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大・出・張!  作者: ひんべぇ
第三章:王都訪問
32/204

スキル進化

続きです、よろしくお願い致します。

 さて、女性陣のウィンドウショッピングを終えて、無事に煙草屋に辿り着いたのだが――


 正直舐めてた。スキルと言うモノを……


「おじさん、おじさん! こっちの煙草は大量の煙幕を出す攪乱スキルが付与されてるんだって!」


「こっちは……吸って投げると爆発するみたいですね」


 それ、もう煙草じゃない! 兵器よ! そんな物絶対吸いたくない!


 俺は店員にやんわりとそう伝え、普通の煙草はどこか聞く。幸いにも、スキル煙草はネタグッズ的な意味合いが強かったらしく、そんなに数は置いていないらしい……最初から普通の出せよ!


 この店では試飲も出来ると言うので、俺は自分が常用していた物と近いものが無いか、店員に手伝って貰いながら探していた。


 やがて、何とか満足のいく物を五カートンほど購入し、皆の所に戻る。


「あ、愛姉、これ……! 『痩せる煙草』って!」


「え、でもそう言うグッズって嘘くさいよ?」


「でも、ここにはスキルがあるよ? もしかしたら……」


 悠莉ちゃんと愛里さんは、一つのスキル煙草の前で、延々と討論している。


 何やってんだか。ハオカとアンさんは? ああ、ミッチー達と雑談中か……。


「し、試飲出来るんだよね?」


「はぁ……コラッ! お酒と煙草は二十歳になってから!」


 俺は、煙草を吸おうとした愛里さんの頭を軽く小突き、叱っておく。まぁ、俺が言うなって話だが……


 愛里さんは素直に、「ごめんなさい」と顔を真っ赤にして謝っていた。微妙に、頭を擦りながらニヤニヤしているのは、照れ隠しだろう……だよね?


「私も初めて煙草屋に入りましたけど、意外と面白い商品が多くてビックリしました。案内するつもりが逆に案内して貰ったみたいですね?」


 アンさんはそう言うと、「フフフ」と笑っていた。


 気が付けば、もう日が暮れかけており俺達はそろそろ、宿に帰るかと言う話をしていた。


「アンさんも夕食一緒にどうですか?」


「あ、もうそんな時間ですか……? すいません、お誘いは嬉しいのですが、家の門限がありまして……」


 愛里さんがそう聞いてみるが、アンさんは残念そうに、そう答える。


 結構、厳しい家か? それとも、親馬鹿か? まあ、年頃の娘さんを持つ親ならしょうがないか。


 皆はまだ食い下がっているが、これ以上困らせても悪いだろう。


「はいはい、皆、あんまり困らせても悪いし、アンさんの親御さんにも心配かけちゃ駄目でしょ?」


 俺がそう言うと、皆も納得してくれる。アンさんはその後で、俺達に「今日は楽しかったです」と言ってくれた。そして「今度、我が家にご招待しますわ」と帰っていった。


 その後、夕飯を食べようかとアンさんお勧めの店に向かう俺達だったが、もう少し腹を空かせたいと言うミッチーのお願いに、じゃあここのギルドに寄って依頼をチェックしてみるか、と言う話になった。


 ギルドは、ナキワオのギルドと比べると広くはあるが、どことなく活気が無いように感じられた。俺は、その様子に違和感を感じながらも、ハオカと一緒に依頼をチェックして行き、他の皆はそれぞれ、ちらほら見かける冒険者さん達と会話して情報収集をしている様だった。


「旦那さん、こないなんおましたよ?」


 何々……? 遺跡調査? えー、何これ、すっげぇ面白そう。


 俺は久々にワクワクしながら、依頼の詳細を確認しハオカの頭を撫でて「グッジョブ!」と褒めておく。


「余裕が出来たら、絶対行こうな!」


「うちはどこまやてついて行きます♪」


 他には……? 変異種討伐に、蜘蛛討伐、漁の手伝い、盗賊の退治――あ、騎士団の事務手伝いがある、これ受けたいな。


「旦那さん、旦那さん、こうして見るとどうにも討伐系が多い気がしますね?」


「やっぱりか……流石に首都は職種が揃ってるから、雑用系は少ないんだろうな」


 どうしよう? やっぱ、あの遺跡調査位しか惹かれる依頼がないや。国のお偉いさんとの謁見が終わった後に残ってたら受注するかな? 羽衣ちゃんへのお土産話にもなると思うし。


