宝石商の女と辺境伯の男の結婚
人物紹介
マリー・レッド。
新興貴族。親は商人ギルドを行い自分は宝石商を行っている。いわゆる成金貴族(子爵)
社交界常連。
ガーネットを彷彿とさせる深紅の瞳が強烈であるため、通常ガーネットの君と呼ばれている。あだ名と家名が有名であるため名前が知られていない。
ランタン・ブラウン
現辺境伯。普段は北に隣接している気性の荒い国からこの国の守るために普段は領地に籠り切っている。社交界は滅多に出ない。顔が怖い。屈強。
私は今、一世一代の告白をする。
ガーネットの君だわ、悪徳宝石商、女のくせにまだ懲りずに商売なんかしてるのか、とかなんとか言われているだろうがそんなこと今は入ってこない。
舞台は領国防衛戦に勝利した王国騎士団を讃える祝賀パーティー。
the・騎士といった、筋骨隆々な風貌をしている彼の周りにご令嬢はいない。
一等の報酬をもらっていたのに関わらず、やはり他の騎士に比べて女性人気はないようだ。
好都合!!!
「ご機嫌よう。辺境伯様、此度の防衛戦のご活躍は国内であればどこに行っても轟いておりました。
もうすぐ、ダンスが始まりますわ。お相手お願いしてもよろしいでしょうか?」
「、、、ああ、」
よしっっっ!!!
ゆったりした音楽が流れ始める。
リードされている。剣術しか磨いていなさそうな人なのにダンスが上手いのか。
一曲目が終わってしまった。
がんばれ、私!
「もう一曲お願いしても?」
「、、ええ、」
!?!?いいの???!!!
ダンスをする際同じ人と踊る時、回数に注意する必要がある。
1回目は、挨拶、社交辞令である。
人付き合いをするのなら、1回目だったら誰であろうと当たり前に踊るものだ。
2回目は、親しい仲であると言うことのアピール。
主に親族や特段贔屓している仕事仲間や顧客などと踊るものだ。
3回目は、婚姻関係を持っていることの発表、または実質的なプロポーズをするために踊るものなのだ。
だから私は3曲目まで連続してお相手をお願いしようとしているのだ。
しかし、2回目以降は流石に振られると思っていたので、あっさりと了承されて面食らってしまった。
「では、手を」
「は、はい!」
今度は、最近流行っている音楽が流れる。
どうしよう。3回目誘ってもいいよね?これ?!
でもここで断られたら、?
彼は社交場に滅多に出ないからわかっていないだけ?なんか彼の同僚みたいな人にもめちゃめちゃ見られるし、いやわかってたけどね???やっぱりこんな回りくどいことをせず言葉にするべき??いやいやいやいや、それができたらこんな回りくどいことしてない、、、、でもよく考えたらこんな公衆の面前でやることではない、、?え?え?どうしようもう終わっちゃう、、どうしよう、、
、、、やっぱりやめようかな、、
こんなパーティーでしか会えないからと言って、こんな大胆でわかりにくくて断りにくいような告白はよくないのでは?
だって意味なんて知ってそうな人じゃないもん!泣泣
あとでこっそりお呼び出しをして、、
、、、いや今日はもう無理だ、心臓がもたない、、、
、、、っでも、、
2曲目が終わってしまった。
「、、、、、、」
沈黙がきつい
「、、、あの、お相手ありがとうございました。それで、、、えっと、、、」
「、、、社交界に疎いと言えど私も一応貴族です。」
!!
「ダンスの回数の意味くらい知っております。」
終わった、
恥ずかしい。知っていたのか、、
知っていたのに2回も踊ってくれたのね、
、、、いい思い出にはなったじゃん。
あーあ、、明日もお得意様に行かないとなんだよねー早いからもう帰るか、しょうがないしょうがない、はー、、、
?
??
彼が私の手を離さない?
「、、もう1曲いかがですか?マリー嬢」
名前、知ってくれてるんだ、、
「よ、よろしいのですか?」
「私は臆病ですので、あなたから声をかけられなければ諦めていました。
えっと、、、それで、返事を、お聞きしたいの、ですが、、?」
いつも真剣な顔して表情が動かさない彼が、目を泳がせて、緊張を滲ませている。よく見ると耳が赤い。
「ええ!喜んで!!!」
という夢を見た。
、、、いやいや、昨夜のことは現実でしょう?
だってあの後、帰りの馬車まで送ってもらっちゃったりして
「明日になったら正式な文を送ります。それでは良い夢を」
なーんて約束しちゃったんだから、夢なわけないじゃん!!
