バトル・ボーイズwith園児
続きです、よろしくお願い致します。
「――うぉんどりゃぁ!」
「……『ハウリング』……」
ズィズィキィに向けて、ミッチーの斬撃が襲いかかる。ズィズィキィはそれを奇怪な音を発生させて霧散させる。
「……もう一度……」
ミッチーの斬撃を防いだズィズィキィはそのまま、同じスキルを使用する。
「うぁ……ミッチー、下がれ……これ、パネェわ!」
「み、耳が……」
サッチーの指示に従い、ミッチーは一歩後退する。そして、そのミッチーの前にタテが出る。
「タテ……?」
ミッチーの呟きに、タテはニコリと笑みを浮かべる。
「アイツは、僕と似たようなスキルを使うみたいです……防御は僕に任せて下さい!」
「がんばれー、タテちゃん!」
羽衣の応援にタテは大きく頷き、「任せて下さい、姫!」と鼻息を荒くする。
「……邪魔、『ハウリング』……」
そんなタテを眉間にしわを寄せてズィズィキィが睨み、再び「ミョワンミョワン」と音を鳴らし始める。
「相殺する……『呂音』!」
タテの横笛の音が響き渡り、ズィズィキィの発生させる音が聞こえなくなっていく……。
「ナイスだ、タテ! 行くぜ、穿て! 『鉄槍』!」
サッチーの叫びと共に、空から二本の槍がズィズィキィに向かって降り注ぐ。
「……鬱陶しい……」
そう呟くと、ズィズィキィは臀部から透明なビームをピュピュッと射出し、二本の槍を粉砕する。
そのまま、空中でクルリと回ると、今度はサッチーに向けて、そのビームを射出する――。
「『クルミ』!」
サッチーの目前でミッチーが剣を振るい、ビームを弾き飛ばす。
「サンキュー、ミッチー! 唸れ! 『不動明王』!」
ミッチーの背中から、サッチーが炎で出来た縄を投げ付ける。
「……火はイヤ……」
サッチーの炎と、ズィズィキィのビームがぶつかり合い、その衝突部分から白い煙が上がり始める。
そこをチャンスと見たのか、タテがすかさず笛を鳴り響かせる。
「踊れ! 『祭囃子』!」
軽快なリズムと共に、風がズィズィキィに纏わりつき、その身を切り刻む。
ズィズィキィは憎らしげにタテを睨むとその臀部を立てに向け、呟く――。
「……死ね……」
「さ、せる、かあ!」
その瞬間、タテの後ろからミッチーが跳び上がり、その剣を上段から斬り下ろす。
「がぁ……!」
ズィズィキィはミッチーの剣でその顔にかけた眼鏡を真っ二つにされ、突然ゆがむ視界に戸惑う。
「まだまだぁ!」
そこをミッチーは見逃さず、更にズィズィキィに接近する。ズィズィキィは慌てて、地面に向けビームを放つとその勢いのままに空中に飛び上がり、ミッチーとタテを見下ろす。
「……『ハウリング』……」
「しま……」
ズィズィキィの発生させる音に再びふらつくミッチーと、対処が遅れるタテ。
「ミッチさん! 今「……させない……」」
タテが慌てて笛を吹こうとすると、ズィズィキィのビームがタテの笛を弾き飛ばす。
「べぇ……超やべぇ……」
サッチーもまた、ふらつき、後ずさる。
「……とどめ……」
足元に崩れる三人を無表情に見つめながら、ズィズィキィは臀部を向け、ビームを放とうとしていた――。
――その時だった。
「みんな、いじめちゃ、やー!」
ズィズィキィの頭に缶詰が飛んできた。
「……鬱陶しい……」
ズィズィキィは目の前に迫って来た缶詰をビームで粉砕すると、中身の汁をその身に受けながら、缶詰の飛んできた方向を見る。
どうやら、馬車のある辺りまではズィズィキィの音は届いていないらしく、羽衣が頬を膨らませて仁王立ちしていた。
「……ガキが……」
ズィズィキィは音を発生させながら、羽衣に臀部を向ける。
「あ……姫ぇ……」
「て、め……」
「ぶ……殺……」
羽衣に狙いを付けるズィズィキィに、三人の怒りが限界に達する。
「……黙ってろ……」
ズィズィキィは更に音を大きく発生させ、立ち上がりかけている三人の動きを封じる。
それでも三人は、震える足に力を入れズルズルとズィズィキィに迫っていく――。
「……ちっ……」
流石に鬱陶しくなったのか、ズィズィキィは羽衣から一旦目を離し、先に三人を始末しようと、その臀部を三人に向けなおす。
「だから、みんなをいじめちゃ、やなの!」
羽衣は手当たり次第に手元に有る物を投げ付ける。
ズィズィキィはそれを鬱陶しそうに見ながら、手で払う。
そして、そんな払われた物の中に……それはあった――。
ズィズィキィが羽衣が投げて来た長い棒の様な物をそれまでと同様に手で払うと、「カチリ」と言う音と共に音声が流れ始める。
『あ、ああ、聞こえているかな? サラリーマン君に園児ちゃん……』
長い棒――それは、ナキワオ出発前に衛府博士が「餞別に」と渡していた物だった……。
『君達がこのメッセージを聞いていると言う事は、棒のスイッチを押した、と言う事だろう――』
一瞬、呆気にとられていた一同だったが、最初に異変に気付いたのはミッチーだった……。
「な、なんスか? これ……棒が……増えた?」
先程まで一本だった棒はいつの間にか、三本に増えクルクルとズィズィキィの周りを回っている。
そして、衛府博士のメッセージは続く――。
『もう、気付いているかと思うが……それは、私がスキルで作り上げた物だ……説明書……渡したっけ……? まあ、渡した気がしないでもないでもない……ともかく、君達がそれを使ったなら分かっただろう……それは――』
