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大・出・張!  作者: ひんべぇ
第九章:ヘームストラ大戦
149/204

ゲリフォスX(仮)

続きです、よろしくお願いいたします。

 ――ヘームストラ王国 コール平野――


「ギギギ……ゲゲゲ『ゲリフォス・ビーム』!」


 ゲリフォスが叫ぶと、周囲に浮かぶ甲羅が一斉にサッチーとスカサリを目指して襲い掛かる。


「――って、『ビーム』じゃねえんかよっ! てっきり、大地のエネルギーでもどうにかすんと思ったのによっ!」


「ギギギ……、アルジノメイニヨリ、コウゲキハスベテ『ビーム』か、『ドリル』……、ワレ、アルジノメイマモル……」


「そもそも、『ビーム』ってなんだべ! ――それと、アンタ、俺を盾にすんのは、人としてどうなんだべ!」


 ――サッチーは巧みにスカサリの後ろに回り込み、甲羅から身を隠そうとし、当然の事ながら、銀の義手義足で甲羅を弾くスカサリから苦情が上がる。


「いや、オレ……、インドア派だし……? こう……、前衛的な感じの人がイイ感じにやってる間に止めを刺す様な……な?」


「それただのイイとこ取りだべ! ――言ってる事、結構、最低だべな?」


 スカサリは上手く甲羅を捌いてはいるものの、その数の多さに、徐々に対応できなくなっている。――しかし、サッチーはそれでも尚、スカサリの影に隠れ続け……、やがて呟く――。


「――うし…………穿て! 『鉄槍』! ――続けて、響け! 『轟雷』!」


 サッチーがスキルを発動させると、ゲリフォスの背後に二本の槍が現れ、その胴を貫く。そして、続けてサッチーの指先から電撃が放たれ、二本の槍目がけて突き進む――。


「ギギギ……エ、エラ……エラー……ギャアアッ!」


 ゲリフォスは、槍を伝った電撃によって負ったダメージにより、プスプスと黒い煙と叫び声を上げ、膝から崩れ落ちてしまった。


「あ、痛みとかはあるんか……」


「――納得はいかんだろうが……成仏しとくれだべ……」


 サッチーの呟きを聞いていたスカサリは変わり果てた姿になってしまったゲリフォスに近付き、そっと手を合わせる――が。


「な、納得……いくがぁあああああああああっ!」


「なっ! ――まヴぁっ!」


 勢いよく飛び上がったゲリフォスによって殴り飛ばされ、そのまま白目を剥いて転がっていく……。


「――はあ……はあ……はあ……あ?」


 ゲリフォスはその全身から、未だに煙を上げ、息を切らしながらも、自分の全身を見つめ、キョトンとした顔をしている。


「ワ……ワレは……?」


「――ん? 何か、雰囲気変わったっぽいけど……、取り敢えず……穿て! 『鉄槍』!」


 サッチーは、ゲリフォスが動揺しているらしい様子を見て、すかさずスキルを発動する。しかし――。


「――ぬっ! ゲ、『ゲリフォス・ドリル』!」


 ゲリフォスが放った、開店する甲羅によって二本の槍は粉々に砕け散る。


「――そ……それ、ドリルじゃねぇよ!」


「ワレがそんな事、知るかっ! 文句があるなら、こんな身体にした主に言え! ――いや……、こうなった以上は……、元主……か……、ワレの身体を弄びおってからに……おのれ……おのれ……オノレ……オノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレッ!」


 ――ゲリフォスは外見上、唯一金属感の無い右の瞳を血走らせて、主――栗井博士に対する憎悪を顕わにする……。そして、そんなゲリフォスを憐れむかの様な表情で見つめながら、サッチーは……。


「キショイ……、埋まれ! 『土竜叩き』!」


 スキルを発動し、出現させた土製のハンマーでゲリフォスの頭を打ち抜いた。


「うしっ! オレ、マジパネェっ!」


 ――サッチーは地面に埋まったゲリフォスをチラチラと見ながら、ガッツポーズを取る。しかし、ゲリフォスはすぐさま、その頭を地面から引っこ抜くとその身をプルプル震わせながら……。


「――お主には、戦士の矜持と言うものが無いのかっ!」


「んなもんで、家族が守れっかよ! ――唸れ! 『不動明王』!」


 サッチーの手から、炎で出来た縄が現れる。サッチーは、それを投げ縄の様に頭上でヒュンヒュンっと回した後、ゲリフォスに投げつける。


「とろいわぁっ! ――『ゲリフォス・ビーム』……ああああ、このぉぉぉ!」


 ゲリフォスはスキル名が自分の思い通りになら無い事に苛立ちを覚え、地団太を踏む。――そんな、ゲリフォスの苛立ちとは関係なく、ゲリフォスの甲羅はサッチーの炎縄を掻き消していく。


