ジャパニーズ……
少し早い気もしますが、次話投稿です。
女性陣のジョブ獲得が終了し、男性陣のトップバッターとしてミッチーが立候補したのだが、ここで雲行きが怪しくなってきた。
先ほどまでと同様に、水晶に手を当て集中しているのだが、五分ほどその状態が続いても、水晶が光りださない……不意にウピールさんが大きく息を吐き出すと。戸惑っているかのような声音で告げた。
「もしかして、自分には適性ジョブは無いのでしょうか?」
ミッチーが不安そうに尋ねると。ウピールさんは、首を横に振りつつ答えた。
「どうやら……適性ジョブは存在するようなのですが、もやがかかったようにハッキリしないのです」
ウピールさんの言葉に、ダリーさんは暫く悩んでいた様であったが、「もしかしたら……」と呟き。
「ウピールさん、私は、その原因に心当たりがあります」
と言った。
「本当ですか? 一体何が原因なのでしょう?」
ウピールさんは、ダリーさんの言葉を聞き、目を輝かした。
「しかしこれは騎士団の極秘事項ですので、当然聞いてしまえば、貴女には守秘義務が課せられます。それでも宜しいでしょうか?」
ウピールさんは、暫く悩んでいたようだが……
「分かりました。秘密は守りますので、よろしくお願いします」
と言ってくれた。ダリーさんは、「ありがとうございます」と礼を述べた後、俺達が『幻月』から来たことを告げ、それが何らかの影響を与えているのではないかと彼女の見解を話した。
ウピールさんは、その話を聞いて暫く、うんうんと頭を揺らしながら唸っていたが、何かを思いついた様で、不意に立ち上がった。
「何か、分かったんですか?」
俺が聞くと、「多分、としか言えませんが……」と、前置きしながら説明を始めた。
「恐らく三知さんは、既にジョブを獲得していると誤認される様な状態にあるのではないでしょうか? 先ほどわたくしが水晶から得たイメージは、既に何らかのジョブを獲得してから、更にジョブの獲得を行おうとした方のイメージと酷似しておりました」
「既にジョブを獲得している……ですか……」
「あれ? それじゃぁ、何で私と悠莉ちゃんはジョブを獲得出来たんでしょう? 地球から来たという条件では、私達も一緒だと思うのですが……」
ミッチーが悩んでいると、愛里さんが首を傾げた。
んー。愛里さんと悠莉ちゃんか……この二人に共通しつつ、俺達と違うモノねぇ。
「実は、二人供出身はこっちだったり?」
「違いますよ! あたしは、ただの女子高生ですよーだ!」
「私だって、ただの大学生です!」
幸君がそんな事を言うと、二人は呆れた様に答えていた。
ん? もしかしたら……
「ダリーさん。こっちの世界には、教育機関とかあるのか?」
俺は、ふと思いついてそう聞いてみた。
「えぇ、成人するまでの子供が、その街の学校に通ったりする事は普通ですよ。それが、どうかしましたか?」
その答えを聞いて、俺は確信する。
「向こうの世界じゃ、愛里さんと悠莉ちゃんは学生だった。つまり、まだ無職なんだが、それがこちらの世界で言うとジョブがない状態……と認識されたんじゃないかな? 逆に、ミッチーに関しては向こうの世界では既に職に就いていた……その職が、ジョブと誤認されたために、天啓でもジョブを既に獲得していると誤認されたって感じなんじゃないか?」
我ながら、結構適当かつ強引だとは思うが、要は地球での俺達の職業がこちらのジョブと混同されているって感じじゃないのだろうか? だとすれば、地球の職業とこちらの世界のジョブが違うって事を、天啓で認識して貰えばいいんじゃ無いだろうか?
