Not Smart But Hero
続きです、よろしくお願いいたします。
――天帝城『地下牢』――
――椎野が『玉座の間』に現れた頃、天帝城の『地下牢』にもまた、忍び寄る者が居た。
「――ここは?」
「お目覚めですか……、主……」
目を覚ましたクリスの傍に、ティグリが控えていた――。
「ティグリ……、お前が……これを?」
クリスは、自分を縛り付けていた、何らかの装置を顎で差し、ティグリに問い掛ける。
すると、ティグリは静かに頷き、クリスの問いを肯定し、そのまま顔を上げると、クリスの目を見ながら、告げる――。
「――助けに参りました……、主」
「チッ……、俺は囚われのお姫様かよ……」
クリスは不機嫌そうに、呟くと、そのまま立ち上がり、周囲を見渡す――。
「さてさて……、どうすっか……」
「――主、このままお逃げ下さい……、そして……、生き延びて……下さい……」
ポリポリと頭を掻き、逃げ道を探るクリスにそう告げると、ティグリは、自身が来た道を指し示し、そう進言する。
「あ? んだよ、てめぇが案内すんだろぉがよ」
「いえ……、主、吾輩は……行けません。――ここまで……です……」
寂しそうにそう告げると、ティグリの身体は、サラサラと、砂の様に崩れていく。
「――は? ど、どういう事だっ! て、てめぇ……、俺を助ける為に……、命懸けたってのかっ?」
――クリスの問いに、ティグリは答えず、フッと笑みを浮かべ……。
「もう一度……、言い……ます……、生き延びて……」
そして、そのまま風化する様に、消えてしまった……。
クリスは唖然とし、暫くの間、ティグリが居た場所を眺めていたが……。
「――んだよ……、そりゃ……、んな、敵地のど真ん中で、どぉやって逃げるっつぅんだよっ!」
クリスは取り乱し、蹲ると、地面を何度も何度も、繰り返し、叩き続ける。
すると、ティグリが居た場所に、砂状の何かが再び集まり人の形を取り始める――。
「――あ? ティ、ティグリか? やっぱり、お前……」
「あー、ごめん、俺はティグリじゃねぇんだわ……」
――そこに現れたのは、『菌伯獣』ボゾア……、栗井博士が、自らの直属として生み出した、最弱の『伯獣』である……。
「……どう言う事だっ、説明しやがれっ!」
――詰めよるクリスに、ボゾアは、困った様な表情で、説明を始めた……。
「あんな? ティグリはよう……、裏切り者の、ミクリスとの戦いで相討ちになって、イナックス大陸の端っこで、死んじまったんだわ……」
「――は? なら、さっきのティグリは?」
訳が分から無いと言った苛立ちを見せながら、クリスは、更にボゾアに詰め寄る。
すると、ボゾアは観念した様に、バツが悪そうに、語り続ける――。
「――実はよ? 俺ぁ、瀕死の生物を分解して取り込むってぇスキルを持ってんだがよぉ……、あん時、漁夫の利を狙ってよ? 瀕死のミクリスと、ティグリを取込んだまでは良かったんだがよぉ……、ティグリの「主を助けたい」ってぇ意思が強すぎてよぉ……、そんままじゃぁ、俺の意識の方が呑まれかねないってぇ思ってよぉ? 妥協案として、ティグリの望みを叶えて、大人しく去ってもらう事にしたんだわ……」
「――んだよぉ……、そりゃ……」
――ブツブツと、誰に対する文句なのか、やり場の無い、モヤモヤとする気持ちを、クリスは呟き続ける。
ボゾアは、そんなクリスの様子を、気まずそうに眺め、ふと、ある事を思い出し、クリスに告げる。
「――まぁ、そんな訳で、俺ぁ、これから俺の主を助けに、『地球』とやらに行くつもりなんだわ……」
未だに戸惑いの表情を浮かべるクリスから、視線を逸らさず、ボゾアは話し続ける。
