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婚約破棄の1秒後、ドSヒロインの玩具になった元王太子が泣きついてきた

掲載日:2026/05/18

「エリス・ルナール公爵令嬢! 貴様のような冷酷で醜悪な女は、我が王妃にふさわしくない! 今この場をもって、貴様との婚約を破棄する!」


きらびやかな卒業式パーティーの会場の中心で、王太子カイル殿下はこれ以上ないほど得意げな顔をして叫んでいた。


彼の隣にはサリヤが寄り添い、怯えたように殿下の服の袖を掴んでいる。


周囲の貴族たちは私を嘲笑するような視線を向けていたが、私――エリスの心境はただ一言に尽きた。


(あ、やっと終わったんだ。よかった)


前世の記憶を持ってこの乙女ゲームの世界に転生してから数年、私はこの退屈な「悪役令嬢」のロールプレイを淡々とこなすだけの日々に、心の底から飽き飽きしていた。


カイル殿下に対する感情など最初から一滴も存在しない。


ただの記号。

ただの舞台装置。

興味の対象にすらならなかった。


私は彼に対しての感情の起伏が一切ない、冷めきった声で静かに答えた。


「はい。承諾いたしました」

「……え?」


カイル殿下が拍子抜けしたようなマヌケな声を出す。もっと泣き叫ぶか、見苦しく弁明するとでも思っていたのだろう。


だが私は引き止めない。

一瞬の迷いもなく、王太子という存在を自分の人生から完全に消去した。その瞬間、私の頭の中にだけ機械的な電子音が響き渡った。


『――条件達成。乙女ゲーム【きらめき王宮の恋】、これにて全シナリオを終了します。HAPPY ENDを検知。システムをシャットダウンします。お疲れ様でした』


「あぁ……これで私は自由だ」


この退屈な世界のルールから完全に解放されたのだ。私が小さく息を吐きながら呟き、出口に向かって歩き出そうとした、その時だった。



「……あ゛〜〜〜〜」



静まり返ったパーティー会場に、底冷えするような不快な声が響いた。


カイル殿下の隣に立つサリヤは、それまでの笑顔を消し去り、完全に死んだ目でカイル殿下を見つめていた。その瞳には、感情の消え失せた致命的に暗い光だけが宿っている。


「あ゛〜……チッ。やってらんねぇ〜」


サリヤは舌打ちをしてドレスの隠しポケットに手を突っ込み、煙管キセルを取り出した。


手慣れた手つきで火をつけ、紫煙を深く吸い込むと、天井に向かって盛大に吹き出す。


「サ、サリヤ……? 君、何を……?」


カイル殿下は呆気にとられ、ただ困惑した声を漏らす。サリヤは人間ではなく、ただの新しい玩具を見るような目で殿下を見つめ、平坦な声で呟いた。


「虐めてぇ。こいつ……なら…良いよね。だって。私のなんだから」


「ひっ――」


カイル殿下が短い悲鳴を上げる。

その視線の先で、サリヤはふわりとドレスの裾を持ち上げた。可憐なフリルの下に隠されていたのは、およそ夜会にはふさわしくない、広大で頑丈な『隠し内ポケット』だった。


そこから覗いていたのは、煙管だけではなかった。


鈍い黒光りを放つ頑丈な革製のむち

ジャラジャラと不穏な音を立てる鉄製の鎖。

さらには、どこをどう見ても人間用としか思えない、禍々しい金属製の猿ぐつわ。


ドレスが揺れるたびに、それらの拷問具や調教具が、まるで最初からカイルを捕獲するために誂えられたかのようにずらりと並んで顔を出したのだ。


「サ、サリヤ……? 君、何を……その、ポケットの中身は……!?」


あまりの異常事態に、カイル殿下は腰を抜かしそうになりながらガタガタと震え出す。


周囲の貴族たちも、ヒロインのドレスから出てきていいはずのない「異様な拷問道具」の数々に、顔を青ざめさせて息を呑んだ。


サリヤは彼らの反応など一切気に留めず、愛おしそうに鞭の柄を指先でなぞりながら、底冷えする笑みを浮かべる。


「あは、これ? お前を『躾ける』ための道具だよ。ずっと楽しみにしてたんだ。王太子の皮が剥がれて、ただの無力なおもちゃになるこの瞬間をさぁ」


カイル殿下が恐怖のあまり「ひ、ひ……っ!」と言い、後ずさりしようとした瞬間、サリヤは一切の躊躇なく殿下の髪を掴んで無理やり上を向かせ、まだ熱い煙を上げている煙管の先端を、殿下の口の中に力任せに突っ込んだ。


