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コハのアロとピー【~《電子レンジ》ミーツ"ガール"!?!!?いずれ魔法少女になる女の子の不思議な不思議な物語~】  作者: ふるなゆ☆


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11話◇ないない

 いつの間にか蹴飛ばしているベッド。

 重い瞼を開ければ懐かしい天井がそこにはある。カーテンを開けば相変わらずの朝日が射し込んでくる。

 ぼんやりとする眠気を指で擦って紛らわす。

 転げ落ちないように階段を降りる。

 朝のパンとコーンスープ。パンにはお気に入りの蜂蜜とメープルで味わう。今までと同じはずなのに、今までよりも美味しいと思ってしまう。

「おはよう」と久しぶりのおばあちゃんの顔を見るとどこかホッとする。

「ルバリさんは十月頃にこちらへと来るみたいよぉ。」

 昨日、早速ルバリに会いたいことをおばあちゃんに伝えた。旧友である彼女と連絡を取り合ってくれたみたいだ。そこそこ先の話になったが仕方がない。

「ピーちゃん。十月までの辛抱だからね」と言い聞かせた。

 あれからミカンとは連絡は繋がらない。どこか心配になってくる。

 家には度々アロがやって来てくれる。今までの暇に華が添えられる。無垢でつまらなかった日々も楽しい時間に変わっていた。

 心の底から溢れ出る安心感で眠気が来る。お腹いっぱい食べた後の眠気と同じ感覚だ。

 昼寝をしようとベッドに横たわるとノラが飛び乗ってきた。いつも以上にかまってちゃんだ。そんな姿も愛らしい。



 中学二年生――秋。



 二学期が始まった。

 教材を取りに行く日に気になる事があったので職員室へと寄る。私は友達のミカンの安否を確認した。

 人が僅かしかいない職員室。働いているのはたった手で数えられる程度。私の担任の先生がミカンの担任の先生と連絡を取り合ってくれた。

 電話し終えた先生はなんとも言えないような表情を浮かべていた。

「音信不通でしたので、街のベルフェゴールによる自宅確認をお願いした所、彼女の姿はどこにも確認できなかったみたいですね。残念ながら、鬼に捕獲されてしまったと思われます。」

 街に蔓延るイカれたゲーム。鬼に捕まると人間以外の何かに変えられる。それは街にとって自然災害として対処きしれない存在であり、雨のように身近なものとなっている。私達はこの街で過ごす以上、このリスクと隣り合わせで生きていかなければならない。そのためのフルリモートだし、人が出歩かない街なのである。

 虚しく帰る通学路。寂しい通路に虚しい風が吹く。それらが余計に心寂しくしていく。虚ろう思考で歩いていたらいつの間にか家に辿り着いていた。ミカンがいたはずの隣の家はあまりにも物静かな雰囲気を放っていた。

 私はその夜布団に包まった。

 ただ、死んだ訳じゃない。人ではない何かとなって生きているんだ。そう思うと少し希望のようなものが見えてきた。 



 それから一ヶ月後ぐらい経った――。


  

 ピンポーン。来客だ。

 今、居間へとやってくるルバリ。相変わらず見た目が現在(いま)も昔も変わらない。ついに忌々しき呪いにかけられたピーちゃんを人間に戻す時がきた。垣間見える期待と不安。明確なビジョンがいまいちピンと来ていないからだろうか。

「ピーちゃんを人間に戻せますか?」

「以前渡したティアラがあるわよね? そのティアラは世界でも有数の力を秘めた宝なの。その眠る力を代償に一人だけなら人間に戻せるかも知れないわ。」

「分かりました」と言って、ティアラを置いたクローゼットの中のタンスの上を見る。しかし、何故かティアラに付いていた四つの宝石がなくなっていた。扱いが雑かったのだろうか。隙間などを探しても目当てのものは見当たらなかった。

