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大・出・張!  作者: ひんべぇ
第九章:ヘームストラ大戦
156/204

獅子夫妻

続きです、よろしくお願いいたします。

 ――ヘームストラ王国 西部――


「喰らいよし、『大太鼓』!」


 ハオカがバチを振るうと、太い一筋の朱雷が獅子夫妻の妻――レーナに向かっていく。


「はんっ、何だい何だいっ! こんなもんっ、『奮迅』!」


 レーナがその爪を振るうと、黄色い風の刃が一閃――朱雷とぶつかり合う。


「――クゥっ!」


「グァッ!」


 ぶつかり合う朱雷と黄風は、ハオカとレーナの間で火花を散らし、やがて相殺し、弾け飛ぶ……。


「アンタ……、中々やるじゃないか」


「うふふ……、あんさんも……ね……」


 ――一方、俺はと言うと……。


「せいぃぃぃいぃやっ!」


「来いー!」


 戦闘開始時から一歩も動かず、レーナの相方――レオンと睨み合いを続けていた。


「くっ……『雷電』!」


 ハオカはバチを乱打し、その全身から太い朱雷を数本放っている。朱雷は、ウネウネと不規則な動きをしながらレーナに向かって行き――。


「こ、こいつぁ、全部は……無理かね……、『ファング』!」


 レーナは襲い来る朱雷をヒラリヒラリと避けていたが、最後の一本だけはどうしても避けられないらしく、スキルを発動させる。――どうする気……だ?


「なっ!」


「――喰らいなっ!」


 レーナは一瞬でハオカの目前まで移動すると、そのまま爪を振るう。――しかし……。


「何のっ! 『絢爛舞踏』!」


「と、飛んだ?」


 ハオカもまた、スキルを発動し、宙に駆け上る事でレーナの爪を躱す。――あれ、下から見たらどうなるんだろう……?


 ――一方……。


「せーいっ!」


「――おっと、と、とりゃぁ!」


 ――俺は横目で、チラリとハオカ達を見ながら、レオンの掛け声に、慌てて掛け声を返す。すると、宙に浮いていたハオカが、何やら無言で俺の傍に降り立って来た……。


「? ハオカ……?」


「ん、レーナァ? どした?」


 ふとレオンの様子を見てみれば、レーナもレオンの傍に近付いている。


「「あれ? お前ら……」」


 そして、俺とレオンの声が重なり――。


「――旦那さん、なんで動かないんどすか?」


 ハオカはニッコリと微笑み、聞いて来た。――いや、どうしてと言われても……なあ……。


「え、いや、よく考えてみ? 俺……、この腕だぜ?」


 俺はギプスに包まれた両腕を持ち上げ、気まずそうに答える。ハオカは俺の両腕を見ると、少し小さな声で「ああ」と呟く。――良し、ここが攻め時だ!


「――そうなるとさ……、俺の戦法って、カウンター的な事しか残されてないんだよね……」


 例えば、『塗り壁』とか……。


「――『必殺仕様』のカードは……?」


「うん……、あれ使うと、スーツの防御性能とか、身体強化性能落ちるみたいでさ……」


 ――以前、衛府博士に『切る』、『肩を叩く』は厳禁って言われたし……。


「――はあ……、ほんでも何やあるでしょうに……」


 ハオカはこめかみを押さえ、ため息を吐く。――え、いやいやいやっ!


「流石にそれは、俺を過大評価し過ぎだって! ――って言うか、多分、普通の戦闘職でも、こんな腕だったら攻めあぐねるでしょ? 今、俺のバトルコマンドは『逃げる、逃げる、逃げる、塗り壁』ってラインナップだぜ?」


