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大・出・張!  作者: ひんべぇ
第三章:王都訪問
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見つけたり! 必殺"名刺"の技

続きです、よろしくお願い致します。

 王都に到着して一日、俺達は服屋で採寸を終えると、その足でギルドまで出向いていた。


 もちろん、目的は遺跡調査の依頼を受注する為なんだが、ハイテンションを維持する俺が珍しいのか、皆苦笑いだ。


「そんなに急がなくても、今人手不足らしいから、きっと残ってるって」


 サッチーがそんな風に俺を落ち着かせようとしてくれるが、何かソワソワするんだよな……


 落ち着きのない俺をサッチーが宥めると言う、普段ない光景ではあるが、今日ばかりはサッチーに感謝だ。……いや、よく考えてみれば、コイツ俺と同い年じゃねぇか! もっと、俺と責任を分かち合おうぜ!


 っと、そんな事考えてるうちにもう、ギルドに到着したみたいだな。


 さて、早速昨日の依頼を探すか……


「ハオカ、昨日の依頼ってどの辺にあったっけ?」


 俺は依頼の張り付けてある掲示板と睨めっこしていたが、昨日どの辺であの依頼を見かけたか、すっかり忘れてしまった。ちょっと、昨日飲み過ぎたか?


「旦那さん、こっちどす」


 ハオカが手招きする方に近づいてみると……良かった、まだ誰も受注していないみたいだな?


 俺は再度、皆にこの依頼を受注しても良いか確認し、問題ないことを確認するとそのまま、受付に持っていく。


「ルセクギルドへようこそ! 本日は依頼の発注ですか? それとも受注ですか?」


 俺は受付のお姉ちゃんに、遺跡調査の依頼を受注する旨を伝える。


「こちらの依頼ですね? それでは、奥で詳細を説明いたしますので私に着いて来て下さい」


 そう言うと、受付嬢は俺達を奥の部屋に案内してくれる。ナキワオの街だと、その場で説明だったから、ちょっと新鮮ではあるな。


 俺達が全員部屋に入るのを確認すると、受付嬢は「少々お待ちください」と言って、部屋を出ていった。


「へぇ、ナキワオの街と違って、本当に役所って感じよね?」


「私は、ナキワオギルドの方がアットホームで好きだなぁ」


 悠莉ちゃんと愛里さんは、都会のギルドの感想をポツリと漏らす。


「お待たせして申し訳ありません」


 俺達が部屋の中を物色していると、受付嬢が資料を纏めているらしきバインダーを持って戻ってくる。どうやら、遺跡の場所の説明や注意事項があるらしい。


「まず、遺跡の場所なのですが、ルセクの街から馬車で一日行った場所にあります。遺跡自体は、昔から存在しているもので学術的な調査はほぼ完了しているのですが、最近隠し部屋らしきものが見つかりまして――」


 受付嬢が話してくれた依頼内容は主に三点だった。


 まずは、遺跡の隠し部屋調査。この隠し部屋は、遺跡奥の広間で、地下に続く、隠し階段が見つかった事から発覚したらしい。この地下の隠し部屋のマッピングをお願いしたいとの事。尚、侵入者撃退用の罠の存在が予想されるため、罠の内容の記録と解除も行って欲しいとの事。


 次に、既に調査が完了している部屋を回って、壁が崩れている等の危険な場所があれば、記録して欲しいとの事。どうやら、この遺跡を一般開放して観光名所にしようと言う企画があるらしい。


 最後に、遺跡内部及び、外周部での魔獣退治。遺跡周辺はまだ開発が進んでいないらしく、魔獣の目撃情報が結構多いため、遺跡周辺で目に着いた魔獣は退治して欲しいとの事。


「以上で問題なければ、受注の手続き完了と致します。何かご不明な点や不都合な点はございましたでしょうか?」


 受付嬢の確認に、俺達は皆、問題ないと告げ、依頼の受注を完了する。


 依頼受注が終わった俺達は、早々にギルドから出て依頼に必要な道具などを調達する。


「じゃあ、準備はあたし達でやるから、おじさんはどっかで時間潰しておいでよ」


 今回は、予定が結構詰まっているため、出発の準備を手慣れた悠莉ちゃん達に任せ、俺はハオカと街をブラブラする事になった。


「取り敢えず、集合は昼頃だから、結構時間あるよな……どうすっか」


「そんなら旦那さん、後輩はんと連絡取っておいた方がええんではおまへんか?」


 時間もある事だし、それも良いか……丁度、悩み相談してみたかったし。


 俺はついでだからと、騎士団本部に顔を出して、場所を借りる事にした。今日は、ラヴィラさんとアンさんは用事で出かけているらしく、俺は仕方なく訓練所の隅を借りて後輩と通信を開始する。


