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大・出・張!  作者: ひんべぇ
プロローグ
4/204

メモリー・オブ・ザ・トリップ

続きです、読んでいただければ幸いです。

 あの時俺は、数日間の泊まり込みの末に、緊急の顧客対応が無事終わり、今日はこのまま直帰する事を会社に連絡したんだ。


「お疲れー、こっちは、お客様とは一応、話はついたから。対応の詳細とここ数日の議事録は、さっきメールで送っといた。後は、あぁ、システムの改善要求が少しあるみたいだから、後日その辺詰めていこうって部長に伝えといてー? そいじゃぁ、俺はもうこのまま直帰するから、後は宜しくー」


「はい、先輩。お疲れ様でしたー」


 会社に連絡した後は、夕飯の材料を買いに、近所のスーパーに立ち寄ったんだ。


 スーパーで、とりあえず目的のものと幾つか、衝動的に思い出した殺虫剤とか煙草とかを買って、さぁ家に帰るかって所で、子供を見かけたんだ。


 その子供は、親とはぐれたのか、周りをキョロキョロ見回して、親がいないのを確認したのか、泣きそうになってたんだ……あぁ、こりゃ泣くなぁと思って、その場から逃げようとしたんだが、その子供は、泣くのをグッと堪えて、顔を上に向けたんだ。


 何か、その様子が健気というか、感心しちゃってなぁ。気づいたら、柄にもなくその子供――羽衣ちゃんに「どうした?」って声掛けちゃってたんだよ。


 そこから先は、まず、スーパーに店内放送かけてもらったんだが、反応があまり良くない。もしかしたら、外に出ているのかと思って、迷子センターに、一旦、羽衣ちゃんを預けて、俺はスーパーの外の駐車場に出てみたんだ。


 そしたら、ビンゴ! 羽衣ちゃんの名前を必死で呼んでいる女性がいたんで声を掛けてみたんだ。案の定、羽衣ちゃんのお母さんみたいだった。


 俺はお母さんに、その場に待っているように言い聞かせて、迷子センター担当のバイト――桃井さんに事情を説明して、一緒に羽衣ちゃんをお母さんの所に連れて行ったんだ。


 こうして、迷子を無事にお母さんの元に届けたんだ。


 ――一回はな。


 暫く、羽衣ちゃんのお母さんに、桃井さん共々、感謝感激雨あられって、状態だったんだが、突然、近くで悲鳴が上がったんだ。


 辺りを見てみると、セーラー服の女の子が、空を見上げて何やらキーキー騒いでいた。あぁ、あれ、悠莉ちゃんだったのね。


 まぁ、ともかく俺達も、つい空を見上げてみると、目の前に巨大な球体が迫っているじゃないか。多分、その時見た球体が、羽衣ちゃんの言ってるお月様だよ。


 俺はその球体を観察していたんだけど、それがやはり月みたいなんだよ。


 それに気付いた人が俺以外にもいたんだろうな。俺の後ろの方から、「隕石だ!」って声が上がって、そこからはもう、大騒ぎだよ。「衝突する」だの「地球の終わりだ」だの叫ぶやつまでいて、もう、大混乱。あぁ、あれは三知君と幸君だった訳ね……


 俺? 俺はやばいなぁと思いつつも、動けずにいた口ですよ。いや、ホント情けないんですけどね。


 その時だよ。空の球体がいきなり眩しく光ったと思ったら、グングンこっちに近づいてきたんだよ。咄嗟に目をつぶって、縮こまっていたんだけど、いくら時間が経っても何かがぶつかってくる気配がない。


 おかしいなぁ、怖いなぁと思って、恐る恐る目を開けてみると、目の前に広がっているのは、どこもかしこも、木! 木! 木! なわけですよ。


 混乱した頭で周りを見回すと、すぐそばにはさっきから一緒だった羽衣ちゃんと、桃井さん――あ、下の名前で呼んでいいの? じゃ、遠慮なく――だった訳よ。


 当然、羽衣ちゃんのお母さんもいるかと思って、探してみるけど見つからない。そうして探し回っているうちに見つけたのが、そこにいる、悠莉ちゃんと、三知君、そして幸君ですよ。


 で、よく分からない状況だけど、まずは、「こんな森の中にいられるか! 俺達は帰る!」っていう意見は一致したから、協力して森を出ようって事になった訳よ。


 暫く森の中を歩いていると、木が倒れる音がしてきたんだ。もしかして、伐採業者の人か何かかなと思って、音のする方向に向けて歩いて行ったのが運のつき……そう、奴がいたんだ、あの、ラッコ男が……


 ビックリしたけど、最初は助かったって思ったんだ。だって、俺達は魔獣なんてものは知らなかったから、精々テレビのロケか何かかと思ったんだ。だから、ラッコ男に話しかけてみたんだ。


 そしたら、十五メートルくらいの距離まで近づいた時、気付いたんだよ、木を倒しているのがラッコの拳だって事に。そして、ラッコの足元には、ラッコの犠牲者というか、ラッコに殴殺されたであろう、森の動物達……


 俺達に気付いたラッコ男は、こっちを見てニタリと笑ったんだ、その時は、ともかくやばいって思ったよ。確実に殺されるってね。


 そこからはもう、大慌てで回れ右して、他の皆にも逃げる様に大声出して全力疾走。


 後は、只管逃げ続けて、最後には俺の体力が無くなってきたから、羽衣ちゃんを皆に託して、囮になったって感じかな。


 ――――


「以上が、俺の今日一日って感じかな?」


 俺の話を黙って聞いていたダリーさんは、ため息を一つ吐いた後、真剣な顔で話し出した。


「今の話……信じがたいですが、真偽の器が青く光っている以上は真実なのでしょうね……」


 そして、ダリーさんは御者に向かって、馬車を一旦停めるように指示すると、俺達に向き直り、再び口を開いた。


「皆さんのその時の状況を聞く限り、周りを確認する余裕も無かったようですね……」


 そう呟いて、俺達に馬車から出るように指示し、続きを話し始めた。


「先ほど私は、私共もある目的があり、ジーウの森に向かっている途中だと言いましたよね?」


 俺達は、そう言えば、そんな事言っていたなと頷く。


「私共の目的……それは、ジーウの森に起きた異常現象の調査にあります」


「異常現象?」


 ダリーさんの言葉に、俺が聞き返す。


「はい、それはジーウの森に月が落ちてきた。というものです」


「月、ですか?」


「はい、月が突然眩く光り出し、地面に落ちていく様だったとの事です」


 ダリーさんのその話に、俺達はハッと気付き。彼女に続きを話すように目で訴えかける。


「ご想像の通り、皆さんが体験した現象と同様の現象がジーウの森で起ったのです。そして……その後、月は再び元あった様に、空に戻ったそうです」


 そこまで言うとダリーさんは、顔を上げ空を見上げると、俺達にも空を見る様に促した。


 そして、空を見上げた俺達の目に映ったものは……


「えっ? ウソ……」


「あれ……地球か?」


「マジっすか……」


「お星様ー♪」


「「!」」


 悠莉ちゃん、俺、三知君が驚きの声を上げ、羽衣ちゃんがはしゃぎ、愛里さん、幸君は言葉も出ないようでただ、空を見上げている。


 夜空では、俺達がよく知る地球が青い輝きを放ち、俺達を淡く照らしていた――――

次辺りで、プロローグ終了の予定です。

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