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大・出・張!  作者: ひんべぇ
第八章:鎖の国と……
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変ずる惑星(ほし)

続きです、よろしくお願い致します。

「――お、見えて来た」


 それにしても、この鎖、どう言う仕組みだ? エスカレーターの様に俺達を運ぶ、足元の鎖を見て「売ってないかな」と考えながら、目的地を見上げると――。


「おじちゃん、あれが次のくにー?」


 ――俺の頭の動きに合わせて、視線を少しだけ斜め上に上げた羽衣ちゃんがペシペシと俺の頬を叩きながら聞いてくる。


「ピュイ……?」


 頭の上(営巣地)では昼寝中のピトちゃんが「うるさいなぁ」と、少しだけ囀り、また目を瞑る。――友をむしらない限りは……諦める事にしたよ……。


「それにしても、結構高いですね……ちょっと、怖いかも」


 愛里が足元をチラリと見る……。吸い込まれそうになって怖かったのかビクッとしながら、俺のスーツの袖を掴む。


「んー、何だっけ、地球にもこういう所、あったよね?」


 悠莉は両手の人差し指をこめかみに当て、唸りながら考え込んでいる。すると、ミッチーが少しはしゃいだ様子で答えてくれた。


「ああ、ギアナ高地ッスよ! うちの会長がそう言うの好きだったんスよ……」


 ミッチーの観光案内に従って、もう一度見てみる。――確かに、漂う雲に切り立った崖、そこから落ちてくる川の水は、俺のボンヤリしたイメージのギアナ高地に似ている。


「どうでもええどすけど……あないに水が落ちて、水不足にならしまへんか?」


「あ、そう言えば、そうですねぇ……」


 ハオカとタテは、滝の様に流れ落ちていく川の水を、揃って小首を傾げ、不思議そうに見つめている。


「うん、パンフレットによると、大陸中央部に大瀑布があって、そこからほぼ無限に水が溢れてるみたいだな」


 ――どっちにしても、不思議発見……良い観光名所になりそうだな……。


「エサ王、それより、もも缶、そろそろ、――なっ?」


 もも缶がスーツをグイグイ引っ張りながら、両手で手皿を作り、何かを訴えている。


「お前……さっきも食ってなかったか?」


「――足りぬ……」


「あら……でしたら、もも様……あたくしの残りで良ければどうぞ?」


 ――そっと差し出されたペタリューダの弁当を見て、もも缶の顔が感動に震えている……まるで、救世主にでも出会ったような顔している。


「――おぉ、かみよ!」


 大げさに片膝をつき、ペタリューダに縋り付き始めた……。


「どこで覚えてくんだよ……」


「――えへ?」


「悠莉かよ……」


 そっぽを向き、誤魔化そうとしている悠莉を軽く窘める。――一体、何を教え込んでいるんだか……。


「ああ……ひれ伏――いえいえいえ……いけませんわ!」


 何か、ペタリューダが頬に手を当てて恍惚の表情を浮かべつつ、何か葛藤している。――うん……どうしよう? 手遅れっぽい。


「あ、旦那さん、着きますぇ?」


 ハオカの声で前を向くと同時に、鎖は俺達をウズウィンド大陸本体――ドーバグルーゴ帝国の端っこへと運んでくれた。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「「おお?」」


 ――鎖から降りた俺とミッチーが喉を鳴らし、思わず声を上げる。何故なら……。


「う、お酒臭い……」


 悠莉は鼻を押さえて、しかめっ面をしている。――そう、酒の匂いが凄いんだっ!


「おじちゃん、臭ーい!」


「ピュイ……お前、臭い……」


「――はっはっは……二人供、その言い方だと、俺の心が死んじゃうからねぇ?」


 ――おじちゃん……こう見えて、朝の枕の匂い気にしてんのよ?


「と、とりあえず、ひゃど屋をみちゅけましぇんか?」


「あ、タテ! どもないん? ――ねーさんにおぶさりよし?」


 既に顔を真っ赤にしているタテを背負い、ハオカが先陣切って宿屋を探し始めた。


 ――五分後。


「ありゃ……」


 宿屋に着いた頃には、犠牲者が増えていた……。


「はい、悠莉ちゃん、宿屋に着いたわよ?」


「やーだーっ! もっとおんぶ! 愛姉ー……ギュっとして? あたしを甘やかせーっ!」


 まずは、悠莉……記憶が残るタイプだったっけ? ――明日が楽しみだよ……。


「父上父上父上父上父上父上!」


 ――そして、タテはハオカの背中の上で何かうなされている。俺がそっと頭を撫でると、静かになって眠り始めた……。


「キィヤァァァ! エサ、肉、モモ缶! バ・イ・キ・ン・グ!」


 もも缶は宿屋の受付前で地面に転がり、駄々を捏ねている……。


「皆、酷いさまッスね……」


「全くなぁ……?」


 ミッチーと一緒にため息を吐く。


「あはは……この街は初めてですか?」


「あ、はい」


 受付のお姉さんが慣れた様子で、笑って教えてくれた。――この国は豊富な水源を利用した酒造が盛んで、国民の七割が酒に関連するジョブとスキルを持っているらしい。


「因みに、残りの三割は何なんですか?」


 愛里の質問に「よくぞ聞いてくれました」と、更に教えてくれるお姉さん――。


「えっとですね、残りの一割は『ターザン』で、更に一割がこの街――『チェイン』の名前の由来でもある『チェイナー』と言うジョブです。残りはその他……ですね」


 ――『ターザン』は想像出来るけど、『チェイナー』か……どんなジョブだろう?