と言う様な事を、俺が伝えると。
「うーん。試してみる価値はありそうですが、それなら、現在不明瞭になっているそちらの世界のジョブを、こちらの世界に当てはめて変換した方が良いかもしれません……」
「それって、どういう事何すか?」
「はい、成功するかどうか、分かりませんが、実際にやってみましょう、そちらの世界でのジョブがどの様なものかを聞いて、それをわたくしという変換媒体を通して、こちらのジョブに当てはめるという感じになります……多分」
そして、ミッチーに水晶に手を置く様に指示すると。改めて、『天啓』の儀式を始めた……
「それでは三知さん、あなたのジョブはどの様なものだったんですか? 大体で良いので教えてください……」
「うっす、自分はレスラーでした。レスラーとは、四角いリングの上で、レスラー同士で戦い、その戦いをお客様に見せると言った感じの職業です」
ミッチーがそう答えると、水晶が眩く光り出した。
「あぁ、分かります! 適性ジョブが見えます! 三知さんの適性ジョブは、『剣闘士』と『戦士』、それと『拳法家』です!」
そう言うと、ウピールさんは「やったやった!」とはしゃいでいたが、ダリーさんが一つ咳払いをすると。
「んん……すいません。取り乱しました……」
と謝ってから、ジョブの説明を始めてくれた。
ウピールさんによると、『剣闘士』は自己強化と剣を使った攻撃系のスキルを習得可能で、まさに攻撃特化戦闘職らしい。そして、『戦士』は、攻守ともにバランスの取れた戦闘職で、『拳法家』は、先ほどの悠莉ちゃんの時と同じとの事だ。
ミッチーは暫く迷っていたようだが。
「イメージ的に『剣闘士』が一番しっくりきます」
と言った。すると、今まで同様に水晶が輝いた後、ミッチーの手には、ルビーレッドの金属プレートが現れていた。
「どうやら、無事ジョブを獲得出来たみたいっす」
俺が、うんうんと頷いていると、ミッチーはほっとした顔で、俺に報告してきた。って、何で俺に言うんだよ。
「お父さん……ぷっ……」
ダリーさんの呟きはしっかりと聞こえて来た……俺そんなに老けて見えるかなぁ……明日の朝には、髭を剃ろう……
俺が落ち込んでいる間に、既にサッチーが水晶に手を当てていた。
「あれ? 幸さんは普通に適性ジョブが見えますね……えっと、幸さんの適性ジョブは、『賭博士』と『冒険者』、それと……あ、凄いですね、『魔法使い』がありますよ!」
あれ? サッチーってゲーセンの店長云々って行ってなかったっけ?
そんな俺の視線に気づいたのか、サッチーは、慌ててまくしたてる様に……
「い、いや、オレは特別だし? べ、べ、別にまだ、三十いってねぇし?」
あぁ、もしかしてこいつ……と思っていると、近くにいたミッチーが、俺の肩に手を置き首を横に振った。うん、まぁそうだよなぁ。
俺が無言でサッチーに頷いて見せると、サッチーは「ツチノっち……」と呟いた。動揺しすぎて、チャラキャラ崩れてる……
「オレは、魔法使いにならないために、『魔法使い』になる!」
サッチーは高らかにそう宣言した。はは、もうわけわかんねぇ……俺とミッチー以外キョトンとしてるし……
あ、そう言えばウピールさんの説明まだ聞いてないじゃん!
「ウピールさん、サッチーの奴、適性ジョブの説明聞く前にジョブ決めちゃいましたけど、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だと思いますよ? 『魔法使い』は、攻撃・防御・補助と、あらゆるスキルを習得出来る可能性を持つ強力無比な戦闘職ですから。中々適正者がいないんですよ、不思議なことに……」
「マジで? やっぱ、オレパナくない?」
ウピールさんに、ライトイエローの金属プレートを渡しながら、サッチーがはしゃいでいる……ちょっと、イラッとしたので俺は笑いながら聞いてみる。
「もしかして、『魔法使い』の人って独身の人が多いんじゃないですか? 何ちゃって」
「ちょっ、ツチノっち! それ、キツイって」
俺の冗談に、意外とサッチーが乗っかってくる。そして……
「あれ? ご存じなんですか? 確かに『魔法使い』の方って確認されている限りは独身男性しかいないんですよねぇ……過去の記録でも、結婚された方は一気に力が落ちたと記録されてますし……」
――本日二度目、再び時が止まった。サッチーは、「マジで? え? マジで?」とひたすら繰り返し呟きながら部屋の隅に座り込んだ。俺はその手から、プレートを取ると、そのまま、ウピールさんに「お願いします……」と言って渡した……
