表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大・出・張!  作者: ひんべぇ
第二章:出張開始
17/204

Find Salary Man

ここから、第二章です。よろしくお願いします。

『先輩……? ねぇ! 先輩なんですか! 聞こえますか? 今どこにいるんですか? ねぇ、なんか言って下さいよ! 先輩!』


 現在の状況! 俺の新スキル『報連相』――俺のアドレスに登録している相手に連絡を取れるらしい――で、ふざけて会社の後輩に電話してみたら、何かつながった!


「えっ! マジで? お前……あ、れ?」


 そこで、俺の視界は真っ赤に染まり、そのまま意識を手放してしまった様だ。


「っ! ぶはっ!」


 気付けば、俺は自室で寝かされていた。外は暗い……あれから何時間たったんだろう……


「あ、目が覚めましたか?」


 ふと声が下方向を見ると、愛里さんが手拭と桶を持って俺の部屋に入ってきたところだった。話を聞くと、どうやら俺が倒れてから三時間ほど経っているらしく、そろそろ夕飯だそうだ。


「いやぁ、心配かけちゃったね、ごめん」


「本当ですよ、もう……でも、無事でよかったです」


「ん、ありがとう」


 そして、俺達が食堂に入ると、先に食堂入りしていたメンバーが一斉に駆け寄ってくる。


「ツチノっち!」


「おやっさん、お身体は大丈夫ッスか?」


「おじさん……バカ……」


 それぞれなりに、心配してくれる。……? そう言えば……


「羽衣ちゃんは?」


 いつもなら、真っ先に指定席(俺の頭)に来るのに今はそれが無い。不思議に思っていると、すぐ近くのテーブル越しに頭半分顔を出した羽衣ちゃんがいた……隣にはダリーさんが座っており、どうやら俺の方に行かないのか尋ねている様だが、どうにも様子がおかしい……


「もしかして、体調でも悪いのか?」


「違うわよ……おじさんが倒れてから一番動揺したのが羽衣なのよ……「ういのせいで、おじちゃんが死んじゃう」って言って、ずっと泣きじゃくってたんだから……」


 ん? 何でそんな事に? 俺が疑問を感じていると、まずはちゃんと話して来いと、悠莉ちゃんに蹴っ飛ばされる。


「羽衣ちゃん……どうしたの?」


 どうしたら良いか分からなかったので、取り敢えず直接聞いてみる。


「ういが……ういが、わがまま言ったから、おじちゃんが死んじゃったの!」


「ん? いや、う、うん、おじちゃん生きてるよー? ピチピチ生きてるよー?」


「うそ! おじちゃん、さっき倒れちゃったもん! うい、見てたもん!」


 んー、どうやら、さっき俺が倒れたのを死んじゃったと勘違いしてるみたいだけど、死んで無いって言っても頑なに信じてくれないな……うーん、それなら……


「うん、おじちゃん、一回死んじゃったけど、ほら、おじちゃん最強だから生き返ったんだよ!」


 我ながらなんて胡散臭い……皆も白い眼を向けてくるし。


「じゃぁ、おじちゃん、あいねーちゃんにめざめのチューしてもらったの?」


「えっ?」


「めざめのチューで、ヒーローはいきかえって、つよくなるってパパが言ってたよ? うい、知ってるよ?」


「えっ! いや、それは、その……」


「えぇ、そうよー、羽衣ちゃん良く知ってるねー?」


 俺が慌てて、「違う」と言おうとしたら、愛里さんがそれを遮って、羽衣ちゃんを「凄い!」と言って褒め始めた。俺が何か言おうとすると小声で「これで羽衣ちゃんが信じてくれますから♪」と言った。あー、なるほどね。嘘も方便って事か。まぁ、取り敢えず、羽衣パパの罪がまた一つ増えた事は確実だ……


 その後、羽衣ちゃんは漸く笑顔を取り戻し、「おじちゃん、またさいきょーになったね!」と言ってから小さく「わがまま言って、ごめんなさい……」と謝ってから、指定席《俺の頭》に座った。


