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大・出・張!  作者: ひんべぇ
第五章:秘密結社
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国境沿いの街

続きです、よろしくお願い致します。

「それでカンクーロ、お前さん、アレ(ラッコ男)とは戦ったのかい?」


 椎野達の馬車をコッソリと追い掛けつつ、リュージーはカンクーロに現状の任務達成状況を確認していた。


「ああ……良い所まで行ったんだけどな? 奴らの邪魔があってなぁ……」


 リュージーの様子から、カンクーロは自分の失態が、まだ主に伝わっていないらしいと考え、リュージーに嘘を付く。


「へぇ……そうなんだぁ……アンタ、尊敬するぜ!」


 リュージーはそんなカンクーロの様子を伺いながら、ニヤニヤと笑みを浮かべている。


 実際のところ、リュージーはカンクーロが、森の中で椎野達と戦闘を開始して、敗走した所まで全てを観察していた。


 ――全ては自らの主の為に……。


「じゃあ、まずはあいつ等から片付けんのかい?」


「ああ、特に……サラリーマン……あいつは邪魔だ……!」


 カンクーロの脳裏に、散々コケにされた記憶が蘇り、奥歯を噛みしめる。


「あ、そうだ何か、雌の内一匹は栗井さんへのお土産って言って無かったっけ?」


 リュージーの言葉に、カンクーロは若干冷静な思考を取り戻し「そういや、そうだな……」と呟く。


「ちっ……面倒だなぁ」


「同感だけど、自分の主の事をそんなに言うもんじゃないぜ!」


 そして、リュージーとカンクーロは、馬車がヘームストラとテイラの国境沿いの街に入っていくのを確認すると、そこで歩みを止め、様子を見る事に。


「で、どぅするんだぁ?」


 カンクーロの質問に、リュージーは二カッと笑い、答える。


「お前さんの『サラリーマン』を分断するって作戦は悪くないと思うぜ! 実際、栗井さんの話だと「奴は他の奴がいなきゃ役に立たない」らしいからな! お前さんが、してやられたのはジーウの奴が規格外だっただけだろうぜ!」


 そして、リュージーは続ける「だから、同じ作戦で良い」と……。


 だが物量作戦で椎野と他の面々を分断させようにも、実際にはカンクーロは授けられた『創伯獣(アークラフツ)』は手持ち分を使い切ってしまっていた。


「ってぇ事で手数が足りねぇよぉ……」


「大丈夫だぜ! なら、雑魚の『創伯獣(アークラフツ)』じゃなくて、猛者の『伯獣』で攻めればいい!」


 そして、リュージーは自らの背中の翅を擦り合わせ、甲高い音を出し始めた。


「――っ! 何だ!」


 そして、カンクーロの目の前に、三人の『伯獣』が姿を現す。


「どうよ……? 俺と同の部下だぜ!」


「どうも、あたくしは『蝶伯獣』のペタリューダです」


 ワンピース姿の女性が紫の翅を広げて、カンクーロに向けて静かにぺこりと頭を下げる。


「儂は、『蜂伯獣』の一人、エルガゾミノスじゃ!」


「僕は……『蝉伯獣』……ズィズィキィ……」


 槍を持った老齢の男性、眼鏡を掛けた少年が続けて頭を下げる。


「……こいつぁ」


「おぅ……熱いぜ!」


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 俺達はテイラとヘームストラの国境沿いにある街――ワナンカに到着していた。


 この街にある関所を越えれば、無事テイラ入国となる。


 街に到着した時点で既に日が沈みかけているため、今日の入国審査は受付終了らしい。仕方なく、俺達はこの街で一泊する事にした。


 そして、俺とサッチー、ミッチー、タテの四人は現在、男部屋にて重大な作戦会議を開いていた……。


「つまり……ミッチーはこの作戦には参加できないと……?」


「スンマセン……おやっさん……」


 そう言うとミッチーは悔しそうに奥歯を噛みしめ、顔を伏せる。


 ――俺には分かる……ミッチーも本当なら参加したいんだろう……。


「そうか……無理強いは出来ない、ただ……」


「はい、敵に漏らす事はしないッス!」


 俺はミッチーの心意気に感動し、無言で抱擁する。


「ツチノっち……オレは……やるぜ?」


「――っ! サッチー……良いのか?」


 サッチーは頷き、人差し指を立てると「ただ……」と付け加える。


「オレの敵は……一人だけだ……」


「ふっ……! 了解だ!」


 またしても、俺はサッチーと熱い抱擁を交わす。


「あの……父上?」


「タテ……どうした?」


 これまでポカンと口を開けていたタテがおずおずと手を上げる。


「これ……何の会議ですか?」


 ――っ! まさか、我が子が作戦を理解していなかったとは!


