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大・出・張!  作者: ひんべぇ
第七章:海上国家
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ティキン

続きです、よろしくお願い致します。

「……あんちゃん……」


「――パルカ……」


「旦那さん……今は……」


 ――ゆっくりと地面に下がっていくギルドカードの上で、パルカはジッと瓦礫の山を見つめている……。


 どう声を掛ければ良いのか分から無い……。――クソッ……。


「――どうやら、悠莉はん達は……無事みたいどす」


「ん……」


 会議城の跡地前に、皆の姿が見えるが……何か人数増えてる? 俺が目を凝らしたその時――。


「――ブゥルゥァァァァァァァァァァァ……!」


 突然――会議城跡から大量の瓦礫が柱の様に舞い上がる。


「――なぁっ?」


「だ、旦那さん……あれっ!」


 驚きの声を上げるハオカが、俺の肩を揺さぶり、ある一点――瓦礫柱の天辺を指差す……。


「――ハハッ!」


 ――アイツの姿を見て、喜ぶ時が来るとは正直……思ってなかった!


「パルカ……見ろっ!」


「……?」


 拳を天高く突き上げ、瓦礫柱の天辺に立つラッコ男――その肩には、白と黒のモコモコ服を着た少年が……更に、その少し上空にはきりもみ状態で宙を舞っているゲリフォス……。


「――ちの様……! 椎野様!」


 同時に俺達の上空から声が響いてくる。


「――ああ……忘れてましたね……」


 ――上空から、水球に包まれたアンさんが俺達に声を掛けてくる……本当に忘れていたよ……ごめんなさい。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 アンさんを確保した俺達は、地面に着陸し皆と合流した。――因みに、ラッコ男達はまだ空にいる……。


「さて、じゃあ……まずは、そっちから聞こうか?」


 上空をチラリと見た後、俺は会議城の崩壊から先に脱出していた悠莉達を見る。


「――上から見てた時も気になっていたけど、どう言う事?」


 俺の目の前には、確か死亡したと言う様な事を聞いていた――恐らく本物の、ギタカ様とモカナート様、そして、縛り上げられているスファーノがいた。


「ウッス! それは自分が説明するっス――」


 ミッチーの話によると、ギタカ様とモカナート様は、スファーノと戦闘している所に現れ、そのまま戦闘に参加すると巧みな戦闘技術でスファーノを翻弄し、ノックダウンさせてしまったそうだ。


「――んふぅ、止めは天井からの瓦礫だったんだけどね?」


 ――とは、ギタカ様のお言葉だ。と言うか、偽ギタカと違い過ぎて、戸惑うな……。


「あれ? でも、そんなに強いなら……何で?」


 悠莉のツッコミで、お二人が恥ずかしそうに俯く――うん、お爺さんのモジモジは微妙だな……。


「ん、んふぅ……流石に、僕らでも泥酔して良い気分で崖の上からアーチを描いている時に後ろから襲われたら……ね?」


「――そう言う事だよ……」


 お二人の説明で、俺とミッチーは「あー」と頷く……悠莉達はピンと来ないのか、首を傾げていたが、ハオカが教えてあげたらしく、真っ赤になっていた……。


「じゃあ、それは分かったんだけど……」


 ――問題は……ゲリフォスよりヤバイのが、徐々にこちらに落ちて来ていると言う事か……。


「あ、彼を連れて来たのも僕らだよ?」


 俺の視線が宙に向けられたのを見て、モカナート様が告げる。


「んふぅ……あの時はビックリしたよぉ。海に落ちて直ぐにラシムと連絡取って……怪しいって事で潜伏してたんだけどね?」


「うん……突然、僕達が潜伏してた船の前で海が割れて――」


 お二人は遠い目をして、続ける――。


「何事かと思って甲板に出て、暫く見ていたら、彼が突っ込んで来て……」


「んふぅ……そのまま、喧嘩になったんだよねぇ」


 ――この人達……人間、だよな?


「まあ、そんな訳で彼とは喧嘩友達――みたいなモノだよ」


「んふぅ、何か今回も付いて来ちゃったしね?」


「――世界は広おすね……」


「そうね……」


 何か、同窓会みたいなノリで笑い合うモカナート様とギタカ様を見て、ハオカと悠莉が呟く……うん、俺も同意見だ。


「む、エサ王、エサ王、来た!」


「ん?」


 ――そして、空から奴が……降って来た。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「アドノミソト……」