 急いで降りて、ルバリに見せる。

「それはまずいわね。これでは戻すための力が足りないわ。」

 せっかくピーちゃんを戻す機会ができたと言うのに、全てが無に帰す結果になりそうで、涙が出てきそうだ。

 ノラが鳴いた。

 猫に向かって魔法が放たれ、彼女と猫の間には不思議なオーラでできた線があり、一人と一匹はそれで繋がった。

 すぐにそれが途切れる。

「一応、街の中に四つとも存在するみたいね。今、この子に感知(サーチ)の魔法を渡して、コハちゃんの案内をするよう命令したので、それを頼りに見つけてくるといいわ。」

「分かりました。絶対に見つけます。」

 そう言って、出かける準備をして、外へと出た。街のどこかへと消えた四つの宝石を探すために。



 ノラが自由に街の中を歩いていく。

 木枯らしが吹き晒す。

 ふとノラがある店の前で立ち止まった。その店はこじんまりとした喫茶店だった。

 喫茶店の中へと入る。ガランガランの殺風景。そこに一人のおじさんがやってきた。

「珍しい。直接客が来るなんてな。なー、昨日に鬼が捕まったばかりだし、安全な期間だから来たのかな。」

 明らかにこの喫茶店の店員だと分かる服装をしていた。

「あっ、すみません。実は私、宝石を無くしてしまって。それを探してここに来たんですけど……。」

「宝石? あー、もしや黄色いアレか?」

 そう言って持ってきたのはティアラの中にあったトパーズだ。それは私に近づくと光り出して、私と不思議なオーラで繋がった。ルバリとノラが見せたオーラの線と同様のものに見えた。

「何が起きているんだ……。まるで奇跡を見ているみたいだ。それに蕩けるような幸福に包まれていく。」

 おじさんがとっても幸せそうな顔をしている。ほわほわした表情だ。

 彼は「じゃあ持っていけ」とすんなりと渡してくれた。私が「ありがとうございました」とその場を後にしようとすると「おう。待ってくれや。あんな幸せな時間、初めて感じたよ。酒も煙草も、さっきの幸福感には勝てねぇ、そんな時間だった。お礼にっちゃ何だか、ここで何か食べてってくれ。もちろん、タダでいいぞ」と止められた。

 お言葉に甘えて席へと座る。

 お皿に乗っけられたプリン。スイーツ名はイタリアンプリンというらしい。私の中の想像のプリンは柔らかくてすぐにぐにゃぐにゃ揺れるイメージだが、これは固めで揺れずにしっかりとしている。

 口に入れると程よい甘みが広がる。さらにおまけに頼んだメロンジュースをストロー越しに飲む。甘い幸福が私を支配していく。

 あまりの甘さに脳が蕩けそうだ。

 長いようで短い甘い時間を私は堪能した。



 これで残りは三つとなった。

 それなりに歩いた先にある無音の家。人の家の敷地に勝手に入っていく。「駄目だよ」と静止しようとするも掴めずにスタスタ先へと行ってしまう。さらに人の家の扉を勝手に開いた。

 急いで追いかける。

 頭の中で「ごめんなさい」のビジョンをフル回転させた。このパターンで人が来たらこう謝ろうとか、このパターンで怒られたらこう謝ろうとか、無数に考えていく。

 ひとまず申し訳なさそうに「失礼します。猫を連れ戻しに来ました」と慌てながら言い放つ。しかし、何にも言葉も音も返ってはこなかった。

 中に入るとしっかりとした無音が広がる。

 そこが空き巣なんだと悟った。

 取り残された部屋の残骸がもの寂しさを感じさせる。この街ではよくあることらしい。もしかしたら、ここの家主はここにいるのかも知れない。けど、それは人間の姿ではなく人外の姿である。椅子かもテレビかもコップかも知れない。はたまた鉛筆や糸なのかも知れない。真相は分からない。分かるのはそこに人はいないことだけだった。

