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大・出・張!  作者: ひんべぇ
第四章:第二陣達
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暗躍と旅立ち

続きです、よろしくお願い致します。

 ――テイラ某所――


「おや、やっとのご到着ですね? ビオさん、クリス君?」


「あ、ああ……すまない、栗井殿」


 クリスを連れてヘームストラ王国を出たビオは、隣国テイラの某所にて栗井博士と合流を果たしていた。


「それで……? クリス君は協力してくれるって事で良いのかな?」


 栗井博士はクリスを値踏みする様に、ジィッと見つめる。クリスはその視線を不快だとでも言わんばかりに「フンッ」と一声上げる。


「あくまでも、オレとアンタラは対等だ……。オレがいねぇとこの化物共の制御なんざ出来ねえんだしよ」


 栗井博士はその回答でも十分満足できたのか、微笑みながら、何度も頷く。


 そして、栗井博士は今後の方針について、語り始めた。


「まずは戦力の増強ですね……」


「アアン? 戦力なんざ、あの四匹――『四伯獣』がいりゃ十分なんじゃねぇの?」


 栗井博士の提案に、クリスが「必要ない」と断じる。そこで、ビオがおずおずと手を上げる。


「い、いえ……『四伯獣』もまだ、調整段階です。今後の強化と教育にかかる時間を考えると、手頃な戦力は必要かと思います」


「……チッ! アンタがそう言うなら、そうなんだろうよ。けど、俺の『創獣』じゃ駄目なのか?」


「数だけなら『創獣』でも問題はないんですが……。単純な数だけなら、覆す人達もいますからねぇ……」


 その時、彼らの頭に浮かんでいたのは、それぞれ別ではあったが、栗井博士のその言葉は、彼等に戦力の増強――つまり、新たなる『伯獣』の調達が必要であることを確信させた。


「何でか『創獣』から『伯獣』への強化は成功してねぇからな……しようがねぇ」


「賛同して頂けて何よりです……」


「それで、栗井博士……。その戦力の当てはあるのですか?」


 ビオの問い掛けに、栗井博士はニタリと笑い「勿論です」と答える。


「ティグリ! サブラ!」


「ここに……」


「何ディスか?」


 栗井博士がパチンと指を鳴らすと、二つの人影が現れる。


「へぇ……。もうこんなハッキリ喋るのか?」


 クリスは心底感心したと言わんばかりに口笛と拍手を送る。


「主のお蔭です……」


「サブラの頑張りディスよ!」


 意見の食い違いに、二匹の『伯獣』が睨み合う。その二体を制し、栗井博士が二匹を呼び出した用件を伝える。


「戦力の当て……何ですが、現在製造中の『伯獣』達はまだまだ、完成に時間がかかります。なので、既製品を利用しましょう?」


「「既製品?」」


 ビオとクリスの言葉が重なる。その反応が自分の予想通りであったことが嬉しいのか、栗井博士は再びニタリと笑う。


「ジーウの森とグリマー湖……」


 ジーウの森、と言う地名が出た瞬間、クリスの全身から滝の様に汗が流れる。


「調査内容が確かならば、王都ルセクで研究していた中でもこの二匹は別格ですね。一方は比類なき防御力と攻撃力、もう一方は異常なほどの再生能力」


 栗井博士の説明に、同じ研究者であるビオは「成程」と頷いている。クリスは顔を青くしながら黙って聞いている。


「まあ、ジーウの方は多少の誇張はあるでしょうが、『創獣の欠片』を埋め込んでしまえば良い戦力になるでしょう。グリマーの方は既に退治されたらしいですが、細胞の欠片だけでも入手できれば、今後の『伯獣』に超再生能力を付与出来るかもしれません」


 栗井博士はそこまで言うと、二匹の『伯獣』に向き直る。


「お前達の部隊から、それぞれ一匹づつ選別して向かわせろ! ジーウの変異種は瀕死でも構わん、捕まえて来い! グリマーの変異種は指先でも目玉でも何でも良い、細胞を持ってこい!」


「「はっ!」」


 栗井博士の指示で、二匹の『伯獣』は再びその姿を消す。


 二匹が去った後、クリスがボソッと呟いた。


「アレは……無理だ……アレは、レベルがちがう……『伯獣』なんて可愛いもんじゃねぇ……」


 クリスの呟きは、その声の小ささのせいで、栗井博士にもビオにも届かない――。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「ガウッ!」


 暗闇の中、虎の伯獣――『虎伯獣』――ティグリが吠える。すると、闇の中をモゾモゾと蠢く数個の影があった。


「主の命だ……誰か、ジーウに行き、変異種を捕まえて来い!」


「その役目、引き受けます」


 影の中から、一匹の『伯獣』が前に出る。細身の身体に黄色の毛皮、黒い斑点のその『伯獣』は更に一歩前に出ると、ティグリに向かって首を垂れる。


「『豹伯獣』が一人、『狩猟豹』、ガトパルドでございます。愚鈍な森の獣如き、瞬く間に捕まえてごらんに入れましょう」


 そう宣誓すると、ガトパルドの姿はあっという間に見えなくなってしまった――。


 ――一方、サブラは……。


「シャァァァァ……」


 長い舌を震わせ合図すると、ティグリの部下と違い、姿も影も見えないが、ズルズルと音だけは聞こえる。


「誰か、グリマー湖に行くディスよ?」


 サブラの要点を省いた説明に、困惑するかのような騒ぎ声が響く。


「リーダー……。それ、どうイウこと?」


 困惑する騒ぎ声を掻き分けて、テカテカとした灰色の身体、毛の無い頭をした『伯獣』がそっと前に出る。


「ん? あ、そうだった、グリマー湖辺りのクレーターで、変異種の身体の欠片取って来いってさ! 丁度良いディス。ミクリス、お前行け!」


 ミクリスと呼ばれた『伯獣』はいきなりの指名に「えっ?」と驚くが「まあ、ゴミ拾い位なら……」と渋々頷く。


「えーっと、それじゃあ『守伯獣』、『家守』のミクリス、行ってきまーす」


 こうして、ジーウの森とグリマー湖に向けて、二匹の『伯獣』が忍び寄る――。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「さて、皆準備できたか?」


