サラリーマンの歌
続きです、今回は再会回なので、羽衣、タテ成分が若干多めです。
苦手な方はご容赦ください。
以上、よろしくお願い致します。
「サッラサッラ、サッラサッラ、サッラリーマーン~♪」
俺達がナキワオの街に戻った次の日、俺は羽衣ちゃん、タテを連れて帰還の報告と留守の間、羽衣ちゃん達がお世話になった事のお礼をする為、各所を回っていた。
「ちょーざん、さっびざん、あったりまえ~、きゅーしゅつだって、どんと来い~♪」
気のせいかな……? さっきから、心が……痛い。
「しゅっくはっくだっいきんじっばらっでね? いっどーけーひはみっとめまっせーん♪」
「羽衣ちゃん……? その歌……何かなぁ?」
「んー? サラリーマンのテーマ! おじちゃんの為に、タテちゃんと二人で作ったの! ねー?」
「はいっ! 父上の屈強さを後世に伝えるために、姫と一緒に頑張りました!」
「そ、そっかぁ……」
二人供、鼻息荒くして「偉いでしょ? 褒めて!」って顔をしている。どうしようか……? ここは厳しくいくか……?
「う、うん、凄いな、二人供!」
俺には……無理だった!
「そうでしょ? いま、二番まであるの!」
羽衣ちゃんが「聞きたい? 聞きたい?」と俺の髪の毛を掴んで、身体を揺する――
「あっ、待って羽衣ちゃん! おじちゃんの長い友達が! 根っこが死んじゃう!」
現在、俺の頭は二人乗りになっている、右頭に羽衣ちゃん、左頭にタテが捕まっている。つまり、俺の毛根が危ない!
「あ、ほら、羽衣ちゃん! 学校! 学校着いたから、おじちゃん、先生の所に案内して欲しいなぁ!」
羽衣ちゃんとタテは揃って「はーい」と言うと、俺の髪の毛をハンドル代わりに職員室まで誘導する……髪が……。
「みぎー!」
「左です!」
「「まっすぐ!」」
職員室の前まで辿り着くと、俺は少し強めにドアをノックする。
「はーい、どうぞーん」
俺が「失礼します」と言って入室すると、そこには逆三角形の益荒男がいた。
「ラ、ラッセラ……?」
「っ! ラッセラ!」
無意識の内に俺は益荒男と握手を交わしていた――
「って、違う!」
まだ、毒が抜けきっていない様だ……。
「あ……。突然すいません」
「いえいえ、炭鉱経験者は貴重ですから……あら? 確か、羽衣ちゃんの所の……?」
そこで俺は、改めて羽衣ちゃんとタテの担任である、リエミルバ先生に留守中、お世話になった事にお礼を述べる。
リエミルバ先生は昨日の襲撃者に対応できなかった事を詫びていたが「あれは仕方がないですよ」と言って、気にしない様に伝えておいた。
因みに、昨日はあの後、ブロッドスキーさんと、ブロッドスキーさんが連れて来た応援によって襲撃者――クリスとか言う元冒険者はガッチガチに拘束されていた。
クリスは王都に護送して裁判するらしく、ブロッドスキーさんは今朝方「とんぼ返りだよ……」と疲れた顔で教えてくれた。
その後も他愛無い世間話をリエミルバ先生としていた。
「それじゃあ、失礼しました」
「はい、またいらして下さいねーん」
「「先生、さようならー」」
「はい、さようならーん」
さてと、取り敢えず挨拶回りはこれ位にして、アンさんの様子でも見に行くか……。
「おじちゃん! 次、どこ行くのー?」
「王都からのお客様の所だよ? 羽衣ちゃんとタテに会いたいってさ」
「ふぁー、タテちゃん! ういにお客様だって!」
「父上、どんな方なんですか……?」
俺が二人にお客様がこの国の王女様であることを教えると、羽衣ちゃんは目をキラキラさせて「お姫様!」と喜び、タテは「姫は姫だけです!」とプリプリと怒っていた。
宿に着くと受付でアンさんを呼び出してもらう様に伝える。すると、俺が来たら部屋に通す様に言われていた様で、そのまま部屋まで案内して貰う。
「失礼します」
「はい、どうぞ」
部屋に入ると、アンさんは俺達が来るのを予想していたのか、お茶とケーキを用意して待ってくれていた。
「まあまあ、椎野様、わざわざ足を運んで頂きまして、ありがとうございます。こんなに可愛らしいお客様まで連れて来て頂いて……」
アンさんは羽衣ちゃんとタテを見ると目を輝かして喜ぶ。
「改めまして……妾はヘームストラ王国王女、アーニャ=ファミス=ヘームストラですわ。どうぞアンとお呼びくださいな?」
そう言うと、アンさんはスカートを摘み上げて二人に挨拶し「よろしくお願い致しますわ」と付け加える。
「タテちゃん! お姫様だ!」
「……」
俺の頭の上では羽衣ちゃんとタテが、興奮して俺の頭を左右に揺する。
「おじちゃん、おじちゃん! ういも! ういもご挨拶する!」
羽衣ちゃんが「下ろしてー」と言うので、俺は二人を下ろす。
「すあかり ういです! よろしくおねがいしますわ!」
「タ、タテです……よろしくお願い致します……わ?」
二人はアンさんを真似しているのか、服の裾を持ち上げて、アンさんと同じ様に挨拶をする。
「あら……。まぁまぁまぁ!」
アンさんは「可愛らしいですわ!」と言って羽衣ちゃんとタテを抱き寄せ、頬擦りする――この人、ダリーさんの同類か……?
