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大・出・張!  作者: ひんべぇ
第八章:鎖の国と……
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向こうにある危機

続きです、よろしくお願い致します。

 ――ミミナに帰還した翌日、俺達は朝早くパギャさんに捕まり、そのまま、ダンマ様との謁見へと放り込まれた。


 今回は、多少難しいお話と言う事で、羽衣ちゃん、タテ、ピトちゃん、もも缶、ティスさんにはご遠慮頂いている。――誰とは言わんが……、トラブルが発生し難いって素晴らしいっ!


「よぉ……、大変だったみてぇだな?」


「――まあ、それなりには……」


 ダンマ様は、ある程度の情報を聞いていたらしく、俺の姿を見つけた瞬間、俺の両腕と首をニヤニヤしながら見回して、パギャさんに頬をつねられていた。


「――痛ぅ……。――取り敢えず、報酬金は受け取ったって事で良いか?」


 ダンマ様は頬を擦り、涙目になりながら聞いて来た。俺は、「ざまあみろ」と言いたい気持ちを抑え、頭を下げる――。


「はい、わざわざ、ありがとうございます」


 すると、ダンマ様の横に立つパギャさんが何とも言えない表情で、俺に頭を下げ返してきた。


「こちらこそ……何とお詫びしたら良いのか……」


 ――パギャさんとダンマ様の反応を見る限り、やはり別の『伯獣』がいる事は予想していなかったのか……。まあ、そんな事は良いんだが……、気になるのは別の事だ。


「――その事はもう良いんです、どうやら『コミス・シリオ』も内部で何かあるみたいですし……」


「――悪ぃな……っと、すまねえ、立ちっぱなしで、ほれ、座れ座れ!」


 ――ダンマ様に促され、俺達は椅子に座る。


「あっ、そうだ……、そう言えば、捕まえた奴らはどうなりましたか?」


「あ? それは、あれか? 蜂ババアと虫野郎か?」


 ――虫野郎は……、ルカナスか……? なら……?


「すいません、蜂……ババアって?」


 俺が疑問に思っていた事は、他の皆も疑問に思ったらしく、悠莉が代表してダンマ様に問い掛ける。――すると、ダンマ様は眉間に皺を寄せ――。


「――おめぇらが捕まえたんだろ? やたら、色気づいた服着たババアだよっ」


 ――どうやら、ダンマ様はその時の事を思い出しているらしく、不快そうな表情をしている。


「――ねぇ……、おじさん……」


「何だ……?」


「ダンマ様って……、その、もしかして、アレ?」


「――何となく言いたい事は分かるが……、アレってなんだよ……」


 ――俺と悠莉が小声で話していると、そこにミッチーが加わって来る。


「もしかして、ある年齢以上は全てババアだって持論の人ッスか……?」


「おま……、ミッチー! ――折角、俺達がぼかしてんのに……」


「――おめぇら……、ちゃんと聞こえてんぞ? ――俺がそんな奴だったら、パギャに手ぇ出してねえからな? 余計な事言って、パギャを不安にさせたら、不敬罪でしょっ引くぞ……」


 ――ダンマ様の威圧に押され、俺達は思わず身を縮める。しかし……、どう言う事だ?


「すいません、ちょっと確認したいんですけど」


「あん?」


「――俺達が会った女王蜂は……、結構、ボインでエロイ感じの女性だったんですけど……」


「――ちょっと、待ってろ……」


 ダンマ様はパギャさんに何かを指示し、謁見室からどこかに向かわせ、目を閉じてしまった。


 ――確かに、『チェイナー』部隊に引き渡した時はまだエロかったはずなんだよな……。まあ、それより……。


「――悠莉……、悠莉ちゃん? 今のはただ単に分かり易い説明をしただけだ、呪われそうな目は止めてくれ……」


「……………………ふん」


 ――悠莉は、親の仇でも見る様に俺を見た後、少し俯いて何かを思い出しているらしく、「あの角ぉ……」と呟いていた。


「椎野さん、ダンマ様が見てます!」


 俺の話を聞いたダンマ様は、静かにパギャさんから手渡された書類を読んでいるらしかったが、やがて、大きなため息を吐くと、机に「ゴンッ」と頭を付けた――。


「――どうやら、俺の舎弟が中途半端な報告しやがったみてぇだな、変な勘違いさせちまってすまねえ……。どうやら、捕まえた時はエロイねえちゃんだったらしいんだがよ……、何か終始ガタガタ震えてたらしくてな? ミミナに着いた時には、老婆の様になってたってぇ話しだ」


 ――えぇ……、何そのオカルト話……、聞かなきゃ良かった。ふと周りを見渡すと、皆一様に青い顔をしている。余りの気味悪さに、愛里なんか、顔を伏せて震えてるし……。


「まあ、きっと栗井博士――いえ、彼女達はビオ博士の子飼いでしたか? ――あの人は、オドオドしながら、目は野獣の様でしたから……、失敗の発覚を恐れて神経をすり減らしたんでしょうね……」


 すると、パギャさんがそう言って、俺達を安心? させようと配慮してくれた。――お、愛里もタネが分かって嬉しそうにしている。うん、良かった……。


「――次、良いか? 虫野郎だがよぉ……、椎野……、おめぇ、本当にアレを一人で倒したんか?」


 ダンマ様はルカナスの話になった途端、手元の報告書と俺の顔を見比べて、険しい顔をしている。――嘘を付く必要もないし……、俺は取り敢えず、両腕を見せつける様に上げ、その問い掛けに答える――。


「一応、本当です……。まあ、お蔭でこのザマですけど……」


 ダンマ様はそれでもなお、俺から険しい視線を逸らさずに睨んでいたが、やがて、隣に立つパギャさんから足を踏みつけられると、涙を浮かべながら、口を開いた。


「――わ、悪ぃな? この虫野郎――ルカナスっつったか? コイツ、今は大人しく檻に入ってんだがよぉ……、そこに入れるまでに、ウチの腕利きの舎弟を数人、再起不能にしてくれてんだよな……」


 ――うぁ……、俺、両腕だけですんで良かったのか……?