『――で? 要は先輩は暇つぶしにボクを利用するつもりなんですね? こっちは忙しいのに?』


「いや、ごめんごめん、ちょっとお前の意見を聞いてみたくてさ」


 俺は後輩に今日は午後から遺跡調査の依頼に出発する事。遺跡がどうやら、観光スポット化の兆しがある事などを説明する。


 そして、本題はここからなのだが、どうやら依頼内容には魔獣退治が含まれているらしい……


 今までは周りや、咄嗟の機転で何とかなって来たが、流石にそろそろ俺も『万が一』に備えるべきかと思う。


「旦那さん、結構気にしてはったんやね……」


『なるほど、つまりは先輩も戦う手段――はもうあるけど、要は攻撃力が欲しい訳ですね?』



「余り守られっぱなしってのはむず痒くてさ……」


 ハオカと後輩に気まずさを感じながらも頷く。


『ハオカさん達とのフォーメーションとは別にって事で良いんですよね?』


 これまた、頷く。


 後輩は暫く、頭を抱えて悩んでいたが何かを思いついた様で『少し席をはずします。そのまま、待っててください』と言うと、画面の外に出ていってしまった。


「うちは別に、今のまんまでもええと思うてけどね……?」


 ハオカとしては、俺を護る事自体が生きがいみたいなもので、それが必要無くなりそうな状況は面白くないらしい。


「いや、お互いの背中を護りながら戦うってのも良くないか?」


 俺は落ち込みかけるハオカに慌てて、そう言い繕う。ハオカは暫く、人差し指を顎に当て「んー」と考え込んでいたが、やがて、ニヘラと笑って「それもええなあ……」と呟き、納得してくれた。


 そうこうしている内に、後輩が画面内に戻って来た。


『先輩、確認しておきたいんですが、先輩のギルドカードで出来る事って、分裂、操作、硬度変化、反射率の変化で大きさは変えられない……でしたよね?』


 後輩の質問に「そうだけど」と答える。


『じゃあ先輩、厚みって変えられないですか?』


「厚み? そういや、試した事無いな。大きさが変えられないから厚みも変わらないんじゃないのか?」


『……何とも言えないですけど。名刺大の大きさであれば良いなら、厚くするのは無理でも薄くは出来るかもしれません』


 そう言えば、そうかとカードに意識を集中して薄くなるように念じてみる。うーん、あっ!


「いけるみたいだな……」


 どうやら、厚くするのは、せいぜい、一ミリ位までだが、薄くする分には際限なくいける様で、特に問題ないみたいだ。


『じゃあ、次です。摩擦係数っていじれますか?』


 何となく後輩の言わんとしている事が分かって来たので、一つ頷いて試してみる。


「……いける」


 俺は地面にギルドカードを置いて滑らせてみる。おお、訓練所の端から端まで滑って、そこから跳ね返って滑って……


「あれ……? 止まらない」


 ギルドカードは勢いを増しながら地面を滑り続ける。俺は慌てて捕まえようとするが、既に目で追えるスピードを超えており途方に暮れてしまった。


『はあ……先輩、消すか摩擦係数増やすかして下さい。まあ、とにかくボクが試してみたい事の条件は整いました! さあ先輩、新しい扉を開きましょー!』


「「オーッ!」」


 こうして、俺と後輩とハオカの三人によって、俺の新技開発はスタートしたのだった。



 ――そして三時間後


『……先輩、良かったじゃないですか。まさに『必殺』デスヨ』


「旦那さん、これ、どん道、集団戦闘では使えまへんよ……?」


 俺達の目の前には、訓練所に設置してある木人の残骸と、崩れてしまった訓練所の壁が積み上げられていた。


 そして、俺はこの惨状を事務長さんに見つかってしまい、土下座説教を喰らってしまった。


「これは、要練習だな」


『ですね……』


「ぶっつけ本番で無くて良かったどすなぁ?」


 本当にその通りだ。訓練の結果、俺も何とか攻撃力の獲得に成功したのだが……何と言うか、扱いが難しくて下手したら自分も怪我しちゃいそうなんだよな。実際、何回かハオカのフォローで助けられてるし。遺跡に行く最中も練習するか……


 その後、事務長さんに依頼から帰ってきたら壁の補修をやりますと言う事で勘弁して貰い、訓練所を後にする。


 後輩には、もうちょっと俺の武器(ギルドカード)の特性を活かして、何か技を作れないか考えておいてくれと注文して通信を終了し、訓練所を出る。


 集合場所に指定していた店に向かうと、既に皆集まっており、それぞれ食事を注文した後の様だった。


 俺も慌てて皆のいる席に着き食事を注文すると、皆に準備は順調かと聞いてみる。


 幸い、必要なものは全部揃えられた様で、昼飯を食べたら無事出発出来るとの事だった。


「で? おじさん達は何してたの?」


 悠莉ちゃんの質問に、俺は後ろめたい気分になりながらも小さな声で「修行」と答えておいた。


「……で? おじさんは、何やらかしたの?」


「…………修行? と土下座」


 悠莉ちゃんと愛里さんが俺を白い目で見る。俺は何となく視線を逸らす……


「よ、よし、それじゃあさっさと飯食って出発すんべ?」


 居た堪れない空気を察してくれたサッチーに促され、俺達は大人しく昼飯を食べる。食事中、ずっと悠莉ちゃんがこっちを睨んでいた気がするけど、「気にしちゃダメだ!」と自分に言い聞かせて飯を喉に運ぶ。


 そして、昼飯を食い終わった後、ブロッドスキーさんに依頼に行ってくる事を告げて、俺達は遺跡に向かって出発した――

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