「ん、「落し物だ」って」


 ――俺達の前に降臨したラッコ男は、その手に掴んでいた物体――ゲリフォスを、俺達に向かって放り投げる。


「ねえ、おじさん……そいつ、生きてるの?」


「うん、多分だけど……」


 白目を剥いてはいるが、ピクピクッと痙攣しているから、生きてはいるんだろう。念の為に、スファーノみたいに縛るか――。


「良し、縛ろう……スファーノに使った縄ってまだあるか?」


 すると、もも缶が少しモジモジしながら俺のスーツの裾を引っ張る。


「ある、けど……バイキング」


「え? ああ、もも缶のスキルか? ――良いけど……今更ケーキバイキングで恥じるなよ……」


 俺との交渉を成立させたもも缶は、ドヤ顔でゲリフォスに向けて人差し指を向ける。そして――。


「むふぅ……『ロースト』!」


 え、焼くの? と、思ったら人差し指から白桃色の縄が出て来て、ゲリフォスを縛り上げる。


「んふぅ……僕の指導が活きた様で何よりだよ」


 どうやら、ギタカ様が何かをもも缶に教えたらしい。――後で聞いてみよう。


「これで、後は――」


 俺達の視線は、ラッコ男の肩に担がれている少年――恐らく、デルフィニ……に向けられた。


「椎野さん……あれ、誰ですか?」


「多分……例のデルフィニ――パルカの兄ちゃんだ」


「多分ってどう言う事よ……おじさん達、直に戦ったんでしょ?」


「うん……だけど――なぁ?」


「へー、うち達と戦った時と、えらい姿がちゃいますね……と言うか、完全に人型どすなぁ」


「……でも……あんちゃん……」


 ――一体……どう言う事だ……?


「む、これは」


「――っ! 分かるのか、もも缶」


「多分、栄養、たっぷり、成長期」


 どうやら、適当に言ってただけらしい――ん? 何か、ラッコ男がこっちに近付いて来る……。


「――アカッタヲアヒサナハ?」


「ん、「――話は終わったか?」って」


 ラッコ男はそのまま、俺達に向かってデルフィニを放り投げる。そして、俺の顔をジロリと見ると――。


「ブゥルァァァァ……」


「ん、「ブゥルァァァァ」って」


「え、そこはそのままなんだ……?」


 悠莉が驚いているが、俺は目の前で凄惨な笑みを浮かべているラッコ男に『ポーカーフェイス』で平然を装う事だけで手一杯だ……とてもツッコミ入れる所じゃない。


「ブルァッ!」


 ――そして、ラッコ男はクルリと俺達に背を向けると、そのままどこか――北の方に飛んで行ってしまった……。


「――ふぅ……」


 やっと一息入れられる……。


「さて、彼も行った事だし……この子達、どうしようかな?」


 モカナート様が、縛り上げられたスファーノとゲリフォスを見……て……?


「なあ、ハオカ……ゲリフォスは?」


「え、あんお爺はんなら、そこん地べたに……あら?」


 俺達がゲリフォスが居た筈の地面を見ると――そこには何もなかった……。


「――おじさんっ! あれっ!」


 ――悠莉が大声をあげ、指をさす方向を見ると……。


「――コケッ?」


「こいつ……確か……」


 ――ミッチーが眉間にしわを寄せ、ソレを見ている。


「――スプリギティス……ですわね」


 ペタリューダが言う通り、俺達の前には以前、栗井博士がスプリギティスと呼んでいた大鳥――と言うか良く見ればでかいニワトリが、その嘴でゲリフォスを咥えている。


「馬鹿な……僕達も気付かなかった……」


「ん、んふぅ……」


「普通にトコトコ歩いて来てた……」


 ピトちゃんがそう教えてくれているが、モカナート様とギタカ様は、その言葉を聞く余裕が無い様で、額から冷や汗を流し、身構えている。そして、そんな空気の中――。


「――と、と、と……とりにく! でかいっ!」


「――ココッケッ!」


 ――突然、もも缶がナイフとフォークを取り出し、スプリギティスに襲い掛かり始めた。


「コケッ! コココッケ……? ココォ……」


 目から涙を溢れさせ、首を左右に振りながら、スプリギティスは何かを必死に訴えている。


「――何て言ってるんでしょう……?」


 必死なその様子を見て、愛里が少しだけ同情の目を向けている。


「……いやぁ、たべないで……て」


 ――いつの間に登ったのか、俺の上からパルカが通訳してくれた。


「――飛びゃ良いじゃん……」


 俺の呟きが聞こえたのか、スプリギティスは「――ハッ!」と驚いた様な表情を浮かべる。


「コッケェェ……」


「……わすれてた……て」


 ――何だろう……力が抜ける……。


「コッ……ケッ……コォ……?」


 俺が脱力していると、スプリギティスが助走を付けて、「タッタッタ……」と走り――首を傾げて、止まった……。


「――おじさん、三歩だったっけ?」


「ああ、鳥頭だっけ……?」


 俺と悠莉がそんな会話をしていると、スプリギティスが再びもも缶に襲い掛かられ、逃げようとしていた事を思い出し、再び走り出す。


 ――そんなやり取りが暫く続き……。


「ああもうっ! ――もも缶、こっち来い!」


「んんっ!」


 走り回っているもも缶の手を掴み、強引に引き寄せる。


「コケェェ……?」


「――抑えててやるから飛べ? なっ?」


 ――何か、これ以上見ていられない。


「あ、だめ、にくが……でっかい、とりにくがっ!」


 そして、スプリギティスはその翼を大きく広げ――。


「コケコッコォォォッ!」


 俺の顔をチラリと見て、ぺこりと頭を下げると、そのまま飛び去って行った。


「――ふぅっ!」


 スッキリしたっ! とか、考えていたら――。


「椎野さん……?」


「おじさん……」


「旦那さん……」


「おやっさん……逃がしちゃダメッスよ……」


 皆の責める様な、呆れている様な表情で我に返り、俺は周りを見渡す……。


「――ああっ……!」


 ――ゲリフォス持っていかれた……。

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