「それは……、何と言うか、ご愁傷様です……」


「まあ、それは良いんだが……、椎野、おめぇ……、ウチの国に来る気はねえか? ――今なら、地位も名誉も良い足の女も付けるぞ?」


 ――っ! お……おお……、こっちに来て、久々のヘッドハントとは……。しかも、俺の食い付きたい条件をちゃんと、入れてる。でも――。


「――何で、急に?」


「そら……、おめぇ、机仕事も戦闘も出来る人材はこっちとしちゃあ、喉から手が出る程欲しいもんなんだよ……。――どうだ?」


 ――んんんん、正直……最後の条件に引かれる……がっ!


「――おじさん?」


 さっきから、隣で俺の腕をへし折ろうとしている奴がいるんだよな……。


「旦那さん……、分かったはるやろ?」


 ――しかも、両サイド……。


「何なら、そこの嬢ちゃん二人も一緒で良いんだぜ? ――良い地位やるから、重婚も出来るぞ?」


「「……………………」」


 あ、ちょっと拘束が緩んだ……。――ゲンキンな奴らめ……、どっちにしろ、この話を受けるつもりは無いっつうの。


「すいません、折角の話ですが――」


 ――俺の表情から、良い返事が聞けそうにないと判断したのか、ダンマ様は小さなため息を吐いて、俺の次の言葉を押し止める。


「――まあ良い、時間はまだあるしな? それより、捕まえた奴らの――」


「――帝王(兄貴)っ! 失礼しやすっ!」


 ――突然、全身を鎖で固めた兵士――『チェイナー』部隊の隊長、カーギーさんが部屋に飛び込んで来た。


「――んだぁ? 今は大事な話してんだよっ!」


「すいません、罰は後で如何様にでもっ! ――それより、お耳を……」


 それから、ダンマ様とカーギーさんはひそひそ話を始めてしまった……。


「何かあったんでしょうか? ――もしかして、バシリッサさん達が逃げたとか……?」


 愛里は不安気に俺を見つめ、そう言ってきた。――すると、俺の隣にいたハオカが少し、悩む様にして、告げる――。


「多分、どもないと思うてよ? ――二つ程、こん城ん地下に感じますさかい」


 すると、今度はペタリューダが俺の頭から愛里の肩に移り、囁く様に告げる。


「――あたくし、バシリッサの気配は覚えておりますけど、ハオカさんの仰る様に、地下にいらっしゃるみたいですわ?」


 ――あれ? ペタリューダ、いつの間に……?


「んー、なら何だろう? おじさん、予想できる?」


「――悠莉、お前は俺を予言者か何かと勘違いしてないか?」


「え? だって、サラリーマンって株とか予知するんでしょ?」


 ――ははっ……、それが出来てたら、とっくにサラリーマン止めてるっつうの……。


「――あー、すまねえな?」


 ダンマ様は頬をポリポリとかきながら、俺達の反応を待ってくれている。


「あ、こちらこそ……」


 ――何だか、今日は謝罪合戦だな……。すると、ダンマ様は呆れ顔から一転、真面目な顔つきになり、口を開く――。


「誤魔化しても意味ねぇから、単刀直入に言うぞ? ヘームストラに変異種の――恐らく『伯獣』の群れが現れたらしい……」


 ――その瞬間、俺達の時間と意識が、ピタリと止まった……。今、何て……?


「――ちっ……。もう一度言うぞ? ヘームストラが侵攻されてやがる、敵は『コミス・シリオ』、現在は国境沿いのワナンカを越えた辺りらしい……、ヘームストラの奴らは、じわじわと戦線を下げながら凌いでいるらしいが……」


 ダンマ様は「ヤバイ」と言いたげな表情で、俺達の反応を伺っている。


 ――どうする……?


「取り敢えず、ウチの国からも援軍を送るが……、正直、間に合うかどうか……って感じだな……」


 その瞬間、栗井博士がドヤ顔で笑っている光景が目に浮かんで来る……。――そうか……、ティスさんはやはり囮か……。同時に行動を起こさず、俺達の動きに合わせる様にしていたのは……、万が一にもヘームストラへの助太刀が間に合わない様にか? それとも、何かを準備する為の時間を稼ぐためか……?


「――ああっもうっ! 考えても分からんっ!」


 俺が突然叫んだせいか、仲間も、ダンマ様もキョトンとした顔で俺を見ている。――いかん、冷静に……、冷静に……。


「――ふぅ……、取り乱してすいません、ちょっと、今日はこのまま宿に戻らせて貰っても良いですか?」


「お……、おお、色々あったからな……、ゆっくり考えろ? ――ただ、ウチの『チェイナー』部隊と『ターザン』部隊は、早急に準備を整えて、明日の昼には出る……。――それまでには、どう動くか、考えておけ……」


 ――こうして、俺達はそのまま宿に戻る事になった。そして、夕食が終わるまで、誰も、何の打開策を出せないまま、その夜を終えようとしていた……。

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