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大・出・張!  作者: ひんべぇ
第三章:王都訪問
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地上五十キロメートルの惑星(ほし)

続きです、よろしくお願い致します。

「ジマから王都まではもう、寄れる街が無い……慣れないツチノには申し訳ないが、今日はこの辺りで野営を行う」


 ジマの街を出てから、半日ほど移動した俺達は視界の開けた場所を選び、キャンプの準備をしていた。


 そう言えば、今まで俺以外の皆は泊りがけの依頼とか行ってたんだっけ? 何か、懐かしいな。キャンプっていつ以来だろう?


「俺は何をすれば良いですか?」


 流石に、皆にだけ準備を任せるのも気が引けるので、俺に何か出来る事が無いか聞いてみる。


「そうだな……火の準備をして貰おうか。完全とは言い難いが火を嫌がる獣は多いからな」


 俺はハオカを呼び出すと、手分けして枯れ木を探し、焚き火の準備をする。


「サッチー、ちょっとお願い」


「火? はいよー」


 よし、火はオッケー、と。次は獣避けか……


「ハオカー、ハオカさんやー? ちょいと手伝っておくれー」


 俺は予備の枯れ木を集めて戻って来たハオカに声を掛ける。


「へーへー、何どす旦那さん?」


「ああ、ちょっと試して(遊んで)みたい事があってさ」


 そして、俺はハオカに指示を出し、ギルドカードを大量生産する。


「皆ー、獣避けの準備が出来たぞー」


 俺が皆に呼びかけると、皆は何事かと首を傾げながら寄ってくる。


「おじさん? 獣避けって、焚き火はもう点いてるみたいなんだけど?」


「よくぞ聞いてくれた! いや、久々にね、ギルドカードの有効利用を考えててさ、取り敢えず獣避けに良いかな、と。行くぞ、ハオカ!」


「はいな、『小鉢』!」


 俺はギルドカードを四方に配置し、ハオカに合図する。ハオカは俺の合図に従ってバチを振るう。朱雷が一筋、四方を構成するギルドカードの一枚に当たると、反射して別のギルドカードに向かっていく。


 やがて、それを繰り返すと、俺達の周りは朱雷の柵で囲まれていた。


「どう? どう? 電気柵っぽくない?」


「へぇ、何かリングに戻ったみたいでウズウズしてくるッス」


「おじさん、これって本当に大丈夫なの?」


「ふむ、試してみるか。ツチノ、枯れ木を一本貰うぞ?」


 ブロッドスキーさんはそう言うと、枯れ木を柵に向かって投げる。すると、枯れ木は朱雷に触れた瞬間に消し飛んでしまった……


「椎野さん、ハオカさん……これ、獣避けですか? それとも、私達を逃がさないための檻ですか?」


「……旦那さん、うちは今日はこの辺で失礼させて頂きますえ?」


「えっ! 嘘! ハオカ! 置いてかないで!」


 その場に残された俺は、「やりすぎ」と、有罪判決をくらい、その後、夕飯の時間まで正座で過ごす事になってしまった。


 しかし、ブロッドスキーさんだけは、「これは行商人には受けが良いかもな」と言ってくれた……あれ? これこっちで売れそう。


 夕飯後、俺はその話をするために、後輩と連絡を取る事にした。


『はーい、先輩、会議のお時間デスヨー』


 後輩は電話に出るなり、やる気のなさを全身で醸し出している。俺が何かあったのかを聞くと、一言『社長からのメッセージを後で送ります』とだけ呟いた。


「もう、嫌な予感しかしないんだけど?」


『大体合ってますよ。で、先輩の方は何の用ですか?』


 俺は後輩に、ナキワオの街と、ジマの街の服飾の流行の違いや、先程のやり取りで思いついた、こちらの世界に売る物として防犯グッズやキャンプ用品から始めてはどうかと打診してみる。