「――んでな? 俺のスキルで、身体を粒子化して、『地球』が迫る時まで隠れる事にするつもりなんだがよぉ、一人位なら便乗できるんだわ……。――ついでだから、アンタも来ないか?」
「――あ? 何、言ってんだ……?」
差し出されたボゾアの手を見た後、クリスは訝しげな表情を浮かべる。
ボゾアは、そんなクリスに向けた手を、引っ込める事無く――。
「主――栗井博士がよぉ、「地球でなら、こっちでやった事の立証が難しいから罪に問われにくい」って、言ってたからよぉ……。――アンタ、こっちだとお尋ね者だろ? 俺らと一緒によぉ、向こうで一からやり直さないか?」
――そう告げた……。
クリスは、暫くの間、悩んでいたが……。
「………………「生き延びて」……か……」
そう呟くと、ボゾアの手をガッシリと掴み返し、そして――。
「――ただ……、ビオさんには……、キッチリ、借りを返しときてぇな……」
「おぉっ、良いぜ? あんま時間かけんなよ?」
――二人は粒子となり、その場から姿を消した……。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
――天帝城『玉座の間』――
「――いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!」
『玉座の間』に、消滅するドラコスのの断末魔の叫びが響き渡った――。
「――騒がしいな……」
そう呟き、ラヴィラは遂に目を開け、眼下で戦闘を繰り広げている、俺達を見下ろしている。
「――ん、『カトラリ・ミート』!」
「グァッ! ――まだ……『大津波』っ!」
――おっと、今は目の前のグリヴァだ……。
俺は、もも缶の前に幾つかの『塗り壁』を配置して、グリヴァが放った四連の突きをいなす。
すると、グリヴァは、僅かに驚いた様な表情で、俺を見る。
――しかし、そのよそ見は……、一対多の状況では、非常にまずいよ?
「――隙……ア……リィィッ! 『二等星』ォッ!」
「――ガッ!」
――俺を見たのは、僅かに一瞬……、だけど、その隙を、悠莉が見逃す筈も無く、盛大に頭突きをお見舞いしていた。――あれは、痛いぞ……。
まぁ、正直、ほぼ六対一でフルボッコ状態なんだが……。
「悪いな、グリヴァ……、こっちも急いでるんだ……」
「――ふ……ふふ……、仕方……無いですよ……、互いの故郷の……為、ですからね……」
――その割には、何だろう? グリヴァは、もも缶の成長ぶりを楽しんでいる節があったんだが……。気のせいか?
「じゃあ、取り敢えず、全部終わるまで、眠って居て貰おうかな?」
「――そうは……、問屋がおろしません……よ?」
グリヴァは、銛を振り回し、俺と向かい合う……。
――しかし、スマン、グリヴァ。
「――埋まれ! 『土竜叩き』!」
「――んがっ!」
背後から忍び寄ったサッチーが、スキルで生み出した土製のハンマーが、勢いよくグリヴァの頭に振り下ろされる。
「勝てば……官軍……。――うん……」
「だ、だよなぁ?」
悠莉、もも缶、ペタリューダからの、熱い視線を受けて、俺とサッチーは、乾いた笑い声を上げながら、縮こまる。
――だって……、ねぇ?
「――おやっさん……」
「旦那さん……、相も変わらずどすなぁ?」
更にそこに二人が追加され……、俺とサッチーは、何故か、二人して正座する羽目に――。
すると――。
「――ク……クククッ」
俺達の頭上、玉座に座ったラヴィラが、突如、笑い声を上げ始めた。
「な、何がおかしいんだよっ!」
――あ、サッチー……、それは、まぁ……、仕方ないよ?