その後、ケーキに惹かれたのかどうかは分からんが、二人はアンさんに懐いた様だった。
「そうですわ! 妾からお二人にお土産があるのですわ」
そう言うと、アンさんは部屋の洋服ダンスの中から、二着のドレスを引っ張り出して来た。
「ん……? 二着?」
「はい、今日お会いしてみて、きっとお二人にお似合いだと確信が持てましたわ!」
アンさんは「さあ、お着替えしましょう?」と言って、二人を脱衣所に連れていく――
「え……? ち、父上! アン王女様? これ、女の子の服じゃないですか?」
脱衣所から聞こえてくるタテの声と「まあまあ」と言うアンさんの声――すまん……タテ!
「まぁまぁまぁ! とてもお似合いですよ?」
そんな声と一緒に、三人が脱衣所から戻ってくる。
「おじちゃん! どう? うい、にあってる?」
「ち、父上ぇ……」
「おう! 羽衣ちゃんもタテも似合ってる! 可愛いぞぉ!」
羽衣ちゃんはクルクルと回りながら、タテはスカートの裾を押さえながらモジモジと俺の反応を伺っていた。
俺は二人を褒めてから、羽衣ちゃんを左腕に、タテを右腕にぶら下がらせ、クルクルと回ってみる。タテは最初こそ、恥ずかしがっていたが、やがて羽衣ちゃんと一緒にキャアキャアとはしゃいで喜んでくれた。
「このお洋服……ホントにもらっていいの?」
「ええ、是非貰ってやってくださいな? それで、また妾におめかしした姿を見せて下さいませ」
帰り際、羽衣ちゃんがアンさんに聞くと、アンさんは二人に頬擦りしながら「また来てね?」と言って宿の出口まで見送ってくれた。
「サッラサッラ、サッラサッラ、サッラリーマーン~♪」
帰り際、羽衣ちゃんはご機嫌で鼻歌を歌っている――この歌、いつか、いつかさり気なくやめさせないとな……。
「羽衣ちゃん……タテも、長く留守にしちゃってごめんな?」
帰り際、俺は羽衣ちゃんに留守番させて、怖い目に合わせたことを謝る――街に残った方が安全だと思ってたのに……
「ううん、うい、へーきだよ? ラッコちゃんが助けてくれたし、おじちゃん、ピンチの時に助けてくれたもん!」
「はい……父上は、やっぱり凄いです!」
二人は俺の頭の上で相変わらず、鼻歌まじりに俺の長い友を毟っている。
俺は改めて、帰って来たと言う実感を感じながら、皆が待つ家に向けて歩く。
「ただいま」
「はい、お帰りなさい、椎野さん、あら……?」
家に帰り着く頃には羽衣ちゃんとタテは眠りについていた。俺は「風呂に入ってくる」と伝ると、羽衣ちゃんを愛里さんに、タテをハオカに預ける。
「おじさん? タオルと着替え、ここに置いとくね」
「ありがと、羽衣ちゃんとタテは?」
「まだ寝てるー。後で愛姉とハオカがお風呂に入れるって言ってた」
俺は「了解」と伝え、悠莉ちゃんが去っていく気配を確認すると、湯船から出る。
「サッラサッラ、サッラサッラ、サッラリーマーン~♪」
――いかん、何か汚染った……
因みに、今回長い友の惨殺シーンがあったので、今日からタグに残酷な描写ありを追加しようと思います。
※2014/05/16 22:43 「移った」を「汚染った」に修正しました。




