デモンストレーション③
「一つ、気になることがあるんだけど?」
「応答。なんでしょうか?」
「俺は私生活の中でいつ異世界に行くんだ?」
自慢じゃないがフリーターの俺はバイトの掛け持ちで意外とスケジュールが埋まっている。
(簡単に呼び出されて生活に支障が出るのは避けたいしな)
「回答。あなたが寝ている時に意識だけ異世界に送ります。肉体はその世界で構築するのであなたの体はしっかりと 休んだままです。現に今も意識だけをこの空間に呼び出しています。」
「そんなこともできるのか。でもそれだと肉体はともかく精神?とかメンタルは休まらないのでは?」
「回答。あなたは異世界の記憶を持ち帰れないのでその心配はありません。」
「は?」
(気のせいか、今記憶を持ち帰れないとか言ったか?)
「異世界の譲歩や技術が流布される可能性はない方が良いですし、内容によっては覚えてない方がいいこともあるか もしれません。よってその方が合理的だと判断します。」
周囲にあった森が滲み出して元の白い空間へ変わりながら青い球体は告げる。
「それでは早速あなたに向かって頂きたい、世界があります。こちらを見てください。」
目の前に半透明のスクリーンのようなものが現れた。
ーーーーーーーーーー目標ーーーーーーーーーー
1: 剣術で魔物から少年を救い出す
2: 魔術で魔物から少女を救い出す
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「提示。これが今回の目標です。幸いなことにどちらも同日、近場での出来事なので、少年の危機が回避できた時点 で次の少女の元へ向かってください。二人に位置は誘導スキルで察知できるようにします。」
「それはありがたい。とりあえずやってみた方が早いよな。早速送ってくれ。」
「了承。すべてはあなたにかかっています、頼みましたよ渡 助希。」
「おう!任された!」
青い球体が眩しく光って目を閉じた瞬間、わずかな浮遊感と地面に着地したのを感じた。
目を開けて最初に飛び込んできた景色は少し紫がかった空。
肺に満ちるのは少し湿った空気だった。
「本当に異世界に来たんだ。」
人気がない道の真ん中に立って感動していると少し遠目に村があるのが見えた。
「まずは第一村人を探しに行きますか!」
少しだけ駆け足になりながら村への道を進み始めた。
「急げ!モタモタしているとモンスターの大群にすべてめちゃくちゃにされるぞ!」
「武器を持ったら騎士団を中心に編成するぞ!」
「第一波がくる前に防衛線を築くぞ!」
なんか想像以上に物騒な会話しか聞こえてこない。
村に着いたら異世界情緒ある会話をしようとか思っていたのに、村にそんな余裕はなさそうだな。
件の少年少女を探すには前線にいた方がいいよな?
さっきから指示を出している騎士に聞いてみるか!
「なあ!俺も戦えるんだどこに向かえばいい?」
剣を見せながら戦力になれることをアピールしてみる。
「村人ではないな?冒険者か?まあなんでもいい!今はとにかく戦える人間が一人でも多く必要だからな!戦線に参加してくれるなら、ありがたい!戦線は向こうだ!」
騎士が指差した方へ行くとすでに数十人が戦闘の準備をしていた。
「今回は魔物の大量発生によって森から魔物が溢れてくると想定されている!近くの街から騎士団も応援に来てくれる!最初の数時間さえ耐えれば我々の勝ちだ!油断せずに行くぞ!!!」
「「「「おー!!!!!!」」」」」
大剣を振り上げて音頭を取っている青年を中心に士気は高まっていた。
とりあえずここで待機していれば
「おい!あれを見ろ!」
正面から数十体の魔物に追われている馬に乗った人影があった。
「隊長!!」
「前線を動かして隊列を乱すわけにはいかない!頼むからここまで逃げ切ってくれ!」
あと数百メートルというところで魔物達の中から石のようなものが馬の近くに落ち、馬は転んでしまった。
当然乗っていた人も落馬した、そこへすぐに犬型の魔物が飛びかかった。
「俺は隊列に入ってないから飛び出しても問題ないよな!」
疾走スキルで魔物との間に滑り込みながら剣技スキルで魔物を真っ二つに切り裂いた。
続けて飛びかかってくる魔物達も同じく剣技スキルで切り裂きながら倒れている人に呼びかける。
「早く立ち上がって、村まで逃げろ!!」
「っ!!!はいっ!!」
(まさか馬に二人乗りしていて片方が少年だったとは)
「気づいてなかったら流石に間に合わなかっただろうな」
事前に少年が魔物に襲われることを知っていたから早く駆け出せたそれだけである。
6体目の魔物を切り裂こうとしていると
「防衛準備完了!!!突撃!!!!!」
「「「「おーーーーー!!!!!」」」」
雄叫びと共に騎士達が参戦してきた。
「遅くなってすまない!」
「兄ちゃん!よくやった!下がって休みな!」
そう言いながら混戦状態になった。
「我々の代わりに飛び出し一人で戦ってくれたこと感謝する!」
音頭を取っていたリーダーの青年がすれ違いざまにいって一気に特攻して行った。
俺が一人で戦っていたのは、ものの数分程度だったがそれでも緊張からか確かな疲れを感じた。
だけどまだ終わってない。まだ助けないといけない少女がいるはずなのだ。
「伝令!!!!!村の南側でも魔物が出現!!!!!」
(この伝令以外に頼りは無いし行くしかないか!)
疾走スキルを発動して村の南側を目指した。




