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大・出・張!  作者: ひんべぇ
第十章:働く男
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仇討つ、剣

続きです、よろしくお願いいたします。

 ――天帝城『玉座の間』――


「――タン……じゃない、グリヴァ、上手いな……」


 取り敢えず、ラヴィラが座る玉座の前、玉座に至る階段周辺に『札落とし(バナナの皮)』と、『塗り壁』をばら撒いた俺は、対グリヴァ組と、対白の――ドラコスだっけ?――組の戦況を分析している。


 ――決して、サボっているわけではない……。だから、悠莉さん、こっちをチラッチラ睨むのは、勘弁して下さい……。


「――『一等星(ファースト)』っ!」


「うふふふふぅっ!」


「――『(マダ)』」


 悠莉が放った横薙ぎの蹴りを、グリヴァは桜色の水をぶつける事で、相殺させている。――先程から見てる限りだと、悠莉の良く使うスキルとか、スキルを使うタイミングとかを見切られているっぽいな。


 ――正直、あれだと持久戦はキツイかな? 読まれても押し込む力とか、読めない動きとかが出来れば良いんだが……。


「うーん、難しいよなぁ……」


 良くも悪くも、悠莉は正直だからなぁ……。


 ――そして、どうでも良いが、ティスさんは何で、戦闘に参加せずに、浜辺のカップルみたいな「捕まえて御覧なさい」みたいな笑顔なんだろう……?


「――よしっ!」


 ここは、先に悠莉達の加勢をするかな。


 そう決め、俺が立ち上がった時だった――。


「――ぅ……、あ……れ?」


「お、気が付いたか? ――愛里……」


 その顔はまだ血の気が薄いものの、愛里がやっとこさ、目を覚ましたみたいだ。


「――え……、椎野……さん?」


「あぁっ、良いから、まだ寝てな?」


 ――一気に目を見開いた愛里に、そのまま横になっている様に告げると、俺はなるべく、ダンディズム溢れる様に、親指を立て、プルプルとウィンクしながら、「ただいま」と告げる。


 すると、愛里は……。


「あぁ……、この微妙なセンス……、本物の……、椎野さん……、何ですねっ!」


「――おぉっ?」


 若干、毒が入ってた気もするが……、飛びついて来た愛里の感触の前には、些細な事だ――って違う。――自重しろ、俺っ! 今は、そんな場合じゃない……。


「ほら、寝てろって」


「あぁ……、椎野さん椎野さん椎野さん――」


 ――おかしいな? 愛里が、何だか怖い……、まぁ、気のせい……かな……?