「さっきから気になってたんだけど……何で、羽衣ちゃんのせいなの?」


「だって、ういがママとおでんわしたいって言ったから……」


 どうやら、それを気にしていたらしい。俺は、あそこで倒れたのは、色々疲れてたからだよと言って、羽衣ちゃんのせいじゃないと教えてあげた。それを理解した羽衣ちゃんは、ぱぁっと目を輝かせて、ご機嫌になった。


 さて……状況が落ち着いた以上、皆と話す事はやはり、先ほどの件だろう。


 どうやら、俺が倒れるとすぐに、携帯の通話も切れたらしく検証も何もでき無かった様だ。


「うーん、スキルを使い慣れていないせいかもしれませんね。そのせいで、力の配分を間違ってバテたんじゃないでしょうか? 訓練すれば、他のスキル同様にスキルの使用時間が延びると思います」


 とは、ダリーさんの弁だ。確かに『ポーカーフェイス』も『名刺交換』も、訓練で練度が上がったからな……


 次の日、俺は訓練を兼ねて再度、『報連相』のスキルを使うことにした。


「じゃぁ、いくぞ!」


 昨日は、ちょっと疲れていたし、他の皆との通話で力を使い過ぎたのかも知れない……


 今日は、たっぷり睡眠を取ったし、朝飯もしっかりと食った。何とか、数分は会話できるはず……


 俺は、意識を集中し、深呼吸を繰り返す……


「『報連相』!」


 ちゃんと、叫ぶのも忘れない! ……しかし、このスキル、名前もそうだけど、スキル名叫んだ後携帯操作するからイマイチ、締まらないな。


『プルルルル…………プルルルル……』


 ……うわっ! 何、これ! ワンコールごとに、ごっそり体力が減っていく感じがする!


『先輩……?』


「うあ、よぉ……後、輩、つ、ぎはもう、ちょーっと、は、や、くでて、くれ、よ?」


『えっ! 先輩、またですか! あー、もう! わかりましたはやくちでいいますからきいてくださいねまたあしたこのじかんにでんわしてくだ……』


 そこまで聞くと、俺の意識は再び閉ざされてしまった。


 ――二時間後――


「流石に、少しは回復時間が早かったな……」


 今回は、気絶してから回復する時間が一時間程度早かった様だ。


「で、おやっさん……どんな感じなんスか?」


「あぁ、他のスキルと違って、すっげぇ疲れる……真っ当な会話するのは、もう少し練度上げなきゃダメだな。ただ……多分、何度でも向こうと連絡は取れると思う」


「「「「――っ!」」」」


「つまり……あたし達の家族と連絡が取れる可能性があるって言う事?」


 皆が息を呑む中、悠莉ちゃんが尋ねてくる。


「多分……だけどな。ただ、余り期待を持たないでくれよ? もしかしたら、何らかの条件があるかもしれないし……出来ると断言は出来ない」


「っ! そう、ですよね……」


 愛里さんは、期待を抑えきれないといった感じで、俺を見つめてくる。


「どちらにしても、まずはスキルの扱いに慣れる必要があると思うんだ……もし、良ければ、今から皆で訓練や検証に付き合ってくれるか?」


 それからは、日が暮れるまで、皆俺の訓練に付き合ってくれた。その結果、このスキルについて大体把握する事が出来た。


 まずは、予想は出来ていたことだが、このスキル、距離に応じて消耗度合いが違う……そら、倒れるはずだよ、言ってみれば星間通信だしな。そして、現在の通話時間だが、この街の範囲内であれば一時間を超えても通話できることが分かった。因みに、後輩との通話時間は、履歴を見ると昨日も今日も大体一分と言う事が分かっている。