「いや、失敬……、色々思う所があってね? まさか、私の部下が、こうも遊ばれるとは、思ってもいなかったよ……」
ラヴィラは、床に転がっているアクリダ、リンキ、グリヴァ、そして、消滅してしまったドラコスが居た辺りを見渡すと、徐々に、浮かべていた笑みを消していく。
やがて、完全に無表情――いや、不機嫌な表情を浮かべ、玉座に座ったまま、頬杖を突き、俺達を、冷たい目で見下ろし、口を開いた――。
「――役立たず共め……、アーグニャにしろ、ドラコスにしろ、グリヴァにしろ、どいつもこいつも……」
「ふふふ……、残るは、アンタだけだぜ? 降参すんなら、今のうち……だぜ?」
――サッチー、暫く見ない間に、(口は)立派になって……。
「ん、グリヴァ、悪く言うの、ダメ」
「――そうよね、自分の為に尽くす人を悪く言うのって……、男としても、王様としても、最低よね?」
――もも缶と、悠莉は、グリヴァへの扱いに対して怒っている様だ。
まぁ……、それは、俺も同感だけどな。
「んふふ……? 偉い人を打ち据える快感……、もう一度、味あわせて頂きますわ?」
「そうどすなぁ、おいたしたら、お仕置きをあげな……ねぇ?」
ペタリューダは、鱗鞭をペシペシと振り回し、ハオカはバチをクルクルと手の中で回転させ、ラヴィラを冷たい目で見ている。
「――ランららーん」
――ティスさんは……まぁ……、良いか。
「――まぁ、そう言う訳だから……、ラヴィラさん、覚悟してくれ……」
「フン……、良いだろう、かかって来るがいい……。――出来るものならな?」
玉座から立つ事も無く、ラヴィラはそう言い放った。
そして、その言葉を合図に、まず飛び出したのは――。
「――『ノコギリソウ』ッ!」
――ミッチーだった。
ミッチーは、勢いよく飛び出すと、ラヴィラが座る玉座を目指し、階段を駆け上がって行く。
そして、そのまま、ミッチーが、階段の中程まで上った、その時、遂に、ラヴィラが立ち上がリ――。
「――頭が高い……『控えよ』」
ラヴィラは、小さな声で、そう呟いた。
「「「「「「「――っ!」」」」」」」
その瞬間、階段を駆け上がっていたミッチーと、他の皆の動きがピタリと止まる。
そして、ミッチーは、動きを止めたまま、階段から転げ落ちてしまった。
「――フン……、戦士である限り……、私に逆らう事は出来ん」
ラヴィラは、玉座から立ち上がったままの姿勢で、俺達を見下ろしている。
――逆らう事は出来ない? どう言う事だ?
「私は、人でありながら……『獣士』へと至った者、人の頂点、獣の頂点、そして……、戦士の頂点なんだよ……。我がスキルは、戦士の身体を支配し、動きを封じ、また、戦士のスキルを支配し、無効化する……、もう一度言うぞ? ――貴様等は、私に逆らう事は出来ん、つまり、倒す事など、絶対に出来んっ!」
そして、ラヴィラは、勝ち誇り、余裕に満ちた表情で、その場から一歩を踏み出し――。
「――ぬぉっ?」
――俺が仕込んでいた『札落とし』に引っ掛かり、先程のミッチーと同様に、バランスを崩し、階段を転げ落ちてしまった……。
「「「「「「「……………………」」」」」」」
動きを封じられた皆は、笑い声すら上げる事が出来ないんだろう……。しかし、その表情は、今にでも腹を抱えて笑いだしそうな程に、プルプルと震えている……。
「なっ、なななな……」
どうやら、ラヴィラは、何が起こったのか、一瞬、理解出来なかった様で、キョロキョロと首を動かし、やがて、俺の姿をその視界に捉え、顔を真っ赤にすると――。
「キ、貴様かっ! ――本当に……、本当に最後まで小賢しいっ!」
そう言って、俺の顔を見ながら舌打ちし、その腰に下げた剣に手を掛ける。
「まぁ良いだろう……、長い人生の中で、ここまで虚仮にされたのは初めてだ……。――お礼に、素晴らしいショーを見せてあげよう……」
ラヴィラは、剣を振り上げ、構えると、動けずにいる悠莉を目がけて、駆けだした――。
そうか……、ソレが……お前の、やり方か……。――ならっ!
