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大・出・張!  作者: ひんべぇ
第五章:秘密結社
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コンティノ村にて

続きです、よろしくお願い致します。

 コンティノ村に辿り着いた俺達は、真っ先に食糧の調達をするために、村の何でも屋みたいな店に立ち寄ったのだが……。


「え、明後日ですか?」


「そうなのよぉ、ごめんなさいね?」


 店のおばさんによると、この村はテイラ、ヘームストラの両方から行商人が来るらしく、定期便が来るのが明後日との事。当然、それまでは食糧品もそんなに量を確保できず、今店に並んでいる分は今から買ったとしてもテイラに着く前に傷んでしまうだろう、との事だった。


「やっぱ、どこの村も同じですかね?」


 俺が聞いてみると、やはり大きな都市から離れた村だと、どこも似たり寄ったりらしい。


 さて、そうなると……。


「と言う訳で緊急家族会議です」


 仕方なく、定期便が来るまでコンティノ村に滞在する事になったが、小さな村だとそんなに娯楽も無い……。


「家族……会議? エサ王、それは、何?」


 もも缶が不思議そうに、こちらを見ている。すまん、食べ物じゃないから、そんなに涎を垂らさないでくれ……。と言うか、俺の事で良いんだよな? 『エサ王』って……。


「ももちゃん、説明してあげるからこっちにおいで?」


 ピトちゃん(小鳥型)を肩に乗せた愛里が、もも缶においでおいでしている。俺は小さく、愛里に手で感謝の合図を送る。


「さて、話を戻そうか……」


 俺は皆に三つの案を出す。


 まずは、明後日までダラダラ過ごす。これは、俺としては大本命だ。


 次に、この村にもギルドがあったので、そこで何か依頼を探してみる。因みにこちらを選んだ場合、更に依頼の選別と集団行動を取るか、チームを分けるかでも相談だ。


 最後に、以前、他の村でもやった様に狩りをする。


「あ、ツチノさん、それは多分駄目です。非常時でない限り、許可証を持ってる『狩人』とかじゃないと、魔獣で無い獣を狩る許可は出ませんよ?」


「あ、そうなんだ? じゃあ、ダラダラかギルギルだな」


 と言う訳で皆の意見を聞いてみる。


「私はダラダラ……ですね。ちょっと、ここ数日、体調が悪くて」


「そうなると、オレもダリーちゃんに付いてたいんだけど?」


 幸夫妻はダラダラ……と。


「じゃあ、うい、ダリねーちゃんのかんびょーする!」


「僕は、姫と一緒が良いです!」


「あぁ……! 羽衣ちゃん、タテ君! あ、鼻血が……」


「ダリーちゃん……。その反応、オレの時に欲しかったんだけど……?」


 ダラダラ追加……。


「自分は、ギルド行ってみたいっス。言っちゃ失礼かもしんないッスけど、田舎のギルドでどんな依頼があるか、興味あるッス」


 ミッチーはギルドかぁ……。流石にこの状況で、一人依頼に行かすのも心配だしなあ。


「おじさんはどうするの?」


「うん? 俺か? そうだな、ミッチーを一人にするものアレだし、依頼に付いて行こうかな?」


「ほな、うちも付いて行きますぇ?」


 お、ギルギル追加っと、今のところは四対三か。


「あ、そうだ。あたしも、バーベキューで食べ過ぎちゃったから、ちょっと運動したいかも……」


 悠莉もギルギルっと。


「じゃあ、あと三人――愛里とピトちゃんともも缶はどうする?」


「そうですね、依頼内容にもよりますけど……。危険そうなら『治癒師』が必要になるでしょうから依頼、特に危険がなさそうならダラダラで良いですか?」


「ねえちゃと一緒」


 ピトちゃんはそう言うと、愛里の肩で「ピュイ」と一鳴きする。


「エサ王、こいつはエサ王と一緒か?」


 もも缶は悠莉を人差し指で差しながら、俺に尋ねてくる。


「うん、そうだけど『こいつ』じゃなくて、悠莉ね? あと、俺の名前は『椎野』だからね?」


 もも缶に、皆の名前を少しずつで良いから覚えてとお願いしておく。もも缶は暫く悠莉を見つめていたが、少しして……。


「もも缶は、ゆうりに付いて行く」


 こうして、ダラダラ村で過ごす組が四人、保留二人、依頼五人って感じか、良い感じにばらけたかな?