「以上が、スキル『報連相』の概要なんだが……どうしよう? 向こうと連絡取れても、事情説明の時間がないな……」


「一先ずは、椎野さんの後輩さんがやってた様に、早口でのやり取りしかないんじゃないですか?」


「それがさぁ、このスキル、喋ると更に体力削れる感じがするんだよ……」


「じゃぁ、これから暫くは俺達皆で、訓練に付き合うべ?」


「そっスね……それしか無いっスよね」


「うい、けーたい、持ってないからツマんない……」


 夕飯を食いながら、俺達は意見を交わし合っていた。やっぱ、時間かかるのは仕方ないか……


「って言うか、それなら、誰かがおじさんの代理で話せばいいんじゃないの?」


 俺達が気長にやるしかないかと思っていると、悠莉ちゃんがそんな事を提案してきた。


 迷っていても仕方ないし、取り敢えず実践してみるかーって事になったんだが、これが、予想以上に上手くいった……のか?


「どうっすか? 聞こえますか?」


『あっ、聞こえる!』


 現在、俺の代わりに喋っているのがミッチーで、少し離れた所から応答しているのが、悠莉ちゃんだ。


 実験は上手くいったのだが……何と言うか、余り気分の良いものではないな……


 新たに判明したのは、悠莉ちゃんの思いつき通り代理で誰かが喋っても大丈夫と言う事……ただし、代理の人と俺とがかなり密着しないと無理だと言う事。正直、今、一番生きてるのが辛い……


「生きてるって何だろう……」


「? どしたんスか? おやっさん」


「いや、何でも無い……」


 思わず声が漏れてしまったが、こればっかりは仕方がない……


 ともかく、これで明日もう一度、試してみるか。と言う事で、その日は解散となった。


 ――明けて翌日――


 俺達は、朝食をとった後、昨日と同様に訓練所に集まっていた。


「さて、これから再挑戦するんだけど……これは、どういう状況?」


 俺の目の前では、ミッチーと愛里さん、悠莉ちゃんで何故かジャンケンが繰り広げられていた。


 どうやら、皆、向こうの状況が気になるらしく、その辺を聞いてみたいらしい。……あら?


「サッチーはいいのか? こういう時、真っ先に立候補すると思ってたんだけど?」


「あぁ、オレはある程度、皆の家族と連絡が取れてからで良いんだよ。 オレにはこっちでの心の支えがあるからよ、まだそんなに焦ってねんだ」


「あぁ、そう言うことか。……チッ!」


 そうこうしている内に、ジャンケンが終了したらしい……


「じゃあ、椎野さん、よろしくお願いします」


 愛里さんがジャンケンに勝利したらしい。


 さて、では早速……


「おじさん……分かってると思うけど、余計なスキル使って無駄に消耗しないでよ?」


 っ! 気付かれた!


「あ、あぁ、そんな事するわけないじゃないか……ハハッ」


 俺は、発動準備をしていた『ポーカーフェイス』の発動を止め、その場に崩れ落ちる……


「じゃ、じゃぁ、改めていくよ! 『報連相』!」


 ……ポチポチっとな。


『プル…… 先輩? 聞こえますか? 今どこですか? 無事ですか? 今の質問に答えてくださーい。どうぞ!』


 さ、流石、俺の後輩……ワンコールかよ! 切羽詰まった状況に強いと言うか、俺の扱いに慣れてると言うか。


「えっと、すいません、事情があって、椎野さんは無事ですけど、喋られない状況です」


『ア? アンタ誰?』


「あ、えと、すいません、私、今回椎野さんの代理を務めさせて頂いてます。桃井と申します……」


 怖いって! 学生さんを脅すんじゃないよ! と突っ込みたいけど、今俺は喋れない。……しかし、愛里さん柔らかいなぁ……


「おじさん……踏むよ?」


「ひぃっ! どこをさ!」


『あれ? 今先輩が喜ぶ声が聞えて来たような……どうやら、無事ってのはホントみたいですね……』


 俺が、悠莉ちゃんの睨み()脅し()に怯えていると、後輩が俺の無事を納得してくれた……何故だろう……あ、やばい。


 俺は、後ろから抱き着く格好で俺の携帯を使っている愛里さんの腕に、軽く二回ほどタップし、発動限界が近い事を知らせる。


「分かってくれて良かったです……それで、時間がもうないんで、先ほどの質問に順番に答えていきますね。声は聞こえますけど、短時間しか通話できません。今はそちらから見えるか分かりませんが、別の星らしき所にいます。無事です。どうぞ!」