いやいやいやいや、まって?
いくら何でも都合良すぎじゃない?
じゃあやっぱ夢???
、、、まぁとりあえず、仕事するか
「お、お嬢様、文が、ブラウン辺境伯様から文が届いています!」
よっしゃ!!!
夢じゃなかった!!!!!
思わずガッツポーズをしてしまう。
文の内容は婚約を申し込むものだった。
今日はよく商品を売り飛ばせた。
婚約はサクサクと進んだ。
一つ驚いたのは、保証人が国王であったことだ。
仲が良いらしい。
王が直々に婚約祝いを下さるらしいので、2人で王城へとやってきた。
彼は職業的に滅多に領地から出ることはないし、私も私でそれなりに忙しい日々を送っていたので、実は会うのはパーティーぶりだ。
「よく来てくれた!
まさかお前が結婚するとは思わなかったよ!
わたしからも、お祝いを贈りたい。
今回は装飾屋を連れてきている、好きなのを選んでくれ」
「まさか、バラエティですか?
ずっと憧れてたので、嬉しいです」
バラエティとは、王族御用達の装飾屋だ。
品質、デザイン、加工技術、何をとっても国内最高級の店。細やかなデザインを得意としているため、ひとつの作品にじっくりと時間をかけて作るため、予約受け付けるタイミングが読めない。そのため伝が無いと予約を取ることが非常に困難な店なのだ。
「そうだ、じっくりと見るといい」
というので早速見にいかせていただけた。
すご!うわー!!お目にかかれるとは
うち、宝石には自信あるんだけどやっぱり装飾となると周りの意匠がだったり金属加工とかがね、どうしても負けるね。
そんなマリーを横目に国王は旧友に話しかけた。
「彼女、本当にああゆうの好きだね。仕事にしているだけある。今日つけているのも控えめだけど、いいのしているね」
「、、、あれはお気に入りらしい」
おや、?辺境伯とは長い付き合いだ。
疑っていたわけではないけど、彼女のことちゃんと好いているのか。
まさかな反応が返ってきて僅かに驚きを見せる国王を横目にランタンは彼女との出会いを思い出していた。
、、、マリーはいつもはよく煌びやかな装飾品を身に纏っているが、それは宣伝だといっていた。
婚約者探しのため、否応なしに参加させられた長期の夜会にてガーネットの君と呼ばれる彼女を初めて見かけた。
煌びやかな宝石を身に纏っているのに、自身がそれに負けておらず綺麗な人だなという印象を受けた。
性格も見た目通りであり、もの怖じせずガンガン営業を仕掛けに行っている。大胆に見えて、対象によって付けていくもの、アピールの仕方を変える細やかさも持っている。器用で周りをよく見れている人だと思った。
そんなことを考えているうちにで連日の夜会も半分を過ぎた時、常時誰かと一緒に居る彼女の姿が見えないことに気づいた。
さすが金で爵位を買ったやつだ、女のくせに奥ゆかしさのかけらもないなどの悪口が聞こえてくる。
このような夜会で貴族が貴族の悪口を言うのは珍しいことでもない、しかし、その日はいつにも増して聞いていられなかったのでその場から離れた。
辺りを散策していると、バルコニーに佇む彼女の姿が目に入った。
声を掛けるか、掛けるとしても何を言えば良いのかなどと考えていると、彼女がこちらを見ていることに気がついた。
「こんばんは、ブラウン辺境伯様」
私は知られていたのか、
高まる胸を落ち着かせて
「、、、ああ、こんばんは、ええと貴方は皆にガーネットの君と呼ばれていたね」
「、、、まぁ!ご存知で?」
「いや、すまない。貴方の姿と商会名を知っているだけなんだ。
だから、ええと、名前を伺っても?」
「!、、、ふふ!確かにそうですね
私は、マリー・レッドと申します。」
「それで、ご自身用ですか?どなたかへの贈り物ようですか?」
「???」
「???あれ?てっきり私と商談をしに来たのかと思ったのですか?もしかして違いますか?」
「、、、いつもなら色んな人と交流しているのに、こんなところにいるのが意外で、、、不躾にみてしまってすまない」
「あーなるほど。今回の夜会は流石に長いので堪えます。
あとは、、ちょっとだけ、疲れました。
なんて、はは、ちょっとナイーブになっちゃいました。」
「、、、マリー嬢は自分の仕事に対して自信をもって取り組んでいることが伝わるので素敵だ。しかし、あなたは人の機微に鋭い繊細な方だと思う。だから、無理してはいけない。」
「、、、私は仕事上、不安感や不信感に襲われよく鬱になる人をよく見るんですが、そう言った時は自分がなんのためにこの仕事始めたのかと原点回帰すると胸がスッとするみたいですよ。」
「、、、っふふ!そんな風に見られたの初めてです。ありがとうございます。」
彼女は大輪の花が咲いたように柔らかく笑った。
「ブラウン辺境伯様!こちらに来てください」
呼ばれたので行ってみると、すでに候補を絞っているようだった。
「この2つのピアスは形が違うだけのですが、どちらが良いですか?