 俺とハオカが、そんな感じで依頼のチェックを終了すると、丁度ミッチー達も依頼のチェックや情報収集を終えたらしく、俺達の傍に寄って来た。


 俺達はその後、夕飯を食べながら、ギルドでの情報収集の成果を話し合っていた。


「やっぱり、討伐系が多いみたい。それと、今、周辺で変異種の目撃情報が多発しているらしくて、何組かの討伐隊が編制されたみたい」


「……それで、ギルド内が静かだったのか」


「はい、それで椎野さん達は何か収穫ありましたか?」


 酒を飲んでいたせいもあるが、俺は少し興奮を抑えきれずに、よくぞ聞いてくれたと、皆に遺跡調査の依頼の事を話した。


「ツチノっち、オレ、そう言うのちょっと憧れてたんだ!」


「自分もッスね」


 男性陣は結構な食いつきっぷりだ、女性陣はそこまでではなかったが「楽しそう」と言う事で受注する方向で話を進める。


 皆の賛成を得られたことで、俺が喜んでいると、愛里さんがこちらをジッと見ている。


「ん? 何?」


「いえ……椎野さんがそうやって、ワクワクしてるのって、何か新鮮ですよね」


「あー、そう言えば、おじさんのそう言う感じって初めてかも」


「あれ? そうだっけ?」


「うちは一回だけ。うちとタテを呼んだ時が、こないな感じどしたね」


 あー、そっか、あん時も酒飲んで、テンション上がって無駄に少年心が騒いだんだっけ……


「いやー、ごめんごめん。みっともなかったね」


「いや、いんじゃない? 偶にはそんなおじさんも」


 悠莉ちゃんのその言葉に、皆も同意してくれ、俺は心置きなく遺跡調査に思いをはせ、皆で「お宝とかあるかな」などと、冒険を思い描いていた。


 俺達が宿に戻ると、ブロッドスキーさんがロビーで俺達を待っていた。


 どうやら、俺達と国のお偉いさんの謁見の日取りが決まったらしく、それを伝えに来たとの事だった。


「取り敢えず、一週間後……だな。その間に、謁見用の正装など準備を整えてくれとの事だ。明日の朝一番で服屋に向かう事になる。仕立てなどの時間があるため、少し日数が空いてしまうが勘弁してくれ」


 それなら、何件か依頼を受けても大丈夫かな?


 俺がそう思って聞いてみると、余り長時間拘束されるような依頼でなければ大丈夫だろうとの事だった。


 よし、これなら遺跡調査に行ける!


