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大・出・張!  作者: ひんべぇ
第七章:海上国家
101/204

セッパリ

続きです、よろしくお願い致します。

 ――『イルマニ』を出港してから四日。


 航路としては、半分程を終えた辺りらしい。


 俺達は最初のうちこそ、物珍しさから貴賓室ではしゃぎ回っていたが、二日目にはすっかりと飽きてしまい、見かねた船長の計らいで、先程から皆並んで海に向かって釣り糸を垂らしている。


「釣れないな……」


「つれないねぇ?」


「釣れませんね……」


「お腹、空いた……」


「ピューイー」


 俺、羽衣ちゃん、タテ、もも缶、ピトちゃんが横並びになって、ボーっと海を眺めていると、俺達の後ろでデッキチェアに座っている悠莉とハオカが、同じタイミングで身体を左右に揺らす俺達を見て、クスクスと笑い合っている。


 ――もしかして、俺は釣りが下手なのだろうか……?


 因みに、ピトちゃんは潮風の匂いのお蔭か、俺の煙草の匂いが今のところ気になっていないらしく、船に乗り込んでからは唾を吐かれる事が少ない!


「――おやっさん……」


 ――密かに喜びを噛み締めていると、愛里に付き添われたミッチーが青い顔してやって来た。


「お、ミッチー、大丈夫だったか?」


「ウッス……申し訳ないッス」


 俺以外、船旅が初めてという事で心配されていた船酔いは……その犠牲者をミッチーのみに絞っていた。


 初日に酔ってしまい、救護室のお世話になってしまったミッチーは以後もこうして頻繁に、愛里のスキルと救護室のお世話になっているのだが……。


「今日は……どうだった?」


「ウッス……姐御が付き添ってくれたお蔭で露骨には……」


 ――そう……どうやら、ミッチーはここの船医に気に入られたらしく、初日以来、救護室に行っては襲われ掛けている。


「私がいても……あんまり気にしていないみたいでしたけどね」


「うふふ……一人の殿方からあんなにも愛されて……羨ましい限りですわ?」


「そう思うなら代わって欲しいッスよ……(ミトさん)も真っ赤になって『キャーキャー』としか答えてくれないし……」


 ――そう……この件に関して、二つ程驚きの出来事がある。


 一つは件の船医が筋肉教系(ラッセラゲイ)列の『おねえ』さんだった事、そして、グリヴァに聞いたことが確かなら(ミトさん)の変異――いや、進化が始まったのだろう……ミッチーと(ミトさん)の意志の疎通が可能になったのだ。――ミッチーが船医に襲われた瞬間から……。


「――それはもう、嬉しそうに『キャーキャー』と……」


 遠い目をして、ミッチーが呟く。


「ま、まあ良かったじゃないか……」


 ――目を逸らし、ミッチーを励ます。どうやら、ミッチーもまさかそんなタイミングでこうなるとは夢にも思わず、戸惑っているみたいだ。


「「「――っ!」」」


 ――その時、船首の方から数名の叫び声や怒鳴り声が聞こえて来た。


 どうやら、かなりの動揺と厄介事である様で、船長から一旦、船の進行を停止させるとの通達があった。


「何なの?」


 悠莉が驚き、デッキチェアから勢いよく起き上がる。続いて、ハオカも起き上がり、俺の傍に来る。


「旦那さん、様子を見に行かはりますか?」


 ――俺はチラリと愛里を見る。愛里は俺の言わんとする事を理解してくれたらしく、無言で頷くとペタリューダと共に、羽衣ちゃん、タテ、ピトちゃんの傍に駆け寄る。


「良し……ハオカ、ミッチー、様子を見に行くぞ? 良いか?」


「ウッス……行けるッス!」


「ほな、参りまひょか?」


「もも缶も、ついてく」


 慌てず、騒がず、人混みを掻き分け、船首に向かう。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「――何だ、こりゃ?」


