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大・出・張!  作者: ひんべぇ
第五章:秘密結社
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秘密結社

続きです、よろしくお願い致します。

 カンクーロとリュージーを何とか片付けた俺は、皆と合流するために電話すべきかどうか考え込んでいた。


 俺達の前に現れた『伯獣』はカンクーロとリュージーを除けば三匹……もし、まだ戦闘中だったら携帯なんか出てる暇ないだろうし……でも、苦戦してたら駆けつけなきゃだしなあ。そもそも……ここ、どの辺だ?


 目くらまし喰らって攫われたから位置関係が分からん……。


 ――暫く、トボトボと歩いていると……。


「何だありゃ? 黄色の……光?」


 何か遠くの方でレーザーみたいなのが空から降ってる……。多分だが、サッチーかな? 気合入れてスキル使う時の光に似てる。


 ――なら、サッチーに電話してみるか。


 念のために、それから五分ほど待ってサッチーに電話を掛けてみる。


『へい、モッシモーシ……ツチノっち? どしたん?』


「お、無事だったか……今、サッチーっぽい光見たから、もしかして決着ついたのかなと思ってさ」


『お、察し良いじゃん! チョイとやばかったんだけどな? 羽衣がファインプレーで、マジパなくてよ! ……うん? 何、羽衣? 代わんの?』


 電話越しにガサゴソ音がする。どうやら、羽衣ちゃんが電話に代わるみたいだな……そうか……無事そうで良かった。


『ツチノっち? 何か、羽衣が代わりたいみてぇだから代わるぜ? 後、こっちはオレとミッチーとタテと羽衣がいて、さっきもも缶も合流したんだけどさ? そっちはツチノっちだけ?』


「おう、そうかじゃあ、悠莉達はまた別か……」


『――おじちゃん!』


 悠莉達は無事だろうかと考えていると、通話相手が羽衣ちゃん異交代したらしく、電話越しに興奮しているのが分かる。


「羽衣ちゃん! 怪我はない?」


『うん! うい、がんばったんだよ――』


 そして、羽衣ちゃんはたどたどしくも何が起こったのかを教えてくれた。


 ――今回ばかりは衛府博士に感謝だな……。


『でね、でね? ういもおじちゃんみたいに、さいきょーになるの!』


「おう! きっとなれるぞ?」


『うん! うい、ジョブもらったら、おじちゃんも、ラッコちゃんも、サッチーも、タテちゃんも、パパも、ママも、みんな、みんな、ういが守ってあげるの!』


 しまった……録音しておくべきだった。すまん、羽衣パパ、羽衣ママ……。


「良し! おじちゃん、それまで頑張るぞ!」


『ういも! がんばる!』


 そんな感じで羽衣ちゃんと電話してると、別の空に緑の光が見える。あれは……悠莉か?


「悪い……羽衣ちゃん、ちょっと電話切るよ?」


『えー……じゃあ、タテちゃんともお話してー?』


 ――じゃあの意味が分からんが……まだ電話を切っては駄目な様だ。


『父上! ご無事でしたか!』


「おう、タテも元気そうだな?」


『はいっ! 頑張りました!』


「タテも頑張って皆の手伝いしたって聞いたぞ? 偉かったな?」


『はいっ! 今度は……ちゃんと出来ました!』


 ――その後もタテの要望で……あくまでもタテの要望で、皆と温泉に行く事などを約束し、一旦通話を切る。


「さて、と……」


 次は悠莉に掛けてみるか。


『もしもし? おじさん……痛たっ!』


 お、どうやら電話が取れる状況では有る様だが……怪我でもしたのか?


「おいっ! 悠莉、大丈夫なのか? 怪我でもしたのか?」


『いや……ちょっと筋肉痛なのよ』


 話を聞いてみれば、どうやらスキルの副作用で筋肉痛らしい。今はハオカに弱電流を流してもらってエセ電気マッサージ中との事。


「何だ……安心したよ。筋肉痛って事はまた脱いだのか……」


 その瞬間、電話の向こうで携帯電話のきしむ音が聞こえた……しまった……失言だ。


『ねえ、おじさん?』


「はい……なんでしょう?」


『合流したら……お話が、あります』


 音声通話である以上、向こうに見えるはずもないが俺はその場で土下座をする。


「……許して下さい」


 ――数分後。


『――で、旦那さんは今どん辺にいてるんどすか?』


 あの後、ひたすら謝り倒した後、テイラ首都に着いた後に何かを奢ると言う約束で何とか悠莉には許してもらう事が出来た。そこで、お互いの現状報告と言う事で、筋肉痛が辛い悠莉に代わり、ハオカとやり取りをする事になった。


「どの辺つってもなあ……」


 電話越しに、俺の目から見えたサッチーの位置、悠莉の位置、太陽の位置を告げる。


『ちびっと待ってておくれやす。 ダリーはんに地図で確認して貰いますから』


 ――さらに数分後。


『お待たせしました。どうやら、旦那さんが一番目的地に近いみたいどすから、そんまま、ほんで待っていておくれやす』


 どうやら俺はここで待っていればいいらしい。順番的にはサッチー達が悠莉達を拾って、そのまま俺を拾う感じか? 時間がどれ位かかるか分からんが、このまま一人で待つのはちょっと、不安だな……。