 ――俺がハオカを必死に説得している間、向こうは向こうでまた、修羅場の様だった。聞こえてくるのは――。


「――アンタっ! 何サボってんだい!」


「えぇ……、いや、仕方ないじゃん……、向こうが来ないんだから……」


「なら、アンタから動けばいいだけの話だろ? ――その爪は飾りかい!」


 おお……、良く見れば確かに立派な爪だ……。


「あっはっはっ! ――爪は飾るもんじゃないぜ? ハニー」


「――はあ……、なら使いなよ……その爪をさあ!」


 レーナはハオカと同じ様に、こめかみを押さえると、ため息を吐いている。――あ、ハオカがちょっと、「分かる分かる」みたいに頷いている……。


「いやぁ、そうしたいのは山々なんだがよぉ、アイツ、動かねえんだぜ? 仕方ねえじゃん、俺のバトルコマンドは『寝る、寝る、寝る、起きる』だぜ?」


「アンタっ、それ最初っから『戦う』がないじゃないのさっ! ――この、ごく潰しがっ!」


 ――気が付けば、レオンは何故か俺の顔を見て、ニカッと白い歯を見せている……。あれ? 俺、もしかして……。


「――旦那さん、お仲間と見られとるみたいどすぇ……?」


「え、俺……アレと一緒なの……?」


 思わずハオカの顔を見ると、サッと視線を逸らされる……。――え、嘘……。


「え、え? 俺、カウンター狙ってただけだって! ほ、本当だからっ! そんな、怠けて動かなかったわけじゃないんだって!」


 俺の必死の訴えは、どうやら通じたらしい……レオンに……。――レオンは、「その手があったか」みたいな顔をして、俺に親指を立てて、白い歯を見せてくる。そして――。


「――いやぁ……、実はカウンター狙ってたんだけどさぁ、相手も同じ狙いみたいでよぉ、睨み合いになっちまったよぉ」


 ――お前っ! すぐ傍に奥さんいんだろ! 聞こえてるって!


「――アンタっ! 何時の間に、そんな高度な戦いが出来る様に……っ!」


「「――えっ!」」


 今度は俺とハオカの声が重なる……。え、何? あの人、俺達の声が聞えてなかったの? ――それにしても、騙されやすすぎないか?


「んもぉ、それならそれで最初に言ってくれりゃ、良かったのに……。――うん、なら、アタイはとっとと、女を仕留めてあの子を頂いて来るよっ!」


「おぉう、愛してるぜ、ハニー」


 ――何故か、獅子共はイチャイチャし始めている……。


「だ、旦那さん、うちらも負けてられまへんよっ!」


 そう言うと、ハオカは顔を真っ赤にして……、俺の手を握ろうとして――。


「――あ……」


 ギプスを見て寂しそうに呟く……。――え、何、俺が悪いの?


「おじちゃん、ハオカちゃん泣かせちゃだめなのっ!」


「おやっさん、ヒューヒューって言った方が良いか?」


 気が付けば、羽衣ちゃんとケイシーが近くまで来ていた――って!


「危ないからっ! ――タテ、ターテー、この二人連れてって!」


 俺は、避難した住民達と一緒に少し離れた所にいるタテを呼びつける。――どうやら、タテもいきなり居なくなった羽衣ちゃん達を探していたらしく、涙目で駆け寄って来た。


「ひ、姫っ! ケイシーもっ! ――父上の邪魔しちゃ、駄目ですよ!」


「う? ――だってぇ……」


「まあ、良いじゃんかっ! 俺だって、羽衣が言うおやっさんの活躍見たかったんだよ。――後、黙ってみてるのは性に合わないんだ、何か手伝えないかなってさ!」


 ――頭が痛くなって来た……。子供の好奇心って言うか……、冒険心ってすげえな……。


「なあなあ、おやっさん、俺にもなんか手伝わせてくれよぉ!」


「あ、ういもー!」


「――え、な、なら、僕も!」


 手伝わせてくれって言われてもな……。――どうするか……? 幸い、獅子共はまだイチャイチャしてる……。うん、教育上よろしくないな……。


「――あ、そや、旦那さん、そんなら他ん住民達を誘導して、衛府博士ん所に行って貰ったらどうえ? ――例の『赤い石』ん件も有るんやし……」


 ――ふむ……、ハオカの提案は良いかもしれない……。誘導って名目で役を与えて、その実、他の住民に子供の避難を誘導させるか……。子供達も、住民も改めて避難できるし、『赤い石』の件も手間が省けるし……。


