転2
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「薬物取引の闇サイト……」
沢渡が低く呟くと、陽菜が高橋へ視線を向けた。
「売られていたのは猫じゃないの?確かに普通の値段じゃなかったけど……薬物と何の関係があるの?」
「いや……その……」
高橋は歯切れが悪い。見かねて、沢渡が静かに口を挟んだ。
「要するに――猫は“入れ物”ですね?」
その言葉に、高橋は陽菜の方へ目を向け、小さくため息をついた。
「え? なに? 入れ物ってどういう意味?」
「グリを世話してる陽菜ちゃんの前で口にしたくないんだけど…」
言わないわけにはいかないと覚悟を決め、高橋は続けた。
「さっき見たのは違法薬物を売買するサイトなんだけど、買った人に届けるとき、薬物だとバレないようにしなきゃいけない。英語表記ってことは、国境をまたぐ取引も普通にやってるんだと思う。空輸で税関を通るとなれば……なおさら厳しい」
「うん……」
陽菜は不安そうに頷く。
「だから、そのサイトで薬を買うと……」
一呼吸おいて高橋は続ける。
「猫の体内に埋め込まれた状態で、運ばれてくる」
「……え」
陽菜は言葉を失う。
「さっきの動画は、もしかして“取り出し方”ですか?」
黒川が眉をひそめ、静かに尋ねた。
「はい。警察とかが閲覧することを警戒してか、薬そのものは映していませんでした。でも……見る側が想像できる作りになっています。かなりグロテスクで、私でも直視できないほど」
「ひどい……こんなに可愛いのに……」
陽菜はケージ越しにグリの頭を撫でる。グリは構ってもらえることに嬉しいのか、陽菜の手を甘噛みしたり、猫パンチで応戦する。ただ、その無邪気さがかえって胸を締めつける。
「体内に薬を取り込んで運搬する方法自体は、珍しくありません」
黒川が淡々と説明する。
「カプセルに入れて飲み込む。肛門に押し込む。女性なら、女性器に隠すってパターンもあります。ただ、どの方法にしても相当つらいはずですし、命がけです。もし薬が体内で漏れたら、急性中毒で即死しますから」
沢渡も続けた。その前に、陽菜へ軽く目を向ける。
「飼い主さんの前で言っていい話ではないのですが……」
そして静かに続ける。
「動物に埋め込めば、苦しんで鳴こうが、おとなしくしていようが、“動物だから”で片づけられてしまう。もちろん虐待で、許されることではありません。しかし犯罪者の視点から見れば……“効率的”なんでしょう」
その最後の一言に、三人は息を呑んだ。
陽菜と高橋は、ずっとどこかで願っていた。美月の失踪は、ただの行き違いで、そのうち戻ってきてくれる――と。
不幸な可能性を、認めたくなかった。
だが、
「妹さんが、何らかの事件に巻き込まれているのは……ほぼ間違いないでしょう」
沢渡の一言、そして誰かが付箋で残した手がかり。
認めざるを得なかった。
高橋と陽菜はついに直視するしかなくなった。
――美月は“本当の犯罪”に巻き込まれている。