 そこに緑色に光り出す宝石を見つけた。

 ティアラにあったエメラルドだ。私とオーラで繋がっている。私はその宝石を手に持った。

 何とも言えない気持ちで「お邪魔しました」と言い放った。

 私は優しくドアを閉めた。



  ノラはある路地裏へと来た。店のような場所の裏に置かれたプラスチックのゴミ箱。ノラはそのゴミ箱に軽い猫パンチを繰り返していた。

 怪しみながらゴミ箱の中を見た。

 使い方が酷すぎる。ガムが側面についていたり、幾つもの潰れた空き缶が乱雑に捨てられて、中の液体が中で混ざりあっていたり、生活感ただよう生ゴミなどがそこに放り込まれていた。そして、その中から鮮やかな赤色に光る何かがある。まさしくティアラについていたルビーだ。そう理解したのは、オーラが私とそれとを繋いだからだ。

 近くにトングのようなものかないか探したけど見つかる気配がしなかった。ピーちゃんのためにも手にしなきゃならないのに、どうしてもゴミ箱の中に手はツッコミたくない。

 迷った挙句、「やるしかないか」と私は袖をまくった。

 汚らしすぎて苦しすぎる時間。

 手にまとわりつく嫌な液体の感触。ドロッとした液体は皮膚にまとわり離さない。冷たい液体が体の産毛を立たせる。水分を含んだ漫画の本が皮膚にくっつき、身の毛をよだたせる。