「あ……あつっ!? サ、サリヤ……? 止めてくれ……それにその喋り方はなんだ……!? ハ、ハハ……ひ、ひぃ、おごっ!?」


無理やり煙を喉の奥まで吸わされたカイル殿下は熱さと煙にゲホゲホと激しくむせ返り、涙とヨダレを撒き散らしながら、人間のものとは思えないブサイクな悲鳴を上げた。


王族としてのプライドも美しい顔も、その瞬間に文字通り完全粉砕された。





『バンッ』



「カイル! これはいったい何の騒ぎだ!」


会場の扉が勢いよく開き、現国王と王妃様、そして近衛騎士団が雪崩れ込んできた。


カイル殿下は救いを求めるように父親を見たが、王様の口から出たのはさらなる絶望の宣告だった。


「カイル! お前が学園の予算を横領し、サリヤに貢いでいた証拠がすべて挙がった! 国民を愚弄し、公爵家との約束を破った愚か者め! お前を今この瞬間をもって廃嫡とし! 平民に落とす!二度と王族を語るな」


「そ、そんな……! 父上、お待ちください! 僕は、僕は……!」


王位継承権の剥奪。

後ろ盾の消滅。

完全な没落に、カイルは床に膝をつき、這いつくばった。後ろ盾を失ったカイルの肩を、冷たいサリヤの手がガシッと掴む。


「ねえ、王様、このゴミを処分する実務を引き受けますよ。もう王族じゃないんだし……好きにして良いよね?」


サリヤは国王たちに向かって感情のない声で尋ねた。国王は冷徹な目で息子を一瞥すると、静かに応じた。


「うむ。ではカイルの処遇はサリヤ嬢に任せよう。だが、担当の者を何人か付けるが良いか?」


「ええ、実務担当なら歓迎だよ」


サリヤは感情の消えた引きつった笑顔で応じると、カイルの耳元で囁いた。


「これからは私と二人きりで、ずーっと楽しいおままごとをしようね」


カイルの前にいるのは、恋した女ではなかった。


「いやだ……いやだあぁぁ! 助けてくれ! 誰か、誰か助けてくれ!」


カイルは必死に床を這いつくばった。


その視線の先には、無表情のまま一連の騒ぎを冷めた目で見下ろしている私、エリスの姿があった。お芝居は終わった。


私は私の人生を生きる。

踵を返し、私はパーティー会場の【出口】に向かって静かに歩き始めた。


「エ、エリス――っ!!」


後ろから惨めな叫び声が聞こえた。カイルは猛烈な勢いで床を這いずり私の足元に飛びつくと、私のドレスの裾を両手で力任せに掴んだ。


「エリス! 嘘だ! さっきの婚約破棄は嘘だ! 僕が悪かった! 君が一番だ! 頼む、頼むからさっきのは無しにしてくれ! 僕を引き取ってくれ! この女から助けてくれぇぇ!!」