 俺はタテの肩に手を置き、優しく教えてあげる……。


「もちろん、混浴に行こうって話だ!」


 宿のおばちゃんに聞いたら、この街は温泉街で有名らしい。そして、すぐ近くに混浴が有ると言う事も……たまたま……聞いてしまった。


「いや、俺達としてはどうでも良いんだけどな? ほら、こう、観光スポット的な調査も必要かな、と……」


 ふぅ……サラリーマンは辛いぜ!


「えっと、じゃあ敵って……?」


「ほら、そのぉ……なっ?」


 ええ、勿論、うちの女性陣ですとも……。


「ほら……うちの女性陣にそんな恥ずかしいマネをさせるわけにはいかないから! だから、俺達男が頑張るんだ!」


 因みに、タテは何とか言いくるめて連れて行こうかと思ってる。だって、子供連れってちやほやされるんだもん!


「なるほど……流石、父上!」


 ――どうしよう、心が痛い……。


 俺は心苦しくなって、サッチーに目を向ける……どうやら、サッチーも同じく心が痛いみたいだ。


「エサ王、混浴とは、上手いのか?」


 動揺する俺に、もも缶が涎を垂らして聞いてきた。


「そりゃあもう! ごちそうですよ!」


 嫌いな男は滅多にいない! 何より俺には『ポーカーフェイス』があるからな!


「そうか、もも缶、ゆうり誘ってみる!」


「ああ、よろしくな……………………?」


 軽く手を上げて、もも缶を送り出した後、違和感と共に尋常じゃない焦燥感に襲われる――。


「ツ、ツチノっち……オレ、知らねぇぞ!」


「自分は……何も聞いてないッス……」


「ふふ……あせ、焦るなよ? そうだ、タテ! 今から散歩でも行くか?」


 早い所避難しないと……俺の危険が危ない!


 俺は「わあ、散歩ですか!」と喜ぶタテの手を取り、そそくさと部屋を出た。そして、宿の出口を出た所で――。


「旦那さん、どこにいかはるんどすか?」


 身体に走る衝撃で気を失ってしまった……。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「ん? ここは……?」


 目を覚ますと視界が真っ暗だった……目隠しか? どうやら、身体も縛られている様で自由がきかない!


「あ、おじちゃん動いたよ!」


 暗闇の向こうで羽衣ちゃんの声が聞える。どうやら、地獄では無さそうだ……。


「羽衣ちゃん? ここは、どこかな?」


「う? ういたちのおへやだよ?」


 ――成程、ここは女性陣の部屋……と。


「お、俺は一体……な、何も思い出せない!」


 取り敢えず、これで誤魔化せないかなぁ……?


「おじさん、目が覚めた?」


「あ、悠莉! これは一体どういうことだ?」


 悠莉の声がする方向に向かって叫んでみる。


「どうもこうも、旦那さん、誤魔化しは無駄どすぇ?」


「はい、三知さん、幸さん、タテちゃん、ももちゃんからの事情聴取は終わっていますよ? 椎野さん?」


 う、ハオカと愛里の声が怖い……聴取って何したんだ……?


「取り敢えず、ミッチーは無罪でサッチーは今、ダリーさんに叱られてるわよ?」


 うぉお、すまん! サッチー……俺のせいで……。


「えっと、それで……? 俺は……どうなるのかな?」


「うん……それなんだけどね? きっとおじさんも疲れが溜まっていたんだろうなって皆で考えてさ……」


 お、珍しく許されそうな感じ? このまま押し切って、次の機会を待つか……?


「そ、そうか! 俺も今後は(ばれない様に)気を付けるよ! うん、ちょっと疲れてたかも!」


 ここぞとばかりに俺は必死の弁明を行う。大丈夫……羽衣ちゃんもいるし……きっとこのまま許してもらえる!


「だから、私たちで椎野さんにプレゼントを用意しました」


 ん? 何か、嫌な予感が……。


「プレゼント……?」


「へー、どうやらここ、温泉街だけあってマッサージがお盛んらしいんどすよ。――皆はん、よろしゅうお願い致します!」


「「「う押忍っ!」」」


 ――ハラリ……。


 目隠しを外された俺の視界に映ったのは……。


「またか……また、お前らなのか……」


 どうして……どうしてこの国には、どの集落にもこいつ等がいるんだ……!


「や、やめろ……来るな……来るんじゃァない!」


「「「ラッセーラー……」」」


 夜の温泉街に俺の悲鳴が響き渡る……。


「ホンマ、旦那さんも言うてくれたら処理位、うちがしてあげますんに……」


 ――ハオカのそんな言葉を聞きながら、俺は再び意識を手放した……。

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