「――仲間が無残に切り刻まれる様をっ! そこで、指をくわえる事すら出来ずに、私にたてついた事を、後悔しながら、見届けるが良いっ!」
――そして、勢いよく走るラヴィラの剣が、悠莉に届くまで、あと一歩――と言う所で……。
――ゴインッ!
馴染み深い、衝突音が、俺達の耳に響き渡る――。
「――っ。が、な、き……?」
鼻を真っ赤に染めながら、ラヴィラは顔面を押さえ、一歩、二歩と、後退って行く――。
「キ、貴様……、まだ仕込ん――ブゲェッ!」
顔を真っ赤にして、憤慨し、俺を睨み付けて来たラヴィラを……、俺はギルドカードを丸めて作り上げた『親父の拳』でぶん殴るっ!
「「「「「「「「………………」」」」」」」」
悠莉達に加えて、意識を取り戻し、事の成り行きを見守っているらしきグリヴァまでもが、呆気に取られている。
「――な、何故……、今のは……?」
――さて、畳み掛けるなら、この辺かな? 今なら、動揺してるっぽいし……。
俺は、その場から一歩、二歩、三歩と、殴られ、蹲るラヴィラに向かって、歩き出す――。
「――っ! ば、馬鹿なっ! 何故……、何故動けるっ! 何故、スキルが使えるっ! ――有り得んっ、こんな事は、有り得んっ!」
「有り得ん――って言われてもなぁ……」
「――グヴァッ!」
もう一丁、『親父の拳』を叩き込み、ラヴィラを仰向けに転がす。
――正直、俺もよく分から無いんだよな……。ミッチーが転げ落ちた時も、皆が固まった時も、「ん? 何やってんの?」って感じだったし……。
「有り得ん、有り得ん……、有り得んっ! 全ての戦士は、この私に逆らう事は出来ん筈だっ! ――例え、同じ『獣士』であっても……、それは絶対だッ! ――『大戦王』!」
ラヴィラの全身が黄金の輝きに包まれる――。
そして、光が収まると、そこには、黄金の甲冑に身を包んだラヴィラが、立っていた。
「――どんなインチキだか知らんが……、これで、終わりだッ! ――『控えよ』!」
ラヴィラの全身から、黄金の光が放たれ、悠莉達だけでなく、グリヴァや、気を失っている筈のリンキ達までもが、跪く格好で、ラヴィラに頭を垂れている――。
しかし――。
「――『リーマン流 親父の拳』!」
――今度は、下から突き上げる様に。ラヴィラの顎を目がけて、振り抜いてみる。
「なっ、グボァッ!」
相変わらず……、俺にはラヴィラがどうしたいのかが分からん……、いや、跪かせたいんだろうなぁとは思うんだが……。
「何故だ……、何故だぁっ! 貴様、一体……、何なんだっ!」
――いや……、何なんだ……って、只のサラリーマンなんですが……って……。
「――あぁっ!」
「――っ!」
成程……、何て……馬鹿馬鹿しい……。
――タネが分かってしまうと……、俺の一挙手一投足をビクビクしながら伺っているラヴィラが、少し、哀れに感じるな……。
「――『控えよ』、『控えよ』、『控えよ』、『控えよ』! ――っ! 有り得ん、何故だっ!」
「「「「「「「「………………っ!」」」」」」」」
――乱発は、どうやら、悠莉達にかかる負担が大きいみたいだな……、手っ取り早くタネバラして、止めさせるか……。
「だって……、お忘れかもしれませんが……、俺――って言うか、『サラリーマン』って、戦士――つまり、戦闘職じゃなくて、事務――非戦闘職ですよ?」
その瞬間の、ラヴィラや、先程のラヴィラのスキルで気が付いたらしき、グリヴァを始めとした、ラヴィラ一味、俺の仲間達の顔は……、是非とも写真で撮っておきたい程、面白かった――。
ラヴィラを除いた、ラヴィラ一味は、「――えぇ……」って感じで、俺の仲間達は、「あ、そっか、でもバラしちゃダメじゃんっ!」って感じで、俺の顔を眺めている。
そして、余りの衝撃に、思わずスキルの威力を弱めてしまったらしき、ラヴィラは――。
「――ぁ……」
口を大きく開けて、呆然としていた――。
あ、これ、チャンスじゃない?
