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大・出・張!  作者: ひんべぇ
第三章:王都訪問
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謁見 EKKEN -アルカ=トラス-

続きです、よろしくお願い致します。

「ああ、緊張する」


『先輩、嘘ならもうちょっと気の利いた嘘ついて下さいよ。その声、全然緊張してないじゃないですか……ボクの方が緊張している位ですよ』


「お前、どの口が、そう言う事を……」


 俺は現在、王城内の更衣室で着付け中だ。


 朝、王城に着くなり半強制的に、更衣室に放り込まれ、メイドっぽいおばさま方が俺の髭を剃ったり、髪を整えたり、服を着せたりと、されるがままだ。


 余りにも手持無沙汰になってしまったため、後輩に電話で実況中継している。


『そう言えば、昨日の夜、先輩から報告のあった件ですが、まず遺跡のお話、これは学者先生に意見を聞いてみたんですが、その先生曰く「幻覚以外に力の無い生物を封印していたのなら、その封印自体が何らかのスイッチの可能性が高い」だそうです』


「それって、封印が解けた事で遺跡が壊れるとか?」


『でも、壊れてないんですよね……? なら、他に何か変化があるかも知れません』


 ――嫌なこと言うなぁ……


 内心うんざりしながら、否定できないのが嫌なんだよな。こっち来てから、トラブル続きだしなぁ。


「その事は、後で謁見の時にでも相談してみる……」


『それがいいと思います。次ですが、以前、そちらと地球の再接近の話はしましたと思いますが、その時に研究者チームの話もしましたよね?』


 俺は「おう」とだけ返事する。


『今回の謁見で、彼らの受け入れ承認と可能であれば、ヘームストラ王国からも調査チームを出して頂けないかなぁっと』


 要は、あれか? 成功するかどうかは分からんが、地球側から調査隊を派遣する、ヘームストラ側からも調査隊を派遣する、互いに行き来出来るかの確認も出来るって事か……


 俺が確認すると、後輩は『そうです』と答える。


『もっと言ってしまえば、これが成功して、また再接近が起こる様ならば、交換留学の制度を作ってしまいたいな……なんて社長は言ってましたけど』


「へぇ……あの社長も偶には、言い事思いつくんだな……」


 そこで、タイミングを計ってくれていたのか、おばさま方から、着付けが終了したと告げられる。


「良し、終わったみたいだ」


『了解しました、それじゃあお、先輩、よろしくお願いします』


 そう言って、後輩は通話を終了させる――最後に『後で写真送って下さいね』とだけ付け加えて。


「それでは、待合室にご案内致します」


 またまたタイミングを計ってくれたおばさま方に案内され、俺は待合室に入る。


 俺が待合室に入ると、既にミッチーとサッチーが着付けを終えて待っていた。どうやら、二人もたった今終わったところらしい。もしかして、ある程度時間を合わせてくれたのかな……


 そんな事を考えていると、今度は女性陣が纏めて入ってくる。


「「「おおっ!」」」


 扉が開いた瞬間、フワッと空気が華やぐのが分かった。


 皆、色違いのお揃いの服で決めたらしく、チャイナドレスの様な格好をしていた。俺達が鼻の下を伸ばしているのに気付いた悠莉ちゃんは、勝利のブイサインを決めている。


 そして、俺達が合流するのを確認すると、誰かが知らせたのか、ラヴィラさんとブロッドスキーさんが入室してくる。


「ふむ、皆準備できたようだな……?」


 ラヴィラさんは、俺達を見回すと納得した様に頷き、俺達を謁見の間に案内するから付いて来る様にと歩き出す。


 やがて、謁見の間であろう部屋の前まで俺達を連れてくると、一度こちらを向いた。


「ここが、謁見の間だ……心の準備は良いか?」


 俺達は無言で頷く――


「騎士団長、ラヴィラ=コルドです! 『月の住人』一行をお連れ致しました!」


 ラヴィラさんは扉を力強くノックすると、入室許可を求めて声を掛ける――って言うか、『月の住人』って何?


 戸惑う俺達を他所に、部屋の中から「どうぞ」と声が聞える。


「失礼します――」


 てっきり、玉座とかあると思ってたけど……


 謁見の間に入ると、そこは俺の予想に反して質素な感じだった。中央に、丸いテーブルが配置されており謁見の間と言うよりは、会議室と言った感じか……


「そなた達が、『幻月』からのお客人ですか……」


 俺が部屋の様子を伺っていると、部屋の入り口付近で俺達を待ち構えていた三人の内、好々爺と言った感じの中央の人物が一歩前に出て、俺達に語り掛けてきた――この人が、国王陛下かな?


 俺は同じく一歩前に出て『名刺交換』を発動する。


「どうも。薬屋 椎野です。よろしくお願いします」


「儂はヘームストラ王国第五十六代国王、アルカ=トラス=ヘームストラである! 以後、お見知り置きを……」


 国王陛下――アルカ様は、俺のギルドカードを受け取ると、俺と同じ様に腰を折り優雅に挨拶を返してくれた。


 その後、スキルをいきなり発動したことを謝っておいたが「面白い体験が出来た」と喜んでくれた。危ねぇ……つい、癖でやっちまった。


 次いで隣に立っている宰相さんにも同様に『名刺交換』を発動する。


「これはどうも、御丁寧に……私はヘームストラ王国宰相、ペテロ=ヴィ=パストですじゃ、以後、よろしくお願い致します」


 さて、問題は次の女性だ……この人、どっかで……?


