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大・出・張!  作者: ひんべぇ
第三章:王都訪問
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煙のルセク・リーマン

続きです、よろしくお願い致します。

 野営地を後にした俺達は、漸く目的地であるヘームストラ王国の首都に到着した。


「ヘームストラ王国首都、ルセクにようこそ!」


「へぇ、綺麗な街ですね」


 俺達を門番が出迎えてくれる。


 首都は魔獣対策の為に四方を壁に囲まれてはいるが、壁の色は明るい色をしているお蔭で余り閉塞感は無く、キッチリと区画整理されており『綺麗な街』と言う印象がピッタリであった。


 俺達は首都入口で門番の人達に用件を伝える。城から連絡は来ているらしく、宿の手配は既に完了しているとの事。


「いや、聞いていた到着予定日より遅いんで、途中で魔獣にでも襲われたかと思いましたよ」


 と、宿まで案内してくれる門番さんは笑っていた。まさにその通りだったので、俺達は皆苦笑いだったが……


 宿に着くと、門番さんは城に俺達の到着を伝えに行くとの事で、ブロッドスキーさんは同行して、到着の遅れの理由を伝えに行ってくるらしい。


「皆、疲れているだろうから今日は、このまま自由に過ごしてくれ。明日以降の予定については、俺が城で確認してくるから、今日の夜か明日の朝には連絡できると思う。話は通しておくから何かあれば騎士団の本部を訪ねてみてくれ」


 ブロッドスキーさんはそう言って、俺達に騎士団本部の場所を伝えると、門番と一緒に出ていってしまった。


「さてと、自由時間か……皆、どうする?」


 折角の王都だし、俺は食べ歩きでもするかな。俺がそう呟くと、皆もついて行きたい、と言う事になった。


「じゃぁ、一時間後にロビーで集合な?」


 部屋は男女別になっている様で、俺とミッチー、サッチーは一緒に部屋に入る。女性陣の部屋も、間取りは俺達と同じ三人部屋らしいので、ハオカを呼び出して、そちらについて行くように言っておいた。


 俺は部屋に着き、ラフな服装に着替えると首都到着の報告と、これから食べ歩きに行く事を伝えるために、後輩に電話を掛ける。


『先輩、無事首都に着けたんですね? 良かった、良かった』


 あれ? 何か、今日後輩が優しい気がする……気のせいか?


「ま、まあな、一応今日は自由時間って事で今から皆で首都の散策に行こうって事になってさ。その前に、お前に連絡しておこうかと思ってな?」


『……殊勝な心がけです。それなら先輩、どうせだから、街の様子を撮影できませんかね? 前回、アクセサリーとか見せて貰った後に社長が、「どうせなら、街並み撮影しなさいよ! ドキュメンタリー風に!」って言いだしまして……』


 ……だから、優しかったのか! ま、良いけどさ。


「サッチー、悪いけど『充電』を一杯使ってもらう事になるけど、良いか?」


「ん? ああ、アレは対して力使わねぇから! 遠慮すんなって! それに、バイト代は出るんだろ?」


 俺は咄嗟に画面越しに後輩の顔を見る。後輩は俺の視線から目を逸らす……


「ヘイ、コウハイ? バイト代は……出るんだよな?」


『ハイ、センパイ……結構な時給で、出ますよ? センパイノコウザカラ』


 優しかった本当の理由はこれか!


「え、何で? それ普通は、会社の予算から出ない?」


 暫し、沈黙が走る……サッチーは「え? 何? どういう事?」と首を傾げる。サッチーにはちゃんとバイト代出るから心配ないと伝えると、首を傾げながらも喜んでくれた。


『……先輩が、先輩が悪いんです! 先輩がハオカさんを派遣社員にした時に、ハオカさんの銀行口座が無い事で調子に乗って「じゃあ、俺の口座に入れてよ」何て言うから! それ聞いた社長がイラッとして「じゃあ、向こうにいる人達のバイト代とか全部薬屋君の口座から引き落としちゃえ」って言って……』


「も、もちろん、その分、俺の給料上がったりは?」


『……ブッ』


 ――ツー、ツー、ツー


「……働けど働けど……って、可笑しいよね?」


 絶対、向こうに帰ったらちゃんと請求してやる!


