謁見2 EKKEN -バーレ=テイラ-
続きです、よろしくお願い致します。
俺達は王宮に到着すると、そのまま謁見の間まで案内された。
謁見の間には中央に王様らしき見た感じ七十歳~八十歳位の男性、その隣に宰相っぽい四十歳~五十歳位の男性がいる。そして、中央の通路を囲む様に並んで立つ槍を持った上半身裸の男達――。
やべえな、喉が渇いてきた……。
謁見の間に一瞬の静寂が訪れ、暫くすると宰相っぽい人が中央に座る国王っぽい人から何か耳打ちをされている。
「その方らが『秘密結社』の人間か? と、我が王――バーレ=テイラ様が申しております。あ、わたくし、宰相でバーレ=テイラが第一子、ナーケと申します」
ペコリと頭を下げる宰相さん。
「ええ、私達が『ファルマ・コピオス ヘームストラ支社』の者です」
俺は『ポーカーフェイス』で表情を気取られない様に気を付けながら頭を下げる。
すると、再びバーレ王とナーケさんが再び耳打ちを始める。
「して、『伯獣』の一人を味方に引き込むことに成功したと聞いたが、本当か? と、我が王が申しております」
「はい、こちらのペタリューダ嬢がその『伯獣』でございます」
良し、何とかこのやり取りにも慣れて来た……。
「どうも、只今ご紹介に預かりました『蝶伯獣』のペタリューダと申します」
そう言うと、ペタリューダはスカートの端を摘み、バーレ王に向かって挨拶する。
その時――バーレ王の開いているんだかいないんだか分からない目が大きく開かれた。
「――本気ですかっ!」
何やらナーケさんが耳打ちされた後に驚いている。どうやら、バーレ王が何か驚く様な事を言ったみたいだが……。
「――失礼……。我が王が、そこのお嬢様の取り調べを……今、この場ですぐ行いたいと……申しております」
そう言う事か……取り調べ――この場合は捕虜に近いから……もしかしたら、目も当てられない事とか、か?
「失礼ながら、バー「大丈夫ですわ!」……ペタリューダ?」
俺がバーレ王に抗議の声を上げようとすると、ペタリューダから先に声が上がる。
「あたくしの事を信じられないのも当然でございます……この場で取り調べを行う事によって、愛里姉様や皆様方にかかるご迷惑を減らせると言うのならば、あたくしはどんな辱めでも受けて見せましょう!」
その言葉に、バーレ王もナーケさんも目を大きく見開いて驚いている。そして、再びバーレ王がナーケさんに耳打ちをする――。
「良い覚悟だ……衛兵! アレを持って参れ! と、我が王が申しております」
――数分後。
「そんな……」
「おじさん! やめさせて!」
愛里と悠莉が涙を浮かべ、衛兵がその手に持つモノに嫌悪の表情を浮かべている。
衛兵が持ってきたのは、恐らく長年使い込まれてきたであろう鞭と、ロウソク……。
「バーレ王! このク「大丈夫ですわ!」」
またしても、ペタリューダが俺の怒りを諌める……僅かにその歯をカチカチと震わせながら――。
「それでは、準備を執り行います――」
――更に数分後。
「そんな……」
「おじさん? 何あれ?」
愛里と悠莉は顔を真っ赤にして、バーレ王に向けて嫌悪の表情を浮かべている。
俺達の目の前ではペタリューダとバーレ王が一メートル程の距離で隣り合っており、片方は四つん這い、もう片方は先程の鞭と、ロウソクを持っている――。
「おじちゃん……?」
「父上……あの王様……」
「エサ王……あれは、美味しい事か?」
「ピュイ……?」
マズイ……四つの穢れなき視線が痛い……。もも缶、ある意味、あれは美味しい事だ……。
「クッ……ハオカ! 羽衣ちゃんと、タテと、もも缶と、ピトちゃんをどこか安全な場所に!」
「は、はいっ!」
慌てて衛兵に頼んで羽衣ちゃんとタテを連れて行って貰う。
「――ナーケさん……どういう事何ですか?」
俺はナーケさんを睨み付け、問い詰める。
ナーケさんは少し目を泳がせた後に、語り始めた――。
「我が王は、あるスキルを持っております……その名を『真偽を打つ我』――効果は、王の質問に対して鞭とロウソクを持った対象が答え、王に対して鞭を打ったり、ロウをたらしたりすると……その真偽のほどが判定できると言うものです……」
そう……俺達の目の前では、ペタリューダに対してバーレ王が背を向けており、片方――バーレ王は下着姿で四つん這い、もう片方――ペタリューダは鞭とロウソクを持っている。
「王の名誉の為に付け加えますと、王のスキルを応用して作成されたのが……『真偽の器』と呼ばれる道具です――」
その瞬間のダリーの顔は……何とも言えないものだった……。
「――コホンッ……それでは、尋問を開始いたします」
尋問? これ、尋問なの? 拷問……プレイじゃないの? バーレ王、何でパンツ一丁なの? ボールギャグと目隠しは必要なの?