「「「あっ!」」」


 その時、愛里さん、悠莉ちゃん、ハオカから声が上がる。悠莉ちゃんは俺の背中をチョンチョンと突くと、小声で――


「あの人、アンさん!」


「――っ……はぁ?」


 思わず大きな声を上げそうになり、慌てて口を押える。そして、女性をよく見る。あ、目を逸らされた……でも、間違いない今日は髪をアップにして下ろしてないし、甲冑でもなく、ヒラヒラのドレスで化粧もしてるから分かり辛いけど……間違いない! アンさんだ!


 俺はそっと、ラヴィラさんとブロッドスキーさんを睨む。


 二人は、気まずそうにフイッと目を逸らす――やっぱ、知ってたな……?


「ふぅ……」


 俺は一つ深呼吸をして『ポーカーフェイス』を発動、続いて『名刺交換』を発動する。


「ふふふ……妾はヘームストラ王国王女、アーニャ=ファミス=ヘームストラです。改めて、よろしくお願い致しますわ」


 王女様――アンさんは「バチコンッ!」と音がしそうなほど勢いよくウィンクするとスカートを摘み上げ、優美に挨拶する。


「三人とも、人が悪いですよ……」


 俺がラヴィラさん、ブロッドスキーさん、アンさんを睨むと、アンさんが「ごめんなさい」と前置きしてから、いたずらが成功したかの様に「でも、我が家にご招待しますとお約束したじゃありませんか?」と言っていた。


「はあ……降参です……」


「ふむ……娘よ……その話は、後で聞かせて貰おうかの?」


 俺がアンさんに白旗を上げていると、アルカ様が若干お怒りの様子でそう告げる――どうやら、引き分けの様だ。


「ま、まあ、挨拶も済んだ事ですし、早速ではありますが、本題に移らせて頂いても宜しいでしょうか?」


 宰相さんがアルカ様とアンさんを宥めながら「さぁさぁ」と皆に着席する様に促す。


 そして、俺達が王都に来た最大の目的が開始した――


「――では、変異種とは突然発生するものではないと?」


「はい、今までのケースを地球にいる私の同僚に分析して貰ったのですが――」


 アルカ様との話の内容は、まずは変異種についてだった。


 ここ最近、変異種の発生報告が増えたために、俺達の意見が効きたいらしい。そこで俺が報告したのは、後輩に分析して貰った変異種の誕生メカニズムである。


 まず、過去誕生を目撃した二例――グリマー湖と遺跡の変異種はいずれも同型の魔獣が互いを喰らいあった結果誕生している。


「つまり……魔獣は自分と同型の魔獣を喰らう若しくは倒す事で強力になる可能性があると?」


「今までは一気に同型の魔獣を喰らう事が無く、長い年月を掛けて来たのだと思います。恐らくですが、餌不足などが起きた時に共食い行動を取った個体が徐々に強くなり、一定の強さを超えた瞬間――変異したと考えられます」


「では、ここ最近の発生報告は?」


「それに関しては地球の接近が関係していると考えています。空から地球が迫って来て、生存の危機を感じた魔獣達が本能のままに周りのモノ――同型魔獣を含めて喰らいまくったんでしょう」


 俺は「あくまでも予想ですが」と付け加えて、報告を終える。


 アルカ様は、俺達に礼を言うと、「今後も協力をお願いしても良いか?」と聞いて来たので快諾しておく。


 次は後輩から頼まれていた、地球再接近について――


「我が国でもそれは確認出来ておってな……そうか、交換留学か……それは面白いな……」


 これに関しては、アルカ様、宰相さん、アンさんは強い興味を示した。早速、次の再接近に備えてチーム編成を検討してくれるらしい。


「そう言えば、次の接近はやはり、ジーウの森ですか?」


 俺が尋ねると、宰相さんは首を横に振る。


「恐らくですが、ナキワオとグリマー湖の中間地点でしょう……」


 良かった……正直、あのラッコ男には二度と出くわしたくないんだよな……


「あれ……? じゃあ、急がないと……」


 よく考えてみれば、接近まであと何日位だ……?


「はい、後、二週間ほどと思われます。この後、私は調査隊を編制しますので、申し訳ありませんがクスリヤ殿……二日後に王都を出発して頂くかと思います」


 そう言うと、宰相さんは「本当に申し訳ない」と頭を下げてくれる。俺は「全然問題ないです」と伝える。他の皆も特に問題ないと言ってくれたのが救いだな……


「感謝します……では、会談としては終了で宜しいでしょうか?」


 宰相さんが、俺達とアルカ様に確認を取り、両者問題無い事を確認すると、「食事会の準備をします」と言って退室していった。


「それでは、妾も失礼致します――」


 アンさんはそう言うと、そそくさと退室していく。アルカ様の話では、お色直ししたいと言っていたそうだ……


 俺達は食事会の準備が整うまで、再び待合室で待たされることになった。


 ――ああ、疲れた……早く、この服脱ぎたい……


※2014/08/10 以下、修正しました。

 この人が、国王様かな→この人が、国王陛下かな

 国王様をアルカ様に修正。

 

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