「――マジィ……、こいつ、三下っぽいのに強ぇぇ……」


「こ……このガキがぁ……、仮にも『四伯』のワレに向かって……、よりにもよって……、三下じゃとぉ?」


「あ、怒った?」


「――当たり前じゃあっ! 『ゲリフォス・ドリル』!」


 宙を舞う甲羅が隊列を組み、螺旋状に動きながらサッチーを貫こうと迫って来る。サッチーはそれを、雷や風、炎や鉄のスキルで撃ち落としていくが……。


「ちっ! 数が多すぎっ!」


「ふぉふぉふぉっ! ――調子が出て来たのぉ!」


 ――相性の悪さは徐々に、サッチーを追い詰めていった。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ――ヘームストラ王国 ナキワオ――


「――椎野様っ?」


「あれ……? アンさん?」


 俺達がナキワオの街――その中でも比較的着地場所として都合の良い、羽衣ちゃんが通っていた学校の校庭に到着すると、アンさんが俺達を見つけて駆け寄って来た。どうやら、学校自体が避難場所として利用されているらしく、アンさんはラヴィラさんに随伴し、ここにやって来たとの事。


「それで、ラヴィラさんは?」


「あ、はい、いま周辺のパトロールに向かっています」


「――うぅぅ……、おじさん……、話は後にして、一回家行って来て良い?」


 悠莉はもじもじとしながら、涙目で何かを訴えかけて来る。――あ、ごめん……我慢してたのね……。


「良いよ、行っといで? ――あっ、行っト」


「――ヒュッ!」


 ――俺の頬を悠莉の拳が掠める……。


「――ごめん……」


「旦那さん、流石に今んはデリカシーがあらへんどすぇ?」


「おやっさん……、今のは無いッス」


 ――愛里に至っては無言で呆れ顔になっている……。


「――もうしません……」


 到着早々、俺は何故土下座をしているのだろう……。――と、俺が絶望に打ちひしがれていると、避難している人達が何かを呟いているのが聞こえてくる……。


「――おい……」


「ああ……、あの土下座……間違いねぇ……」


「――おやっさん……」


「おやっさんだっ!」


 ――一体……、俺はどう言う認識をされているのだろうか……。大鳥に乗って結構派手に現れたはずなのに……。


「羽衣っ! タテ!」


「羽衣ちゃんっ! タテ君!」


 ――その時、人混みから小さな人影が二つ……。えっと、誰だっけ?


「――椎野さん……、羽衣ちゃんとタテ君のお友達ですよ?」


「分かってる……、分かってるって! ――えっと、アレだ……」


「――う? あ、カズンちゃん! ケイちゃん!」


 ――羽衣ちゃんは久しぶりに会う友達に、嬉しくて興奮したらしい……、俺の肩と顔を踏み台にして、二人に飛び付いている……。


「――ひ、姫っ! 危ないですよ!」


 まあ、タテがちゃんとフォローしてくれ、ふわりと着地してくれたが……。


「子供ってあんなもんだぜ? ――って事でおやっさん、俺達はギルドに行ってくる」


 俺がギプスに包まれ、曲線多めの腕で顔を撫でていると、コラキが苦笑いをしながら、そう言ってきた。


「ん、そっか、気を付けてな……って言っても、結構目と鼻の先なんだけどな?」


「――そこは、ティス様を甘く見たら駄目なの……」


「だって……、もういないし……」


 ペリとイグルはそう言って、コラキを引きずり始めると、そのまま校庭から出ていってしまった。


「――妾……じゃない、私、心配ですので少し案内役に回ってきますね?」


 そう言ってアンさんはコラキ達を追い掛けて行った。――しかし、ティスさん……、瞬間移動でも出来るんだろうか……。


「さて、と……、取り敢えず、悠莉が帰って来たら、衛府博士の所にでも顔を出すかね」


「そうッスね」


「あ、私、軽くお食事でも用意してきましょうか?」


 ――愛里はそう言うと、俺達の家がある方向、つまり悠莉の後を追うと言いだした。どうしようか……、一応、誰かつけるか?