 俺のそんな様子を見ていた皆にクスクスと笑われてしまったが、まあ、しょうがない。


「私は騎士団の宿舎に泊まるので、今日はこれで失礼する。そうだ、謁見用の服については経費が下りるから心配しなくて良いぞ!」


 ブロッドスキーさんはそれだけ告げると、宿を出ていった。


「じゃ、今日はもう解散で良いかな?」


 俺が問い掛けると、女性陣は「お休みなさい」と部屋に戻っていく。


「旦那さん……」


 すると、ハオカが俺の元に来て、モジモジと、何か言いたそうにしている。


「どうかしたか?」


「あの……うち、今日は顕現したまんまでいたいんどすけど、あかんどすか? その……愛里はん達と『パジャマパーティ』言うもんをやってみたくて……」


 ああ、そっか、この娘も色々変化してるんだな……俺はハオカの頭をくしゃくしゃと撫でると「遠慮すんな! 楽しんで来い!」とだけ言って愛里さん達の元に送り返す。


 そんなハオカを迎えた女性陣は、何やら笑い合いながら部屋に入って行く。


 と言うか……よくよく考えてみると、ハオカ達って呼ぶのに力は使うけど、それ以降は大して消耗しないんだよな。


 今までは、宿代とかの節約で帰って貰ってたけど、宿代が出るならずっと顕現して貰っていた方が良いよな。後で伝えておこう。


 しかし、改めて考えると、顕現解除した後とかってどうなってんだろ? 今度聞いてみるか……


「ツチノっち……最近ハオカちゃんって、何か変わったような気がすんだけど、オレの気のせい?」


 サッチーの意見に、ミッチーも頷く。俺もそれは思っていたんだが……


「多分、ちゃんとした自我が芽生えてるって事なのかな……? タテもそんな感じだったし」


 成長する子を見る親の気持ちってこんな感じかな……? まあ、多少のやましい気持ちはあるけどな。


 部屋に戻った俺達は、まだ余り眠くないせいもあって、ちびちびと酒をながら雑談している。


「えっ! サッチーってまだダリーさんの親御さんに挨拶してないんだっけ?」


「まあな……ダリーちゃんの休みが取れなくてよ。ナキワオから結構な距離があるらしくてさ、纏まった休みが無いときついんだよ」


 どうやら、既に連絡自体はしている様だが、ダリーさんの都合が合わないらしい。


「それでさ……ツチノっち。ナキワオに帰る道中で良いから、俺に礼儀作法とか教えてくんねぇかな?」


 真面目な顔をして頭を下げるサッチーに俺は快く承諾した。


 すると、ふと思い出したかの様に、ミッチーが俺の肩を叩く。


「おやっさん、サッチーの事は良いんですが、おやっさんはそう言う相手はいないんスか? こっちでも、地球でもどっちでも良いんすけど……」


 ……ミッチーの目が超泳いでる。


「ミッチー、誰に頼まれた?」


「うぐ……じ、自分は、その、ですね」


「まあ、良いけどさ」


 どうしよっか、正直に答えるか。それともはぐらかすか。


「ミッチー……誰にも言わないなら、答えるけど?」


 ミッチーはどうするべきか迷っているんだろう、暫く頭を抱え込んで迷っていると。


「自分は……頼まれた人達の信頼を裏切るわけには、行きません。ですから、可能な範囲で教えて貰えないっすか?」


 汗をダラダラと流しながら、ミッチーはそう答える。


「ハア……律儀だねぇ。良いよ、イエスノーで答えられる範囲なら一つだけ質問に答えてやるよ」


 俺がそう言うと、この展開を予想していたのか、ミッチーは懐から何やらメモ帳を取り出す。


「ミッチー……この展開を予想されてる時点で、俺、依頼者が想像出来ちゃったんだけど? って言うか本当にいつの間に……?」


 俺の頭の中で、犯人が確定しつつある。ミッチーは、「うぅ」と汗を流しながら、「申し訳ないッス」と頭を下げる。


 何か弱みでも握られてんの?


「えっと、じゃあ行くッス。お店のコとは上手くいきましたか?」


「……ノー」


 確定じゃん! あいつは本当に……メモでも回し蹴りしてきやがる。くっそぉ、完全にからかわれた。


 俺は自分の無力を嘆き、枕を拳で打ち付ける……ああ、そうだよ、上手くいくどころか、悪魔にアドレス消されたよ!


「ミッチー、面白かったか?」


「実は少しだけ……申し訳ないッス」


 ミッチーは吹き出しながら、そう答える。すると、それまでジッと聞いていたサッチーが残念そうに「なんだ」と同じく笑う。


「でもさ、ツチノっちって真面目な話、あの三人の事何にも思わねぇの?」


「三人って、愛里さん、悠莉ちゃん、ハオカの事か?」


 サッチーが頷く。


「正直な話、何度か魅力に負けそうになったよ……」


 俺は遠い目をしながら、そう告げる。いや、実際ハオカが一番ヤバイ。アイツ、そもそも俺の趣味(性癖)から生まれてるから! しかも最近、愛里さんも悠莉ちゃんも俺の趣味に気付いて来てるらしくて、ちょいちょい挑発し(からかっ)てくるし! 正直、親元に帰すって責任が無けりゃ、とっくに手を出し取るわ!


 俺がそこまで叫ぶと、ミッチーはポカンと、サッチーは涙を流しながら俺を見ていた。


「――実はな、秘密にしていたんだが、最近、『ポーカーフェイス』に追加効果が発生しだしてさ、発動すると視線を動かさないでも周囲の風景が見えるんだ……」


 もう、完全に変な方向(変態行為用)のスキルになってる気がする……


 俺の独白に、ミッチーは気まずそうに「無神経な事言ってすんませんでした」と謝り、サッチーは「目の前の欲望に抵抗するのって、キツイよな?」と同志を見つけた様に俺と硬い握手を交わす。


 因みに、ミッチーが眠った後、俺はサッチーに叩き起こされ、礼儀作法を教えて貰う前に、『ポーカーフェイス』を教えてくれと土下座で頼まれた。


 ――拝啓、後輩(犯人)様、今日、男性の三分の二は冒険野郎(変態紳士)と言う真実が分かりました。最近俺、このスキル(ポーカーフェイス)の指南書を発行すれば、それだけで大儲けできそうな気がしてきましたがどうでしょう? ダメかな?


 俺はポチポチと、そんな内容のメッセージをメールの編集画面に打ち込んでいく。


「ふぅ、ちょっと今日ははしゃぎ過ぎた……かな?」


 俺はそう呟くと、早速購入した煙草に火をつけてみる。うん、これならシックリ来るかもな……


 そして、俺はメールの編集を終えると、今日撮影した動画を添付ファイルに設定してメールを送信した。


 ――ちなみに


 後輩からの返信メールには一言『イェ ギルティ』とだけ、書かれていた。

マクガイバー、良いですよね。

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