1話 出会い
-…きて-
何やら声が聞こえる
-起き…-
どこかで聞いたことの有るような、無いような
-まさか…、失敗した?-
何が失敗?
-いや、手順は合ってた…、はず…-
よく分からないけど一応起きるかな
「あ、目が覚めた。良かった~」
少女はホッと息をついた
「流石に蘇生となるとぶっつけ本番だから大変だったわ」
…蘇生?
「ちょっ、どういう…」
体を起こそうとしたが力がうまく入らない
「あ、まだうまく体は動かないはずだから気をつけて」
とりあえず大人しく横たわったままになる
「僕は死んだんですよね?」
第一にこれが気になっている
「うん、死んでたよ?」
少女はあっけらかんと答える
「で、君は僕を蘇生させたと?」
「うん」
「何故?」
「あなたが私の“鍵”だからだよ?」
少女はさも当たり前のように答える
「鍵?」
何の事だろうか?
確かに僕の苗字には‘鍵’という漢字が入っているけど…
「この件はひとまず保留にしてと…、ここは?」
家に帰るには迎えを呼ばないといけない場所かもしれないので場所を聞く
「フレリック。“君のいた世界”とは違う“私達の世界”」
…はい?
違う世界?
助けてもらって失礼だけれどこの娘は少し頭がおかしいのか?
あぁ、そうか、そういう“設定”なのか。なら話を合わせたほうがいいか
「そしてその世界の5大陸のうちの1つである極東大陸にある私の家」
体が動かせるようになったので上体を起こす
「あ、自己紹介が遅れてた。私はさおり」
「僕は鍵田 硅」
さおりと名乗った少女は急に部屋から出て行った
と思ったらコップを持って戻ってきた
「熱いから気をつけて」
飲んでみると変わった味のお茶だった
「どう?特製のお茶」
なんというか…
「うまい」
特製でここまでの味を出すには苦労しただろう
さおりは少し照れて頭を掻いている
「で、そろそろ帰りたいんだけど」
「あなたはもう“あっち”には帰れないよ?」
また変なスイッチが入ったか
「“あっち”で死んだあなたを“こっち”で蘇生させたんだから」
「いや、冗談抜きで…」
「嘘だと思うならついて来て」