 ――そして、俺達依頼組と保留二人は早速、ギルドに依頼を見に来たのだが……。


「これはまた……凄いッスね」


「お、趣がありますね?」


「ピュイ……」


 ギルドは王都や、ナキワオと違うと言うか、何と言うか……。


 見た目、素朴な木造建築なんだが、入り口から既に蜘蛛の巣張ってるし、中から酒の匂いが漂ってくるわで……。


 正直、今までのギルドは役所みたいなイメージだったんだが、ここのギルドは場末のぼったくりバーって感じだな……。


「おじさん、あたし、おじさんの選んだ依頼に付いて行くから! 後は任せるね? 宿で待ってるから!」


「もも缶、ゆうりを追う」


「……良し。入ろう」


「旦那さんも随分と、図太くなったもんやわ……」


 意を決して中に入る俺達(二名逃亡)……。


 そこで俺達を待っていたのは――。


「いラッセーラー! コンティノ村ギルドによぉこっそお! 本日は発注ですか? 受注ですか?」


 この国……筋肉(ラッセラ)教率高くないか?


 目の前には、このギルドの職員で信者と思しき看板筋肉(ラッセラ)……。そして周りにはそんな俺達の反応を見て同情の瞳を寄せる、冒険者らしき方々。


 戸惑う――いや、げんなりする俺達の中から、ミッチーが一歩前に進み出る。


「すいません。受注したいんですけど、どんな依頼がありますか?」


 ――ザワッ!


 動揺する素振りを見せず、職員に話しかけるミッチーに周囲から賞賛と驚きの声が上がる。


 ミッチーは、会話の要所要所でポージングかましながら、依頼を選り分けていく……。所々で剣がチカチカ光っているのは、何だろう……? 照れてんのか?


「おやっさん、取り敢えず明後日まで暇潰せそうな依頼で良いんスよね?」


「おうっ、頼むよ!」


 暫くすると、ミッチーは給仕系の依頼と討伐系、二つの依頼を持ってきた。


 さて、どっちにしようかな?


「多分ですけど、給仕は止めておいた方が良いかと……」


「何で?」


「その……。ももちゃんが、つまみ食いする姿が目に浮かぶ様で……」


 成程、確かにアイリの言うとおりだな……。


「よし、じゃあこっちの討伐にしようか! 愛里もついて来てくれるんだろ?」


「はい」


「ピュイピュイ」


 愛里の言葉に「私も行く」と言わんばかりにピトちゃんがさえずる。


 俺はミッチーにも討伐系を選ぶことを伝えて、看板筋肉(ラッセラ)に受注の手続きをお願いする。


「はい、それじゃあこれで手続き完了です。それと、これは注意事項なんですけどぉ――」


 そう言って、看板筋肉(ラッセラ)は最近の魔獣目撃情報を教えてくれた。


 どうやら、普段、この辺には俺達が受けた依頼の討伐対象――聞いた感じだと牛っぽい――位しか魔獣がいないそうなんだが、ここ最近、他の魔獣の目撃情報が上がっているらしい。


「へぇ、どんな魔獣なんですか?」


「それがねぇ、二種類の魔獣――それも変異種らしいのよぉ……。確か片方は、茶色い毛皮の変異種で、もう片方は紫色の毛皮の変異種って話よぉ? お蔭でこの通り、貴方たちも受けた、その依頼の魔獣討伐で稼いでいた冒険者たちが引きこもっちゃってねぇ……。貴方たちも気を付けてねぇ?」


 俺達は看板筋肉(ラッセラ)に礼を言うと、そのままギルドから外に出る。


 その後、宿に戻り悠莉に受注した依頼の内容と、変異種の目撃情報を伝える。そして改めて依頼組で話し合った結果――。


「変異種に会ったら、基本は逃げる方向で! 後は、王様かナキワオの寺場博士か衛府博士に連絡してお任せしよう!」


 俺がそう確認すると、皆も後ろめたさはあるものの素直に頷く。


 翌日の早朝に依頼に出かける事をダラダラ組に伝え、今日のところは俺達もダラダラ組に参加する――。


「おじちゃん、おみやげ話、わすれないでね!」


「おー、牛の魔獣の写真でも撮って来るよ!」


 正直、このまま明後日までダラダラしていたい……。

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