 取り敢えず、絞殺さんばかりに、抱き付いて来る愛里を引き剥がし、軽く現在までの状況を説明すると――。


「――分かりました、これが終わればゆっくり出来ますよね? なら、少しでも早く終わる様に、私にもお手伝いさせてください……」


 そう言うと、愛里は即座にスキルを発動し、自身の傷口を軽く塞ぎ始めた。


 そして、俺の目を強く見据えると、反論は許さないと言いたげに――。


「椎野さん、『強化門』……、二つはいけますっ!」


「お、おぉ……」


 ――そう言ったのだった……。


「――オッケー……、良いぞっ!」


 俺はチラッチラとこっちを見てくる悠莉と、同じく、時たまこっちを見てくるハオカに、目線で合図を送った後、愛里に向けて、準備完了の合図を出す。


「はいっ! ――『パゥワ』『パゥワ』『パゥワ』『パゥワ』『パゥワ』『パゥワ』『パゥワ』『パゥワ』『パゥワ』『パゥワ』『パゥワ』――」


「流石、愛里……、手際が良いなっ!」


「えへへ……、褒められちゃいました……、嬉しいから……、ついでに……『ヤッセ』……」


 はにかみながら、愛里は最後の力を振り絞り、地面に横たわったままのペタリューダ、サッチーに回復スキルを施し……、再び気を失ってしまった――。


「――お疲れ様……」


 ――「うふふふふふ――」と、笑いながら眠る愛里の頭を軽く撫で、俺は立ち上がり、軽く体をほぐす。


「羽衣ちゃん、タテ、ピトちゃん、愛里の事を頼む」


「う? いいよっ!」


「ハイッ!」


「――それ、ピトがさっきも言った事!」


 三人に、丁度いい感じの退避理由も与えられそうだし、そろそろ本格的に参戦しようかな――っとした所……。


「――よぉ、ツチノっち……」


「お帰りなさいませ……お・じ・さ・ま……」


 サッチーと、ペタリューダが目を覚まして、俺に手を振っていた。


「よっ!」


 手っ取り早く、挨拶と事情説明を済ませる。――正直、起きるなら皆一斉に起きてくんないかなと思ったのは、内緒だ……。


「――ほいっとぉ……」


 目を覚ましたサッチーは、真っ青な顔で、そう呟くと、スキルを解除し、もも缶を氷漬けから解放した――。


「ん……、寒かった……、お腹、空いた……」


「――や、止め……、オ、オレが悪かったってっ! あん時は、ああすっかなかったんだって、マジでっ!」


 氷漬けから解放されたもも缶は、俺をチラリと見ると、何を意味するのかは分から無いが、俺に向けてブイサインを向け、そのまま、氷漬けされた恨みをサッチーに向けていた――。


 やがて――。


「――ん、ん……、やり過ぎた」


 ひたすら、ポカポカともも缶の打撃を喰らっていたサッチーは、折角、愛里に回復して貰ったにも拘らず……。


「マ、マジでいてえ……」


 結構なダメージを負っていた。


「ん、もも缶、決着、付ける」


「うん? ――ああ、そうか、グリヴァ……」


 どうやら、もも缶はグリヴァとの決着を、お望みらしい……。――その割には、何か楽しそうだが……。


 ――と、思っていると。


「ん、さっきの、お返し、してくるっ」


 やはり楽しそうに、目を輝かせてナイフとフォークを取り出している。


 ――まぁ、婆ちゃんと遊ぶ感覚なのか……な?


「分かった……、行って来いっ!」


「――んっ!」


 ――さて、じゃあ、ペタリューダとサッチーは、ミッチー達の援護に向かって貰うかな? ――何となく、ミッチーが嫌がりそうだけど……。


「――んっ!」


「って、もも缶? 行かないのか?」


 ふと気が付けば、もも缶は、まだそこに居た。


 ――もも缶は、俺の顔をジッと見て、若干、機嫌を損ねた様に――。


「んんっ!」


 頭を差し出して来た……。


「――んん? ――あっ、もしかして……これか?」


 俺は苦笑しながら、差し出された頭を撫でる。


 すると、もも缶は――。


「――ん、これ」


 満足そうに、何度か頷くと、そのまま、悠莉達の元へ、テテテと駆け出して行った。


「――ふふ……」


「? どうした、ペタリューダ? サッチーまで……」


 気が付けば、ペタリューダとサッチーが、クスクスと笑いながら、こっちを見ていた。


 ――俺が何事かと尋ねて見ると……。


「いえ、今のやり取りが懐かしく思えまして……」


「――あぁ、帰って来たって感じだべ?」


 ああ……、やっぱり、皆に心配かけてたんだなぁ……。


「本当に……ごめん……」


 二人に深く頭を下げ、俺は改めて色々と反省しなきゃな……と、感じていた――。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ――俺が二人に頭を下げた後、ふと、ハオカ達の様子を伺うと……。


「――喰らいよしっ! 『雷電』っ!」


 ハオカの放った数本の太い朱雷が、白い魔獣達に襲い掛かり、消し飛ばしていく――。


 気のせいかな? 若干、威力が増している気がする……。


「――ふっ! セイッ!」


「オホホ、そんな大振りで当たるとでも?」


 どうやら、生み出される魔獣をハオカが蹴散らし、ミッチーはドラコスを相手にするって感じで役割分担出来ているみたいだな……。


 ――今のところ、こっちには援護は必要なさそう……かな?


 念の為に、ハオカがこっちをチラリと見た時に、アイコンタクトで了承を得る。――よし、後は任せたっ!


 俺はハオカに、プルプルとウィンクした後で、悠莉達の援護に向かった――。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「オホホホホ! ホレ、鬼さんこちら――っとぉ!」