ズィズィキィの周囲の三本の棒はその回転速度を上げ、ズィズィキィに向かって紫色のビームの様な物を射出している。
「……何だ、これ、やばい……?」
ズィズィキィは必死になって棒から逃げようとするが、三本の棒はズィズィキィをその中心から逃がすことなく追いかけている。
「あれ……何スか?」
気が付けばズィズィキィは音を発生させる事を忘れ、棒から逃げることに必死になっている。
そして、棒の回転が最高潮に達し「チーン」と言う音と共に眩い光を発生させた。
そんな中、衛府博士のメッセージも終わりを迎えようとしていた――。
『そう、それは……雨合羽だよ!』
ズィズィキィはその動きを止められ、何故かクルクルと回りながらポーズを取り、その身に着けた衣服が白い光になってズィズィキィの身体を白いシルエットの様に映し出す――。
やがて「キュイン」や「ポンッ」などの音と共にズィズィキィの着衣が全身、ライムグリーンを基調とした可愛らしいミニスカートの姿へと変化した――。
「「「………………」」」
「………………」
三人とズィズィキィの時間が止まる……。そんな中、衛府博士の『魔法少女風にしてみたんだが気に入ってくれたかな?』と言うメッセージで更に時間が止まる――が……。
「わぁ……かわいい! いいなあ……」
羽衣のそんな呟きを聞いて、真っ先にタテが我に返る。
「あ、『祭囃子』!」
風がズィズィキィを切り刻む。続けて我に返ったサッチーも叫ぶ。
「穿て! 『鉄槍』!」
「……ぐぁ……」
二本の槍が空から降り注ぎ、一本をまともに喰らい、二本目を慌ててズィズィキィは避ける。
「逃がすよ! 響け! 『轟雷』!」
ズィズィキィに突き刺さった槍を目がけて、サッチーの雷撃が放たれる。
「ぎゃっ!」
地面に倒れたズィズィキィは、フラフラと立ち上がると、三人と、羽衣を睨み付ける。
「……覚えてろ……」
そして、翅を大きく広げると、その場から逃げだそうとする。
「逃がさねえっス……『イバラ』!」
ミッチーの斬撃がズィズィキィに絡みつき、その動きを縛る。そして、その後ろに控えていたサッチーがニヤリと笑う。
「羽衣に感謝すりゃいいのか、衛府さんに感謝すりゃいいのかわかんねえけどよ……」
サッチーの全身からライトイエローの光が迸る――。
光は段々とその光量を増し、サッチーの手の平に集まり始めると、小さな玉の様に変化した。
「ありったけだ……喰らいやがれ! 必殺! 『天地開闢』!」
サッチーが手の平にある光を握りつぶすと、そこから漏れた光が空に向かって伸びていく。
やがて、空高く舞い上がって行った光はそのまま、ズィズィキィに向かって極大の光となって降り注ぐ――。
「ひぃ……」
小さくそう呟くと、ズィズィキィの身体は一瞬で真っ黒に焦げてしまっていた……。
「ふう……やばかったッスね……?」
ポツリとミッチーが呟くと、サッチーも「パなかったな?」と答え、そのまま地面に座りこんだ。
「いや、タテも羽衣もサンキュな?」
「いえ、今回は姫のお手柄……ですよ」
サッチーの言葉にタテが苦笑いを浮かべそう答える。
「うふふ! おじちゃん、ほめてくれるかな?」
「おぅ……ビックリすんぜ? ツチノっち!」
サッチーが羽衣の頭をくしゃくしゃと撫でていると、ミッチーがふらりとズィズィキィの死体に近付く……。
「どしたん? ミッチー」
「いや、このままってのは後味悪いッスから……せめて……埋めてあげようかと……」
「そっか……オレも手伝うべ……」
そして、二人は羽衣とタテに馬車の中で待つように言い聞かせ、ズィズィキィの死体に近付いた――その時だった。
「……ブブブブ……」
仰向けに倒れていたズィズィキィが突如、地面を背にしたままドリフトするかの如く、地面を転がり回る。
「「うぉっ!」」
突然の出来事に、ミッチーとサッチーは驚き、後ずさる。
そして――ズィズィキィはそのまま、その場から飛び去ってしまった……。
「……生きてたんかよ……」
「逃げられたっスね……」
呆然としながら、二人はズィズィキィの去っていった方角を見つめていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「……チッ……」
ズィズィキィはその身に着せられた衣装――雨合羽をビリビリに破きながら、舌打ちをしていた。
自分が負ける事を考えていなかったズィズィキィは奥歯を噛みしめ、自分を負かした三人の男と一人の子供の事を考えていた。
――どうやって復讐しようかと……。
暫く逃走し、ふと考える……。
「……チィ……」
自分以外のメンバーは任務を達成したのか気になったズィズィキィは再び小さく舌打ちをする。
すると、目の前に白い人影が現れた――。
「……だれ……」
人影はズィズィキィの前にゆらりと立つ。
「イイ、ニオイ」
「……何だ、おま――」
――キュポンッ!
ズィズィキィの前に現れた、全身を薄桃色の甲冑で覆ったような人影は、小さく「モモカンノ……ニオイ……」と呟くと、その手に持った剣――正確には剣の形をした手を振るい、ズィズィキィを黙らせた……。
「ニオイ……ダケ……ナカ……マズイ……」
残念そうに呟くと、その人影は甲冑を溶かす様に身体から引き剥がし、再び、目的地に向けて歩き出した――。




