夏と葬儀屋
夏が来た
線香の香りがした
君が死んで五年
ずいぶん経ったような気もする
葬式 喪主の話 やり方もわからぬ焼香
あの頃まだ 青かった
葬儀屋が仕事をしていた
受付やら 案内やら
ただ 必要最低限の表情で仕事をしていた
どんな気持ちで人の死と触れて
何を思っているんだろうか
たとえそれが怠惰で 口にしてはならぬような
まるで立派でない心持ちだったとしても
私は何も驚かないだろう
人間らしいと思うだけだ
君は青いまま死んだ
とある推理小説のワンシーン
花のうちに死ぬが最上と
犯人が宣っていた
君が読んでいた素朴な文庫本
ラストシーン 影に満ちた言葉に
君は何を思っただろうね
君はあまりに青かった
年齢にそぐわないほどに
影を帯びた私の隣で
君は確か 笑っていた
綺麗事を嗤う私が
君の言葉だけは笑わなかった
それが虚構であるという事実を
君の知らぬとこで殺めたかった
君は太陽のようだったから
影など帯びやしなかった
日が沈み 火葬場は西
今の時代は大仰な飾りなど取り払った
ただ黒い霊柩車が 日を追ってハイウェイを行った
太陽信仰者が日蝕を嘆き 縋るように
母は縋る幼子のように エンジンが泣いていた
灰の山は小さく 遺された骨を見て
この小さな身体のどこに あれほどの光の粒を
果たして収めていたのかと 私は思った
日が沈み 闇夜
空を仰いでは赤子のように
死した太陽の幻影を描き 泣きじゃくっていた
葬儀屋がクラクションを鳴らし
私は記憶に囚われていた