「えいっ!」
――『札落とし』っ!
「――グァッ!」
後頭部から、地面に激突したラヴィラは、地面に寝っ転がったまま、暫く茫然としていたが……。
「ふ……、ふふ……、ふははははっ!」
ゆっくりと立ち上がると、その手で顔を覆い隠して、狂った様に笑い出し、黄金の甲冑姿から、いつもの姿に戻ってしまった。
――もしかして、頭を強く打ち過ぎたか? 階段から落ちたし、今も転んだし……、ちょっとやり過ぎた?
「そうかそうか、まさか、私のスキルに……、よもや、そんな落とし穴があるとはな……。――はぁ……、しかし、それならば……、剣で斬り伏せるだけよっ! ――所詮、非戦闘職っ! 純粋な戦闘力では、まともに立ち回る事も出来――ま……い……?」
「――いやぁ……、それは、その通りだから……、アンタが呆けている間にさ……」
ラヴィラは、本日何度目か、と言いたくなる程、呆気に取られた表情を浮かべている。
その視線は、俺と、剣の刀身――があった辺りを見比べている。
「何を……した……」
「うん、切っちゃった!」
『旋盤牢』……、久々に使ったけど、相変わらず良い切れ味してんなぁ……。
俺は、内心で自分の繰り出した技に、惚れ惚れしながら、軽く体をほぐし、固まって俺を見ているラヴィラを睨み返して告げる。
「って事でさ、そろそろ……決着付けようぜ?」
俺は、拳を構え、ラヴィラを手招きすると、なるべく不敵に見える様に、自信あり気に微笑む自分をイメージする――。
ラヴィラは、またもや呆然としていたが、やがて、口角を上げ、ラッコ男には及ばないものの、微凄惨な笑みを浮かべる。
そして――。
「――ククク……、良いだろう、面白いっ!」
ラヴィラはそう叫ぶと、剣を捨て、俺の傍に来て、俺同様に拳を構える。
「――さぁっ! 遠慮はいらんっ! 来いっ!」
――じゃぁ、遠慮なく……。
「私、こういう者でございます――」
「――はっ?」
慣れた仕草、慣れた手順で、俺は名刺をラヴィラに向かって差し出す――。
「「――っ!」」
――ガゴンッ!
羽衣ちゃんを始めとした多くの人に、さんっざん鍛えられた俺の頭と、凝り固まったラヴィラの頭が激突する。――痛え……、思ったより固いぞ……。
「ア……? ガァ?」
――ラヴィラは、何が起きたのか分から無いと言った感じで、ポカンと俺の顔を見つめていたが……。
「――セイッ!」
「ガァ――」
そこに、もう一度、今度は『名刺交換』の効果でなく、俺自信による頭突きを喰らわせる――。
「貴……様……、戦士として……恥ずかしく……無い……のかぁっ!」
ラヴィラは悔しそうに、そう叫ぶが――。
「だから……、俺、戦士じゃないっつうのっ! ――それに……、『礼儀作法』は、サラリーマンの立派な武器だっつうの」
「――ゴァッ!」
――スーツの襟を正し、止めに『親父の拳』を叩き込む。
「「「「「「「「――うわぁ……」」」」」」」」
気を失ったラヴィラに、同情の視線を向ける仲間達――。
「うっ♪」
「父上っ!」
――まぁ……、羽衣ちゃんと、タテが喜んでくれているみたいだし……、これで良いんだ……。別に、悲しくなんてないっ! ないよ……?