ミッチーに、サッチーの事をお願いすると。ウピールさんが「どうぞ」と俺の順番が来たことを告げる。
ウピールさんの話によると、愛里さん達四人に現れた適性ジョブは、いずれも戦闘職としては、強力なものもしくは、レアなものばかりだったらしく、「ひょっとしたら、『幻月』から来たことも関係しているのかもしれませんね?」と言っていた。
そんな話を聞いたおかげか、俺は水晶の前に手を置くと、若干緊張しながらも自分のジョブに期待を寄せていた……
さて、そんな訳で今から俺の『天啓』が始まるのだが、何と言うか、ねぇ……
ぺし、ぺし、ぺし、ぺし、ぺし、ぺし、ぺし、ぺし、ぺし、ぺし、ぺし、ぺし……
「おじちゃん! 早く! 早く!」
そう……俺に肩車されている羽衣ちゃんが興奮して俺の頭をぺしぺしと叩きながら急かしてくるのだ。羽衣ちゃんは先ほどまで寝ていたが、ミッチーのジョブが決まるあたりで目が覚めたらしく、そこからずっと俺の番が回ってくるのを楽しみに待っていたらしいのだ……
「あの……羽衣ちゃん乗っけたまんまでも大丈夫ですかね?」
「はい、薬屋さんがそれでも集中できるのでしたら問題ないかと思いますよ?」
問題ないらしい……
「羽衣ちゃん、これからおじちゃんちょーっと、集中するから、静かに出来るかな?」
「うん! しゅーちゅー? する時は、大きな声を出しちゃだめよってパパが言ってた! うい、知ってるよ!」
羽衣パパグッジョブ……
「それじゃぁ、ウピールさん。よろしくお願いします」
「はい、では……水晶に手を当てて、目を瞑って、集中してください……」
俺は目を瞑り、静かに水晶に集中する……
「あぁ、薬屋さんもやはり、三知さんと同じく、ジョブにもやがかかっています……」
やっぱりそうか、となると……
「では薬屋さん。向こうの世界でのあなたのジョブはどの様なものだったんですか? 大体で良いので教えてください……」
ウピールさんの問いに答えようとして、俺は「あれ?」と言葉に詰まってしまう。
「あー、えっと、普通の会社員。だったんですけど……」
「カイシャイン? それは、どの様な事をするのでしょう?」
えっと、俺の仕事だと、顧客のクレーム対応したり、場合によっては営業行ったりだから、商売人みたいな感じって言えばいいのかな……?
と、俺が自分の仕事を説明しようと頭の中で整理していると。俺の頭の上から、羽衣ちゃんが我慢しきれないといった感じで言った。
「会社員って、サラリーマンの事でしょ? うい、知ってるよ!」
はは、確かにそうだけど。仕事内容じゃないじゃん。と、俺が羽衣ちゃんの知ったかぶりを微笑ましく思っていると。
「サラリーマン? 羽衣ちゃん、なーにそれ?」
と、ダリーさんがクスクスと笑いながら、羽衣ちゃんに優しく尋ねた。
羽衣ちゃんは、それに気を良くしたらしく「もう、しかたないなぁ」と前置きして……
「サラリーマンってね。えっとね、しゃかいのあらなみから、かぞくとせいかつをまもるために二十四じかんたたかいつづける、せいぎのきぎょうせんし。なんだよ! パパが教えてくれたもん! うい、知ってるよ!」
「へー、そうなんだー♪」
「うん! おじちゃんは、やっぱりヒーローなんだよ! 皆を守ってくれるの!」
その瞬間、今までの四人の時を遥かに上回る光量で水晶が輝きだした。水晶から出る光はどんどん強さを増し、やがて、水晶を中心とした黄色い光と黒い光の渦を作り出した。
「えっ?」
俺が、そんな間抜けな声を上げると二つの光は絡まり合い、混じり合いながら俺の手に吸い込まれてきた! やがて光は収まり、俺の手の中には、金色に光る金属プレートが現れていた……
「えっと、薬屋さんに見えた適性ジョブは一つでしたので、『天啓』後に、すぐ『拝命』が完了したようですね。肝心の適性ジョブなんですが、これは……新発見のジョブですよ! 凄い凄い!」
ウピールさんは大興奮で、俺の手を握っている。
「すいません、えっと、何て言うジョブなんですか?」
俺がそう問いかけると、ウピールさんは未だ興奮冷めやらず、といった感じで答えた。
「あっ! すいません、ついはしゃいでしまいまして……えっと、薬屋さんのジョブは、『サラリーマン』です!」
――この日、異世界に新ジョブ『サラリーマン』が誕生し、俺達の時間は三度止まったのだった……
頑張れ、負けんな、力の限り生きてやれ♪
黄色と黒は勇気の印!