を調べる事が決まった。

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