「――はい、受付終了です。後で、そちらの方々の部屋に『覚醒屋』と『防酔屋』を寄越しますので、それまでどなたかついていて下さい」


 受付のお姉さんによると、慣れて無い人や下戸の人の為に、酔いを覚ましたり防いだりするスキルを持つ人が各宿屋にいるらしい。


「ほな、うち、おさきにタテを寝かし付けてきますね?」


「ああ、頼む」


 ハオカを見送り、俺達もお姉さんにお礼を言って部屋に入ろうと――。


「おばちゃん、ありがとうございます!」


 羽衣ちゃんが俺の頭上から、ペコリと頭を下げる。


「うふふ……うふふふ……」


 手を振るお姉さんが怖かった――。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「さて、じゃあ――」


「いーやーだ! 寂しいの! もももおいで!」


「ゆうり、ゆうりー!」


 ――愛里と悠莉の部屋の前で、悠莉ともも缶が揃って駄々を捏ねている。


「おやっさん……とりあえず、皆でおやっさんの部屋に入った方が良くないッスか?」


「――そうだな……」


 暴れる悠莉達を抱え、俺達は宿屋が手配した人達が来るまで……議会メンバーによってパワーアップした悠莉達と微妙な死闘を繰り広げた。


 そして――。


「あたま、エサ王……、もも缶、あたま、あるか?」


 もも缶は二日酔いが酷いらしく、頭を押さえ顔を歪めている。――二日酔い防止のスキルは無いんだろうか……?


「はいはい、痛いの痛いの飛んで行け――っと」


「うう、もう一回……」


「はい、ももちゃん……お水よ?」


 瀕死のもも缶に愛里が水を飲ませてあげている。


「――また……」


 記憶がしっかりと残っている悠莉は部屋の隅で体育座りをしてブツブツ呟いている。


「ゆうりちゃん、どんまいよー?」


「羽衣っ」


 慰められ、感激した悠莉が羽衣ちゃんに飛び付き――。


「うぅ? ゆうりちゃん、におうの!」


 再度、撃沈されていた……。


「ミッチー……取り敢えず、ギルド行って情報収集するか?」


「――そうッスね……」


 俺とミッチーは、愛里、ハオカ、ペタリューダに後の事を任せ、そそくさとギルドに向かった――。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ――x県x市 市役所最上階会議室――


 会議室の扉を軽く二度叩く――この二日だけで、何度この動きをしたんだろう……?


「――入りたまえ」


「失礼します」


 この二日間、『魔獣』の発生から始まり、事態はドンドンよく分から無い事になっている。――気合を入れるためにも、いつもはポニーにしている後ろ髪をバレッタで纏めて留め、『出来る』風にしている。


「それで……今日は何かあったのかね?」


 何度も発生する異常事態に、市長がウンザリって顔でため息を吐く。――正直、ボクだってウンザリなんですよ?


「――今回は新たな『魔獣』の発生と……あ、ちょっと待ってください」


「――何よ?」


 この二日間で、この市長さん(おっさん)とも随分仲良くなれたと思う。――だから、と言う訳じゃないけど、場を和ますためにも先輩仕込みの一発を――!


「えっと……良い知らせと悪い知らせがあります、どちらから聞きたいですか……?」


「アンタ……悪い方さっき――はあ……良いわよ、悪い方から聞かせて頂戴?」


 うん、怒らずノッテくれる市長さんは良い市長さんだ。


「では、悪い知らせです。新たな『魔獣』が接界地点付近の中学校に発生しました。今回は『兎型』ですね」


「あら、可愛いじゃない?」


 市長はそう言うと少し、安堵しているみたい。――そうはいかない!


「体長は五メートル強……だそうです」


「――前言撤回……。それで? どうしたの?」


「いつもの様に自衛隊が主導で対処に当たったのですが……」


 そこで、ボクは用意して来た資料を市長に手渡す。


「ふぅん……戦車の砲弾が効かなかったんだ? ――ねぇ? 段々こいつ等……強くなってない?」


 ボクは市長のその言葉を肯定する様に頷いてから、ページをめくる様に伝える。


「研究員の話では、『魔獣』は生命の危機によって発生しやすい傾向があるそうです。――種の存続とか、殺処分とか、ストレスとか……ですね」


「野良、保健所、杜撰な飼育――ってところ? やぁねぇ………………それで、どうやって倒したの?」


 ジト目の市長は、多分、大体の予想は出来ているのかな? ボクは身体を精一杯真っ直ぐに伸ばして、堂々と答える。


「はい、そこからが良い知らせなんですが……市民の中に『スキル』を発動させた人が出ました」


「なん……ですって?」


 ――うん、やっぱりノッテ来てくれる市長は良い市長だ……。

ここから、暫く、ちょいちょいと地球側の話が入ってきます。申し訳ありませんが、ご了承ください。

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