そして宝石は、、どうしましょうか?」
そのピアスは中央に小ぶりな宝石が嵌め込まれた、シンプルなデザインだった。言うように形が四角か丸かの違いしか無かった。
、、、よくよく見ると周りに細かい意匠が彫られている。
彼女が付けているイメージをしてみるが、、、どちらも似合う。
「、、、丸型がいいんじゃないか」
いつでも使いやすい形の方が日常的に付けてくれるのではないかと考えたからだ。
「宝石は、、、私が選んでいいのか?」
「ええ、初めは瞳の色と同じにしようと思ったんですが」
彼女は丸型のピアスをそっと持ち上げて私に当てる。
「、、貴方の瞳は、いつ見てもどんな宝石にも例えられない。
濃い青っぽいのに光に当たると紫が出てくる、こんな綺麗で奥深いのは表現できないわ。」
てっきり彼女は自分が欲しいものを選んでいるのだと思っていたが、どうやら私につけるものを選んでいたらしい。
「、、、自分がつけるのではないのか、」
「ふふ、私が付けたら見れないじゃない。私、こういうキラキラしたものは好きよ。でもいざ自分がつける、となると見えないじゃない。
だから、貴方がこれを付けて、私に見せて?」
「、では宝石はガーネットで頼む。」
よかった、言われてみれば当然のように付けてもらおうとしていたが、装飾品はあまり付けないようだし、、、まあ、断られなくてよかったわ。
「では丸型で、それで周りの意匠は先ほど決めたやつでお願いします。」
注文も終えて見るものは見たので、お礼を言い、装飾屋を後にしようとしたところで彼は言った。
「それと、、、この指輪もお願いしたいのだが、強いて言えば私の瞳に似た宝石は何があるだろうか?」
「ええと、ターコイズがアメジストですかね」
と、店主が答える。
「マリー嬢はどう思う?」
「、、、私も、ターコイズかアメジストだと考えておりました。普段は濃い青のものの方がより好ましいと思うのでターコイズですかね?」
「そうか、、では、、、ターコイズにしよう。
マリー嬢、お手を、、うん似合う」
彼が選んだのはリングの幅が少し広めのものだった。
「それで、先ほど注文したピアスと同じ意匠デザインを彫ってもらうことはできるか?」
お、お揃いだ!!しかもお互いの瞳の色だ、
うわ、婚約者っぽい!!!
そうよね片方だけが婚約者の瞳の色のを付けてたらなんか束縛しているみたいに見えるもんね、いやいやそれは卑屈になりすぎか、えーん嬉しい!!!
国王にお礼を言い、王城を後にした。
そして、しれっと1ヶ月後に一緒に受け取りに行く約束をして別れた。
約束の日より少し前、信じられない光景を見た。
彼が綺麗な赤い髪をした女性をエスコートして、例の装飾店の中にいるのだ。
しかもかなり親密そうに見える。
あの、真顔がデフォの彼が、嫌そうな顔や悪そうな顔をあの女性に向けてはしているのだ。
私でさえ笑ってくれる時があるかないかなのに、、、
いやいや、彼方から実質のプロポーズも頂いたし?、
公式の文書もその翌日に貰ったんだよ?!
そんな方が不貞なんてしないに決まって、、、
、、、え?
な、なんで、
選んだ指輪から宝石を取っているの、、?