 船首に辿り着いた俺達が見たのは……海に浮かぶ、白黒模様のイルカ型の魔獣――その死骸の山だった。


「ちょい、船長はんに話を聞いてきますね?」


「――頼む……」


 それにしても……これは酷い。恐らく、何かと戦っていたんだろうが……。


「――っ。おやっさん!」


 死骸の様子を見ていると、ミッチーがその山の一角を指差し、叫んでいた。


「どうした、ミッチー!」


「あそこ……まだ、生きてるッス!」


 死骸の山を、目を凝らして見てみると、確かに一匹、周りの死骸より二回りほど小さい、恐らく瀕死の魔獣がいる。


「――キュー……キュー……」


 その魔獣は仲間の死骸を見て嘆いている様に見えた。


「どうする?」


 ミッチーと一緒に悩んでいると、ハオカが戻って来た。


「――旦那さん、お待たせしてすんまへん、船長はんの話やと、あん魔獣は大人しい魔獣らしうて、出来れば助けてあげて欲しいとん事どす!」


「分かった、じゃ「おやっさん!」」


 ミッチーが再び叫ぶ。もしかして、ヤバいのか? と思い、瀕死の魔獣を見ると……。


「――これは……」


 海面に浮かぶ魔獣の死骸が淡く光り出している――。


「多分……おやっさんの考えてる事……合ってると思うッス」


 そして、その光は生き残りに向かって集まり始める。


「不味い、別の意味で不味い!」


「キュ、キュー!」


 ――光が収まると、そこには白黒模様のシルエットだけ人型の魔獣が……溺れていた……。


「――え?」


 思わず二度見してしまったが……溺れている。


「……どう思う?」


 ハオカとミッチーに問い掛ける。


「――多分、急にヒレん類が無くならはったんで、あの姿でん泳ぎ方が分からへんのではおまへんか?」


「――やっぱりかよ!」


 アレを見て警戒心が吹っ飛んだ……。俺は近くにあった浮き輪を持つと、そのまま海に飛び込み、溺れる魔獣の後ろからその身体を掴み、船に寄せる。


「キュ? キュキュ!」


「ああ、もう! 大人しくしてろ? 今、助けてやるから!」


 生まれたてで気が立っているであろう、魔獣は突然自らを捕まえた俺に対して警戒していたが、何とか助けようとしているのが伝わったのか、大人しくなった。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「おじちゃん!」


 船に上がると、羽衣ちゃんががっしりと俺の頭に飛び付いて来た。


「羽衣ちゃん、濡れるよ?」


「やぁっ!」


 そう言って、ガッシリしがみついて離れない……。


 ――困ったな……と思っていたら。先程一緒に引き上げられた魔獣がジィッとこちらを見ている。


「何だろ……?」


「多分……エサ王を見てる」


 すると、モキュモキュと串に刺した魚を食べながら、もも缶が呟いた。世が世なら「知っているのか、もも缶」とか言いたいところだ……。


「いや、それは分かるんだけどな?」


 俺の言葉にもも缶はフルフルと首を横に振る。


「もも缶、あの時――生まれた時、ボンヤリしてた」


 ――いや、今も結構のんびりしていると思うが……? と言う俺の疑問をよそにもも缶は続ける。


「それで、ゆうりのキラキラ、見た、アレになりたい、思った」


「つまり……?」


「あの子、多分、助けられたの分かってる、多分今、刷り込み中……?」


 ――多分が多いな……!


「要は、俺になりたいと思って、『獣士』化する可能性があるって事か?」


 俺の確認に、もも缶はコクリと頷く。つまりは、小型のおっさんが生まれるって事か……?


「うーん、それにしては……?」


 横からハオカが、首を傾げながら俺ともも缶の話に入って来た。どうやら、何か腑に落ちないことが有るらしい。


「どうした、ハオカ?」


「いえ……その、あの子の視線……上に向いとる気がしますよ?」


 ――「ほら」と指差す、ハオカの先にいる魔獣は、確かに俺の頭上……頭にしがみつく羽衣ちゃんに向けられていた。


「本当だ……」


「座ってみたいんやろか?」


 首を傾げたまま、ハオカが呟く。


「う? ダメ! ここ、ういの!」


 ――どうやら、俺の頭(指定席)は羽衣ちゃん以外に譲渡不可らしい……。まあ、それはともかく……。


「もも缶、この状態の時って話分かるのか?」


「ん、分かる……と思う」


 コクリと頷くもも缶。それなら、後で事情を聞けるかな? 取り敢えず、暫く……少なくとも、また泳げるようになるまでは保護するかな?


「――椎野さん、お待たせしました」


「お、ありがとう」


 丁度、愛里がタオルを持ってきた。


「そうだ、もも缶……後で何か買ってやるから取り敢えずそのサバ串貰っていいか?」


「――甘味……」


 ――等価交換を成立させ、俺は未だに俺の頭上をジィッと見つめる魔獣の身体をタオルで拭く。


「キュ……」


「ほれ、食べろ」


 暫く、サバ串の匂いを嗅いで警戒していた様だが、やがてパクリと食いつく。


「――っ!」


 ――お気に召した様だ。


 二本、三本と串を平らげていき、あっという間に全部食べてしまった。すると――。


「な、また光り出した?」


「――早い」


 もも缶が「ほう」と言った感じで頷いている。


「知っているのか、もも缶」


 ――結局言ってしまったが、この現象をもも缶は知っている様だ。もも缶はコクリと頷くと――。


「これ、もも缶が今の姿、なった時と、一緒」


 その言葉とほぼ同時、光は船の甲板を一気に覆い尽くした――。

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