「グッ……、ちょこまかと、鬱陶しい爺さんっスね……」


 ドラコスは、ミッチーの斬撃をヒラリと躱すと、その懐に飛び込み、拳の一撃を叩き込む――。


 先程から、そんなヒットアンドアウェイを繰り返され、ミッチーの心には、焦りが生まれていた。


 その焦りは、更なる大振りを生み出し、ドラコスの格好の餌食となる――筈だったが……。


『ミッチーさん、落ち着いて下さい……、アイツの一撃は、軽いですよ? そして、動きも良く見れば……、ミッチーさんなら――』


「――っ!」


 ――(ミト)の柄から、ミッチーの手を包み込むような、温かい感触が伝わってくる……。


「ミトさん……。そうッスね、少しアツくなり過ぎだったみたいッス」


『――そんなミッチーさんも、大好きですよ?』


 そして、二人は心の中で手を繋ぐイメージを同期させる――。


「オホホ? ニタニタと笑って……、諦めて現実逃避でも始めましたか?」


 ドラコスに、そんな二人のイメージが見える筈も無く、ドラコスは、ここぞとばかりに、ミッチーの顔や、身体を殴りつける。


 やがて、ミッチーの顔がパンパンに膨れ上がると――。


「――コレで……、終わりっすね……」


 ミッチーは、ニヤリと笑みを浮かべて、ドラコスを見つめる。


 ドラコスは、そんなミッチーの事を、気でもふれたかと訝しみ――。


「オホ……、気味が悪いですね、サッサとお逝きなさい?」


 止めを刺そうと、地面を強く蹴る――が……。


「――なっ? 足が?」


 その身体は、蹴ったはずの地面から動く事無く、その場に留まっていた。


 ドラコスは、何度も地面を蹴るが、やはり、その場から動く事が出来ず、そこで漸く、足元を見る。すると、そこには――。


「これは……、触……手?」


 ドラコスのその足には、無数の触手が絡み付き、ドラコスをその場に縛り付けていた。


 そして、ドラコスは、ソレを仕組んだであろう人物――ミッチーの顔を、強く睨み付け、そして、怒鳴り散らし始めた――。


「キ、キサマの仕業かっ! ――何と、無駄な、鬱陶しい事を……、サッサと、これを解いて、小生に大人しく、やられなさいっ! これは、命令だっ! ――小生の、ひいては陛下の為に、その剣と、キサマの身体を――寄越せぇ!」


 ミッチーは、そんなドラコスの様子を見つめ、晴れやかな表情を浮かべながら、静かに……、サクッと……、地面に剣を突き立てた。


 そして――。


「これが……、自分と、ミトさんの……、最高のスキルッス……。――くたばれ……『ラフレシア』ッ!」


 ミッチーがスキルを発動させると、地面から大量の触手が吹き出し、ドラコスに巻き付いていく――。


「――ググググっ! 何だ……、これ……は? ち、力? エネルギー? い、いや、存在……ごと……だと?」


 ――シャグシャグシャグ……。


 触手が、何かを貪る様な、不快な音を立てながら、ドラコスへの巻き付きを強めていく。


「ヒッ、い、嫌だ……、小生は……まだ、まだ死にたくないっ! ――もっと、もっともっと、研究を……続けたいっ!」


 顔を真っ青にして震えるドラコスは、意を決した様に、対峙するミッチーを睨み付け、不敵に笑みを浮かべる。


 そして――。


「オ、オホホホホホホホ、後悔するなよ? ――『地下牢』に繋いだ装置……、その中に仕込んだ『創獣士』の力を解放する――」


「? それがどうしたっスか? 悪足掻きは「『獣士』の量産」――は?」


 ドラコスは、表情を変えたミッチーを、満足そうに見つめると、喰われていない右手を空に掲げ、狂った様に声を上げる――。


「オホッホォッ! ――『創獣士』の真価とは、『魔獣』を生み出す事では無く、『獣士』を『創』る事にあるっ! あのクリスとか言う若造は、ソレに気付けず、無駄な『魔獣』やら『創伯獣(アークラフツ)』とやらを作っていた様です……がっ! 小生の作った装置によって『創獣士』の力を制御し、小生の魔獣は、今っ! 新たなる『獣士』の軍団となるのですっ!」


 喰われながら、ドラコスは再び、狂った様に笑う。


『――ミッチーさんっ!』


「分かってるっス、ミトさん……。――させないっスっ!」


 ミッチーは、剣を振り上げ、ドラコスに止めを刺そうと駆け出し、事態に気が付いたハオカもまた、魔獣を蹴散らしつつ、ドラコスを目指す――が……。


「遅いわぁっ!」


 ドラコスは、高く掲げた右手を握り込み、何かのスイッチを押してしまった――。


「――っ!」


『………………あれ?』


 ――しかし……。


「――なっ? 何故? どうして……? しょ、小生の装置は完璧な……はず……っ!」


 ――カチカチカチカチカチカチカチカチ……。


 ドラコスは、徐々に消えていく身体を気にする事無く、何度も何度も、その手の中のスイッチを押し続ける。


「――違うっ、そんな筈はないっ! 小生は、小生に、失敗など、ある筈が無いっ! ――無いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!」


 ――ドラコスの叫びは、『玉座の間』に響き渡り、戦闘中の者達、そして、眠っていたラヴィラの耳を強く震わせた……。

明日は、早めに投稿できそうです。

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