夢かな?これは
とか逃避しようとするけど、流石にこんな脂汗をかいていて醒める様子がないのだから、いやでも自覚してしまう。
彼とそのツレが店から出てくる。
、、、声を掛けれなかった、
しかし、何をしていたのかは気になる。のでお店の人に尋ねることにした。
結果、聞かなきゃよかった。
指輪の宝石をターコイズから、ガーネットに変えたというのだ。
それを聞いて思わず店を飛び出してしまった。
その日のうちに、彼からピアスと指輪は自分が1人で取りに行かせてくれないか、という文が届いた。
泣いた。
こうして迎えた結婚式当日。
どうしてももやもやは晴れなかったが、どうせこの告白がうまく行かなければ、別の人に嫁いでいたのだ。
いまさら解消したってどうってことない。
、、、それに、あのパーティーの日からこの人の隣で幸せになるのを夢見てきたのだ。
こうなったら、最後まで綺麗な夢を見せて欲しい。
「、、、先日は、約束を違えてしまってすまない。」
「お気になさらず」
「、、、実は」
「やめてください!!!」
あ、やばい
「それ以上は言わないで、、今日くらい貴方の隣に居させて、」
彼は見たこともないほど焦っていた、私は涙が抑えきれなかったようだ。
「、、、、、何か誤解をしているんじゃないか?
ええと、落ち着いて話を、、、
あ!、、と、とりあえずこれを見て欲しい。」
そう言って彼が取り出したのはあのお揃いの意匠が施されている指輪だった。
しかし、見慣れない宝石がついている。
これは黒?、、いや濃い、青?
思考が全て持っていかれる。
少しして、彼は教えてくれた。
「それは、ガーネットだ。
でも見ての通りただのガーネットではない。ブルー・ガーネットと言って至高の稀少石らしい。
こちらに来て」
言われるがままに窓の近くへと進むと、その宝石は鮮やかな青色となったあと紫へと変わった。
なるほど、アレキサンドライトのように光で色が変わるのか、しかもブルーガーネットなんて存在するのか、、
と先ほどまでの不安がすっかりとなくなっていることに気づく。
「私が遠征先で野営している際に見つけたんだ。
君が美しいその瞳をガーネットとして私にくれるように、私も私の瞳を十分に思わせる宝石をあげたかったんだ。」
「落ち着いたかい?」
宝石一つで機嫌を取られてしまった。チョロくてなんだか恥ずかしい
「、、、薄々気づいているだろうが、わたしはそんな器用ではない。だから不安なことがあったり、嫌なことがあったりしたらなら共有してくれないか?
、、、私たちは、他から見れば異例の速さで婚約し、結婚する。
君からしてみれば、私は、、誰でもよかったように見えるかもしれない。
私は、あの日の夜会で君と話してから、君のことを誰よりも愛おしく思っている。
だから、君のことを幸せにできるよう努める。」
「、、っふふ!
今から契りを交わしにいくのに、そんな、プロポーズみたいな」
「?!?!やっぱり嫌か?何が嫌だった??」
また涙が溢れてしまったようだ。今度は嬉し泣きなので心配いらない
「いいえ!
私たちは今まで関わってきた時間が少なかったんです。
だからあなたを信じきれてなかった。ごめんなさい、、
だからもっとあなたのことも教えてください。そしてこれからはわたしのことも知ってください。
、、、わたしもあなたを愛しています。」
やめるときも、すこやかなるときも、たすけあうことを、ちかいますか?
「はい、誓います」
「誓います」
式は辺境伯で行ったため、参列してくれた人は騎士団の人が多い。
少し進行も落ち着いた時彼から耳打ちされた。
「、、、蒸し返すようで悪いが、何故あんなに取り乱していたんだ、一体何が原因でーー」
「団長!!!ご結婚おめでとうございます!
団長が結婚なんて、する気がないとばっかり思ってましたよ!なーんて、あ!そのピアス先日の装飾屋で見たやつですね!」
びっくりした、どういう風に聞こうかと考えていた時、後ろから元気な声をした赤髪ポニーテールの男が近づいてきたのだ。
、、、もしかしてこいつ、、
わたし、見間違い?というか見当違い??
恥ずかしい、、絶対言えない、、
「チラッとしか見えなかったけどやっぱり綺麗っすねー!
、、ん?よく見ると宝石周りの金属部分に何か彫られてる?」
そう言った赤髪の男は辺境伯様のつけているピアスに顔を近づける。
御名答!
でも、わたしはそれを阻止する。
「素敵でしょう?でもこの意匠を見れるのは私だけよ」
そう言って彼の耳に口付けをする。
「これはこれは失礼、愛しの奥様の特権でしたか!」
赤髪の男はイタズラに笑って立ち去っていった。
そして、私は少しだけ頬を赤く染めた彼の顔を見て笑った。
最後までお読みいただきありがとうございました。
初投稿です。
拙い小説ですが、少しでも雰囲気を楽しんでいただけたら幸いです。