 ようやく宝石に手が届いた。

 ついに四つめの宝石を手に入れた。ただ、その宝石は付随した汚れで濁りきっている。心が折れそうだ。

 小走りで公園へと行って、水を出しっぱなしにして宝石と腕をこれでもかと言う程に流しまくった。

 帰ったら風呂に入ろう。そう誓いながらノラに着いていった。



 ノラが最後に来たのは自宅だった。

 しかし、まだ五つ目の宝石は見つけていない。

 成り行きで玄関の戸を開く。目線の先に五つ目の宝石であるパールホワイトを見つけた。

 急いでそれに手を伸ばす。

 もう一つの手がそれに触り、私とその手が触れ合った。チラッとその手の先を見ると、そこにはアロがいた。

 思わず手を引っ込める。

「大事なものだろ。無くさないようにしっかり持っとけよ。」

 私は手を掴まれてその手のひらに宝石を置かれた。たったそれだけの事なのに、胸の鼓動が早くなる。刺激的な存在に私は一人勝手に興奮しそうになった。

 落ち着け――私。

 深呼吸をして、手のひらを見る。これで五つの宝石が揃った。

 私は一旦、風呂に入ることにした。

 その後、ティアラに宝石を埋め込む。一つ、二つ、三つ、四つ、これで全ての宝石が揃った。

 その途端、黒い宝石が光り出した。

 漆黒の光に目が奪われていく。体が浮遊感を覚える。どうしてだろう。私の意識が遠のいていく。


 ――――――

 ――――――


 目を覚ますとそこは薄暗い家の中だった。確かに私の家に見えるが、魔王城だとかドラキュラ城だとかそんな不気味な雰囲気を醸し出している。

 黒い宝石の放つオーラが私を呼んでいる。宝石は二階の私の部屋にある。

 ずっと何かに見られているような気がする。まるで家の中にいるはずなのに、丑三つ時の墓地付近の草原で肝試ししているようだ。時々、嫌な甲高い笑い声が聞こえてくる。

 階段を一つ上る。どこからか誰かがコソコソと話している。「あの子、ほんとに行こうとしてるんだって。」「えー、嘘ー。」クスクスクス。思わず耳を塞ぎたくなる。

 もう一つ上る。今度は「無理でしょ。」「やめなよ。」心配される声。心が重くなりそうだ。

 もう一つ上る。もはや声が聞き取れないほどに大量のコソコソ話が頭の中に溢れ出ていく。

 早くここから逃げ出したい。戻れば今すぐ楽になれる予感がした。この直感は正しい気がする。

 それでも私は足を上げた。

 一段一段進んでいく。進む事に周りの声が鮮明になっていく。気を緩めれば逃げ出してしまいそうだ。

 ようやく上りきった。振り返ると何の変哲もない階段がそこにあるだけだった。

 私の部屋の扉を開けた。

 そこにブラックダイヤモンドが浮いている。私は部屋に踏み込んだ。


 視界に映る世界が目まぐるしく変わる。

 いつの間にか舞踏場のような場所に変わっていた。そこに人の気配がしない。煌びやかなはずの景色なのに、あまりの殺風景に違和感が凄い。

 鮮やかな絨毯の上を不安になりながらも歩いていく。見上げれば上から見下ろせる通路が見える。その通路は艶やかな白色の柵で覆われていた。さらに真上を見上げれば初めて見る巨大なライト。シャンデリアという重ねられたその光は鮮やかな光とともに美しい雰囲気をその場に醸し出していた。所々に見える金の装飾は私を場違いだと笑っているように思わせる。

 突然現れる影の私。全身が真っ黒で覆われた(コハ)を象った存在が目の前にいる。彼女は何故かタキシードを着ていた。

 パッ、といつの間にか私の服装は黒色のイブニングドレスを着ていた。鏡で見ないと分からないが、きっととっても美しい姿なのだろうと理解した。

 まるでここは影の(シャドー)(いえ)。不思議な不思議な空間で作られた家だ。

「よくここまで来ましたわ。フィリップに転校する前のあなたでは、あの階段は上りきることができなかったと思います。傍で見ていてあなたは随分と成長したと思いますの。」

 どこからか声がする。とても麗しい声だった。

 目の前に私の偽物が立った。そして、私の手を掴んだ。

 突然流れていくピアノの音。

 体が自由に動かない。代わりに、勝手に私の体が動かされている感覚だ。まるで何か上空から幾つかの糸が垂れ下がって、その糸で操られているみたいだ。

 音に乗せながら、影のエスコートに身を委ねて踊っていく。

 独占した舞踏場で、踊っていく。

 この場がただ私一人のために作られたような感覚すら感じる。


 優雅に動いていくこの身体。それは糸が操っているからだ。つまり、この踊りに私の意思など一つもなく、すっからかんの(から)だ。影は優しく笑った。それに呼応して操られるように私も笑った。


「聞くけど、あなたはこれからどうするつもりなのですか?」

 どこからかする声に私は踊りながら答えた。

「私はピーちゃんを人間に戻すの。」

「それでは、その後は?」

 その後のことは何にも考えていなかった。おばあちゃんと、アロと、そして人間に戻ったピーちゃんと一緒に暮らす想像をした。だけど、虚しさが残る。ふとミカンの顔が浮かんだ。すぐに虚しさの正体に気付けた。

「あなたがピーちゃんを人間に戻した後、あなたはきっと魔法少女になるかどうか問われるでしょう。あなたは特別な人間ですもの。強くなればピーちゃん以外にも人ではなくなった存在を人間に戻せる可能性があると言われると思いますの。」

 体は操られているので、口だけを動かして「じゃあ、私は魔法少女になりたい。ピーちゃんだけじゃない。ミカンちゃんも、他の人達も人間に戻したい」と懇願に答えた。

「本当に後悔しませんか?」

 ピアノのメロディが変わった。

「……え?」

「力を持たぬ者にとっては無知は罪ではないのです。あなたは何も知らず、あなたの思う王子様と結ばれることこそが幸せと思いません? 自分の意思で行動なんかせず、傀儡人形のように振る舞えばいいのですわ。息苦しいかも知れませんが、狂ってる世界について知ることはありませんし、何よりあなたが責任を負う必要もありませんのよ。」

 勝手に動かされる不自由な現状にどこか心苦しさを感じる。ずっと受け身の人生。今までだったらきっと何の苦もなく選べていたと思う。

 けど、今は違う。私は変わったんだ。

「辛い思いをしてもいい。責任を負ってもいい。だから、私はそれでもみんなを救いたい。」

「後悔するかも知れませんわよ?」

「『Que()sera'(セラ)sera'(セラ)』――。」

「ケセラセラ?」

「うん。大切な人が教えてくれた言葉なの。後悔しても苦しくても、幸せでも、明日は平等にやってくる。後悔する時は後悔する。なら、今を後悔しないよう進めばよい。ってね。私はみんなを元に戻したい。じゃなきゃ、後悔する。」