大号泣しながら爆速で(てのひら)を返して縋りついてくる元王太子。その姿はあまりにも情けなく、あまりにも見苦しかった。


私がカイルを見下ろすと、彼のすぐ後ろには、信じられないほどのハイスピードで迫ってくるサリヤの姿があった。


彼女は死んだ魚のような目でカイルを見つめながらブツブツと呟いている。


「ねぇ……その女を取るの? 私じゃなくて? ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ……」


カイルが「ひぃぃぃぃぃぃ!」と喉を鳴らして震え上がる中、サリヤの動きは一切の容赦がなかった。


「ねえ、聞いてる? 汚い手でエリス様のドレスに触るなよ。お前の持ち主は私だろ?」


サリヤは冷酷な声を吐き捨てると、カイルが必死にドレスを掴んでいるその手の甲に、未だ赤く燻る煙管の火皿をじゅっと容赦なく押し付けた。


「ぎゃああああああああああっ!? あ、熱い、熱い熱いぃぃぃ!」


皮膚の焦げる嫌な臭いと共にカイルが悲鳴を上げて手を離した瞬間、サリヤは一切の躊躇なく、カイルの背中をピンヒールで思い切り踏みつけた。


「ドゴォッ」


と鈍い音がして、カイルの顔面が高級な大理石の床に力任せにめり込む。


「ふごっ……! ぶ、ふぅ……っ!」

「暴れないでって言ってるの。言葉が通じないのかな? 平民以下に落ちた自覚、なさすぎじゃない?」


サリヤは冷めきった瞳で見下ろしながら、カイルの後頭部をヒールでグリグリと踏みにじる。床に押し付けられたカイルの鼻や口から、哀れに血とヨダレが滲み出た。


さらにサリヤは、ドレスの隠しポケットから頑丈な革製の犬用首輪を取り出すと、カイルの首へ乱暴に叩きつけ、カチリ、と鈍い金属音を響かせてロックした。


首輪に繋がった太い鉄製の鎖をジャラリと鳴らし、サリヤは嬉しそうに微笑む。


「うん、よくお似合い。今日からお前の名前は『ポチ』ね。それ以外で返事したら、その生意気な舌を引き抜いちゃうから」


「ひっ、あ、ぅあ……」


カイルはあまりの恐怖と激痛に、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃに濡らし、喉をただ震わせることしかできない。プライドを木端微塵に粉砕された元王太子は、今や完全にただの家畜だった。


そんな地獄絵図が足元で繰り広げられていても、私の心は1ミリも動かない。


私は掴まれていたドレスの裾をパッパッと軽く払い、塵でも落とすかのようにカイルを一瞥した。



「お幸せに」



私は再び、【出口】へと歩き出した。


「あ、待って、エリス! 行かないでくれ! 頼む、おごっ!?」


カイルが再び涙目で手を伸ばそうとした瞬間、サリヤが首輪の鎖を全力で上に引っ張り上げた。


「がはっ……!? ぅ、く、苦し……っ!」


首を絞められ、白目を剥きかけるカイル。サリヤは冷酷に言い放つ。


「バイバイ、エリス様。このおもちゃは私が責任を持って、死ぬまで壊し尽くしてあげるから安心してね」


サリヤはそう言うと、大の大人であるカイルの体を、首輪の鎖だけでズリズリと床に引きずり始めた。


「あ、が……あ、ああぁぁ……っ!」


床に生首と身体を擦り付けられながら、カイルは惨めに引きずられていく。


王様が連れてきた「実務担当」の屈強な近衛騎士たちも、ニヤニヤと邪悪な笑みを浮かべながら、カイルを追い詰めるようにサリヤの後ろに続いた。


向かう先は、パーティー会場の【入り口】。


二つの影は完全に真逆の方向へと進み、そして交わることはなかった。





元王太子殿下は、今では玩具おもちゃとなりサリヤと共に地下室に飼われている……と。


数ヶ月後のお茶会で、紅茶を口に含みながら友人と話し、そんな噂を耳にした。






      「敗北(()わり)」

【制作メモ】

本作は、作者が考案したプロット、設定、言葉遊びをベースに、AI(人工知能)と二人三脚で本文の執筆・調整を行って完成させました。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。


無事に(?)自由を手に入れたエリスと、ハッピーエンドの1秒後から地獄の「おままごと」が始まったカイル。真逆の方向へ進んだ二人の結末、そしてラストのルビ芸を楽しんでいただけたでしょうか。


もし「スカッとした」「サリヤのドSっぷりが最高だった」と思っていただけましたら、作品へのブックマークや評価(星・ポイント)で応援していただけると励みになります。


皆様の応援が、また新たな物語を紡ぐ力になります。

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