 おー、一気に言ったなぁ。


『別の星? それって、どう言う事ですか?』


「あ、やば、も、むり」


「えっ! 椎野さん? しっかりして下さい! えっと、すいません、椎野さんの限界が来たようですので、また明日同――間――」


 そこで、俺の意識は途絶えた――


 次の日の再挑戦、本日は昨日のジャンケンで順番を決めてたのか、悠莉ちゃんが俺の代理だそうだ。


「おじさん、変なとこ触んないでよ?」


「ああ、全く問題ない?」


 スレンダー(笑)だしな……まぁ、俺はそこにはあまり興味ないから大丈夫! でも、悠莉ちゃん相手には過去二回程、やばい時があったので、念の為にコッソリ『ポーカーフェイス』発動!


「……それはそれで、何かスッキリしないんだけど……」


「はい、じゃあやるよ!  『報連相』!」


『プッ……先輩、メール受信してみて下さい』


 そう言うと、後輩は通信を切ってしまった。


 えぇ……、あいつめんどくさがって来てないか?


「……悠莉ちゃん、離れても良いよ? メール受信するだけだから」


「ッ! い、いや、でも、操作でも力使うかもじゃない? あ、あたしがやってあげるわよ!」


「あ、そうかもな……じゃ、頼むよ。『報連相』!」


 そう言うと悠莉ちゃんはそのまま、俺の携帯を操作しだした。


『………………ピロリン』


 え、嘘!


「うわ! おじさん、凄いメールが来てるよ……『どこだ』『無断欠勤ですか?』……これは、何か会社の人達?」


「あー、一瞬だけだけど、これも結構力使うな……いや、瞬間的には通話よりキツイか……?」


「あ、ごめんね! えっと、後輩さんのメール見ればいいのかな?」


「あー、『後輩』で登録してるから……」


「ん、分かった……あ、あったよ! 最新の日付だから、多分これだと思う」


 そして、悠莉ちゃんは後輩からのメールを読み上げてくれた。どうやら、俺がいなくなってからの事を書いてくれているみたいだ。


 まずは、俺はいなくなってからの数日は、有給扱いになっていたと言う事。これは、後輩が上手くやってくれたようだ。


 数日経っても俺と連絡が取れず、倒れてるんじゃないかと俺の家に行ってみれば、帰宅した様子も無い。事件性のやばさを感じて社長に相談し、ついに行方不明者として捜査中と言う事。この時点で、俺の家族にも連絡したらしい。


 最後に、俺の現状がどうなっているのか分からないから、後輩の方で事情を把握してから、皆に話すつもりだと言う事。


 以上の三点が書かれていた。


「あ、あと最後に『電話だと埒が明かなくて、イライラするので、まずはメールにしましたって言うか、それぐらい最初の方で気付いて下さい。この駄先輩!』って書いてある」


 うが、そうだった……この後輩は、メールで回し蹴りを送れるんでした……


「そっか、じゃぁ、返信試してみるか……」


 その後、俺達は皆で内容を考えた結果、以前ダリーさんや、ブロッドスキーさんに話した内容をそのまま、メールで送る事にした。


「あ、いきなり地球から飛ばされましたじゃ、信用し辛いだろうから何か撮って送る?」


 と言う悠莉ちゃんの提案で、サッチーのスキルを適当に動画で撮って送信する事にした……


 そして、メールを送信した段階で、俺の意識が飛んでいった。どうやら、動画送信は一発アウトみたいだ……

今回のサブタイトル元ネタは、〇ーグルサーチの隠しコマンドです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