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大・出・張!  作者: ひんべぇ
第二章:出張開始
19/204

超 社員(リーマン)召喚

続きです、よろしくお願いします。

 俺が、会社のなんちゃって支社長に就任してから一週間。


 あれから、後輩と業務的なやり取りを何度かしたが、要は俺にこちらの技術や製品で使えそうなのがあったら、抑えとけって話らしい。正直……帰れなきゃ無駄になると思うんだが、その辺は社長が伝手を辿って、国に掛け合ってみるらしい。


 今日は、久々に騎士団の事務仕事も地球の会社も休み、他の皆は狩りに行ってる。つまりは暇だって事で、俺は騎士団の訓練所の隅っこを借りて、テレビ電話越しに後輩と酒盛りをやっていた。因みに、羽衣ちゃんはさっきから、訓練所を走り回っている。


『先輩、せんぱーい。ちょっと、ボク思いついちゃったんですけど』


 ――事件は、後輩のそんな一言で始まった……


『先輩の武器って、名刺なんですよね? ぷぷっ!』


「ん? そうだけど、馬鹿にすんなよ? これでも、生き残るのには結構役立ってんだよ」


『いや、面白いのは面白いですけど、馬鹿にはしてませんよ? お陰様でこうして先輩と画面越しですけど、また飲めますし……』


 珍しく、殊勝な事を言う後輩だが、続けて馬鹿なことを言い出す。


『だから、もっと幅を広げてみませんか?』


「ん? 何かアイディアでもあんのか?」


『いや、昨日テレビで昔の映画やってまして……陰陽師とか出てくる何かの映画のパクリっぽい奴なんですけど……』


 後輩の話をまとめると、昨日、陰陽師を題材にした映画をテレビでやっていた。その中のワンシーンで、陰陽師が、空中にお札を浮かべて、何か術とか式神とか出してた。その時、ふと思ったそうだ、俺のギルドカードも操作して空中に浮かべられるじゃん、と。


『つまりですね、あれ、ギルドカードでやってみたら、何か出たりして……ぶふっ!』


「お前……完全に馬鹿にしてんじゃねぇか! ったく、そんな馬鹿なこと……やるっきゃねぇじゃん!」


 ――後にして思えば、この時の俺は、久しぶりの休日と酒のせいで、変なテンションになっていたんだと思う。完全な悪ノリだ。


 そして、ノリノリになった俺はギルドカードを五枚に分裂させて、空中に浮かべる……


『おー、それっぽい、それっぽい、それ動画で撮影しましょうよ』


「いや、それ、俺倒れるから!」


 そんな風に後輩と遊んでいると、羽衣ちゃんが何か面白いことをやっていると感じたのか。こちらにやって来た。


「おじちゃん、何やってるの?」


『おー、羽衣ちゃーん、今、先輩とボクとで陰陽師ゴッコしてるんだよー』


「ぶはっ! お前、ゴッコって認めちゃったよ」


「えーっ、ういも! ういもやるー!」


「あー、はいはい、んじゃもう一回」


 俺は、先ほどと同じくギルドカードを空に浮かべる。


「ういの分は?」


 羽衣ちゃんがそう言うので、もう一組浮かべる。


『先輩、先輩、折角だから何かそれっぽい呪文でも唱えてくださいよ! ボク、今からこっちで録画するんで!』


 ――悪ノリが加速する!


「よしよし、やってやらぁ。んー、良し! 俺を守護してくれる、良い足した別嬪のお姉ちゃん、出て来い! オン・サラ・リー 美足絢神! ……なんちゃって!」


「おじちゃんー! ういのもやってー!」


「あぁ、ハイハイ、じゃぁ、おじちゃんとお揃いな感じの呪文で良い?」


「おじちゃんとおそろい? うん! それが良い!」


「よっしゃ、羽衣ちゃんを守護してくれる、良い感じの坊っちゃん、出て来い! オン・サラ・リー 快手爛魔!」


『あはははは! せ、先輩、自分の欲望に忠実過ぎるっ! ば、馬鹿だー!』


「うっせぇー! たまにゃー良いじゃねぇか! 俺、こっち来てお店のお姉ちゃんの番号、根こそぎ消されたんだぞ? 少しは、はっちゃけても良いじゃん!」


「おじちゃん、おじちゃん!」


 すると、羽衣ちゃんが俺を呼びつける。あ、少し教育に悪かったかな?