 私は影のリードのままに回転をした。

 そして、影に支えられて大きく仰け反った。

 ゆっくりと支えられながら姿勢を戻す。

「もう私は決めた。魔法少女になる!」

 影が蒸発するように消えていく。

 そこに残されたのはただ一つだけの黒い宝石だった。私を操る糸は消えていた。自由になった私はその石を掴んだ。

 

 カツカツカツとそこに近づく一人の女性。

 あまりの美しさに見蕩れてしまった。思わず「綺麗――」と呟いていた。誰もが憧れる、そんな存在だ。

「ごめん遊ばせ。勝手にあなたの夢の世界を改造したことをお詫び致しますわ。」

 声の正体は彼女だった。

 それとここは夢の中だったみたいだ。謎は残るが、それ以上踏み込む気はしなかった。

「実はあなたにお伝えしたいことがありますの。あなたは人間であって、人間ではないのです。あなたは【姫】という人間ですのよ。ですが、あなたは姫と言うには半人前でした。」

 言っていることがさっぱり分からない。私は人間なの? 人間じゃないの? どっちなの? もはや意味は分からない意味深発言に頭が混乱しそうだ。

「わたくしは【姫】のあなたが一人前になるまであなたのお()りをする使命を課せられた人間ですのよ。ですから、わたくしはあなたのことをずっと見守っていましたわ。」

 背景が歪み始める。地面からたくさんもの泡が上に上がっていく。突然にしてそこは光が射す深海に場所となった。ただ、体は海の中のように漂っているのに、息はできる。そして、服は濡れてないし、化粧も落ちていないのが見える。

「あなたはフィリップに移り住んでから、大切な人達との出会いや厳しい旅を経験し、一人前に成長することができました。これでようやく私は長い使命から解き放たれることができますわ。」

 私達は海の中で横たわりながら対面して、手を繋いでいる。顔がとても近い。そこから見る彼女は直視すればする程、美しく可憐で可愛い。

「感謝を申し上げますわ。そして、これにてお別れになりますわね。」

 海の中だから涙を浮かべても分からない。そのはずなのに、どうしてか彼女は涙を流しているような気がしていた。

「儚さこそが最大の美。勝手で我儘ながら愚問をさせて下さい。わたくしは今、とっても綺麗ですか――?」

「うん。みとれてしまうぐらい綺麗――。」

 彼女は笑っていた。繋いだ手を引き寄せる。

 ――。

 キスされた頬。忘れられない感触になりそうだ。

 繋いでいた手が離される。

 このまま二度と会わないような気がした。それなのにまだ聞いていないことがある。

「ねぇ、あなたの名前を教えて――。まだ、聞いてない。」

「わたくしは"先代ハートの姫"と呼ばれていました。ですが、今はあなたがいつも呼んでくれる名前がありますのよ。」

 少しずつ離れていく。私は沈み、彼女は浮かぶ。

「わたくしの名前? "ノラ"ですわよ――。」

 段々と落ちていく体。もう彼女は遥か遠くへと行ってしまった。


 ――――――

 ――――――


 今度こそ目を覚ました。

 そこは私の部屋だ。手にはブラックダイヤモンドを持っていた。

「ノラ?」

 窓の外に一瞬だけ猫の姿が見えたような気がした。そして、その猫がどこか遠くへと行ってしまったような気がした。



 ルバリに五つの宝石を取り戻したティアラを差し出した。

「では、確認するわね。この宝石の力を使って人間に戻せばいいのよね?」

「はい。」

「それで戻すのはコハさんではなくて、この電子レンジのピーさんでよろしいのよね?」

「いや、私な訳ないじゃん。どうみても人間じゃん」と思わず口から突っ込みが出てしまった。

 しかし、その突っ込みに首を傾げているルバリ。

「もしかしてコハさん。あなた既に人間ではないことを聞かされて……ない?」

 その言葉を聞いて、思い出す先程聞いた言葉。私は"人間であって、人間でない"。 一体どういうことか――私はまだ理解できていなかった。

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