「あ、じゃあ、自分も行くッス!」


 と、考えていたらミッチーがそう言いだしたため、そのまま愛里の護衛を任せる事になった。


 ――それから小一時間程して……。


「――なあなあ、それで?」


「あのね! ――おじちゃんがへんたいで、ラッコちゃんがりふじんなのっ!」


「ひ、姫、父上は……、余り変態では……ない……かもです!」


 ――先程から、羽衣ちゃんは旅で見聞きした事をお友達に話して上げている……かなり、誇張されている気がするが……、好評な様だし、まあ良いか。後、タテ……、そこは言い切っていいんだぞ?


「――あ、そう言えば旦那さん、衛府博士には何や用事でもあるんどすか?」


「あ、そうそう、『石』を――」


 ――俺が、ハオカに胸ポケットの中の『赤い石』を取り出して貰おうとした、その時だった……。


「「キャーッ!」」


 突如、街のあちこちで爆炎が上がり始めた。


「……………………っ!」


「ん、エサ王……」


「――っ!」


「来ました……わね」


 アクリダ、もも缶、ハオカ、ペタリューダが顔つきを険しくし、俺を取り囲む様に、立ち上がった。そして――。


「ああ……、何となくピリピリするな……、戦闘はコール平野って聞いてたんだが……、先にこっちに来て大正解……みたいだな」


 ――骨折してから、ビビリになってしまったのか……、今まではラッコ男とか、リンキとか、もも缶のピリピリする感じは分かったんだけど、今は周りに結構な数の『伯獣』がいるのが分かる……。


「取り敢えず……」


「ん、エサ王、ここ、うい、守って」


 そう言うと、もも缶は爆炎が上がった四か所の内、北の方に向けて走りだした。


「なら、あたくしはあちらへ!」


「……………………少し、心許ないな……、俺も行こう……」


 ペタリューダが南に向けて走り出すと、その後を追ってアクリダも走り出す。残った俺と、ハオカは子供達を近くに寄せ、周囲を警戒する。すると――。


「――何だい何だい……? ここにいるのは、非戦闘職と、女子供と、怪我人だけかい? ――アンタ、どうやら、アタイ達は大した仕事じゃなさそうだよ?」


「んぁ……、良いんじゃない? ――どうせ、主の命令なんてメンドイだけだし……、働いたら負けだろぉ?」


 ――俺達の前に、少し黄土色に近い肌の男女が歩いて、近づいて来ている。


「ふんっ、このごく潰しが……、アタイが主からどんなにせっつかれてるか知ってるのかい? ――情けないったら、もう……」


「言いたい奴には言わせとけよぉ……、この世の中、最後まで生き残った奴が勝者だろぉ?」


 ショートカットの筋肉(ラッセラ)系女性が頭を抱えているが、ぼさぼさ頭に髭が繋がり、たてがみ状になっている男性は欠伸をしながら、ヘラヘラと笑っている。――一見、お近付きになりたい男性ではある……が……。


「――ハオカ……、あいつ等……」


「はいな……」


 正直、逃げたい感じだな……。――特に男性……。


「まあ良いよ、アンタ等……、アタイ達は無益な殺生は――特に、子供なんか、手に掛けたくないんだ! ――だから……、大人しくこの国の王女――アーニャ=ファミス=ヘームストラを差し出しな! そうすりゃ、さっさと、引き上げてやるよ!」


 ――女性はそう叫ぶと、避難している人達を一通り睨み付ける。


「――いないのかい……? アンタ、どうやらアタイ達は、ハズレにも程があるみたいだよ……。――ん? アンタ……」


 その時、女性の視線が俺達――と言うより、羽衣ちゃん達に向けられる……。


「どうした? ハニー」


「――いや、この子……、持って帰って良いかねぇ?」


 そう言って、デレデレの顔で、羽衣ちゃんに手を伸ばそうと――。


「――って、させねえよっ!」


 俺は、口を使って、胸ポケットからギルドカードをくわえて取り出すと、そのまま羽衣ちゃんとその女の間を狙って、『塗り壁』を作り上げる。


 ――ゴインッ!


「――ったア……!」


 女は額を押さえてその場に蹲る。――今の内だっ!


「羽衣ちゃん、皆、こっちに!」


 ――避難している人達と羽衣ちゃん達を俺達の後ろに下がらせ、俺はハオカと共にその男女と向かい合う。


「――悪いな……、この子達には指一本触れさせねえよ?」


「チッ……、油断したよ……アンタぁッ! ――ヤルよ!」


「へえへえ……」


 取り敢えず、時間稼ぎだな……。 ――俺は腕のギプスを見つめながらそう誓った……。

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