 そう思って、羽衣ちゃんの方を見ると、先ほどから浮かべていたカード達の間を光の線が繋ぎ、二組の五芒星が浮かんでいた……


 五芒星は、それぞれ、朱色と藍色に輝き始める……


「なっ!」


『ははは、はぁはぁ、どうしました? 先輩』


 俺が驚きに息を呑んでいると、それを不思議に思ったのか、後輩が声を掛けてきた。


「なんかさ……出来ちゃった♪」


『はぁ?』


 後輩の呆けた声を合図に、光は収まり、立ち上った煙の中には二組の人影が見えた。


 その人影のうち、まず背の低い影が煙の中からこちらに進み出てくる。


 その人影――羽衣ちゃんと同い年位の男の子は、クリッとした藍色の目をしており、その目と同じ色の髪を、足元まで届くほどに長く伸ばし、先端二か所を銀のリングで纏め二房にしている。服装は、白のノースリーブシャツの上に、腰まである蒼い合わせ半纏を羽織り、黒の裾絞りのパンツを履いており、その手には横笛が握られている。足首に白のアンクルを装着し、二本歯の下駄を履いている。


 その男の子は二房にした髪を揺らしながら、こちらに向かって来たかと思うと、丁寧にお辞儀してから、足元に履いていた二本歯の下駄を脱ぐと、改めて俺達に向かって三つ指を付き……


「はじめまして。僕は姫を護る存在、タテと申します。以後、よろしくお願いします」


 そう、自己紹介してくれた。


 俺は、未だ地面に座り込んで呆然としていたが、もう一つ人影が残っているのを思い出し、そちらを見た。


 煙が晴れたそこには、一人の女性が立っていた。


 その女性は、緋色の瞳に、その瞳と同じ色をしたショートの髪を左片側だけ金のリングで括りサイドアップにしており、身長は悠莉ちゃんと同じくらい。服装は黒のノースリーブシャツの上に、足元まで伸びる紅い袖なしの立ち襟半纏を羽織り、薄い藍色のショートパンツを履いている。その両腰には太鼓のバチの様なものを挿しており、足首に黒のアンクルを装着し、一本歯の下駄を履いている。


 その女性は、スッとこちらに近づいてくると、俺に向かってニッコリと柔らかい笑みを浮かべ、タテと同じ様にお辞儀をし、足元に履いていた一本歯の下駄を脱ぐとそのまま――


 ――グニッ――


 俺の顔を素足で踏みつけてきた……


「お初にお目にかかりますえ、旦那さん。ウチは旦那さんを護るために生まれたハオカと申します。以後、よろしゅうお頼み申します」


 ――グニグニグニグニグニ――


『――輩、先輩! 戻って来て下さい! 何トリップしてんですか』


 いかん、あまりの事(天国)に一瞬気を失っていた。


「ちょ、ちょっと足をどけてくれ(ありがとうございます)! アンタらいったい何なんだ?」


 俺が動揺しつつも、毅然とした態度で問い詰めると、ハオカ達は、首を傾げ、キョトンとしていた。


「何って言うても、ウチ達は旦那さんが呼び出し、生み出した存在どす。それ以外ん事は分かりまへん」


 どうやら、なんちゃって陰陽師ゴッコが本当に成功してしまったみたいだな……


「そう言えば、何で俺はさっき踏まれた(飴を貰った)んだ?」


 ハオカは、またもやキョトンとした顔で、「旦那さんが、うちをそう創ったんでしょう?」と言った。


 どうやら俺は、とんでもない(素晴らしい)子を作ってしまったらしい……


『先輩……返って来たらボクが踏みますよ? 趣味に走るのも良いですけど自重して下さいね? ボクは何か疲れたんで今日はもう、失礼します』


 後輩が去ったその後、俺はハオカ達に質問を続けた。その結果、幾らか不明点はあるが、彼女たちは俺達の味方である事はハッキリした。


 つまり――


 まず、彼女たちは、先ほど初めて自我を持った式神っぽい何かであると言う事。


 あくまでも二人の主は俺であるが、タテは羽衣ちゃんを護る事を、ハオカは俺を護る事を存在理由としている事。


 タテはその手に持っていた篠笛で、風を操るスキルを持っていると言う事。


 ハオカは、その腰に下げたバチを使って、大気を太鼓に見立てて叩き、雷を起こせるスキルを持つと言う事。


 そして、ここからは愛里さん達には話せない、と言うかハオカに口止めしている事だが、二人の性格や行動の元となっているのは、呪文を唱えた時に俺が考えていたことだそうだ。


 タテは、羽衣ちゃんを護り、遊び相手になってくれたらと言う思いが元になっており。そして……ハオカは、俺の……足好きがかなり影響しているらしい……だから、俺に足を押し付けた(ご褒美をくれた)のか……


 既に、タテは羽衣ちゃんと意気投合し、訓練所を走り回っている。


 そして、ハオカは俺の前に椅子を出して座り脚を組んで座り、その足をプラプラさせている。……やばい、『ポーカーフェイス』を発動させた方が良いか?