『そうですねぇ、確かにその線で攻めるのは良い気がしますけど。キャンプ用品とかは、そっちにもあるんじゃないかな、と。もっと言うなら、スキルがあるんですから多機能なやつとかあるんじゃないかとボクは思いますけどね?』


「それもそっかぁ」


 ちょっと、考えが足りなかったか? これはもっと練る必要があるかな? 今度、ブロッドスキーさん辺りに協力をお願いするか。


 服飾に関しては、特に宝石関連は地球産の物よりも輝きが強い気がするそうで、これは結構な売上が見込めそうだ。


『先輩、今度モノだけでも、こっちに送れないか健闘してみて下さいよ? ボクも愛里さんみたいに、綺麗な指輪とかお土産に欲しいです』


「あー、そんなスキル覚えたら、とびっきりの宝石でも送ってやるよー」


 そんな都合の良いスキルあるかっつうの! 合っても多分、俺倒れるしな……


『……言質取りましたよ。まぁ、そんなスキル覚えたら、まずは例のギルドカードの鉱物送ってくださいね?』


 そう言うと、後輩は『じゃ、社長のメッセージはすぐ送ります』と言って通話を切った。


 暫く夜空(地球)を見上げていたが、そろそろかなと思った頃に、メール受信を試してみる。メールの件名は『地上五十キロメートルの惑星』……? で、もう一件? 件名は『社長メールの後にみて下さい』……?


 取り敢えず、社長のメッセージから再生してみるか。


『ザザッ――おはよう薬屋君。……今回の君への社命だが……ずばり、護衛任務だ。どういう事かと言うと、君達がそっちに行く切っ掛けになった惑星がまた少しずつ、地球に近づいているらしいんだよね――』


 社長のメッセージはそんな報告から始まった。どうでも良いけど、何であの人、「ザザッ」って口で言うの?


 どうやら、地球に再びこちらの世界が接近しているらしく、その報告を聞いた国のお偉いさんが、予想される惑星の落下地点に研究者チームを配置する事になったらしい。


 しかし、俺達の例を挙げれば分かる様に、配置した人間がこちらに移動できるかは分からない。移動出来たとしても、場所によっては命が危ない。


 だから、俺には地球との接触ポイントで待機して、場合によっては彼らの保護と協力をお願いしたい……との事だった。


『――尚、このメッセージは自動的には消滅しないので、そちらで消しといて下さい。以上、成功を祈る』


 デ、デジャヴ……相変わらず黒いカーテンを被った社長は、俺宛ての無茶ぶりを伝えてくる。


 俺は再び、夜空(地球)を見上げる。うーん、確かに近くなってる気もするっちゃするけど……


 俺は続いて、後輩のメッセージを開く。そこには『大体の接近スピードから考えて、約一か月後みたいです』と書いてあった。


 さて、となると皆に知らせないとな……


 俺はキャンプの中で寛いでいる皆に、地球の接近と俺への『社命』を伝えた。


「俺はもしかしたら、これで皆は帰れるかも、と考えている」


「ツチノっち……それマジかよ?」


「おやっさん……」


「あくまでも、予想……なんだけどな?」


 ミッチーとサッチーに、余り期待するなと釘を刺しておく。


「――椎野さん……今、『皆は』って言いましたよね? 椎野さんは……どうするんですか?」


 まあ、気付くよな普通。


「俺はさっき言った様に、仕事が出来ちまったからさ……今回はお見送りになると思う」


「っ! おじさん、それ……本気?」


「まあ、サラリーマンの辛い所だよ。それと、今回地球に帰れるかどうか、さっきも言ったけど、確実じゃない。本当に試すかどうかはよく考えてくれ、期間は一か月だ」


 俺はそれだけ伝えると、「今日はもう寝よう」と皆を促す。


 さて、これから一か月で色々と準備しなきゃな。まずは、王都に行ってこっちの国の協力もお願いしないとな。

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