 それから集合時間が来るまで、俺は社長の携帯電話に向けて、ひたすらワン切りし続けた……


 宿のロビーで集合した俺達は、宿の人に街の観光案内のパンフを貰い、どこから散策するかを検討する。


「まずは、メシからじゃね?」


 サッチーの一言で、そう言えば朝、野営地で簡単な朝飯食っただけだったと思い出し、「じゃあ、昼飯だな」と言う事に。


 俺は、携帯電話を取り出し、動画モードを起動する。


「そう言えば、こっちにも撮影用の装置ってあるんですよね? 撮影許可とかいらないんですか?」


「あ、そうか……ちょっと、宿の人に聞いてくる」


 愛里さんの一言で、自分がうっかりしていた事に気づき、俺は宿の人に聞きに戻る。


 宿の人に聞いてみると、やはり撮影許可と言う程ではないが、騎士団に撮影しますとの報告は必要であるとの事だ。


「じゃあ、結局、騎士団の本部に行くんだ?」


「どうする? ひとっ走り行ってくるから待ってるか?」


「どうせなら、皆で行った方が良いんじゃ無いッスか?」


「そうですね、ついでにお勧めのお店とか聞いてみたらどうでしょう?」


 それは名案だって事で、皆で騎士団の本部に向かう事になった。


 俺達が本部に着くと、騎士団の人達は現在訓練しているらしく、事務の人が騎士団長の所まで案内してくれる事になった。


「えっ! じゃあ、貴方があの『クスリヤさん』ですか?」


 どうやら、俺の名前は騎士団本部の事務の人達の間では「ナキワオ支部の救世事務」として有名になっていたらしい。


「ああ、確かにあそこの事務仕事は……大らかでしたね?」


「ええ、本っ当に……何度突っ返した事か! 伝令費も馬鹿にならないのに……」


 そんな感じで、事務仕事の辛さを通じて、騎士団の事務長さんと交友を深めていると――


「あ、いました。あれが騎士団長です。今呼んできます」


 少しして、騎士団長が俺達の前まで歩いてくる。


 騎士団長は、日に焼けた肌にオールバックの髪を手櫛で少し整える。


「君が『救世事務』か! 私はラヴィラ=コルド。ヘームストラ王国騎士団長だ!」


 そう言うと、ラヴィラさんは俺達と順番に握手をしていく。


「それで? 今日はどの様な用件だ? 何か困った事でもあったか?」


 俺達は、街を散策する際に撮影を行う事と、出来たらお昼にお勧めの店は無いかと尋ねる。


「ふむ、女性がいるなら、その辺りも気を付けた方が良いか……ちょっと待っていてくれ! ちょうど一人、昼飯を食い損ねた者がいる。そいつに案内して貰うと良い」


 ラヴィラさんはそう言うと、一人の女性騎士を呼び寄せる。


「アン、今から昼飯だろう? 今日はもう非番にしてやるから、この人達に街を案内してやってくれ」


「団長? それは、有難いのですが……この方達は?」


 その女性――アンさんは小さくガッツポーズをしながらも、俺達を訝しがっている。


「ああ、紹介がまだだったな。彼等は例の一行だ。今日、ルセクに到着したらしい」


 ラヴィラさんは、悪戯が成功したかのようにニヤリと笑う。アンさんは「サラリーマン一行……?」と少し驚いていた。俺はその様子を見てから、改めて自己紹介をする。


「どうも初めまして。私はツチノ=クスリヤ、と申します。どうぞよろしくお願い致します」


「あ、失礼致しました。私はアンと申します。本日皆様に街のご案内をさせて頂きます。どうか、よろしくお願い致します」


 他の皆も、それぞれ自己紹介をしてから、俺達はアンさんのお勧めの店について行く。


 アンさんが案内してくれた、店は女性騎士が良く利用する。最近流行りの店らしく、何となくお洒落な感じだった。


「へぇ、良い感じですね」


「あたし、こっちに来てお洒落なお店って初めてかも。いつもは、おじさんとかミッチー、サッチーに合わせて無骨な感じのお店ばっかりだったしねー」


「うちも生まれてから初めてどす。お御膳しはる所って、こないな洒落たお店もあるんどすなぁ?」


 女性陣からの視線が痛い……


「すいません、今後はもうちょっと考えます」


「ダリーちゃんは、「質より量」って言ってたからなぁ……」


「自分は、こういう店の方が好きっすけどね」


 俺達男性時はそれぞれ、女性陣に謝罪しながらメニューを見て、注文を取る。


「あ、おじさん、お店の様子とかメニューとか撮影しないで良いの?」


 あ、忘れるところだった。


 俺はお店の人に、撮影許可を貰い、店内の様子やメニュー表、そして運ばれてきたご飯を撮影する。


 女性陣は早速意気投合した様で、ルセクで流行りの服屋や、アクセサリーショップ、カフェなど、この後行く店の相談をしている様だった。


「しかし……偶にはこう言う店も良いな。道中は特に野趣溢れる食事模様だったからな」


 俺は食後のお茶を飲みながら、久々にゆっくりとした気持ちでいた。ミッチーとサッチーもそれには同感らしく、うんうんと頷いていた。


「そう言えば、おやっさん、最近、煙草吸わないっすね? 禁煙ですか?」


「いや、流石に女性が同行している間はな? 後は、地球から持って来てたのがそろそろ無くなりそうだから、ここぞって時にしか吸わない様にしてんのよ」


「……? こっちでも煙草ぐらい売ってるっしょ?」


「サッチー……確かにそうなんだけど、「これだっ」って奴がないんだよなー」


 俺達がそんな話をしていると、女性陣は食後のデザートを食べ終わり、話もひと段落した様でこちらの会話に入ってくる。


「何? おじさん、気を使ってくれてたの? あんまり、気にしないでも良いのに」


「うちは旦那さんの煙草吸う姿、結構好きどすよ?」


「私は、少し椎野さんの健康が気になりますね……」


 皆の優しが嬉しいけどこればっかりはなあ、煙草が好きなわけじゃないけど、癖と言うか何というか……


「煙草を探してるんですか……? なら、後で専門店でも案内しましょうか?」


 話を聞いていたアンさんが、嬉しいことを提案してくれる。俺は皆の様子をチラチラ見ながら、「ダメかな?」と聞いてみる。


「好きなわけじゃないって……鏡見せてあげたいわ」


 悠莉ちゃんが呆れたと言わんばかりの表情を浮かべるが、別に反対では無い様で、煙草屋も観光コースに入れて貰った。


「さー、張り切って、観光しよー!」


 後ろから愛里さんの「尻尾が見えます……」と言う笑い声が聞こえたが気にしない!



 こうして、俺達の首都観光は始まった。

私事で投稿遅れてしまいました。申し訳ありません。

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