「なあ、ハオカ……?」


『なんどすか? 旦那さん』


「呼んでいいか?」


『あら、そないな事……うちは旦那さんの為におるんどすから、お好きな様にしてくれて、ええんどすぇ? ほな、皆はんに行ってきますの挨拶してきますね?』


 暫くして、ハオカから『いつでもどうぞ』と言われたので、遠慮なく……。


「オン・サラ・リー!」


 朱色の輝きと共に、ハオカがその姿を現す。


 ――グニッ。


「旦那さん、会えへん間、寂しかったどすぇ?」


 ハオカは少し瞳を潤ませながら、俺の顔を踏みつけてきた……下駄履いたままで。


「ハオカ……せめて、下駄脱いでくれ……」


「あら、すんまへん……ホンマにうっかりどす……ほな、改めて」


 そう言うと、ハオカは未だ正座しっぱなしの俺の太ももに足を置き、そのままツツッと太ももを一撫でし――って!


「なんで、微妙にテク上がってんの?」


 結果――非常にまずい事になった……角度的に中指位か……?


「あら? 気持ちよう無かったどすか? 愛里はん、悠莉はんと頑張って研究したんどすけど……」


 いや、うん……研究の成果はあったけど……。


「取り敢えず、暫く……禁止」


「そうどすか……残念です」


 そうこうしている内に、馬車が視界に映り込む。どうやら、皆が来た様だ……助かった。


 ――数時間後。


 馬車はもうすぐ、テイラ首都ヤラーレに辿り着く。俺は頭に羽衣ちゃんを乗せ、馬車の窓から外の風景を楽しんでいた。


「それにしても……」


 何か一人、知らない――正確には俺達を襲ってきた奴がいるんだが……。


 誰もツッコまないし、そろそろ俺が何か言った方が良いんだろうか?


 さり気なく、サッチーにアイコンタクトで合図してみる……駄目だ首を横に振られた。


 やはり、俺が行くしかないのか?


「ねえ! お姉ちゃん、だあれ?」


 俺が悩んでいる間に羽衣ちゃん(勇者)がいった!


「あたくしの事ですの?」


 俺達の注目を集めたワンピース姿の少女は愛里の腰に抱き着いたまま人差し指を自分に向ける。


 羽衣ちゃんと一緒に、俺を含めた男性陣が頷く。


「あたくしはペタリューダ、そちらのピト姉様と同じく、愛里姉様と言う白百合に群がる蝶ですわ!」


 そう言うと、ペタリューダはその身を紫色の蝶へと変え、愛里の頭に止まる。


 愛里の様子を伺うと、ジェスチャーで「もう、敵ではないので……」と伝えてきた。


 俺は再び、ペタリューダの様子を伺う――。


「こら! おやめなさいな!」


 何か、羽衣ちゃんが目を輝かせてペタリューダを捕まえようとしてるし……。


「まあ……良いか」


「良くありませんわ!」


 ペタリューダと羽衣ちゃんの追いかけっこを眺めていると、御者台のミッチーが声を掛けて来た。


「おやっさん、街が見えてきたッス。アレがヤラーレじゃないッスか?」


 ミッチーの言葉に窓から外を見る。


「へえ……」


 窓から見えるテイラ首都ヤラーレは、ヘームストラ首都ルセクが西欧風の城だとすると、森に囲まれ、見た感じカラフルな――タイとかに近いイメージの街だった。


 何枚か写真を撮って、後輩に送る。


「おやっさん、門番が全員出ろって言ってるっス」


 馬車から出ると、上半身裸で槍を持ったおっさんが俺達をジロリと睨む。


「お前達の所属と目的は?」


 そう聞かれたので、ダリーがヘームストラ国王アルカ様からの親書とテイラから発行された入国許可証を提出する。


「おお、すまんな……今、我が国は『コミス・シリオ』とか言う、変異種の集団からの襲撃が多くてな……気が立っておるんだ」


 ――変異種の集団か……まず間違いなく栗井博士達だな。


 いつの間にそんな名前に……。


「ん? お前たち……いや、貴方達が今回の『コミス・シリオ』討伐に加勢して下さると言う『秘密結社 ファルマ・コピオス ヘームストラ支社』の方々ですか!」


 門番さんは「失礼致しました、今すぐ王宮にご案内いたします!」と言って馬車ごと俺達の誘導を始める。


「ねえ……おじさん、『秘密結社』云々ってなに?」


 悠莉を始めとしたメンバーは、ジトッとした目で俺を見てくる。


「うん……『ファルマ・コピオス』ってのは、俺の所属している会社だよ……『ヘームストラ支社』ってのはそのまんまだな? で、『秘密結社』ってのは……間違いなく、社長の仕業……だな」


 黒いカーテンをたなびかせて、高笑いしてる社長(あのババア)の姿が目に浮かぶ様だ。


「多分、衛府博士辺りから、ヘームストラの偉い人に話が行って、そのままテイラにって感じかな?」


「そっか……おじさん、頑張ってね?」


 俺は力なく頷く。それにしても……『秘密結社』って……もうちょっと言い様ってものがあるだろうに、あの社長……。


 ――そして、俺達は精神的な疲れを感じながらも、門番さんに案内され、王宮への道を進んで行った。

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