そんな、俺達の戸惑いをよそに、バーレ王からの質問が開始された――。
「まず……ペタリューダ嬢、貴女は本当に変異種の集団『コミス・シリオ』の元メンバーだったのですか?」
ペタリューダは意を決して「はい」と答え、バーレ王に鞭を振るう。
「オォフ!」
その瞬間、バーレ王の身体が青く光る……。あ、この光は確かに『真偽の器』と同じだ。
「次に……貴女は『コミス・シリオ』を裏切った、その事に間違いはありませんか?」
「ええ、間違いありません……わっ!」
「オォォォ!」
またしても、青い光――何だこれ?
その後、幾つかの質問にペタリューダが答え――と言う感じで尋問プレイは続いて行った。
その結果――。
まず『コミス・シリオ』の本拠地は今のところ、テイラではないらしい、どこに移ったのかは知らないとの事。
そして、つい最近、『コミス・シリオ』の部隊編制が完了し、栗井博士達が本格的に動き始めた様で、基本的にはこの世界の三大陸の各都市を『四伯』と呼ばれるあの四人の『伯獣』が部隊指揮をとり侵略を行うらしい。
まず、俺達がいるこの東の大陸『イナックス』の編成について――。
ヘームストラ侵略の指揮をとっているのは『虎伯獣』ティグリ率いる陸上哺乳類系の『伯獣』部隊。
テイラ侵略の指揮をとっているのは『蜴伯獣』サブラを中心とした両生類系の『伯獣』部隊。
続いて、南の大陸『ウズウィンド』について――。
ドーバグルーゴ帝国と言う国の担当は『鳥伯獣』スプリギティス率いる鳥類系の部隊。
オーシと言う、海上国家の担当は『甲伯獣』ゲリフォス率いる爬虫類系の部隊。
最後に北の大陸『マコス』についてだが、これに関してはペタリューダは何も聞かされていないらしい。
因みに、ペタリューダやリュージーはどの部隊でもなく、ビオの私兵との事。
「――はあ、はあ、はあ……」
鞭の振り過ぎでペタリューダの息が上がっている。
それにしても……。
「オォフ……オオゥ……」
大丈夫か? バーレ王……。
本当に子供達を逃がしておいて正解だった。
「ふぅ……以上で終わりだ、ご苦労であった女王様! と、我が王が申しております」
今……変な単語が聞こえた気がする……。
「そうですの……これで、あたくしたちの言葉を信じて貰えたと思ってよいのですの?」
ペタリューダは鞭をパシンパシンと引っ張りながら、ナーケさんに尋ねる。
ナーケさんはバーレ王と耳打ちした後に「それで良い」とだけ、呟いた。ペタリューダが「快・感!」と呟いていたのは気のせいと言う事にしたい……。
――そして……。
「さて、実は二日後に対『コミス・シリオ』の作戦会議が行われるのですが、皆様も女王様も是非参加して頂きたいと、我が王が申しております」
俺達に反対する意思はもちろんなく、喜んで参加させてもらう事になった。
どうやら、テイラにおける連中の拠点は既に絞り込めているらしい。二日後の会議はサブラ部隊掃討作戦における各人の役割決めの様な物らしい。
――こうして、俺達はテイラでの活動を開始した。