 皆に聞きつつ、俺自身も持ち物チェックを怠らない。いつもの装備に、今回はテイラに入国する事もあるから、出国、入国用の書類一式、と。


「うん、俺の方は問題無いな」


 例の栗井博士がはっちゃけちゃった発表会から二週間、すぐにでも追いかけたいところだったが、事はテイラと言う国も関わってくるため、アルカ様が外交ルートで根回ししたり、俺達の方でも色々と準備があったため、出発が遅くなってしまった。


 まあ……その甲斐はあったが。


「じゃ、じゃあ、おじさん、もう一回確認してみても良い?」


「うん? ああ、良いぞ。俺ちょっと衛府博士の所に行ってくるから、十分位したらよろしく!」


 悠莉に伝えて、家を出る。


「おじちゃん、ういも! ういも行く!」


 外に出ると、後ろから羽衣ちゃんが飛びついて来た。


 羽衣ちゃんはいつもの席(俺の頭)に座ると、そのまま髪を引っ張り、俺を衛府博士達の家までナビゲーションしてくれる――。


「さよなら……友よ……」


 小さな声で、長い友に別れを告げながら、ナビに従い歩き出す。


 暫く歩くと、俺達は目的地に辿り着く。


「ほーらーこーちゃーん、あーそーぼ!」


 羽衣ちゃんが家の扉をペチペチと叩いて大声を上げる。


「はい? はいはいはい? なーあーにっと」


 すっげぇ棒読み……。


「ありゃ、サラリーマン君に園児ちゃん? どうしたの?」


 表に出てきた衛府博士は、その白衣から煙をプスプスと上げながらキョトンとしていた。


「いや、俺達今日出発するんで、衛府博士と寺場博士を呼びに来たんですよ」


 確か、見送りに来てくれるって……言ってたんだけど?


「ん? んん? ああ、そうか、もうそんな時間? ちょっと待ってて、ツルピカ先生呼んでくる」


 衛府博士は一旦家の奥に引っ込むと、今度は同じく白衣から煙を上げる寺場博士を連れて来た。


「あっ! ツルピカ先生!」


 寺場博士を見つけた羽衣ちゃんは、俺の頭から寺場博士の頭へと脅威のジャンプを披露する。


「うぉっ! あぶねぇ!」


 いきなりの突撃に、寺場博士はビックリし、倒れかけていたが何とかその衝撃に耐え、踏み止まる。


「ああ、何か、すいません……」


「いや、まあ、大丈夫だよ」


 寺場博士は苦笑しながら、羽衣ちゃんが落っこちない様に手で支える。


「で? 今日行くんだっけ?」


「はい、それで、そろそろ出発するんで、挨拶に」


 寺場博士は「そうか……気を付けてな」と言って、餞別として酒を数本手渡してくれた。


「じゃあ、私からは園児ちゃんにこれをあげよう!」


 何だ、これ? 棒……?


 とにかく、羽衣ちゃんにくれると言うなら、本人にお礼をさせるべきかなと思って羽衣ちゃんを見る。


「キャーッ! 髪抜けないね!」


 ――ッ! な、何だって? あれ、面白がってたの……?


「これこれ、園児ちゃん? これ、私からのプレゼントだから」


 寺場博士の頭をペチペチと叩いていた羽衣ちゃんは、衛府博士からの餞別を受け取るとキョトンとした顔で「これなーに?」と聞く。


「ああ、それは後のお楽しみだ……。中に説明書、入ってるから」


 それだけ言うと、衛府博士は「じゃ、お休み」と言って家の奥に戻っていく。


「衛府君……。アレを渡したのか……」


 寺場博士は気まずそうな顔で、俺と羽衣ちゃんの顔を見て「すまん」とだけ謝ってくる。


 何の事だと問い詰めようとした時だった――。


 ――プルルルルッ!


 俺の電話が鳴りだした。


「お、もしもし?」


『あ、え、えっと、おじさん? あたしだけど?』


「無事つながったみたいだな? 良かった良かった」


 俺は電話の向こうの悠莉に向かって「バッチリ」と伝える。


 ここ数日、俺達が一番時間を掛けたのはこの『報連相』と言うスキルを他の皆に習得させる事だった。


 衛府博士、寺場博士や、こちらの世界で指導書の作成経験がある人達に協力して貰い、昨日、遂に皆(国王含む)が『報連相』を習得出来た。


 因みに最後に習得したのが悠莉であり、昨日から事あるごとに「確認だ」と言って電話を掛けてくる。


『うん、ケータイってやっぱ便利……』


「まあ、良いや。今から、そっちに戻るから」


『うん、もう皆出発準備できてるから!』


 悠莉は『待ってるね』と言って通話を終了させた。


「じゃあ、寺場博士、行ってきます」


「ああ、気を付けてな?」


 俺は寺場博士から羽衣ちゃん(バトン)を受け取り、頭に乗っけると来た道を戻る。


「あ、結局アレって何だったんだろう?」


 まあ、本当にヤバいモノなら寺場博士が取り上げてるか?


 この時の俺は、そんなのんきな事を考えながら、待っている皆の元へと急いだ――。

一応、これで四章終了です。引き続き、よろしくお願い致します。


※2014/08/11

 「国王様」を「アルカ様」に修正。

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