「うん、良いかも……。――ハオカ、お主も悪よのぉ?」


「え、えっと、お、お代官様こそ……? で、よろしおすか?」


 俺はハオカに「うん」と頷き、頭を撫でる。そして、チラリと獅子共を見ると……。


「良いよ? アタイ達も、ラヴリーな子供が傷付く可能性は排除したいしね……、明らかに無関係そうなら、アタイ達の仲間も襲いやしないよ。――コウモリ女は別として……」


 ――若干、不安な事を言っているが、どうやら、見逃してくれるらしい。どうせなら、俺達の事も見逃してくれないかな……。


「――そこのベイビーちゃんは、後で迎えに行くけどねっ!」


 その目は未だに羽衣ちゃんを諦めていないみたいだ……。――うん、俺はやっぱり逃げるわけにはいかない……。


「――うん、そんな訳だから、羽衣ちゃん、タテ、ケイシー君、あそこの人達を衛府博士の家――って、分かるかな?」


「――んー、衛府って人は知らないかな……」


「う! うい、知ってるよっ!」


「あ、僕も知ってます」


 ――三人供元気で宜しい! 俺は獅子共から見えない様に、三人を引き寄せ、『赤い石』を取り出す。


「――良いか? 君達に任務を与える。この石を衛府博士に渡すんだ……。「分析よろしく」って言えば、分かると思うから」


 俺は目を輝かせているケイシーの手に、『赤い石』をポンッと置く。――一応、獅子共からは見えていない筈だけど……。


「――後、一時間しても俺達が衛府博士の家に現れなかったら、誰か大人に言って、街からの脱出をしてくれ」


 三人はふんふんと頷きながら、俺の言葉を復唱し、呟いている。――大丈夫かな……?


「はいっ! ――おやっさん、一時間ってどのくらい?」


 ああ、そっか……、まだ時計見られない子もいるか……。――どうすっかな……? ――あっ、そうだ!


「取り敢えず、これ貸しておくよ、この短い針が『三』の所を指したら、大体一時間だ」


 俺は三人に説明すると、腕時計をケイシーの腕に巻き付けてやる。――多分、俺以外には使えない筈だから、大丈夫だろう……。


「――どっちにしても、俺も使えないしな……」


「旦那さん……」


 俺とハオカはギプスを同時に見て、ため息を吐く。そして――。


「良し、じゃあ任務開始だっ! ――それ行け!」


「「「はーい!」」」


 三人は、トコトコと歩いて行き、もう一人心細そうにしていた女の子――カズンちゃんだっけ? ――と合流すると、何かを住民達に説明し始める。


「――もう、良いのかい?」


 レーナは、少し涎の付いた口を拭うと、俺達にそう聞いて来た。――子供達から見えない様にしてて、本当に良かった……。一応、戦闘中なのに、何してんのさ……?


「――ああ、待たせたな……」


 チラリと住民達を見ると、任せろって感じに手を振ってくれている。どうやら、俺達の意図は伝わったみたいだな……。


「じゃ、やろうか……、子供達もいないし……、今度は本気でやれるだろ?」


 ――レーナはニヤリと笑い、俺達を睨み付ける。


「――ええ、うちん旦那さんを舐めたら、本っ当に痛い目を見ますぇ……、覚悟しておくれやすね?」


 ――ハオカもそれに応える様にニヤリと笑う。


「そいつぁ、うちのごく潰しも一緒だよ……」


 ――奥様……、後ろでご主人が「えっ?」って顔して驚いてますが……。


「じゃあ……、やろうかねぇ!」


「はいなっ!」


 何だか、女性同士で盛り上がってますが……。――レオンは、「え、マジで本気でやんの?」みたいな視線を俺に送ってきている。


「――えっと、俺らもやるか?」


「え、マジで本気でやんの?」


 ――うん……、やるんだよ……。


「ハオカ、カード取って? ――連携するぞ?」


「――っ! 旦那さんっ!」


 ハオカは嬉しそうに、俺の胸ポケットからギルドカードを取り出して、俺の口に挟んでくれる。


ひゃあ(さあ)ひょうひゅひゃ(勝負だ)!」


 ――ああ……、締まらないな……。

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