「クスクス、旦那さん、そないにチラチラ見んくても、正面からじっくり見たらええでっしゃろ?」


 くぅ、(マジで!)やめて、(やった)俺を誘惑しないで!(ありがとうございます)


 ――数分後――


「はぁ、はぁ、はぁ」


「クスクス、旦那様はちびっと我慢しすぎどすえ?」


「う、羽衣ちゃんがいるからな……向こうに無事返すまでは、我慢するさ……」


「それにしても、そないなにあいやが好きなんどすか?」


 俺は、「当然!」と答えそうになりながらも、ハオカに「そんな事は無いが、これからよろしくな?」と握手を求めた。


「クス、ウチこそ、よろしうお願いします」


 ハオカは、クスクスと笑いながら俺にハグして、そう言った。


 そして、その後俺は意識を失った……あ、スキルの使い過ぎを忘れてた……


「――さん、椎野さん! 起きて下さい! 大丈夫ですか?」


 気付けば、空は暗く、目の前には愛里さんがいた。


「あれ? 俺……」


「もう、お酒飲んでこんな所で寝ちゃうなんて、子供じゃないんですから、しっかりして下さいよ?」


「あー、ごめん。後輩と酒盛りしてたんだけど、その時に力の使い過ぎたみたいだ……」


 何か、変な夢を見た気がするけど……


 どうやら、羽衣ちゃんは先に家に帰ったらしく、羽衣ちゃんに聞いて愛里さんが迎えに来たようだ。


「へぇ、後輩さんと……」


 家路の途中で、夕飯の買い物をして家に帰ってみると、羽衣ちゃんがいつもの席(俺の頭)に飛びついた。


「おじちゃん! タテちゃんと、ハオカちゃん呼んでー!」


 ん? 今なんか、どこかで聞いた名前を羽衣ちゃんが呼んだ様な気がする……


「……? 羽衣ちゃん、誰の事?」


「タテちゃんは、おじちゃんのちゅーじつなしもべっていってたよ?」


 変な汗が流れる……あれ? 俺、酒飲んで……


「あっ! そうだった! 羽衣ちゃん! おじちゃんが寝てから、どうなったの? ちょっと、教えてくれる?」


「? ハオカちゃんが、また皆に説明するから呼んでって言ってたよ?」


 羽衣ちゃんはそう言うと、俺のギルドカードを指差した……


「……えっと、もしかして、またあれをやれって?」


「んー、次からは一枚ずつで良いよって!」


「おじさん、さっきから何の話?」


 俺と羽衣ちゃんの話が要領を得ないせいか、悠莉ちゃんが口を挟んできた。


「うん、実はな……」


 そう言って、俺は今日酔っぱらって、なんちゃって陰陽師ゴッコしたら、何か式神呼んじゃった事件の事を話した。


「取り敢えず、見てみない事には……」


 胡散臭いものを見る様な皆は、愛里さんのその一言に賛同し、俺に実演する様に言って来た。


「じゃぁ、羽衣ちゃんはタテを呼んで?」


 俺は羽衣ちゃんに、分裂させたギルドカードを一枚渡した。


「うん、じゃーいっせーのーせでやろ?」


 そして、俺達は唱える。


「「オン・サラ・リー!」」


 羽衣ちゃんは、初めてのスキル(?)詠唱に大興奮だ。そして、最初の時より、少ない光と煙が舞い上がり、二つの影が現れる。


「姫! お呼びですか?」


 タテが羽衣ちゃんの前に跪く。


「お早いお呼び出しどすなぁ。旦那さん」


 ハオカがスカートの様に半纏の裾を摘み上げ、上品に挨拶してくる。ああ、今回は普通(残念)だ。


「あら? 最初ん時みたいに、踏んだ方が良かったどすか?」


 やめて! 皆の視線が痛いから! ……? と言うか、これ、凄い疲れる……!


「っ! 旦那さん! 無理をしてはいけません。事情はうち達で話しておきますさかい、そろっと休んでおくれやす……」


 そう言うと、ハオカは俺の額に手を当て、頭を撫でてくる。俺はその手の暖かさに身を委ね……そのまま目を閉じた。


 次の日、ハオカから事情を聞いたらしく、皆はハオカの事を受け入れてくれた様だったが、流石に皆、悪ノリが過ぎると罰として俺の朝ご飯が白湯だけだった……

京ことば、うろ覚えですいません。

指摘有れば直しますが、取り敢えず勉強中です。

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